開示内容

米国(3): 現在の米国における特許政策(並びに自明性審査とその対策)

プロパテント政策の変化

米国においては、プロパテント政策(発明技術の独占的実施権を可能にする特許による権利保護を重視する政策)が、1980年代後半にレーガン大統領により導入され今世紀初頭まで維持されてきましたが、世界的な不況が深刻化するにつれ、大きな変化が見られます。

不況に加えて、プロパテント政策による弊害とも言える所謂「パテント・トロール(patent troll)」による特許権の濫用も大きな問題となっています。「パテント・トロール」とは、大学や研究機関以外のnonpracticing entity(特許発明を実施しない者)であって、第三者の特許権を譲り受け、その特許権を主張して大企業に巨額の損害賠償を要求するような組織のことです。このパテント・トロールの暗躍は、質の低い特許を乱発したことによる弊害であると言われております。

一般的には、近年の不況に伴い、プロパテントからアンチパテント(特許権より独占禁止法の遵守に重きを置く政策)へシフトしたと言われることが多いようですが、一概に、完全にアンチパテントへ傾いたと断言することは難しいようです。 近年の出来事を見ると、審査基準の厳格化や権利行使の範囲を制限する変化が目立ちますが、一方で、特許の活用を促進する方向の変化も見られます。要は、この不況を乗り切るために重要なツールの一つとして特許を有効に活用出来るように制度を整えているということであると思います。

近年の判例や2011年9月の法改正(Leahy-Smith America Invents Act)から読み取れる米国の知的財産権に関する姿勢は以下の通りです:

進歩性基準を厳格化し特許の質を向上

 - KSR Int'l Co. v. Teleflex, Inc., 550 U.S. 398 (2007) (これにより非自明性の審査が厳しくなった。)

付与後特許に対する異議申立ての機会を拡張

 - 付与後異議申立制度(Post-grant review)の導入(2011年のAmerica Invents Act)

過剰な権利行使を抑制

 - Abbott Labs v. Sandoz, 566 F.3d 1282 (Fed. Cir. 2009) (所謂"product-by-process"形式のクレームの権利範囲を、クレームで規定したprocessで得られる物に制限した。)

 - 複数の被告に対する訴訟の併合(joinder of parties)についての制限(2011年のAmerica Invents Act)(以前は、1つの特許訴訟において複数の被告を訴えることが可能であり、パテントトロールが複数の企業に対して同時に特許権侵害訴訟を提起し損害賠償金請求することが問題視されていた。この対策として、「同一の特許を侵害している」ことのみをもって複数の被告を1つの訴訟事件で訴えたり、1つの訴訟事件に併合したりすることができないこととされた(§299)。)

 - In re Seagate Technology, LLC, 497 F. 3d 1360 (Fed. Cir. 2007) (特許侵害訴訟において、3倍賠償の対象となる故意侵害の有無の立証責任を、侵害者から特許権者側に移した)

 - 故意侵害及び侵害教唆対策としての鑑定書の入手・提出の不要化(2011年のAmerica Invents Act)(上記Seagate事件における判示の一部を成文法化。鑑定書を入手しなかったことや裁判所に提示しなかったことを、故意侵害(willful infringement)の認定や、侵害教唆(inducement of infringement)の意思の認定に使用できないと規定された(§298)。2012年9月16日以降に発行された特許に対して適用。)

特許出願人又は特許権者の過失に対する罰則適用条件を緩和

 - ベストモード要件違反を特許無効の理由から除外(2011年のAmerica Invents Act)

 - Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co. (Fed. Cir. 2011) (en banc))(不公正行為(Inequitable Conduct)の立証を困難にした)

 - 補助的審査(Supplemental Examination)制度の導入(2011年のAmerica Invents Act)(情報開示義務(IDS)違反の救済措置)

特許出願に関する門戸は狭めない

 - Bilski最高裁判決[Bilski v. Kappos, 130 S. Ct. 3218, 561 US, 177 L. Ed. 2d 792 (2010)] (CAFCの大法廷(en banc)が「machine-or-transformation testが、ビジネス方法に関する発明が特許保護の対象になるか否かについての唯一の判定手段」と判示したのを最高裁が覆した。)

KRS判決による非自明性判定基準の変化:

以前は審査が厳しいと言われている化学分野の特許出願で、かなり厳しい審査結果を予想していたにも関わらず、あっさりと特許になって拍子抜けしたようなケースも多々ありました。しかし、最近は我々も実感として、KSR判決を境に自明性(複数の先行技術文献の組み合わせに対する容易性)の審査が非常に厳しくなったと思います。正直な所、KSR判決以前は、「減縮補正を行わないと103条(自明性)で拒絶されるだろうな」と思う様な件が、拒絶を受けずにそのまま特許にということも結構ありました(しかも、審査結果が出るのが早かった)。現在は、特許庁における審査は、より時間をかけてかなり厳密に行われているという印象です。KSR判決において最高裁は以前よりも厳格な非自明性の基準が提示しましたが、判断基準が厳格になった以上に、米国特許庁審査官の自明性審査に対する姿勢が厳しくなったと感じます。

実際に、統計的にみても、米国ではKSR判決以後では拒絶査定を受け審判請求を行う件数が増え(KSR判決前の2006年では3349件→KSR判決後の2008年では6385件)且つ審判請求を行って拒絶が撤回される確率が率低下しています(KSR判決前の2006年では41%→KSR判決後の2008年では28%)。

尚、参考までに、KSR判決後約2年間において、CAFC(連邦巡回区控訴裁判所)が、化学・生化学系の発明を非自明(進歩性有り)と判断したケースが約62%であったのに対して、非化学・生化学系の発明を非自明と判断したケースは約33%であったとの統計データもあるそうです(http://www.jurisdiction.com/dsmith.pdf)。このことは、KSR判決によって、化学・生化学の分野のように効果を予見することが難しい分野では非自明と判断されやすく、一方、機械などの構造物などの効果を予見しやすい分野の発明は自明と判断されやすくなったということを示していると解釈することできます。

最近、米国特許成立の確率が回復(向上)傾向にあるという情報も散見されますが、実際、数字上はそうであっても、これが淘汰(即ち、元々特許性が明らかでない出願は繰り返し拒絶を受けたために放棄されてしまった)や出願人が出願する発明を精査していることによるという可能性もあると思います。弊所の印象としては、現在でも、KSR判決直後と比較すると非自明性の判断も大分緩和されたようにも思いますが、KRS判決以前と比較すると未だ厳しいように思います。実際に弊所で扱っている案件でも、非自明性の拒絶に対してほぼ完璧な対応ができたような場合(先行技術の組み合わせに対する阻害要因の存在を明らかにし、更に実験証明で予想外の優れた効果を明らかにしたような場合)であっても、その後、審査官の理解不足による拒絶を受け、更に何度かインタビューを行って説明したり、細かい補正をすることによって漸く許可になったということもありました。要するに審査官の側に、非自明性の審査は厳格に行うべきという意識があると思います。

自明性の拒絶に対する対応

自明性の拒絶を受けた場合の典型的な対応は以下の通りです:

(a) 審査対象出願の発明や先行技術の開示内容に関する審査官の誤認を明らかにする。
(b) 先行技術の組み合わせに対する阻害要因(teach away)の存在を明らかにする。
(c) 予想外の優れた効果を明らかにする。
(d) 先行技術に教示・示唆されていない特徴をクレームに追加して、更にその特徴による予想外の優れた効果を明らかにする。

その他にも商業的な成功(所謂“secondary consideration”(二次的考慮事項)の例)などが考慮されることもありますが、これらはあくまで二次的に考慮される事項であって、一般的には上記の(a)~(d)で十分な対応が難しい場合に補足的に主張すべき事項です。やはり先ず上記(a)~(d)の観点からの反論を検討すべきでしょう。上記のKSR判決以前は、自明性の拒絶に対して「引用された2つの先行技術文献が異なる技術分野に属するものであるから組み合わせは不当」という反論で拒絶が撤回されることが屡々ありました。しかし、KRS判決以降は、異なる技術分野に属する先行技術文献であっても組み合わせることが当業者の常識の範囲内で容易であれば自明であるということになりました。従いまして、原則的には上記のような対応を考えるべきです。

上記(a)の審査官の誤解についてですが、特に米国の審査官は、技術内容の誤解に基づいて拒絶してくることが多いという印象があります。審査官の指摘を鵜呑みにせずに、自らの出願のクレームの記載や先行技術文献の開示内容を詳細に検討することが重要です。

また、その様な場合においても、ただ審査官の誤解を責めることを考えるのではなく、何故そのような誤解が生じたのかを謙虚に検討してみることが望ましい結果につながることが多いです。具体的には、審査官の誤解の理由を検討し、許容範囲内で、誤解の原因を排除し、発明をより明確に定義できる補正が可能であるならば、そのような補正を行うことが望ましいです。仮に審査官の誤解が明らかであっても、何らかの補正を行った方が、権利化がスムーズになります。

上記(b)の「阻害要因」については、一瞥してそのような阻害要因が見あたらないような場合でも、注意深く、執念深く、引用された先行技術文献を徹底検討すると、「阻害要因」として若しくは「阻害要因」とまではいえずとも先行技術の組み合わせを断ち切るために利用できる記載が見つかることも良くあります。一見自明性の拒絶が妥当に思えても、直ぐにあきらめないことが大切です。米国に限らず外国出願の多くは、現地代理人への依存度が高いと思います。しかし、現地代理人は、自分で明細書を作成したのではないということもあり、明細書や引用された先行技術文献を必要以上に詳細に検討することは通常有りません。現地代理人が半ばギブアップの状態でも、弊所で明細書や先行技術文献を徹底的に検討して有効な反論材料を見出したようなことも少なくありません。

