軽減

PCT(5): 国際調査報告による各国での調査・審査費用の軽減

主要国における調査・審査費用の減免・免除

国内段階移行(各指定国への実際の出願手続き)後に、国際調査報告による調査・審査費用の減免・免除が有ります。

多くの場合、ISAが自国の特許庁であるPCT出願を自国に移行する際に特に大きな減額を受けることができます。例えば、PCT経由の米国出願の場合、ISAが米国特許庁であれば、調査費用($620)は免除されます。しかし、当然、日本特許庁に提出するPCT出願に関しては、米国特許庁をISAとして選択することはできませんので、上記のような免除は受けられず、約20%の減額ということになります。(米国以外にもカナダ、中国、韓国特許庁、オーストラリア等の特許庁もISAとして承認されているが、日本特許庁に提出するPCT出願に関して、ISAとして選択することはできず、日本語で出願した場合はJPOのみ選択でき、英語で出願した場合には、JPOとEPOのどちらかを選択することができる。)

日本特許庁に提出されたPCT国際出願に関して、主要国に移行した際に受けられる減免や免除は以下の通りです。

日本に移行した場合の審査請求料の減額

・ JPOが国際調査機関(ISA) → 約40%減額

・ JPO以外がISA → 約10%減額

欧州に移行した場合のサーチ料と審査料の減額

・ JPOがISA → サーチ料の20%を減額

・ EPOがISA → サーチ料は無料

・ EPOが国際予備審査機関(IPEA) → 審査料の50%減額

米国に移行した場合の調査料の減額

・ JPO、EPOがISA → サーチ料約20%減額

中国に移行した場合の審査料の減額

・ JPO、EPOがISA → 審査料の20%を減額

韓国に移行した場合の審査請求料の減額

・ EPOがISA → 審査請求料の10%を減額

JPOがISAの場合とEPOがISAの場合のコスト比較

欧州特許庁(EPO)を、国際調査機関(及び国際予備審査機関)として選択した場合の手数料は、日本特許庁(JPO)を選択した場合と比較して高額です。また、欧州における調査や審査の手数料もかなり高額ですが、PCT国際出願の場合、欧州特許庁(EPO)が国際調査や国際予備調査を行った場合、移行後にEPOに支払う調査・審査料金が大幅に減額されます。日本特許庁(JPO)にPCT国際出願を提出する場合、日本語で出願する場合には、国際調査機関(ISA)及び国際予備調査機関(IPEA)としてJPOしか選択できませんが、英語でPCT出願する際には、ISA及びIPEAとしてEPOを選択することも可能です。近年、英語でのPCT国際出願を検討する日本の出願人も増えているようですので、英語でPCT国際出願して、ISA(及びIPEA)としてEPOを選択した場合にコスト的メリットがあるのか以下に検証します。

日本と欧州以外の国への移行については、韓国を除いて、ISA及びIPEAがJPOであってもEPOであっても相違はないので、以下の比較においては、日本及び/又は欧州への移行のみについて検討します。(韓国の場合も、EPOがISAの場合に10%の減額が有りますが、それ程大きな額とはなりません。例えば、請求項の数が10だった場合、審査請求料は530,000ウォン(1ウォン=0.07円として約37,000円)ですので、減額分は、53,000ウォン(約3,700円)に過ぎません。)

以下の比較は、2012年5月時点での料金に準じます。また、種々の調査費用や審査請求手数料は、請求項の数や発明の数によって異なる場合が有りますので、以下の比較においては、請求項の数10、発明の数1と仮定します。更に、1ユーロ=¥110とします。

国際調査機関・予備審査機関としてJPO又はEPOを選択した場合の調査・審査料金比較

移行国 国際段階(移行前) 国内段階(移行後) A+B+C
ISA/IPEA A.国際調査/
予備審査料金
B. 調査料金
C.審査料金
(1)
JP+EP
JPO   ISのみ
¥80,000
EPO¥107,000
(975)
JPO¥95,000
EPO¥171,000
(1,555)
¥453,000
IS+IPE
¥124,300
EPO¥107,000
(975)
JPO¥95,000
EPO¥171,000
(1,555)
¥497,300
EPO ISのみ
¥216,900 
EPO¥0 JPO¥142,000
EPO¥171,000
(1,555)
¥529,900
IS+IPE
¥438,600 
EPO¥0 JPO¥142,000
EPO¥85,500
(778)
¥666,100
(2)
JPのみ
JPO ISのみ
¥80,000

