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井上&アソシエイツにおける対策

弊所は英文特許明細書の質には絶対的な自信が有ります。弊所では、単なる翻訳者は一切使用せずに、高い英語力を有する特許技術者自身が、発明を完全に理解した上で外国特許出願用英文明細書を作成します。

一般の特許事務所の場合、通常、外国特許出願用の明細書は、翻訳者が作成します。翻訳者は、特許や技術に関する知識が十分で無く且つノルマにも追わ れているため、不明確な記載や不正確な記載を含む英文明細書となってしまいがちです。このことが原因となり、英語の明細書から中国語に翻訳する場合に、二 重翻訳となって誤訳が発生する確率が高くなるといわれることもあります。

これに対して、弊所では、例えばPCT出願の中国移行の場合、PCT出願明細書を作成した特許技術者本人が中心となり、外国用英文明細書を作成しま す。この際に発明の内容を完全に理解した特許技術者が英語への変換を行うため、PCT出願時に残ってしまった不明確な記載も、英文では明確にします。尚、 この際、英文は極力平易且つ明瞭であり誤解を招かないものとするよう細心の注意を払います。従って、日本基礎出願 → PCT出願 → 指定国移行と進むにつれ、明細書の質が向上し、外国代理人に送付する英文明細書は高度に洗練されたものとなります。

従って、弊所でPCT出願の中国国内移行を行う場合、通常、上記のようにして作成した英文明細書を中国語に翻訳するよう指示し、PCT和文明細書は 参考程度に使用するように指示致します。そのようなやり方で、中国代理人から内容に関する質問などは殆ど来ませんし、中国特許庁から記載不備の拒絶を受け ることも殆どありません。


弊所が作成した英文明細書の質は、欧米の代理人にも高く評価されており、優れた中国語明細書の作成に大いに貢献できるものと考えております。

米国(4): 情報開示義務(IDS)

米国出願に関して、以前からかなり神経質な管理を要する制度でしたが、米国連邦控訴巡回裁判所(CAFC)大法廷の判決(Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co. (Fed. Cir. 2011) (en banc))において、Inequitable Conduct (不衡平行為もしくは不公正行為)の判断基準が引き上げられて、その立証が困難になり、さらに2011年の法改正(AIA, America Invents Act)により、Inequitable Conduct (不衡平行為)回避の目的で利用できるSupplemental Examination(補足審査又は補充審査)制度(2012年9月16日から施行)が導入されることになっており、関連情報をIDSとして提出しなかったことが不衡平行為と認められて特許が権利行使不能(unenforceable)となる事例は激減すると見込まれています。

しかし、上記のTherasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co.のケースでは、結局、差し戻された地裁において、CAFC大法廷により引き上げられた基準に基づいてもInequitable Conduct (不衡平行為)があったと判決されました。また2012年9月16日から施行される上記のSupplemental Examination(補足審査又は補充審査)制度を利用するためには、本稿の最後で説明致しますが、非常に高額な手数料を米国特許庁に支払う必要があります。そのような事情を考慮すると、基本的にはこれまでの管理体制を変えないことが望ましいと考えられます。以下、具体的に説明いたします。

概要と近年の動向

情報開示義務は、37 CFR 1.56に定められており、これによると、出願人とその関係者は、特許性に関する重要な(material)情報(対応外国出願のサーチレポートにおける先行技術を含む)を公正かつ誠実に提供する義務を有します。この開示義務に違反して特許を取得したと認められた場合は、Inequitable Conduct (不衡平行為若しくは不公正行為)があったとみなされ特許権の行使が出来なくなってしまいます。

米国の特許訴訟において、これまでは情報開示義務違反によるInequitable Conduct (不衡平行為)の訴えは極めてポピュラーな攻撃手段でありました。米国での特許訴訟の実に約8割において、不衡平行為の主張がなされています。

特許の有効・無効の争いであれば、クレームベースですので、あるクレームが無効と判断されても他のクレームが有効であれば権利は残りますが、情報開示義務違反によるInequitable Conduct(不衡平行為)を認められれば、一切の権利行使が不可能になってしまいます。しかも、場合によっては、関連の特許にまで影響を及ぼすこともあります。