上記(c)の「予想外の優れた効果」に関しては、米国の特許プラクティスの1つの大きな特徴として、出願明細書に記載されていない効果について、出願後に主張することが可能です。(日本や欧州においては、出願時の明細書に教示も示唆もされていなかったような効果に基づいて進歩性を主張することは原則的に許されません。)

また、米国において「予想外の優れた効果」の立証に有効なツールとして、37 C.F.R. 1.132に基づく宣誓書(affidavit)又は宣言書(declaration)(以下、纏めて「宣誓供述書」)があります。この宣誓供述書形式で提出された証言やデータについては、審査官は、公知文献や専門家の見解書と同等の証拠として真摯に検討することが義務付けられています。この宣誓供述書は、最後に文字通り「署名者は、故意の虚偽陳述及びそれに類するものは、18 U.S.C.. 1001 に基づき罰金若しくは拘禁、又はその併科により処罰されること・・・について警告を受けており、本人自身の知識によって行う全ての陳述が真実であること・・・を宣言する」と宣誓して署名するものです。

37 C.F.R. § 1.132の宣誓供述書の詳細については、以下をご参考下さい:
MPEP §716.01(a)MPEP§716.01(c)

また、宣誓供述書については、こちら にもより具体的な説明と、弊所で作成した宣誓供述書のサンプルを幾つか掲載しておりますので、参考までにご覧下さい。

他の国では一般的に審査段階では宣誓供述書の形式での提出は要求されません。しかし欧州の場合、審査の段階では実験証明書を宣誓供述書の形式にする必要はありませんが、異議申立手続きや審判手続きにおいては宣誓供述書の形式にすることが要求されます。

尚、自明性(進歩性欠如)の拒絶に対する対応の仕方については、こちら でも解説しておりますので、ご覧下さい。

タグ:

特許  米国  出願  クレーム  発明  日本  欧州  補正  記載  提出  必要  進歩性  明細書  米国特許  上記  以下  審査  効果  拒絶  or  patent  先行技術  判断  可能  弊所  宣誓供述書  手続  出願人  特許出願  比較  利用  審査官  主張  開示  適用  データ  作成  異議申立  要求  対象  方法  an  範囲  対応  説明  可能性  請求  要件  制度  出来  検討  制限  特許庁  外国  規定  外国出願  通常  情報  考慮  理由  具体的  存在  出願時  問題  特徴  明確  実際  使用  阻害要因  無効  同一  公知  先行技術文献  EP  文献  Examination  at  見解書  技術  第三者  追加  容易  特許性  引用  art  当業者  非常  基準  宣誓書  事件  注意  重要  実験  実施  十分  最後  権利化  review  改正  証拠  以前  内容  理解  審査基準  一般的  grant  非自明性  有効  拡張  出願明細書  結果  サンプル  権利  office  不要  判決  観点  導入  MPEP  現在  近年  特許権者  定義  許可  詳細  declaration  審査結果  判例  行為  形式  複数  entity  向上  www  発行  代理人  権利行使  米国特許庁  出願後  以上  異議  分野  Post  技術分野  付与後異議申立  参考  侵害  自明性  条件  知的財産  判断基準  所謂  訴訟  Supplemental  証明  特許権  will  以外  鑑定書  ケース  自明  案件  手段  違反  we  pdf  documents  法改正  under  同時  指摘  立証  審判請求  維持  日以降  Fed  原則的  事項  提示  宣言書  見解  時間  放棄  ビジネス  反論  傾向  non  Conduct  覧下  誤解  Inequitable  Act  拒絶査定  提起  権利範囲  示唆  困難  Invents  process  America  件数  段階  専門家  IDS  保護  go  減縮  審判  KSR  最高裁  範囲内  原因  CAFC  確率  so  審査段階  一部  欠如  機会  何度  印象  ex  Cir  知識  consideration  活用  義務  認定  異議申  状態  情報開示義務  現地代理人  年間  re  成立  プラクティス  each  知的財産権  ベストモード  自分  2d  参考下  署名  一般  付与後異議  教示  完全  予想外  損害賠償  判示  特許訴訟  affidavit  現地  特許無効  uspto  form  htm  抑制  除外  公知文献  成功  撤回  機械  最高裁判決  特許成立  要因  Ex  進歩性欠如  企業  許容  有無  secondary  減縮補正  典型的  開示内容  宣誓  シフト  do  同等  解釈  見出  救済措置  パテントトロール  test  裁判所  変化  特許侵害  過失  大法廷  申立  index  異議申立手続  禁止  最近  Therasense  プロ  補足  inoue  実験証明書  ep  化学分野  化学  パテント  予想  回復  仕方  一見  世界  技術内容  side  本人  対策  infringement  審判手続  原則  掲載  入手  teach  供述書  document  侵害教唆  政策  banc  意識  方向  away  willful  情報開示  Bilski  行使  3d  her  判定  Leahy  進歩  プロパテント  厳格  促進  am  Seagate  不況  特許保護  徹底的  Smith  被告  product  妥当  緩和  救済  解説  厳密  侵害訴訟  侵害者  異議申立制度  警告  責任  非自明  重視  濫用  適用条件  gov  唯一  代理  問題視  付与後異議申立制度  一概  インタビュー  二次的考慮事項  web  容易性  宣誓供述  判決以前  連邦巡回区控訴裁判所  文字通  文字  阻害  ratio  KRS  控訴  補助的  mpep  裁判  act  machine  part  構造  組織  Becton  Dickinson  Ct  特許侵害訴訟  公正  以降  特許発明  低下  付与後  付与  不公正行為  鑑定  開示義務  陳述  要件違反  虚偽  able  スムーズ  ツール  トロール  過剰  許容範囲内  アンチパテント  view  査定  厳格化  self  up  姿勢  実験証明  商業的  故意侵害  実施権  故意  注意深  transformation  常識  徹底  inducement  故意侵害及  大切  大学  大統領  大企業  実感  賠償金  賠償  弊害  進歩性基準  必要以上  成文法化  意思  排除  鵜呑  研究  二次的  人又  予見  目立  直後  以後  真摯  不当  精査  不足  立証責任  機関  先行  出来事  特許庁審査官  併合  依存  何故  判定手段  生化学系  判決前  侵害教唆対策  判決後  明細  誤認  訴訟事件  義務付  結構  統計  統計的  自明性審査  自身  offices  Teleflex  parties  Kappos  practicing  fr  ed  Ed  way 

米国(4): 情報開示義務(IDS)

米国出願に関して、以前からかなり神経質な管理を要する制度でしたが、米国連邦控訴巡回裁判所(CAFC)大法廷の判決(Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co. (Fed. Cir. 2011) (en banc))において、Inequitable Conduct (不衡平行為もしくは不公正行為)の判断基準が引き上げられて、その立証が困難になり、さらに2011年の法改正(AIA, America Invents Act)により、Inequitable Conduct (不衡平行為)回避の目的で利用できるSupplemental Examination(補足審査又は補充審査)制度(2012年9月16日から施行)が導入されることになっており、関連情報をIDSとして提出しなかったことが不衡平行為と認められて特許が権利行使不能(unenforceable)となる事例は激減すると見込まれています。

しかし、上記のTherasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co.のケースでは、結局、差し戻された地裁において、CAFC大法廷により引き上げられた基準に基づいてもInequitable Conduct (不衡平行為)があったと判決されました。また2012年9月16日から施行される上記のSupplemental Examination(補足審査又は補充審査)制度を利用するためには、本稿の最後で説明致しますが、非常に高額な手数料を米国特許庁に支払う必要があります。そのような事情を考慮すると、基本的にはこれまでの管理体制を変えないことが望ましいと考えられます。以下、具体的に説明いたします。

概要と近年の動向

情報開示義務は、37 CFR 1.56に定められており、これによると、出願人とその関係者は、特許性に関する重要な(material)情報(対応外国出願のサーチレポートにおける先行技術を含む)を公正かつ誠実に提供する義務を有します。この開示義務に違反して特許を取得したと認められた場合は、Inequitable Conduct (不衡平行為若しくは不公正行為)があったとみなされ特許権の行使が出来なくなってしまいます。

米国の特許訴訟において、これまでは情報開示義務違反によるInequitable Conduct (不衡平行為)の訴えは極めてポピュラーな攻撃手段でありました。米国での特許訴訟の実に約8割において、不衡平行為の主張がなされています。

特許の有効・無効の争いであれば、クレームベースですので、あるクレームが無効と判断されても他のクレームが有効であれば権利は残りますが、情報開示義務違反によるInequitable Conduct(不衡平行為)を認められれば、一切の権利行使が不可能になってしまいます。しかも、場合によっては、関連の特許にまで影響を及ぼすこともあります。

従って、これまでは出願人は、かなり神経質に関連の有りそうな文献は全て提出するということを行っていましたが、この不衡平行為による訴訟費用の高騰や手続遅延などが問題視され、上記Therasense事件におけるCAFC大法廷の判決、2011年9月の法改正による補足(補充)審査(Supplemental Examination)制度の導入(2012年9月16日から施行)と、特許訴訟におけるInequitable Conduct(不衡平行為)の主張を抑制する方向の動きが顕著になってきています。