JPO¥95,000 ¥175,000
IS+IPE
¥124,300
JPO¥95,000 ¥219,300
EPO ISのみ
¥216,900
JPO¥142,000 ¥358,900
IS+IPE
¥438,600
JPO¥142,000 ¥580,600
(3)
EPのみ
JPO ISのみ
¥80,000
EPO¥107,000
(975)
EPO¥171,000
(1,555)
¥358,000
IS+IPE
¥124,300
EPO¥107,000
(975)
EPO¥171,000
(1,555)
¥402,300
EPO ISのみ
¥216,900
EPO¥0 EPO¥171,000
(1,555)
¥387,900
IS+IPE
¥438,600
EPO¥0 EPO¥85,500
(778)
¥524,100

注:
  JPO: 日本特許庁
  EPO: 欧州特許庁
  ISA: 国際調査機関 (International Search Authority)
  IPEA: 国際予備審査機関 (International Preliminary Examining Authority)
  IS: 国際調査
  IPE: 国際予備審査

上記ケース(1)では、予備審査請求せずに日本と欧州の両方に移行する場合、調査・審査に関してJPOとEPOに支払う料金の合計(A+B+C)が、JPOがISAの場合は¥453,000であり、EPOがISAの場合は¥529,900となっています。

即ち、EPOをISAとして選択した場合、JPOをISAとして選択した場合より、調査・審査料金の合計が高くなってはいますが、EPOに支払う調査・審査料金の減額により、その差はかなり小さくなっています。

また、上記ケース(3)は、日本には移行せずに欧州に移行する例ですが、予備審査請求しない場合、ISAとしてEPOを選択した際の合計の調査・審査料金が¥387,900、JPOを選択した際の合計料金が¥358,000であり、その差は更に小さくなっています。

上記の差をどう捉えるかは出願人次第ですが、ISAとして日本を指定した場合と大差ない費用でEPOの見解を得られると考えれば、特に欧州での権利化が重要である際には、ISAとしてEPOを選択するということに大きなメリットがあると言えます。

ISAがJPOであった場合、EPOは新たに独自の調査を行い、Supplementary European Search Reportを作成します。一方、ISAがEPOであれば、最初からEPOの調査に基づく調査結果と見解が得られますので、ISAがJPOの場合と比較して、EPOに対する応答回数が減る可能性が有ります。これは、当然、特許取得の効率化とコスト削減につながります。

* 「国際調査機関による先行技術調査など」の項目でも説明した通り、欧州に移行する場合、国際調査報告書・見解書に対する応答義務が生じます。従って、EPOがISAであった場合、国際調査報告書・見解書は、実質的にEPOの最初の審査通知として機能します。

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医療・バイオ関連発明の方法クレームについて

医療・バイオ関連発明の方法クレームの書き方(1): 日本出願の場合

米国とオーストラリア以外の諸外国では、人体を対象とした「手術方法」、「治療方法」や「診断方法」は特許の対象にはなりません。治療に用いることを直接的に意図した発明でなくとも、人体に作用する工程を含むような発明も、治療方法や手術方法とみなされて拒絶されるケースは少なくありません。そのため、医療・バイオ関連発明の出願において方法のクレームを作製する場合には、以下の点に注意する必要があります。

(1)ヒトを対象とした方法は特許の対象にならないが、動物を対象とした方法は特許の対象になる。しかし、「ヒト」も「動物」の1種なので、「ヒト以外の動物」と明示する必要がある。

(2)生体内で行う方法は特許の対象にならないが、in vitro(試験管内)で行う方法は特許の対象になる。可能であれば、in vitroの方法であることを明示する。

(3)医師の行う作業、例えば、人体からの試料の採取や、人体への薬品の投与、病気の判断については記載しない。

(4)医師などによる装置の操作は記載せず、装置そのものの動作として記載する。

特にクレームの書き方に注意の必要な発明としては、次のものが挙げられます。

 ・生体由来の細胞や組織などの処理方法に特徴のある発明

 ・医療機器の作動方法

 ・アシスト機器技術関連発明

・ 生体由来の細胞や組織などの処理方法に特徴のある発明

生体由来の細胞や組織などの処理方法に特徴のある発明の典型的な例としては、血液透析の方法(人体から血液を取り出し、有害物質を除去し、同一人に戻す方法)が挙げられますが、このように、人体から採取したものを同一人に治療のために戻すことを前提とした方法は、例え、人体から試料を採取する工程に関する記載がなくとも、原則として特許の対象にはなりません。