従って、これまでは出願人は、かなり神経質に関連の有りそうな文献は全て提出するということを行っていましたが、この不衡平行為による訴訟費用の高騰や手続遅延などが問題視され、上記Therasense事件におけるCAFC大法廷の判決、2011年9月の法改正による補足(補充)審査(Supplemental Examination)制度の導入(2012年9月16日から施行)と、特許訴訟におけるInequitable Conduct(不衡平行為)の主張を抑制する方向の動きが顕著になってきています。

情報開示義務の規定(37 CFR 1.56)

米国においては、特許性に関する重要(material)な情報について、出願に関係する者(発明者、弁護士・弁理士、その他出願手続に関与した者)は公正かつ誠実に提供する義務があります。

提出すべき情報には、対応外国出願のサーチレポートにおける先行技術などが含まれ、そのような情報を、情報開示申告書(Information Disclosure Statement; IDS)として提出します。この開示義務を怠った場合には特許は認められません。

IDSは、登録料(issue fee)支払までであれば提出することができます(37 CFR 1.97(d))。

出願から3ヶ月以内または最初の審査通知(拒絶理由通知又はNotice of Allowance)発行のうち何れか遅い方までであれば、提出料は不要です(37 CFR 1.97(b))。

上記以後は、提出料[$180(37 CFR 1.17(p))]が必要になります。更にこの場合、IDSとして提出する情報は、出願人がそれを知ってから若しくは外国の特許庁に引用されてから3ヶ月以内に提出する必要が有り、その旨を説明する陳述書を提出することが必要です(37 CFR 1.97(e))。3ヶ月を経過しているような場合には、その情報をIDSとして考慮させる為には、継続出願または継続審査要求(RCE)をすることが必要になります。

また、登録料支払い後にIDSを提出する際も、それを考慮させる為には、継続出願または継続審査要求(RCE)をすることが必要になります。(但し、2013年3月23日までの暫定的な試行プログラムとして、登録料支払い後にIDSをUSPTOに考慮させることを可能にするQuick Path Information Disclosure Statement (QPIDS)が実施されています。)

不衡平行為(inequitable conduct)

特許成立後に、情報開示義務違反が認められると、権利行使不能(unenforceable)となってしまいます。

以前は、情報開示義務違反の判断基準には、"sliding scale"と称されるアプローチが採用されていました。これは、情報開示義務違反を有無を、以下の2つの要件のバランスで判断するものです:

(1)開示しなかった情報が特許性に及ぼす重要性、及び

(2)情報隠蔽の意図の存在の明確性

即ち、sliding scaleアプローチにおいては、(1)の重要性が高ければ、(2)の明確性が低くても不衡平行為(inequitable conduct)認められ、逆に(1)の重要性が低くても、(2)の明確性が高ければ、不衡平行為(inequitable conduct)認められるということになっていました。

しかし、米国連邦控訴巡回裁判所(CAFC)大法廷の判決(Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co. (Fed. Cir. 2011) (en banc))において、(1)の重要性と(2)の明確性が共に十分に高いことが立証された場合にのみ不衡平行為があったものと認定すべきと判示されました。

上記(1)の「開示しなかった情報が特許性に及ぼす重要性」については、"But For" Materialityと称される基準に基づいて判定されこととなりました。この基準に従うと、出願人が開示しなかったことが不衡平行為(inequitable conduct)と認められるような先行技術は、もしその先行技術を審査の段階で審査官が知っていたならば、特許許可されなかったであろうと言えるようなものということになります。(但し、出願人側に積極的な悪質不正行為(affirmative egregious misconduct)があったと認められる場合には、"But For" Materiality基準による重要性の立証は不要。)

上記(2)の「情報隠蔽の意図の存在」については「明白且つ説得力のある証拠」(Clear and Convincing Evidence)が要求されます。

以上のようなことから、現在では、不衡平行為(inequitable conduct)の訴えが認められる可能性は相当低くなったと思われます。しかし、上記のTherasense事件のCAFC大法廷からの差し戻し審においては、出願人が、関連のある先行技術の開示内容について、USPTOに対して提出した宣誓書の内容と矛盾した内容の意見書をEPOに提出しながら、このEPOに提出した意見書を、IDSとしてUSPTOに提出しなかったという事実に基づいて、「開示しなかった情報が特許性に及ぼす重要性」及び「情報隠蔽の意図の存在の明確性」の基準を共に満たすとして、不衡平行為の存在が認められてしまいましたので、やはり油断は禁物です。