情報開示義務の規定(37 CFR 1.56)

米国においては、特許性に関する重要(material)な情報について、出願に関係する者(発明者、弁護士・弁理士、その他出願手続に関与した者)は公正かつ誠実に提供する義務があります。

提出すべき情報には、対応外国出願のサーチレポートにおける先行技術などが含まれ、そのような情報を、情報開示申告書(Information Disclosure Statement; IDS)として提出します。この開示義務を怠った場合には特許は認められません。

IDSは、登録料(issue fee)支払までであれば提出することができます(37 CFR 1.97(d))。

出願から3ヶ月以内または最初の審査通知(拒絶理由通知又はNotice of Allowance)発行のうち何れか遅い方までであれば、提出料は不要です(37 CFR 1.97(b))。

上記以後は、提出料[$180(37 CFR 1.17(p))]が必要になります。更にこの場合、IDSとして提出する情報は、出願人がそれを知ってから若しくは外国の特許庁に引用されてから3ヶ月以内に提出する必要が有り、その旨を説明する陳述書を提出することが必要です(37 CFR 1.97(e))。3ヶ月を経過しているような場合には、その情報をIDSとして考慮させる為には、継続出願または継続審査要求(RCE)をすることが必要になります。

また、登録料支払い後にIDSを提出する際も、それを考慮させる為には、継続出願または継続審査要求(RCE)をすることが必要になります。(但し、2013年3月23日までの暫定的な試行プログラムとして、登録料支払い後にIDSをUSPTOに考慮させることを可能にするQuick Path Information Disclosure Statement (QPIDS)が実施されています。)

不衡平行為(inequitable conduct)

特許成立後に、情報開示義務違反が認められると、権利行使不能(unenforceable)となってしまいます。

以前は、情報開示義務違反の判断基準には、"sliding scale"と称されるアプローチが採用されていました。これは、情報開示義務違反を有無を、以下の2つの要件のバランスで判断するものです:

(1)開示しなかった情報が特許性に及ぼす重要性、及び

(2)情報隠蔽の意図の存在の明確性

即ち、sliding scaleアプローチにおいては、(1)の重要性が高ければ、(2)の明確性が低くても不衡平行為(inequitable conduct)認められ、逆に(1)の重要性が低くても、(2)の明確性が高ければ、不衡平行為(inequitable conduct)認められるということになっていました。

しかし、米国連邦控訴巡回裁判所(CAFC)大法廷の判決(Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co. (Fed. Cir. 2011) (en banc))において、(1)の重要性と(2)の明確性が共に十分に高いことが立証された場合にのみ不衡平行為があったものと認定すべきと判示されました。

上記(1)の「開示しなかった情報が特許性に及ぼす重要性」については、"But For" Materialityと称される基準に基づいて判定されこととなりました。この基準に従うと、出願人が開示しなかったことが不衡平行為(inequitable conduct)と認められるような先行技術は、もしその先行技術を審査の段階で審査官が知っていたならば、特許許可されなかったであろうと言えるようなものということになります。(但し、出願人側に積極的な悪質不正行為(affirmative egregious misconduct)があったと認められる場合には、"But For" Materiality基準による重要性の立証は不要。)

上記(2)の「情報隠蔽の意図の存在」については「明白且つ説得力のある証拠」(Clear and Convincing Evidence)が要求されます。

以上のようなことから、現在では、不衡平行為(inequitable conduct)の訴えが認められる可能性は相当低くなったと思われます。しかし、上記のTherasense事件のCAFC大法廷からの差し戻し審においては、出願人が、関連のある先行技術の開示内容について、USPTOに対して提出した宣誓書の内容と矛盾した内容の意見書をEPOに提出しながら、このEPOに提出した意見書を、IDSとしてUSPTOに提出しなかったという事実に基づいて、「開示しなかった情報が特許性に及ぼす重要性」及び「情報隠蔽の意図の存在の明確性」の基準を共に満たすとして、不衡平行為の存在が認められてしまいましたので、やはり油断は禁物です。

2012年9月16日から施行されている上記の補充審査(Supplemental Examination)制度は、不衡平行為回避のために導入されるものですが、上記Therasense事件のように、訴訟になってから相手側(被疑侵害人)に初めて指摘された事実に対する補充審査は認められません。補充審査については以下に具体的に説明します。

補充審査(Supplemental Examination)

補充審査制度においては、IDSとして提出し忘れた情報が有っても、その情報を提出しなかったことが情報開示義務違反に当たるかを特許庁に判定してもらい、もし違反に当たるようならば、当該情報に関する再審査を請求できるようになりました。

現行の査定系再審査(ex parte reexamination)も、情報開示義務違反(Inequitable Conduct)回避の目的で利用できます。この査定系再審査は、2011年の法改正後も特に変更なく維持されます。しかし、補充審査(Supplemental Examination)の導入により、Inequitable Conduct回避の機会は広がりました。

査定系再審査(ex parte reexamination)と補充審査(Supplemental Examination)の違いは以下のようになります。

(1)審査段階でIDSとして提出されなかった情報の種類

査定系再審査: 特許文献又はその他の印刷刊行物に限定されていた。

補充審査: 特に制限がなく、例えば、非公開の情報や販売の申し出を示す情報なども含む、情報開示義務違反(Inequitable Conduct)の根拠となり得る全ての情報が審査の対象になる。

(2)当該情報の関連性

査定系再審査: "substantial new question of patentability"(特許性に関する実質的に新たな問題)が提起されることが要求されている。

補充審査: 特に制限なし。補充審査で提示された情報に関して、特許性に関する実質的な新たな問題があると判断された場合には、査定系再審査(ex parte reexamination)への移行を命じられる。

IDSとして提出されなかった情報について補充審査を受け、「特許性に関する実質的に新たな問題」が無いと判断されたか、その後の査定系再審査の結果、特許性が認められれば、後に特許訴訟に発展しても、当該情報をIDSとして提出しなかったことが情報開示義務違反(Inequitable Conduct)と認められることはありません。

尚、補充審査(Supplemental Examination)制度は、2012年9月16日から施行され、出願日・登録日を問わずすべての特許に適用される予定です。但し、権利行使を検討していて、情報開示義務違反(Inequitable Conduct)の恐れがある場合には、警告状の送付や訴訟を提起する前に、補充審査を受けておくことが重要です。補充審査、若しくはその後の査定系再審査の結果に基づく免除権を享受するためには、侵害訴訟を起こす前に、この補充審査が完了していなければなりません。また、Declaratory Judgement Action(確認訴訟:通常、特許権者から侵害者として警告状を受けた者が、非侵害である若しくは特許無効であるとの司法判断を引き出すために提起する)が係属中に、補充審査を請求しても、上記の免除権を享受することはできません。

補充審査の手数料

以上のように、情報開示義務違反(Inequitable Conduct)回避のための新たな手続きとして注目をあつめている補充(補足)審査(Supplemental Examination)制度ですが、2013年1月18日に発表された最終的な施行規則によると、以前よりはかなり値下げされましたが、それでも非常に高額な費用設定となっています。具体的には、補充審査(Supplemental Examination)請求時に米国特許庁に対して支払う必要がある費用は、$16,500 [*内訳: 補充審査(Supplemental Examination)請求 $4,440 + 査定系再審査(ex parte reexamination)請求 $12,100]であり、査定系再審査が不要となった際("substantial new question of patentability"が無いと判断された場合)には、査定系再審査(ex parte reexamination)費用$12,100が払い戻されるということになっています。

従って、気軽に利用できる手続きとは言えませんが、訴訟における不衡平行為(inequitable conduct)の抗弁には多大な手間と費用を要すること、更には権利行使不能となる可能性を考慮すると、有用な手続きであるということには違いありません。

タグ:

特許  米国  出願  クレーム  発明  提出  必要  EPO  RCE  米国特許  費用  上記  以下  審査  拒絶  or  patent  先行技術  判断  サーチレポート  可能  手続  出願人  移行  IDS  利用  審査官  主張  開示  適用  USPTO  要求  対象  an  対応  説明  可能性  請求  要件  制度  プログラム  出来  検討  制限  特許庁  外国  規定  外国出願  公開  通常  変更  情報  考慮  理由  具体的  存在  問題  手数料  明確  拒絶理由  Action  AIA  米国出願  月以内  審査通知  無効  支払  発明者  EP  文献  Examination  規則  at  意見書  技術  最初  登録  特許性  引用  art  継続出願  拒絶理由通知  非常  基準  rce  採用  出願日  宣誓書  事件  重要  実施  十分  最後  補充  Notice  改正  証拠  提供  以前  内容  new  有効  結果  権利  不要  判決  試行  導入  概要  補充審査  現在  通知  再審査  近年  特許権者  許可  根拠  examination  行為  関連  実質的  QPIDS  発行  種類  権利行使  米国特許庁  施行  影響  目的  以上  限定  サーチ  侵害  issue  取得  判断基準  訴訟  Statement  Supplemental  最終的  特許権  基本的  ケース  手段  違反  parte  法改正  under  意図  指摘  顕著  立証  維持  Fed  査定系再審査  アプローチ  確認  提示  reexamination  相当  見込  Conduct  Inequitable  予定  Act  提起  不衡平行為  困難  Invents  America  高額  段階  回避  発表  CFR  CAFC  継続  施行規則  so  審査段階  結局  機会  ex  Cir  重要性  弁理士  義務  認定  特許許可  情報開示義務  送付  re  fee  成立  情報開示義務違反  不可能  Information  現行  販売  判示  特許訴訟  特許無効  意見  form  抑制  関係  経過  登録料支払  Disclosure  特許成立  注目  事情  Allowance  継続審査  Ex  有無  開示内容  当該  question  管理  宣誓  inequitable  弁護士  登録料  査定系  裁判所  暫定  conduct  大法廷  明確性  substantial  係属中  Therasense  プロ  Path  firm  補足  刊行物  関与  事例  Quick  矛盾  説得力  不可  material  Evidence  免除  享受  値下  積極的  Clear  攻撃  相手  banc  方向  情報開示  行使  patentability  her  判定  権利行使不能  am  継続審査要求  レポート  完了  Convincing  ベース  関連性  侵害訴訟  侵害者  警告状  警告  手間  出願手続  気軽  内訳  情報開示申告書  暫定的  最終  事実  unenforceable  以内  有用  問題視  陳述書  ratio  控訴  ability  裁判  本稿  誠実  明白且  part  Becton  Dickinson  当該情報  一切  公正  特許文献  exam  不公正行為  FR  開示義務  陳述  非公開  バランス  able  補足審査又  補充審査制度  請求時  説明致  査定  抗弁  情報隠蔽  up  reexam  改正後  提出料  開示義務違反  費用設定  遅延  対応外国出願  関連情報  神経質  以後  法改正後  動向  米国連邦控訴巡回裁判所  不正行為  不正  管理体制  免除権  先行  出願人側  特許成立後  体制  発展  係属  地裁  クレームベース  説得  設定  訴訟費用  行為若  多大  State  low  Materiality  force  ed  scale  All  But  sliding 

新規性の拒絶への対応

出願人の方が「引用された先行技術には、自分の発明には不要な成分が含まれている」ということが新規性の根拠となり得ると考えていることが屡々あります。これは間違いであり、発明が新規である為には、従来技術が有していなかった特徴を有している必要が有ります。

例えば、ある発明Xが「成分(A)、成分(B)および成分(C)からなる組成物」であった場合、すでに出願公開されている特許文献(先行技術文献Y)に、「成分(A)および成分(B)からなる組成物」が記載されていたとします。この場合、発明Xは先行技術文献Yに記載されていない「成分(C)」を有しているために、新規性を有するということになります。
一方で、「成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)からなる組成物」を開示する先行技術文献Zが存在した場合、発明Xの成分を全て含んだ組成物が開示されている訳ですので、先行技術文献Zの組成物が更なる成分(D)を含んでいたとしても、発明Xは先行技術文献Yに対して新規性が無いことになってしまいます。

上記の先行技術文献Zのような文献を審査官に引かれてしまったならば、新規性を認めてもらうためには、請求の範囲を補正して、先行技術Zに記載されていない特徴を発明Xに加えることが必要になります。

例えば、先行技術文献Zに記載されていない成分(E)を新たに発明Xの必須成分とすることや、成分(A)、(B)又は(C)の量について、先行技術文献Zに記載されていないような量に制限するなどの補正を行うことで新規性を確保することが出来ます。

ここでどのようなものが「先行技術」となるのかについては、国により異なるのですが、その点については別項で説明します。ページ左端のメニューからご覧下さい。

また発明が、単一の先行技術に含まれていなかったことが明白な要素を含んでいれば、その発明の新規性は認められる筈ですが、この点が明らかでない場合が有ります。典型的には、所謂「選択発明」(公知技術から特定の狭い範囲を抜き出した発明)や「(特殊)パラメータ発明」(従来知られていなかったパラメータで定義された発明)が、これに当たります。そのような場合、国によって判断基準が異なることが有ります。

例えば、欧州特許庁(EPO)は、ある先行技術に対する新規性を判断する際に、その先行技術の開示内容をその文献の記載から直接的に読み取れるものに限定して解釈します。要するに、その先行技術文献において暗に示唆されているが直接的には読み取れないような事項は、原則的にその先行技術文献に開示されている事項とは見なされません。一方、日本や米国においては、そのような暗に示唆されている事項についても、その先行技術文献に開示されていると見なされることが有ります。

従って、「選択発明」や「パラメータ発明」に関しては、日本や米国と比較して、欧州の方が新規性は認められやすい傾向があると言えます。(但し、勿論、新規性のみ認められても進歩性も認められなければ特許は認められません。)また、ドイツの様に、原則的に選択発明を認めていない国も有ります(この点については、EPOの基準に合わせる動きが有るようですが、最終的にどうなるか未だ定かではありません)。

「選択発明」や「パラメータ発明」についても、別項で詳細に説明しております。ページ左端のメニューからご覧下さい。

進歩性の拒絶への対応(Part 2)

想定外の理由に基づいて進歩性を否定された場合:

前回の「想定内の拒絶を受けた場合」では、出願明細書中の記載に基づく議論のみで対応可能な場合についてお話いたしましたが、今回は新たな検討を要する内容の拒絶を受けた場合について説明いたします。 そのような場合の典型的な対応は以下の通りです。

(A)審査対象出願の発明や先行技術の開示内容に関する審査官の誤認・誤解を明らかにする。
(B)先行技術を組み合わせることの困難性[例えば、阻害要因(teach away)の存在]を明らかにする。
(C)予想外の優れた効果を明らかにする。
(D)後知恵(hind-sight)や商業的成功(Commercial Success)を主張する。
(E)先行技術に教示・示唆されていない特徴をクレームに追加して、更にその特徴による予想外の優れた効果を明らかにする。

具体的な対応の例を以下に挙げます。

(A)審査官の誤認・誤解

審査官が、審査対象出願の発明や先行技術の開示内容を誤解して、拒絶理由通知を出してくることは少なくありません。(特に米国の場合に多いという印象があります。)

その様な場合においても、ただ審査官の誤解を責めることを考えるのではなく、何故そのような誤解が生じたのかを謙虚に検討してみることが望ましい結果につながることが多いです。具体的には、以下のような手段が考えられます。

補正

審査官の誤解の理由を検討し、許容範囲内で、誤解の原因を排除し、発明をより明確に定義できる補正が可能であるならば、そのような補正を行うことが望ましいです。

仮に審査官の誤解が明らかであっても、何らかの補正を行った方が、権利化がスムーズになります。但し、補正によるエストッペル(禁反言)が生じないか慎重に検討する必要があります。例えば、特許性を明らかにするために必要な補正(例えば、先行技術に対する新規性・進歩性を明らかにするために行われた補正)であったと判断された場合、その補正によってクレームの範囲外となった部分については、出願人により放棄されたものとみなされ、均等論に基づく権利主張が出来なくなる場合があります。

審査官との面談

どうしても、審査官がどのような理解に基づいて拒絶しているのか分からない場合が有ります。そのような場合には、可能であれば、審査官との電話インタビューなどにより審査官の意図を確認してから具体的な対応を検討することが望ましいです。特に米国出願の場合、審査官との電話インタビューを行って審査官の真意を確認するということをよく行います。

(B)組み合わせの困難性:「阻害要因」ないし「阻害事由」

審査官に引かれた複数の先行技術を組み合わせることの困難性を示すための手段は幾つかありますが、その代表的例として、組み合わせに対する「阻害要因」(「阻害事由」)の存在を指摘することが挙げられます。この「阻害要因」とは、英語では"teach-away"や"negative teaching"などと称され、先行技術文献中に見出される教示であって、当業者が先行技術文献を改変(modify)して審査対象の発明に到達することを妨げる(prevent又はdiscourage)ような教示のことを意味します。

例えば、審査の対象となっている発明Xが、主成分(a)と補助成分(b)とからなる医薬品に関するものであり、この発明Xが、成分(a)を開示する先行技術文献Yと成分(b)を開示する先行技術文献Zとの組み合わせにより容易と認定された場合を想定します。この場合に、例えば、文献Yと文献Zのいずれかに成分(a)と成分(b)を組み合わせると毒性を発揮するというようなことを示唆する記載があれば、「阻害要因」があったと認められ、進歩性(非自明性)が認められることになります。

(C)予想外の優れた効果

効果の立証:

上記したような発明Xの場合に、阻害要因はないとしても、成分(a)と成分(b)とを組み合わせることによって特段のメリットが得られることが教示も示唆もされていなかった場合、成分Aと成分Bとの組み合わせによって、非常に優れた効果が得られるということを明細書の実施例・比較例に参照して説明する、若しくは追加実験によって証明することによって進歩性(非自明性)を立証することが出来ます。

米国における宣誓供述書:

米国であれば、上記のような追加実験を37 C.F.R. § 1.132に基づく宣誓書(affidavit)又は宣言書(declaration)(以下、纏めて「宣誓供述書」)として提出します。また、上記したように出願明細書に記載されている実施例のデータに基づいて非自明性を主張するような場合においても、実施例のデータに基づく考察(observation)を宣誓供述書の形として提出することが有効です。即ち、明細書に既に記載されている事項であっても、署名者が内容の信憑性に関して宣誓した宣誓供述書の形式で提出すれば、単に意見書中で実施例に参照して議論する場合と異なり、学術論文などの公知文献や専門家の見解書と同等の証拠として扱われます。