しかし、このような技術の例外として、自家採取物を用いた医薬品または医療材料の製造方法は、製造した医薬品を、原料を採取した者と同一人に治療のために投与することが前提になっていても、特許の対象となります。例えば、「Xタンパク質をコードするベクターをヒトに投与する遺伝子治療方法」はヒトにベクターを投与するという行為が「手術・治療方法」に該当するため特許の対象外ですが、「人体から採取した細胞に、Xタンパク質をコードするベクターを導入する、遺伝子治療用細胞製剤の製造方法」は特許の対象になります。同様に、ヒトから採取した細胞を用いた ①分化誘導技術、②分離・純化技術、③安全性の検査技術等の再生医療に必要な技術も特許の対象です。

・ 医療機器の作動方法

医療機器そのものは物の発明として特許の対象になりますが、その作動方法も特許の対象になります。例えば、「内視鏡による体腔内の観察方法」は、体腔内の観察という行為が「手術・治療方法」に該当するため特許の対象外ですが、「内視鏡の作動方法」は特許の対象です。このような場合、医師の行う操作に関する記載(例:「操作者が回転指示器を操作する」)は認められませんが、装置の動作に関する記載(例:「回転指示信号に応じて回転指示器が作動する」)は認められます。

・ アシスト機器技術関連発明

介護ロボットや歩行補助装置のようなアシスト機器技術関連発明について方法のクレームを作成する場合には、発明の性質上、人体の状態の判定(例:「歩行の状態を判定する」)や、人体への作用工程(例:「作業者の作業負担を軽減する」)に関する表現が必要になります。この分野の発明については、医療(例えば、リハビリ)を目的とした発明は特許の態様にはなりませんが、医療目的ではない発明(例えば、重労働を行う作業者の支援用)の場合には、機器による判定や作用が人間を手術、治療または診断する方法に該当しないことは明らかなため、上述のような表現を用いたとしても、特許対象外とみなされることはありません。

医療・バイオ関連発明の方法クレームの書き方(2): 欧州出願の場合

欧州特許法第53(c)では、手術や治療によってヒトや動物を処置する方法は特許の対象にはならないと規定されています。具体的には、医療従事者の行う作業は全て「手術や治療のための方法」に該当すると考えられており、例えば、単純な注射を行う工程が1つでも発明の方法に含まれていたら、特許の対象になりません。こういった欧州における「手術や治療のための方法」の定義は厳しすぎるという声もあり、2010年2月16日付の欧州特許庁(EPO)の拡大審判部による審決(G1/07)によって、新たな基準が設けられました。

G1/07において拡大審判部は、「心臓への造影剤の注入」という工程を含むMRIによる撮像方法について、「心臓への造影剤の注入」という工程は「生体に対する処置方法」に該当するため、この撮像方法は特許による保護の対象にならないと判断しました。しかしながら、この判断について、「手術や治療の実施が健康被害のリスクを伴うため、医療従事者の介入が必要な方法」のみを特許による保護の対象外とすべきであると結論付けています。

つまり、単に医療現場で実施される方法であるという理由だけでは、特許の対象外にはならないと判断しています。そこで問題になるのは、発明の生体に対する安全性や侵襲性ですが、これらの点については特に判断基準は設けられていません。現状では、特許の対象となる方法の発明をあまり拡大解釈することはできませんが、以下の方法は特許による保護の対象になると考えられます。

・生体を対象とした行為であっても、安全で日常的な技術であれば、そのような行為を含む方法も特許の対象となる。

・非治療的な薬品の投与を含む方法(但し、投与方法に伴う健康リスクがあるものは特許の対象としない)

・装置の運転方法のみに係わる発明であって、装置が人体に与える効果とは無関係の発明

・生体を対象としているが、健康被害が問題とならない行為(例えば、動物の屠殺)を含む方法

医療・バイオ関連発明の方法クレームの書き方(3): 米国出願の場合

米国では、人体を対象とした「手術方法」、「治療方法」や「診断方法」は特許の対象になります。また、米国の特許法には日本や欧州には存在する倫理規定のようなものも存在しないため、人体に作用する工程を含む発明が特許の対象にならないと判断されることはありません。(しかし、当然のことですが、特許として認められるかどうかは又別の問題です。)

米国出願において注意しなければならない点は、公知物質に基づく「物」の発明(例えば、公知物質の第2医薬用途に基づく製剤や、用法・用量に特徴のある製剤など)は特許対象外であるため、方法の発明として出願しなければならないという点です。

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