2012年9月16日から施行されている上記の補充審査(Supplemental Examination)制度は、不衡平行為回避のために導入されるものですが、上記Therasense事件のように、訴訟になってから相手側(被疑侵害人)に初めて指摘された事実に対する補充審査は認められません。補充審査については以下に具体的に説明します。

補充審査(Supplemental Examination)

補充審査制度においては、IDSとして提出し忘れた情報が有っても、その情報を提出しなかったことが情報開示義務違反に当たるかを特許庁に判定してもらい、もし違反に当たるようならば、当該情報に関する再審査を請求できるようになりました。

現行の査定系再審査(ex parte reexamination)も、情報開示義務違反(Inequitable Conduct)回避の目的で利用できます。この査定系再審査は、2011年の法改正後も特に変更なく維持されます。しかし、補充審査(Supplemental Examination)の導入により、Inequitable Conduct回避の機会は広がりました。

査定系再審査(ex parte reexamination)と補充審査(Supplemental Examination)の違いは以下のようになります。

(1)審査段階でIDSとして提出されなかった情報の種類

査定系再審査: 特許文献又はその他の印刷刊行物に限定されていた。

補充審査: 特に制限がなく、例えば、非公開の情報や販売の申し出を示す情報なども含む、情報開示義務違反(Inequitable Conduct)の根拠となり得る全ての情報が審査の対象になる。

(2)当該情報の関連性

査定系再審査: "substantial new question of patentability"(特許性に関する実質的に新たな問題)が提起されることが要求されている。

補充審査: 特に制限なし。補充審査で提示された情報に関して、特許性に関する実質的な新たな問題があると判断された場合には、査定系再審査(ex parte reexamination)への移行を命じられる。

IDSとして提出されなかった情報について補充審査を受け、「特許性に関する実質的に新たな問題」が無いと判断されたか、その後の査定系再審査の結果、特許性が認められれば、後に特許訴訟に発展しても、当該情報をIDSとして提出しなかったことが情報開示義務違反(Inequitable Conduct)と認められることはありません。

尚、補充審査(Supplemental Examination)制度は、2012年9月16日から施行され、出願日・登録日を問わずすべての特許に適用される予定です。但し、権利行使を検討していて、情報開示義務違反(Inequitable Conduct)の恐れがある場合には、警告状の送付や訴訟を提起する前に、補充審査を受けておくことが重要です。補充審査、若しくはその後の査定系再審査の結果に基づく免除権を享受するためには、侵害訴訟を起こす前に、この補充審査が完了していなければなりません。また、Declaratory Judgement Action(確認訴訟:通常、特許権者から侵害者として警告状を受けた者が、非侵害である若しくは特許無効であるとの司法判断を引き出すために提起する)が係属中に、補充審査を請求しても、上記の免除権を享受することはできません。

補充審査の手数料

以上のように、情報開示義務違反(Inequitable Conduct)回避のための新たな手続きとして注目をあつめている補充(補足)審査(Supplemental Examination)制度ですが、2013年1月18日に発表された最終的な施行規則によると、以前よりはかなり値下げされましたが、それでも非常に高額な費用設定となっています。具体的には、補充審査(Supplemental Examination)請求時に米国特許庁に対して支払う必要がある費用は、$16,500 [*内訳: 補充審査(Supplemental Examination)請求 $4,440 + 査定系再審査(ex parte reexamination)請求 $12,100]であり、査定系再審査が不要となった際("substantial new question of patentability"が無いと判断された場合)には、査定系再審査(ex parte reexamination)費用$12,100が払い戻されるということになっています。

従って、気軽に利用できる手続きとは言えませんが、訴訟における不衡平行為(inequitable conduct)の抗弁には多大な手間と費用を要すること、更には権利行使不能となる可能性を考慮すると、有用な手続きであるということには違いありません。

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米国(7): 費用(米国代理人事務所の選別の観点から)

円高により、米国出願関連の経費が安くなったことを実感します。但し、2011年9月の法改正により、米国特許庁に支払う政府料金は、15%値上げされました。この15%というのは、日本からの出願に関する限り、ちょうど近年の円高による差益を帳消しするような値上げ幅です。米国代理人からの請求は、政府料金+米国代理人の手数料ですので、米国代理人からの請求額が総じて15%増しになるわけではありませんが、円高による割安感は若干減じます。