宣誓者は、発明者本人であってもそれ以外の第三者であってもよく、発明者本人による宣誓供述書であっても審査官はこれを軽んじてはならない旨がMPEP(MPEP§716.01(c)III)に規定されていますが、通常、やはり第三者によるものの方が説得力が高いと見なされます。

37 C.F.R. § 1.132の宣誓供述書で証明が可能な事項について、MPEP §716.01(a)は、以下のような事項を例示しております:

(1)発明を構成するパラメーターなどの臨界性(criticality)

(2)発明による予想外の効果(unexpected results)

(3)商業的成功(commercial success)

(4)長きに亘り未解決であった課題(long-felt but unsolved needs)

(5)他者による失敗(failure of others)

(6)専門家により提示された疑念(skepticism of experts)(「こんな発明がうまくいくはずない」というようなことを示唆する専門家の見解)

37 C.F.R. § 1.132の宣誓供述書の詳細については、以下をご参考下さい:
MPEP §716.01(a)MPEP§716.01(c)

また、宣誓供述書については、こちら にもより具体的な説明と、弊所で作成した宣誓供述書のサンプルを幾つか掲載しておりますので、参考までにご覧下さい。

実験報告書についての注意点:

(i)実施例の後出し:

上記の効果が出願当時の明細書に全く教示も示唆もされていない効果について、出願後に追加実験において初めてその効果を主張するようことは、日本を含む多くの国(米国を除く)では認められません。そのような主張を認めてしまうと、実際には出願当時には有用性が確認されていないかった発明について、特許を認めてしまうことになるからです。

尚、平成21年(行ケ)第10238号審決取消請求事件の知財高裁判決(日焼け止め剤組成物事件)が、実施例の後出しが認められた判決として良く話題に上りますが、出願当時の明細書に何ら教示も示唆もされていない効果について、出願後に実験証明しても認められると判示している訳ではありません。この件では、出願後に出願人が実験証明した効果について、出願当時の明細書に明記はされていないが、明細書の記載から読み取ることは出来るという判断で認められたものです。

この件は、効果が出願当時の明細書から読み取れるかグレーなところはありますが、明細書に全く示唆もされていない効果について実施例の後出しを許可するということを判示しているわけで無いということに注意が必要です。

一方、米国の場合には、明細書に教示も示唆もされていない効果について実験データの後出しが認められています(In re Chu, 66 F.3d 292, 299, 36 USPQ2d 1089, 1094-95 (Fed. Cir. 1995)、MPEP 2145)。これは、審査官からどのような拒絶理由を受けるか予見することは出来ないのであるから、出願明細書に記載がない効果についても、拒絶に対して、そのような効果について主張することは許されるべきという考え方に基づくようです。

そのような議論や実験データを提出する場合には、37 C.F.R. § 1.132に基づく宣誓供述書の形式で提出しないと考慮されない可能性が高いです。

(ii)実験内容の適性:

特に外国出願に対する拒絶の対応において、実験報告書の原案を発明者が作成し、それを実質的にそのまま翻訳して提出してしまうということが実務上よく行われています。そして発明者の方は、技術のプロではありますが特許のプロではないために的を得ない内容の宣誓供述書になってしまっているというケースを目にすることがあります。

その場合、いかに審査官が供述内容を真摯に検討しようとも、拒絶の撤回の根拠とはならないという状況に陥ってしまいます。

宣誓供述書の内容については、案件を良く理解した代理人と綿密に相談して上で決定することをお勧め致します。

タグ:

特許  米国  出願  クレーム  発明  日本  補正  新規性  記載  提出  必要  進歩性  明細書  上記  以下  翻訳  審査  効果  拒絶  先行技術  判断  可能  弊所  英語  宣誓供述書  出願人  比較  パラメータ  審査官  主張  開示  データ  作成  実施例  対象  an  範囲  対応  説明  可能性  成分  請求  メリット  出来  検討  外国  規定  外国出願  通常  考慮  理由  具体的  存在  特徴  明確  実際  拒絶理由  阻害要因  後知恵  米国出願  発明者  公知  先行技術文献  EP  文献  at  意見書  見解書  技術  第三者  追加  容易  特許性  当業者  拒絶理由通知  非常  意味  宣誓書  事件  注意  10  実験  実施  権利化  証拠  内容  理解  非自明性  有効  出願明細書  結果  サンプル  権利  office  判決  MPEP  通知  状況  定義  許可  詳細  根拠  declaration  形式  複数  実質的  否定  www  課題  決定  参照  代理人  出願後  II  平成  other  参考  自明性  証明  以外  ケース  自明  案件  手段  we  documents  意図  指摘  立証  Fed  議論  事項  III  results  確認  提示  知財  宣言書  構成  見解  but  放棄  解決  覧下  誤解  医薬  組成物  示唆  困難  専門家  go  部分  実務  範囲内  原因  比較例  医薬品  so  印象  ex  Cir  明記  認定  even  re  each  今回  Q2  2d  参考下  供述内容  署名  明細書中  教示  禁反言  予想外  判示  affidavit  uspto  注意点  意見  到達  困難性  htm  long  公知文献  成功  撤回  後出  need  要因  USPQ2d  許容  ii  典型的  開示内容  審決取消請求事件  エストッペル  宣誓  他者  do  同等  見出  取消  慎重  宣誓者  index  プロ  inoue  ep  実務上  考察  予想  21  相談  102  代表的  説得力  話題  本人  商業的成功  掲載  パラメーター  teach  発揮  供述書  document  事由  away  3d  USPQ  her  進歩  per  想定  阻害事由  非自明  result  gov  剤組成物事件  範囲外  日焼  success  未解決  代理  10238  有用  インタビュー  web  宣誓供述  論文  阻害  ratio  mpep  裁判  代表  組成  Success  薬品  スムーズ  追加実験  許容範囲内  権利主張  unexpected  sight  審決  報告  実験証明  有用性  実験報告書  商業的  出願当時  teaching  hind  当時  改変  新規  電話  面談  排除  02  予見  真意  真摯  原案  先行  発明者本人  前回  例示  何故  明細  誤認  説得  臨界性  needs  offices  mm  critical  ed  Commercial  solved  way 

出願時に公開されていなかった先願に対する新規性(拡大先願、準公知等)と進歩性(非自明性)

本稿では、出願時に未公開であった先願(Secret Prior Art)に関する主要国(日本、米国、欧州、中国、韓国)における取り扱いを比較します。

先願主義を採用している国においては、特許は早い者勝ちですので、他人が同じ発明を開示した出願を先に提出していれば、それが自分の出願時に公開されていなくても、後から提出された出願は、特許を認められません。

特許法に従うと、「新規性」はあくまで出願時に公知であったかという観点から判断されますので、出願時に公知でなかった先願に対する後願の「新規性」自体は否定されないということになるのですが、特に外国においては、Secret Prior Art(出願時未公開先願)に対するNovelty(新規性)というような表現で議論されることが多いため、本稿においては、便宜上、「出願時未公開先願に対する新規性」というような表現を使用することとします。

一方、殆どの国においては、そのような出願時未公開先願(Secret Prior Art)に対する進歩性までは要求されません。

この進歩性不要の点については、主要国における唯一の例外は米国であり、Secret Prior Artに対しても進歩性(非自明性)が要求されます。米国は、2013年3月16日をもって先願主義に移行しますが、現時点で分かる範囲では、この点に変更は無いようです。

おおまかには以上の通りですが、国によって、先願と後願の発明者・出願人が同一であった場合や新規性(発明の同一性)の判断基準に相違が有りますので、以下に具体的に検証します。

[I] 拡大先願とその例外

(II-1)日本において:

後願と同一の発明が、出願時未公開先願(Secret Prior Art)の請求の範囲・明細書・図面の何れかに記載されていれば新規性を認められません。この様な出願時未公開先願に関する規定は、日本では、一般に「準公知」や「拡大された先願の地位(拡大先願)」(特許法29条の2)と称されます。また、所謂「二重特許」を禁止するため、先願と後願の請求項の比較に基づく新規性の判断が、特許法39条(先後願)に規定されています。

以下の説明においては、特許法29条の2の規定(拡大先願)と特許法39条の規定(先後願)を特に区別することなく、出願時未公開先願がどの様に扱われるかについて述べます。また、実際には、先願が公開されるか否か、また放棄や取下げなどされているかによっても状況が変るのですが、その点まで考慮すると話が複雑になってしまいます。そこで、多くの場合に問題になるのは、他人の公開公報に自己の発明と同一または類似の発明が開示されていることを発見した場合や、自らの先願の発明と類似の発明に関する出願を検討しているような場合であると思いますので、ここでは、先願は公開され且つ有効に維持されているという前提で話をします。

先願と後願の発明の同一性
特許法29条の2や特許法39条によれば、後願の請求項に記載された発明と先願で開示された発明(先願の請求項、明細書、図面などに開示された発明)に相違がある場合であっても、それが課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)である場合は同一とみなされます(実質同一)。

これと対照的なのが、欧州であり、先願発明と後願発明に相違が有った場合、それが効果の違いに結び付かない周知技術の付加に過ぎないようなものであっても、新規性が認められます。この点については、後述致します。

先願と後願の発明者・出願人が同一の場合の例外規定
日本においては、出願時未公開先願と後願の発明者・出願人が同一であったか否かにより、事情が異なってきます。ここで「発明者・出願人が同一」とは、先後の出願の間で、発明者が全員同一(完全同一と称されます)か、出願人が全員同一(完全同一)である場合を指します。

