欧州:単一効特許制度

欧州における「単一効特許」(Unitary Patent)の制度については、30年以上議論されておりましたが、紆余曲折を経て、2012年12月11日、ついに欧州連合(EU)は、「単一効特許」(Unitary Patent)、及び、それと不可分の関係にある「統一特許裁判所」(Unified Patent Court)に関する一括法案の採択を決定しました。現行の欧州特許制度と同じく本「単一効特許」制度における欧州特許庁(EPO)の公式言語は英語、ドイツ語及びフランス語であるため、スペインとクロアチアは自国の言語での申請が認められないことを理由に反対しており、そのため、当面は欧州連合(EU)加盟の28カ国中、スペインとクロアチアを除いた26カ国*で発効することとなります。移行される欧州特許が最多の国であるフランス、ドイツ、イギリスの3カ国を含む13の欧州連合(EU)加盟国の批准から4か月目の第1日から発効することとなっています。国民投票で欧州連合(EU)からの離脱(いわゆる「ブレグジット」(Brexit))を選択したイギリスも、本制度への参加を表明しています。2018年8月現在、イギリスとフランスを含む16カ国(AT, BE, BG, DK, EE, FI, FR, GB, IT, LT, LU, LV, MT, NL, PT, SE)が批准済みですが、ドイツがまだ批准してないので、未発効となっています。現在、参加国は、2018年中の発効を目指して作業中です。

統一特許裁判所(Unified Patent Court)は、3箇所の中央部(パリには中央部の本部が、ロンドンとミュンヘンには中央部の支部が設置される)、複数の地方部(いずれの参加国も設置可能)及び複数の地域部(参加国2カ国以上で設置可能)からなる第一審裁判所(a decentralised Court of First Instance)、並びに控訴裁判所(a common Court of Appeal)(ルクセンブルクに設置される)から構成されます。救済及び仲裁センター(patent mediation and arbitration centre)がリスボンとリュブリャナに設けられます。判事研修センターがブダペストに設けられます。

現在の欧州特許条約(EPC)に基づく欧州出願においては、欧州特許庁(EPO)が出願審査を行い、EPOによる許可(特許査定)を得た後に、登録を希望するEPC加盟国への登録手続きを行うことにより、各国へ「枝分かれ」し、「特許の束」(bundle of national patents)として存在することとなります。

単一効特許制度発効後も、従来通り、審査は欧州特許庁が行いますが、特許許可後の手続きが統一化されます。統一化される手続きは、以下の通りです:

・ 各国への登録手続き: 現在は、登録を希望する国毎の手続きが必要で、請求項の翻訳文の提出が必要な国も有るが、この手続きを一本化する。欧州特許庁による許可の公告日から1ヶ月以内に単一効特許を選択することができる。

・ 翻訳文の提出: 6年から12年の移行期間中は、手続言語がフランス語かドイツ語の場合は、特許付与後に明細書全文の英語翻訳文を提出することが必要である。手続言語が英語の場合は、明細書全文の英語以外の欧州連合(EU)のいずれかの公用語への翻訳文を提出することが必要である。翻訳文に法的効力はない(“...shall have no legal effect and shall be for information purposes only”)。移行期間経過後はいずれの言語への翻訳文の提出も必要はない。(上記移行期間は正確度の高い機械翻訳システムの開発に必要な年数を考慮したものである。上記移行期間経過後は、全ての特許明細書が全てのEU公用語に機械翻訳される予定である。)

・ 維持年金の支払い: 現在は、各国で登録後は、国毎にまちまちの維持年金を支払う必要があるが、これを一本化する。具体的な金額は、ドイツ、フランス、イギリス及びオランダの維持年金の合計額相当である。

・ 係争の取扱い: 現在は、侵害訴訟や無効訴訟などは、各国の裁判所で取り扱われているが、これらは一括して欧州統一特許裁判所の管轄となる。ただし、特許権が一本化されることによる権利消滅のリスクがある。つまり、単一効特許は、統一特許裁判所に無効訴訟が提起され、無効であると判断された場合、参加国全てについて同時に無効となる。

なお、差し当って、既存の欧州特許や係属中の欧州特許出願には影響ありません。欧州単一効特許は国内特許及び従来の欧州特許と併存します。特許権者は欧州単一効特許、従来の欧州特許及び国内特許の様々な組み合わせを選択できます。しかし、参加26カ国における欧州単一効特許と従来の欧州特許の二重保護はありません。(ただし 、一部の国では欧州単一効特許と国内特許の二重保護が可能です。)

オプトアウト(専属管轄の適用除外)について:
従来の欧州特許の束は、統一特許裁判所(UPC)の管轄から適用除外(オプトアウト)が可能ですが、欧州単一効特許はオプトアウトできません。欧州単一効特許については、統一特許裁判所が最初から専属管轄権を有します。オプトアウトの宣言は、統一特許裁判所の登記部(Registry)に提出します。オプトアウトの宣言は取り下げることができます(オプトイン)。オプトアウトは、本制度が発効する3か月前から移行期間満了の1ヶ月前までのいわゆる「サンライズ」期間に登録可能です。オプトアウトは、統一特許裁判所(UPC)で訴訟が提起されていない場合にのみ申請可能です。オプトインは、国内裁判所で訴訟が提起されていない場合にのみ申請可能です。


* 参加予定の26カ国(スペインとクロアチアを除く欧州連合(EU)加盟国)は以下の通り:オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコ、キプロス、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、及びイギリス。

(EPC加盟国中、欧州連合(EU)加盟国ではないために不参加となる国は以下の10カ国:アルバニア、マケドニア(旧ユーゴスラビア)、アイスランド、リヒテンシュタイン、モナコ、ノルウェー、サンマリノ、セルビア、スイス、及びトルコ。)


お問い合わせ

ホームページ制作