米国出願に際して注意すべきなのは、米国特許事務所によって代理人費用が大きく異なることです。どこの国でもそうですが、米国の場合は特に差が大きいので注意が必要です。一般に米国の特許事務所には、主に出願を扱う「出願系」の特許事務所と主に訴訟を扱う「訴訟系」の特許事務所に大別できます。勿論、「訴訟系」の事務所に出願してもらうこともできますが、「訴訟系」の事務所は総じて費用が高いです。また同じ事務所であっても、担当者によって費用が大きく異なることがあります。

出願時における費用はそれ程でもないと思いますが、審査通知に対する対応など米国代理人による検討を要する作業になると、費用の差が顕著になります。米国のある「訴訟系」の事務所に出願を担当させ、審査通知に対する回答書の作成・提出をさせたら500万円を超える請求が来て驚いたというような話も聞いたことがあります。(弊所でしたら、ほぼ現地特許庁にそのまま提出できる英文の回答書案を現地に送付しますので、米国代理人のアドバイスを仰いだような場合でも米国特許事務所の費用はせいぜい50万円程度です(通常は10~30万円程度)。)

「もし米国で特許訴訟になってしまったら・・・」という懸念から出願時から訴訟系の特許事務所を採用しているという方もいるかも知れません。しかし、訴訟の対象となる特許はごく僅かであり、またもし訴訟になったら訴訟に強い特許事務所に案件を移せばよいだけの話であって、訴訟の懸念から出願も訴訟系の特許事務所に依頼するというのは無駄であるように思います。

出願を担当したアトーニーがそのまま訴訟も担当すれば、その特定の件に明るくてよいはずとお考えになるかも知れませんが、出願系の特許事務所でも、殆どの場合、出願を担当するアトーニーと訴訟を担当するアトーニーは異なります。むしろ、案件を第三者的な観点から見ることができるということが新たな観点からの議論に結びつくということもよくあることです。従いまして、出願時は、あくまで出願系の事務所に依頼するのが賢明であると考えます。例えば、こちらに出願件数が多い米国特許事務所のランキングがあります。
http://www.iptoday.com/issues/2011/03/top-patent-firms.asp)米国代理人事務所決定の際の一つの目安にはなると思います。

当ホームページに、弊所と提携している米国代理人事務所の概算の費用も併せて示してありますのでご参考下さい。また、もし現在使用している米国代理人について「ちょっと費用が高すぎるんじゃないか?」などとお考えの際は是非ご相談下さい。

欧州(7): 異議申立手続き

欧州特許出願が許可になった後、第三者は特許異議申立(Opposition)をすることが可能です。

この異議申立手続きの結論は、”特許取消し”か”特許維持”か(revocation or maintenance of the European patent)ということになります。統計的には、異議申立を受けた件の約1/3が特許取り消しになっております。

この異議申立手続きで特許取消しとなった場合、当然、EPC経由での加盟国への登録は出来ません。

また、欧州特許庁(EPO)での異議申立手続きにおいて特許維持との結論を得ても、登録先の国で特許無効訴訟を提起されることがあり得ます。そのような場合は、各国の国内法に従い、特許の有効・無効が争われ、EPOの異議決定とは矛盾する結論となることもあり得ます。

日本にもかつては異議申立制度が存在しましたが、2003年に廃止されてしまいました。

現在、日本や米国にも第三者が特許の無効を訴える制度はあります。[*日本では特許無効審判、米国では当事者系(Inter partes)再審査制度がある。米国では、2013年より、欧州の異議申立制度に近い付与後異議申立制度を導入する予定。] 日本や米国においては、少なくとも特許の存続期間中であればいつでも特許無効を訴えることができますが、欧州特許に対する異議申立てには「欧州特許を付与する旨の公告後9月以内」という期限が設定されております。この期限が過ぎてしまうと、欧州特許が登録された各指定国において個別に無効訴訟などを起こさなければならなくなるので、多くの企業はライバル会社の欧州特許出願で特許成立すると障害となる恐れがあるものについては、経緯を監視して、欧州特許庁に許可されたら異議を申立てるということをしております。