(1)先願と後願の出願人・発明者が異なる場合(第三者による先願に対する新規性):
後願発明が、先願の明細書全体から読み取れなければ、後願の新規性が認められる。

要するに、後願の新規性が認められる為には、後願の請求項に記載された発明が、先願の請求の範囲・明細書・図面の何にも開示されていないことが必要です。

(2)先願と後願の出願人・発明者が同一の場合(自分、自社の先願に対する新規性):
後願のクレームに記載された発明が、先願のクレームに記載された発明と同一で無ければ新規性が認められる。

要するに、先願も自分又は自社によるものである場合には、後願の請求の範囲に記載された発明が、先願の明細書や図面からは読み取れるものであっても、先願の請求の範囲に記載されていなければ新規性が認められることになります。

後願の請求の範囲に記載された発明が、先願の請求の範囲に記載された発明と同一か否かは、発明の構成が同一かどうかにより判断されます。何らかの違いが有ったとしても、実質的な差異とは見なされない場合があります。具体的には、後願の請求項に記載された発明と先願の請求項に記載されていた発明との間に相違があっても、以下のような場合には、先願発明と後願発明は同一と見なされます。

-  後願の発明が、先願の発明に対して、単に周知・慣用技術を不加、削除、転換等をしただけで、新たな効果を奏するものでない場合

-  後願が先願より広い範囲を請求している(先願発明が下位概念であって、後願発明が上位概念である)場合

-  後願発明が、先願発明に対して単なるカテゴリー表現上の差異しかない場合(例えば、先願と後願の一方が物の発明で、もう一方が方法の発明)

(II-2)日本以外の主要国との比較:

米国、欧州、中国及び韓国においても、拡大先願により新規性が否定されます。

一方、拡大先願の地位の適用例外規定(即ち、出願時未公開であった先願に対する後願の新規性を判断する際に、先願の図面を含む明細書全体の開示ではなく、先願のクレームとの比較とする規定)を設けているのは、日本以外では韓国だけです。

米国: -- ターミナルディスクレイマー(terminal disclaimer)の制度有り --

日本における拡大先願の地位の適用例外規定とは異なりますが、米国には、ターミナルディスクレイマー(terminal disclaimer)の提出という手続きがあります。

即ち、米国においては、先願と後願が同一の発明者又は譲受人によるもので、先願と後願のクレームが同じでないにしても特許的に区別できない(not patentably distinct)と判断された場合(後願の発明が先願のクレームには記載されていないが、先願の明細書や図面から読み取ることができるような場合を含む)には、自明型二重特許(obviousness-type double patenting)の拒絶を受け、それに対してターミナルディスクレイマーを提出することによって、先に特許期間が満了するように、後願の特許期間を一部放棄することにより、先願と後願に基づく特許を共存させることが出来ます。

日本おける拡大先願の地位の適用例外規定と米国のターミナルディスクレイマー制度の違いとしては、後願の存続期間の点に加えて、米国におけるターミナルディスクレイマーは、あくまで先願特許と後願特許の発明者または譲受人が同一である限りにおいて有効な制度だということがあります。例えば、ターミナルディスクレイマーによって拒絶を克服して特許を受けた後に、先願特許と後願特許のどちらか一方だけが他人に譲渡された場合には、後願特許は権利行使不能(unenforceable)になってします。これに対して、日本では、特許後に、譲渡などによって先願特許と後願特許の権利者が異なることになったとしても、それにより特許が無効になったり、権利が制限されるというようなことはありません。

また、米国においては、同一の発明者又は譲受人による先願と後願のクレームが同一と判断された場合には、同一発明型(same invention type)二重特許の拒絶を受けます。この場合、Terminal Disclaimerによって拒絶を解消することはできず、クレームの削除や補正によりクレームを明確に差別化することが必要になります。

欧州: -- 拡大先願の例外は無いが、日本より新規性の拒絶を受けにくい --

EPC54条(3)によれば、先願と後願の発明者・出願人が同一であるか否かに関わらず、拡大先願が適用されます。即ち、先願と後願の発明者・出願人が同一であっても、後願の発明が、先願の明細書や図面などに開示されていれば、後願は先願に対して新規性無しと見なされます。このように自分、自社の先願の開示内容により、後願が拒絶されてしまうことを自己衝突(self collision、セルフコリジョン)と称します。

但し、後述しますように、日本特許庁(JPO)の新規性判断基準は、欧州特許庁(EPO)のそれよりも厳しいものとなっておりますので、JPOには新規性を否定されるような状況でも、EPOには新規性を認められるというケースもあり得ます。

具体的には、EPOの新規性判断基準は厳しく、"Photographic Novelty"と称されることがあります。"Photographic Novelty"とは、厳密な意味での新規性が求められることを意味します。より具体的には、欧州では、先願に対する後願の新規性が否定されるのは、後願の発明が、先願において一義的に読み取れるよう開示されている場合であって、僅かな相違であっても、それが先願の明細書から直接且つ明確に推論出来るようなもので無い場合、新規性は認められます。先願と後願の違いが、周知の均等物による置換などであっても、明示的な違いが有れば、それは新規性ではなく、進歩性の問題とされます。

一方、日本の新規性判断基準は、欧州の"Photographic Novelty"に対比して"Enlarged Novelty"(拡大先願に関連しては、上記のように「実質同一」)と称され、先願と後願に違いが有っても、その相違が実質的なものでないと判断されると新規性は否定されます。

要するに日本であれば、先願の公開前に、効果の違いに結び付かないような些細な変更点を先願発明に加えて出願したような場合、このような後願の先願に対する新規性は否定されますが、欧州においては、このような場合でも後願の新規性が認められる可能性があるということになります。

尚、欧州では、先後の出願の間で指定国が異なっていれば、拡大先願の適用がありませんでしたが、EPC2000(2007年12月13日施行)により、このような制限は撤廃されました。

中国: -- 拡大先願の例外は無く、且つ新規性の判断基準も厳しい --

専利法第22条第2項では、発明者や出願人が同一であっても、後願の出願後に公開される先願により拒絶されることが規定されています。即ち、中国も、欧州と同様に、発明者・出願人が場合の例外規定が有りません。

そのため、類似した発明について複数の出願を前後して提出する際には、自社の出願同士がセルフコリジョン(自己衝突)しないように注意する必要があります。なお、中国では、このようなセルフコリジョン(自己衝突)を起こすような特許出願を「抵触出願」と呼び、後願は新規性無しとして拒絶されることになっています。

新規性の判断基準については、中国審査基準(専利審査指南)によれば、日本に近い基準を採用しています。要するに、日本と同様に"Enlarged Novelty"(「実質同一」)により判断され、例えば先願と後願の相違点が慣用手段による置換に過ぎないと認められれば、後願の新規性は認められません(専利審査指南、第二部分、第三章)。

従って、中国では、日本等と同様に新規性の審査が厳しく(先願と後願が実質的に同一であれば、後願は新規性無し)且つ欧州等と同様に同一の発明者・出願人であっても拡大先願適用の例外が無い(後願発明が、先願でクレームされていなくても明細書や図面に記載されていれば、後願は新規性無し)ということになり、主要国では、中国が、拡大先願の適用が最も厳しいということになります。

韓国: -- 日本とほぼ同様 --

日本と同様に拡大先願の規定があり、また発明者・出願人が同一の場合には、日本と同様に拡大先願の適用はありません(韓国特許法29条3項)。要するに、先願と後願の発明者・出願人が同一の場合、先願と後願のクレーム同士を比較して、後願クレームの発明が先願クレームに記載されていなければ新規性が認められ、欧州や中国におけるような自己衝突(セルフコリジョン)にはなりません。

日本、米国、欧州、中国及び韓国における拡大先願地位の適用例外規定について纏めました。

国名 拡大先願地位の適用例外
日本 同一発明者又は同一出願人の場合:
先願の請求項に記載されていなければ新規性有り。
米国 同一発明者又は同一譲受人の場合:
先願の請求項に記載されていなければ、ターミナルディスクレーマーを提出して、後願の存続期間を一部放棄して、先願に合せることによって特許が認められる。
欧州 無し(但し、新規性の判断はPhotographic Novelty。先願に明示的開示が無ければ新規性は認められる。)
中国 無し
韓国 同一発明者又は同一出願人の場合:
先願の請求項に記載されていなければ新規性有り。

[II] 出願時未公開先願(Secret Prior Art)に対する進歩性

殆どの国においては、出願時未公開先願(Secret Prior Art)に対する進歩性までは要求されませんが、米国においては、Secret Prior Artに対しても進歩性(非自明性)が要求されることがあります。

即ち、米国においては、上記したように先願と後願が同一の発明者又は譲受人によるものであった場合には、後願発明が先願発明から自明であっても、ターミナルディスクレイマーの提出によって先願と後願に基づく特許を共存させることが可能ですが、先願と後願が同一の発明者又は譲受人が異なる場合には、後願発明は先願発明から自明でないことが要求されます(米国特許法第103条(c))。

これに対し、日本(特許法第29条第2項)、欧州(EPC第56条)、中国(専利法第22条第3項)及び韓国(特許法第29条第2項)においては、出願時に未公開であった先願(Secret Prior Art)はあくまで新規性の判断に利用されるだけであり、進歩性の判断には利用されません。