特許異議申立期間

欧州特許掲載公報発行の日から9ヶ月の異議申立期間内に異議申立書(申請書のみならず異議理由も含む)を提出し、異議申立手数料[745ユーロ(10万円弱)]を納付します。

特許異議申立申請の有資格者

特許権者以外の誰でも異議申立をすることができ、対象の特許との利害関係などを明らかにする必要はありません。異議申立人が、企業名等を伏せるために、ダミー(Straw man)名義での異議申立することも可能です。

特許異議申立理由

以下の理由に基づいて、異議申立することができます。

- 特許性(新規性、進歩性、主題適格性、産業上の利用可能性)の欠如。

- 実施可能要件違反(当業者が実施可能な程度に発明が記載されていない)。

- 特許が、出願当初の明細書に開示されていなかった主題を含む(新規事項の導入)。

不明瞭性や単一性の欠如は異議理由としては採用されません。

異議部(Opposition Division)の構成

通常、EPO異議部は、3人の審査官で構成される合議体であり、この内2人は、審査に関与していなかったことが要求されます。そして、この審査に関与しなかった2人の審査官の内の一方が議長(Chairman)を務めます。

異議手続きの流れ

多くの場合、当事者により口頭審理が請求されますので、口頭審理が請求された場合の典型的な手続きの流れを示します。

1. 異議申立書を特許権者に通知

2. 異議申立ての方式審査(修正可能な方式上の不備が有る場合には、異議申立人は修正を促され、修正不能な方式上の不備が有る場合には、異議申立ては却下される)

3. 異議申立に対する特許権者の答弁書の提出期限(通常、4ヶ月)を知らせる通知

4. 特許権者の答弁書提出(提出しなくても、そのことにより直ちに特許取消しにはならない)

5. その後、通常、何度か異議申立人と特許権者による提出物の応酬があり、異議部が適切と判断した時期に口頭審理の召喚状を当事者に送付(多くの場合、異議部の予備見解が添付される。また、口頭審理前の書面提出の期限(通常、口頭審理の2ヶ月前)が設定される)

6. 特許権者及び/又は異議申立人による、口頭審理前の準備書面提出

7. 口頭審理が行われ、その場で異議決定の言い渡し

8. 口頭審理の1~2ヶ月後に書面での異議決定送付

Main Request(主請求)とAuxiliary Request(副請求)

特許権者は、複数セットのクレームを提出し、それをEPOに検討させることができます。

より具体的には、第一希望のクレームセットを"Main Request"(主請求)として提出し、第二希望以降のクレームセットを"Auxiliary Request"(副請求)として提出することができます。

Main Requestとしては、1セットのクレームしか提出することができませんが、Auxiliary Requestは複数提出することができます。Auxiliary Requestを複数提出する場合には、Auxiliary Request 1, Auxiliary Request 2.....の様に番号付けし、EPOは番号の若い方から優先的に検討します。

上記した通り、補正による新規事項も異議理由になりますので、補正が新規事項を導入するものであると判断されると、それが理由で特許取消しになってしまいますので、補正には注意が必要です。

また、異議理由に無関係な補正を行うと、例えそれが従属クレームに関するものであっても、補正全体が却下される可能性があります(Rule 80 EPC)。

口頭審理(Oral Proceedings)

口頭審理の請求

異議申立手続きでは、通常、当事者の一方又は両方が口頭審理(Oral Proceedings)を要求します。

口頭審理の召喚状(Summons)と異議部の予備見解

通常、異議申立から1.5年~3年位に口頭審理への召喚状を受けます。そして、この召喚状には、異議部の予備的見解が添付されていることが有ります。

通常、口頭審理の前に期限を切って(通常は口頭審理の2ヶ月前)、新たな書面(証拠、議論、補正クレーム(主請求、副請求)など)の提出を認めています。

その日以後の提出物に関しては、所謂”late-file”とみなされ、EPOはこれを考慮する義務を有しませんが、証拠の関連性などによっては考慮される場合が有ります。

口頭審理の実施

所用時間: EPOにおいて、通常は終日行われますが、簡単な案件は、半日で終わることもあります。また、逆に異議申立人が複数の場合など、数日にわたって行われることもあります。

出席者: 口頭審理には、前もってEPOに知らせておけば、基本的には誰でも出席することは出来ますが、発言を許される人は制限されます。例えば、出願人企業の知的財産部の方なども出席できますが、確実に発言権を確保するためには事前に技術の専門家(Technical Expert)であることをEPOに通知しておくことが望ましいです。

言語: 口頭審理は原則的に特許明細書が作成された言語で行われますますが、要請があればそれ以外の公用語への同時通訳が許されます。

補正: 口頭審理中に、補正の機会が与えられることがあります。多くの場合、口頭審理中に休憩時間が設けられ、この休憩時間中に、代理人が特許権者と相談しながら補正クレームを作成するということがよく行われます。

異議決定: 異議決定は、殆どの場合、口頭審理の最後に言い渡され、書面での決定書は通常1~2ヶ月後に送達されます。

審判(Appeal)

異議部の決定に不服の当事者は、審判請求書を決定通知の日から2ヶ月以内、審判理由補充書を書面による決定書通知の日から4ヶ月以内に提出できます。これらの期間は延長不可です。

 

尚、井上&アソシエイツは、欧州の異議申立て手続きに関しては、受ける方も攻撃する方も経験豊富です。これまでに数多くの異議申立て事件に携わり、理由書、答弁書、弁駁書などを作成して参りました。通常、欧州代理人は、弊所で作成した原稿をほぼそのまま採用して提出します。そして、守る方、攻撃する方のいずれも好成績を収めております。お客様から具体的な指示を頂かずに、基本的な方針決定から具体的な証拠準備も含めて弊所で全て行ってしまうというようなことも屡々です。欧州での異議申立て手続の対応に苦慮されているというようなことがございましたら、是非、経験と実績が豊富な井上&アソシエイツにご相談下さい。

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PCT(3): 国際調査機関による先行技術調査、国際段階での補正

PCT国際出願の大きなメリットの一つが、国際調査機関(ISA)による先行技術調査を受けられることです。国際調査(先行技術調査)の結果は、優先日からほぼ16ヶ月までに出願人に通知されます。

国際調査機関(ISA)

日本特許庁にPCT国際出願した場合の国際調査機関(ISA)は以下の通りです。

日本語でPCT出願した場合: 日本特許庁

英語でPCT出願した場合: 日本特許庁若しくは欧州特許庁(EPO)のいずれかを選択

米国、カナダ、中国、韓国、オーストラリア等の特許庁もISAとして承認されていますが、日本特許庁に提出するPCT国際出願の場合、ISAとして選択できるのは、上記の通り、日本特許庁かEPOのいずれかです。

調査結果の通知

以下の2種類の書類が送付されてきます:

1)国際調査報告書

文字通り、調査結果の報告書。国際調査を行った分類、関連する技術に関する文献等が記載されている。

2)国際調査機関の見解書

発明が特許として認められるか否か(新規性、進歩性、産業上利用可能性の有無)についての見解。

調査結果の意義と出願人が取り得る対応

調査結果(国際調査報告+国際調査見解書、以下、纏めて”ISR・ISO”と称す)は、実際の出願国(PCT出願の移行先の国)の審査に対する拘束力は有りません。要するに、各国の特許庁は、ISR・ISOと矛盾する内容の審査通知を出すことがあります。特に、日本特許庁が国際調査機関(ISA)で、米国や欧州に出願した場合など、米国や欧州の特許庁は、ISR・ISOの内容にはあまり影響されず、独自の調査をするようです。

但し、移行先の国の特許庁が国際調査機関(ISA)であった場合(例えば、日本特許庁がISAで、PCT出願を日本に移行したような場合)は、その国の審査においてISR・ISOに沿った形の審査通知が出される傾向があります。例えば、日本特許庁がISAで、PCT出願を日本に移行したような場合、国際調査を担当した日本特許庁の審査官が、移行後の日本出願の実体審査も担当するということは少なくありません。そのような場合、ISR・ISOに沿った形の内容の審査結果となる可能性が高いです。

また、欧州特許庁(EPO)が国際調査機関(ISA)であり且つ欧州に移行する場合(例えば、日本特許庁にPCT出願を英語で提出し且つISAとしてEPOを選択して、欧州に移行する場合)には、ISRの公開又は欧州移行の遅い方から約2ヶ月後に、ISAの見解書に対する応答要求の通知(規則161(1))(回答期限:通知から6ヶ月以内)が発行されます(但し、ISOの内容が否定的であった場合のみ)。従って、当然のことながら、ISAがEPOで、欧州に移行する場合には、ISAの見解書の内容は、欧州移行後のEPOによる実体審査に直結するものとなります。