国名 出願時に未公開であった先願に対する進歩性(非自明性)
日本 不要
米国 必要(ただし、同一発明者・同一譲渡人の場合はTerminal Disclaimerの提出で対応可)
欧州 不要
中国 不要
韓国 不要

タグ:

特許  米国  中国  出願  クレーム  発明  日本  欧州  補正  新規性  記載  提出  必要  EPO  進歩性  明細書  米国特許  韓国  上記  以下  審査  効果  拒絶  or  patent  先願  判断  可能  請求項  EPC  例外  手続  出願人  移行  特許出願  欧州特許  比較  利用  開示  適用  要求  方法  an  範囲  対応  説明  可能性  請求  拡大先願  制度  出来  検討  制限  特許庁  外国  not  指定国  規定  同様  公開  変更  考慮  具体的  出願時  問題  claim  明確  実際  使用  後願  AIA  無効  同一  期間  発明者  公知  EP  先願主義  at  技術  第三者  意味  基準  rce  特許法  採用  invention  注意  指定  内容  審査基準  非自明性  有効  例外規定  権利  不要  観点  EP  自己衝突  状況  欧州特許庁  拡大  図面  表現  複数  関連  実質的  否定  日本特許庁  課題  権利行使  施行  出願後  II  以上  削除  terminal  disclaimer  自明性  判断基準  所謂  以外  ケース  自明  手段  EPO  under  維持  29  議論  構成  準公知  放棄  解決  相違  先後願  ターミナルディスクレーマー  Act  類似  same  地位  Invents  America  取下  他人  JPO  明示的  部分  Art  米国特許法  Prior  obviousness  セルフコリジョン  type  Terminal  Novelty  一部  ex  Disclaimer  発見  上位概念  re  特許法第  新規性判断  large  公開前  直接  同一出願人  自分  置換  一般  完全  前提  主要国  未公開  EPC  二重特許  Secret  克服  出願時未公開先願  周知  事情  実質同一  解消  double  開示内容  新規性判断基準  譲受人  ターミナルディスクレイマー  相違点  区別  条第  do  下位概念  韓国特許  カテゴリー  禁止  ディスクレーマー  ターミナルディスクレーマ  複雑  後願特許  後願発明  米国特許法第  主要  存続期間  韓国特許法  Photographic  譲渡  周知技術  明示  推論  先願発明  distinct  自体  全体  出願時未公開  特許後  専利審査指南  検証  同一性  付加  均等物  行使  patenting  日本特許  進歩  権利行使不能  撤廃  am  日本以外  先願特許  新規性無  自社  抵触出願  ターミナル  自明型二重特許  term  厳密  非自明  満了  後述  order  patentably  中国及  唯一  unenforceable  差異  第二部分  適用例外規定  ratio  obvious  adding  表現上  本稿  課題解決  特許的  特許期間  発明者又  全員  一義的  公開公報  共存  cells  上位  主義  39  EPC2000  Enlarged  able  譲渡人  同一発明  同一発明者又  対照的  専利法第  専利法  対比  self  権利者  完全同一  明細書全体  変更点  後述致  新規  転換等  新規性有  慣用手段  慣用技術  JP  差別化  EPC54  専利  拡大先願地位  二重  些細  全員同一  公報  先後  前後  便宜上  明細  国名  日施行  日本等  同一発明型  概念  一部放棄  自明型  force  ed  disclaim  invent  collision 

選択発明(selection invention)について

1.「選択発明」の定義と特許性判断

「選択発明」には、主に「化合物の選択」と「数値範囲の選択」に関する発明があります。

「化合物の選択」は、例えば先行技術において広く定義されていた化合物の中から特定の種を選択してクレームするような場合のことであり、具体例としては、先行技術文献においてある薬品の成分として単にアルコールを使用すると記載されていたところ、特定の炭素数のアルコールを用いると顕著な効果を奏することを見出して、その特定の炭素数のアルコールに限定してクレームするような場合です。

「数値範囲の選択」は、例えば組成物を構成する成分の量に関して先行技術に開示されていた広い数値範囲の中から限定された数値範囲を選択してクレームするような場合のことであり、具体例としては、ある成分の量に関して、先行技術文献において"1~100重量%"としか記載されていなかったところ、30~33重量%というような狭い範囲内にすることで顕著は効果を奏することを見出して、その狭い成分量に限定してクレームするような場合です。

日本の審査基準においては選択発明について次のように記載されています。

「物の構造に基づく効果の予測が困難な技術分野に属する発明で、刊行物において上位概念で表現された発明又は事実上若しくは形式上の選択肢で表現された発明から、その上位概念に包含される下位概念で表現された発明又は当該選択肢の一部を発明を特定するための事項と仮定したときの発明を選択したものであって、前者の発明により新規性が否定されない発明をいう。」(審査基準第Ⅱ部第2章 2.5(3)III)

また、欧州においては、以前から、選択発明の新規性判断の基準として以下の要件を満たすことが要求されていました:
(1)選択された範囲が狭いこと、
(2)従来の範囲から十分に離れていること、
(3)選択された範囲に発明としての効果が有ること(審決T279/89)。

しかし、この効果に関する要件(3)は、新規性ではなく進歩性に関する要求であるという批判が以前からあり、2010年の審決 T230/07においては、効果に関する要件(3)は新規性判断からは除き、進歩性の要件とすると判示されました。

勿論、通常は、いずれにしても新規性のみならず進歩性も有さないと特許は認められませんが、効果に関する要件(3)が新規性判断の基準から除かれると、出願時未公開の先願(先に出願されたが、後願の出願時に公開になっていなかったもの)が引用された場合に大きな影響が有ります。即ち、日本を含む多くの国において、出願時未公開の先願の場合には、これに対して新規性さえあれば進歩性が無くても特許が認められることになっていますが、選択発明の場合に上記(3)も新規性判断の基準に含まれていると、出願時未公開の先願に対しても進歩性が求められることになってしまいます。効果に関する要件(3)が新規性判断基準から除かれれば、他の発明の場合と同様に、出願時未公開の先願に対しては、新規性さえ有していれば、先願に対して効果が無くとも(進歩性が無くとも)特許性を認められることになります。

これは一見尤もであるように見えますが、少々矛盾を含んでいるようにも思います。実際には、選択発明という物は、本来は従来技術に含まれているという観点からは新規性は無いとも解釈でき、選択した範囲が狭く且つ顕著な効果が有る場合に限り認められるものですから、選択発明に関しては、常に新規性と進歩性を分けて考えるべきではないという考え方も成り立ちます。実際にEPOがこれまで採用していた上記の(1)~(3)からなる基準もそのような考え方に基づくものであると思います。

この問題については、EPOの拡大審判部で取り上げられる可能性が有ります。

米国においては、選択発明に関して格別審査基準は設けられておりませんが、弊所の経験から判断しますと、EPOにおいて採用されていた上記(1)~(3)からなる判断基準を満たせば特許性は認められると思います。

2.選択発明の新規性・進歩性に関する注意事項

選択した狭い範囲に含まれる実施例が先行技術に無いこと、そして選択した狭い範囲の優位性について先行技術に教示も示唆もされていないことが重要です。

例えば、ある成分の量に関して、先行技術文献において範囲は"1~100重量%"としか記載されていなかったが、実施例において30重量%が記載されていたような場合、30~32重量%というような狭い範囲を選択しても、新規性が認められません。例え、その先行技術に効果が示唆されていなかったとしても、単なる公知物質に関する「効果の追認」であると見なされて新規性は認められません。

また、上記の例の場合(先行技術文献に"1~100重量%"と記載が有り、"30~32重量%"を選択した場合)、選択した狭い範囲"30~32重量%"と重複する狭い範囲(例えば、"25~33重量%"や"25~31重量%"など)が先行技術において好ましいと記載されていると、仮に新規性は認められても、この先行技術文献単独から自明(進歩性無し)と判断される可能性が高いです。

3.効果の証明

効果の立証においては、当然、選択した範囲において、その範囲外であった場合と比較して顕著な効果が有ることを示すことになります。

場合にもよりますが、通常は、幾つか代表的な態様を選択して実験データを提出すれば十分と考えられています。例えば、数値範囲の選択発明の場合、以下のような比較データを持って効果を証明することが考えられます。

実施例: 選択した範囲内の代表例のデータ(好ましくは選択した範囲の上限と下限付近のデータを含む)

比較例: 選択した範囲外で、上限及び下限付近のデータ及び/又は先行技術文献の実施例の中で該選択した範囲に一番近い態様のデータ

また、主張する効果が、発明の属する技術分野においてよく知られた特性に関するものであるか否かも重要になってきます。

例えば、その技術分野で公知の特性に関する効果であれば、選択した範囲において、突出した効果が要求されることが多い筈です。

逆に特定技術分野で公知でない特性に関する効果であれば、選択した範囲外の場合と比較して、それ程大きな効果の違いがなくても、進歩性が認められる場合が有ります。

4.選択発明を認めていない国

日本、米国、欧州、中国、韓国など殆どの主要な国において、以前から選択発明は認められていますが、ドイツでは原則的に選択発明が認められておりませんでした。

一方で、欧州特許庁(EPO)は、上記の通り、選択発明を認めております。従って、選択発明に関してEPOから特許査定を受けて、ドイツで登録したような場合に、ドイツでは無効訴訟を提起されて無効になってしまうことが実際に発生し、以前から問題視されていました。