上記の欧州の場合を除き、このISR・ISOには特に応答(答弁書提出)する必要はありませんが、ISAの見解が望ましいもので無かった場合、出願人は以下のようなアクションを取ることができます。

1. 非公式コメントの提出

国際調査機関の見解書に対する反論を「コメント」として国際事務局に対して提出する。ただし、この「コメント」は、国際事務局が指定官庁に転送するために単に受け付けるものであって、PCT規則において明文化されていない「非公式なコメント」として取り扱われ、これを参酌するかどうかは各国特許庁審査官の裁量に委ねられる。

(※尚、この「コメント」の提出は、国際段階であればいつでもできます。また、様式は特に定められておらず、書式自由となっています。この非公式コメントの実質的な効力については、弊所の経験上、外国特許庁の審査官がコメントを積極的に考慮するということは期待できないと思います。国内段階移行後に、国際調査見解書と同様の理由で外国特許庁に拒絶された時の為の準備程度に考えておいた方がよいでしょう。)

2. 19条補正の提出

国際事務局に対して19条補正を提出する。19条補正の特徴は以下の通り。

補正可能時期: 

国際調査報告の送付の日から2月または優先日から16月のいずれか遅く満了する期間内。

補正可能範囲: 

請求の範囲のみ。

補正可能な回数: 

1回のみ。
 

補正提出に関する費用: 

特許庁へ支払う手数料は無し。代理人手数料のみ(難易度などによるが、通常、5~10万円程度)。

補正によりISAの見解が変ったかどうかの確認: 

確認することは出来ない。

補正の公開: 

補正は、国際公開公報に反映される(補正後の形で国際公開される)。

3. 国際予備審査請求

国際予備審査請求をする。それにより、ISAの見解書に対して正式に反駁・抗弁することが可能になる。この際、必要に応じて34条補正が可能。国際予備審査請求に関する手続きの特徴は以下の通り。

国際予備審査請求時期: 

国際調査報告の発送日から3ヶ月、または優先日から22ヶ月のいずれか遅く満了する日まで。

国際予備審査請求した場合の国際調査見解書の扱い: 

国際予備審査請求した場合には、ISAの見解書は原則として国際予備審査機関による第一回目の見解書とみなされる。

一方、国際予備審査請求をしていない場合、上記の見解書は、「特許性に関する国際予備報告(第I章)(IPRP(第I章))」と改称されて指定国に送付される。

ISAの見解に対する反論と補正: 

答弁書と、必要に応じてと34条補正を提出する。尚、答弁書と34条補正は、国際予備審査請求請求と同時若しくは国際予備審査報告書が作成される前に速やかに提出する。

補正可能範囲: 

34条補正では、請求の範囲のみならず明細書や図面も補正できる。(19条補正では、補正出来るのは請求の範囲のみ。)

補正可能な回数: 

国際予備審査請求をしてから国際予備報告書が作成されるまでの期間内であれば、制限無し。

補正の公開: 

補正は公開されない。

国際予備審査請求に関する費用: 

1) 国際予備審査機関(IPEA)がJPOの場合(2012年6月1日以降)

・JPOに支払う手数料: ¥44,300 [¥26,000(予備審査手数料) + ¥18,300(取り扱い手数料) 但し、クレームが単一性を満たさない場合、追加料金の支払いが必要になる場合あり]

・代理人手数料(国際予備審査請求+補正書+答弁書): 一般的に10~25万円程度(難易度などにより大きく異なる) 

2) 国際予備審査機関(IPEA)がEPOの場合

・EPOに支払う手数料: 2,015ユーロ(110円/ユーロとして約¥22万円) [1,850ユーロ(予備審査手数料) + 165ユーロ(取り扱い手数料)但し、クレームが単一性を満たさない場合、追加料金の支払いが必要になる場合あり]

・代理人手数料(国際予備審査請求+補正書+答弁書): 一般的に15~35万円程度(難易度などにより大きく異なる) 

答弁書(及び補正)がISAの見解が変ったかどうかの確認: 

国際予備審査機関(IPEA)が、答弁書と補正を検討した上で作成する国際予備審査報告(IPER)において確認できる。

各国の実体審査に対する国際予備審査報告の影響: 

定かではない。特に米国や欧州などでは、他国の特許庁による国際予備審査の結果は余り重要視しない傾向がある。但し、英語でPCT出願し、EPOを国際調査機関(ISA)及び国際予備審査機関(IPEA)として選択した上で、欧州に移行した場合は、否定的な内容のIPERに対しては応答の義務がある。

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PCT(4): 国際出願の費用

国際出願関連手数料は、こちらで確認できます:

http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/ryoukin/kokuryo.htm

以下、PCT国際出願に係る大体の費用について説明します。あくまで目安としてお考え下さい。

特許庁に支払う費用

PCT国際出願1件当たりにつき、特許庁に支払う手数料は以下の通りです。(2012年に数回に分けて国際出願手数料が値下げされ安くなりました。以下は2012年6月1日以降の最新の手数料に基づきます。)

・ 国際出願手数料(30枚まで): ¥121,700 (30枚を超える場合の追加料金:¥1,400/枚)

・ オンライン出願による減額: -¥27,400

・ 調査手数料(日本特許庁が調査を行う場合): ¥70,000 (欧州特許庁が調査を行う場合: ¥206,900)

・ 送付手数料: ¥10,000

従って、例えば30枚のPCT出願の場合、特許庁に支払う料金は、¥174,300ということになります。

100枚であれば、追加料金¥98,000(¥1,400×70枚)を加算して、¥272,300ということになります。

「国際調査機関による先行技術調査など」の項目でも説明した通り、英語でPCT国際出願した場合、国際調査機関として、欧州特許庁(EPO)を選択できますが、その場合、上記の通り、日本特許庁(JPO)を国際調査機関(ISA)として選択する場合の約3倍の調査手数料が必要になります(上記の通り調査手数料は、JPOがISAの場合:¥70,000、EPOがISAの場合:¥206,900)。

国際予備審査請求の費用については、「国際調査機関による先行技術調査など」の項目で説明しております。

代理人費用

代理人の手数料は、難易度などにより大きく異なりますが、例えば、上記のように日本語で30枚のPCT出願の場合、大体、25~40万円程度になると思います。従って、上記の特許庁に支払う料金も合わせると、PCT出願(30枚)1件あたり40~60万円位はかかるということになります。

代理人手数料については、特許事務所により設定金額がまちまちですが、ある程度の以上の質のサービスを望まれるのであれば、事務所によって大きな差が出ることは無い筈です。

特に外国特許実務は高度な技能を要しますので、優秀な人材を多く集めて且つ安い報酬で使用するということは極めて困難です。従って、高品質なサービスを安価に安定して提供するということはなかなか出来ません。出願関連の設定料金が安いということは、質が低いか何処か後の手続きで費用がかかるということが殆どであると思います。

特許出願は、全ての案件についてそれぞれ固有の難しさがあります。幾ら能力が高い経験者であっても、機械的に処理できるものではありません。どんなにシンプルに見える発明でも、特許として成立する明細書とする為には、明細書の記載要件や先行技術に対する特許性の観点から充分な検討が必要であり、それにはある程度時間が必要になるはずです。むしろ、シンプルに見える発明ほど明細書の作成が難しい傾向があると言えるかも知れません。従って、特許出願明細書の作成は、マニュアルによる効率化等によって大きくコストを削減するといったことは非常に困難です。(例外として、類似した発明に関する複数の出願を処理する場合などは除きます。)

また、出願後の拒絶理由に対する対応などの中間処理の効率や結果も、事務所の実力に大きく左右されます。

従って、結局は実力の有る事務所に頼めば、優れた権利を、総合的には安い費用で取得することが可能になるということであると思います。

もし極端な低価格で高品質なサービスを謳う事務所があれば、具体的にどのようにしてそれを可能にしているのか聞いて見ると良いでしょう。もし納得できる論理的な回答があれば、試してみても良いかもしれません。しかし、途中で特許事務所を変更することは出来ますが、元の明細書が良くないと、その後の対応が困難になる場合が有りますので、やはり最初に頼む事務所を慎重に検討することをお勧めします。

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