これに関連して、2008年12月のオランザピン(Olanzapine)事件の最高裁判決において、ドイツ最高裁が、EPOの判例との整合性を指摘しながら、選択発明の特許性を認めたことが話題になりました。

しかし、こちらのAIPPIの資料にありますように、元々ドイツには「選択発明」という概念がなく、それに関する明確な審査基準も存在しません。そして、オランザピン(Olanzapine)判決は、所謂「選択発明」全般に関して欧州の審査基準と適合させるという意図を明らかにしたものではありません。むしろ、このオランザピン判決のみからは、欧州などで言うとことの「選択発明」に相当する特定の件に関して、それと類似した状況の特定のEPOの判例と同様の判断をしたということしか言えないと思います。

特に注意すべきであるのは、オランザピン事件は、「化合物の選択発明」に関するものであるということです。

今後、ドイツが、欧州と同様の審査基準を採用する可能性は在りますが、ドイツにおける選択発明の特許性判断に関して、現時点で言えることは:
(i) 新規性: 化合物の選択発明の新規性判断は、EPOによる判断と同様になる可能性が高いが、数値範囲の選択発明の新規性については、従来通り新規性が認められないのか、こちらもEPOの判断に合わせるのかが不明、
(ii) 進歩性: 新規性が認められれば、進歩性審査の基準は欧州と実質的に同じ、
ということであると思います。

上記(i)のドイツにおける「選択発明」の新規性が認められるための要件について、代表的な判例などに参照しながら以下に検証したいと思います。

ドイツにおける「選択発明」の新規性判断と特許明細書の開示内容の解釈:

ドイツでは選択発明が認められないと一般的に考えられてきたのは、少なくとも数値範囲に関しては、原則的に明細書に上位概念が開示されていれば、下位概念も(これが明示的に記載されていなくても)開示されていると見なすという考え方が根底にあったからです。これは、先行技術の開示内容の判断のみならず、補正の要件やクレームのサポート要件にも適用されております。

ドイツにおける数値範囲の選択発明の扱い: 

例えば、ドイツでの選択発明の特許性の審査においては、もしも先行文献に「分子量500~2,000,000」の化合物が記載されている場合は、その先行文献は「分子量500~2,000,000」の範囲内の数値をすべて個別に開示していると見なされ、この炭素数の範囲をさらに限定しただけの選択発明(たとえば、「分子量15,000~290,000」)は新規性が認められませんでした。これは、「数値範囲」に関する選択発明に関する代表的な判例として知られているFederal Supreme Court, 07.12.1999, GRUR 2000, 591, 593-594 - Inkrustierungsinhibitorenにおける判示です。

そして、自らの出願を補正する際に、出願明細書やクレームに、例えば「分子量500~2,000,000」とだけ記載してある場合(つまりさらに狭い範囲が記載されていない場合)でも、「分子量500~2,000,000」の範囲内の数値をすべて個別に開示していると見なされ、この範囲内のどのような数値範囲にでもクレームを限定することが許されます。

ドイツにおける化合物の選択発明の扱い:

代表的な判例として、”Fluoran” 判決(GRUR 1988, 447)及び“Elektrische Steckverbindung”判決(GRUR 1995, 330)がありますが、いずれのケースにおいても、先行技術に開示された一般式に含まれるが明示的(explicitly)に記載されていなかった化合物に関する選択発明の新規性が否定されました。

しかし、”Fluoran” 判決(GRUR 1988, 447)においては、上記の数値範囲の選択発明の場合と異なり、先行技術に一般式が開示されていることのみをもって、その一般式に含まれる全ての化合物がこの先行技術文献に開示されているとはみなさないとされています。要するに、化合物の場合には、上位概念が開示されていれば、直ちに下位概念も開示されているとはみなさないと判示されていました。

更に、これらの判例においては、以下の場合に、化合物の選択発明の新規性が認められる可能性を示唆しております。

選択された化合物に関して:

(a) 先行技術の開示のみからでは製造が困難: 先行技術文献に開示された情報に基づいて、選択発明に関する出願当時に、選択された化合物を当業者が困難無く製造できない場合[”Fluoran” 判決(GRUR 1988, 447)]、

(b) 先行技術に潜在的な(implicit)開示もない: 当業者が、先行技術文献の開示内容から、選択された化合物を読み取ることが出来ない[“Elektrische Steckverbindung”判決(GRUR 1995, 330)]。

しかし、2008年12月のオランザピン判決においては、上記(a)「先行技術の開示のみからでは製造が困難」を新規性判断の基準とすることを否定しました。これにより、化合物の選択発明の新規性の判断基準は、EPOの判断基準と実質的に同様になったと考えられます。

要するに、少なくとも化合物の選択発明の新規性判断に関しては、 - オランザピン最高裁判決以前からドイツとEPOは基本的に同じ方向を向いていたが、ドイツの基準の方が相当に厳しかったところ、オランザピン最高裁判決において、これを緩和し、EPOの基準に合わせた - と解釈できると思います。

一方、上記の通り、数値範囲の選択発明に関しては、ドイツとEPOの考え方は全く逆です。ドイツにおいて「上位概念が開示されていれば、下位概念も(これが明示的に記載されていなくても)開示されていると見なす」とう考え方を破棄してEPOに合わせるのか、現在のところ定かではありません。

上記オランザピン事件においては、(b)「先行技術に潜在的な(implicit)開示もない」であれば新規性が認められるということになったわけですが、一般式で表される化合物の場合、そこに含まれる化合物であっても、置換基が異なれば、合成方法や特性等の点で全く別の物質になると考える(従って、一般式の記載のみから、そこに含まれる特定の化合物までも潜在的に開示されているとは考えない)ことが合理的であるケースは多いと思います。

一方で、先行技術が開示する連続的な数値範囲から、特定の狭い範囲が潜在的にも開示されていないと言えるのかということになると話は別であるように思われます。

例えば、ある混合物の組成に関して、先行技術にある成分の量が1~95wt%とのみ記載されていて、この範囲から45~50wt%を選択したような場合、EPOの審査基準では、とりあえず範囲が十分に狭ければ新規性は認めるという立場であります。一方、ドイツにはこのような基準は無く、オランザピン判決に従うと、潜在的にも開示されていなければ新規性を認めるということになると思いますが、上記のような1~95wt%という連続した数値範囲から45~50wt%という狭い範囲を選択した場合に、潜在的にも開示されていなかったとみなされるのかという疑問があります。

「上位概念が開示されていれば、下位概念も(これが明示的に記載されていなくても)開示されていると見なす」という考え自体が完全にキャンセルされるのおあれば、補正に関するプラクティスも大きく変わるはずです。

いずれにしても、この問題に関するドイツ連邦特許裁判所や連邦最高裁判所の更なる判断を待つしかないようです。

タグ:

特許  米国  中国  出願  クレーム  発明  日本  欧州  補正  新規性  記載  提出  EPO  進歩性  明細書  韓国  上記  以下  審査  効果  or  先行技術  先願  判断  可能  弊所  欧州特許  比較  主張  開示  適用  データ  実施例  要求  方法  an  範囲  可能性  成分  要件  出来  特許庁  選択  同様  選択発明  公開  通常  情報  存在  出願時  問題  明確  実際  使用  後願  無効  ドイツ  特定  公知  先行技術文献  EP  文献  技術  登録  特許性  引用  当業者  基準  採用  特許査定  事件  注意  重要  実験  実施  十分  以前  内容  審査基準  一般的  出願明細書  判決  観点  現在  状況  サポート  欧州特許庁  定義  化合物  製造  拡大  判例  file  表現  関連  実質的  否定  www  参照  影響  II  分野  限定  技術分野  IP  判断基準  所謂  訴訟  数値範囲  証明  基本的  ケース  自明  pdf  当然  意図  合理的  指摘  顕著  立証  審判部  Fed  原則的  事項  III  従来  構成  相当  組成物  提起  類似  勿論  示唆  困難  明示的  審判  最高裁  経験  範囲内  具体例  態様  比較例  一部  ex  時点  上位概念  re  分子量  特許明細書  新規性判断  上限  プラクティス  重量  置換  一般  教示  完全  公知物質  判示  未公開  現時点  オランザピン  注意事項  該当  最高裁判決  数値  予測  ii  開示内容  従来技術  新規性判断基準  下限  無効訴訟  不明  個別  解釈  見出  裁判所  下位概念  資料  潜在的  刊行物  inoue  ep  代表的  矛盾  一見  主要  話題  発生  明示  set  格別  原則  掲載  一般式  先行文献  自体  出願時未公開  選択肢  GRUR  検証  特性  方向  Court  重複  進歩  特許性判断  緩和  疑問  範囲外  本来  仮定  問題視  今後  審査基準第  単独  判決以前  拡大審判部  裁判  Supreme  構造  物質  27  代表  優位性  組成  上位  Fluoran  Federal  50wt  薬品  適合  アルコール  査定  審決  up  最高裁判所  出願当時  implicit  分子  炭素数  従来通  当時  部第  追認  新規  整合性  包含  程大  下限付近  立場  全般  先行  混合物  明細  キャンセル  置換基  概念  根底  Steckverbindung  Olanzapine  ed  explicitly  assets  Elektrische  AIPPI  95wt  sets 


お問い合わせ

Share | rss
ホームページ制作