認可

医療分野の知的財産について

今回は、最近、環太平洋戦略経済連携協定(TPP)絡みで話題になることが多い医療分野の知的財産について少々お話致します。TPPが日本の知的財産に与える影響については未だ明確なことは分かりませんので、ここでは議論致しませんが、話題を理解する上で役に立つかも知れない情報についてお話します。

医療行為について:

Trips第27条には、加盟国は「人又は動物の治療のための診断方法、治療方法及び外科的方法」を特許の対象から除外することができると定められています。

人間に対する医療行為(手術、治療又は診断する方法)については、米国やオーストラリアなどのごく少数の国を除いて、特許保護の対象として認められていません。日本、欧州、中国、韓国などにおいては、現在のところ、人間に対する医療行為に関する特許は取れません。

一方、TPP案(2012年5月)の8.2条には、以下のように規定されています。

「各当事国は、以下の発明について特許の対象とする事を認めなければならない:
a. 植物及び動物、並びに
b.  人又は動物の治療のための診断方法、治療方法及び外科的方法。」

因みに、米国では医療行為に関する特許を取得することは可能ですが、医師に対しては特許権を行使することは出来ません。しかし、全く権利行使が不可能という訳ではなく、以下のような場合に権利行使出来る可能性があります:

- 医薬の投与方法の特許を侵害する行為は、医師であっても免責されない可能性がある。

- 製薬企業が医師に医薬を提供する行為も間接侵害(寄与侵害)に該当する可能性がある。

- バイオテクノロジー特許を侵害する行為は、医師であっても免責されない。

日本でも医療行為を特許保護の対象に含めるべきかという点は以前から議論されておりますが、ごく限られた例外を除いて今までのところ実現には至っておりません。

韓国においても米国とのFTA締結に伴い、2012年特許法が改正され、特許出願に関する所謂「グレース・ピリオド」が米国と同様に1年間に変更されましたが、医療行為は特許の対象外のままです。日本も、医療行為を特許の対象と認めることに同意することはないように思われますが、はたしてどうなるでしょうか。

動物に対する医療行為について:

人間に対する医療行為(手術、治療又は診断する方法)だけでなく、動物に対する医療行為についても、特許保護が認められていない国があります。

参考までに、各国における「医療分野における方法」(医療行為や準医療行為)の特許保護可能性の概要を下記表に示します。

 

各国における「医療分野における方法」(医療行為や準医療行為)の特許保護可能性の概要

 

手術方法

治療方法

診断方法

測定方法

動物に対する 医療行為

米国1)

O

O

O

O

O

オーストラリア2)

O

O

O

O

O

日本

×

×

×

3)

O

EP

×

×

4-1)

4-2)

ヒトについてと同様

カナダ

×

×

5)

5)

ヒトについてと同様

ニュージーランド

×

×

6)

6)

O

韓国

×

×

×

7)

O

中国

×

×

×

8)

ヒトについてと同様

台湾

×

×

9-1)

9-2)

ヒトについてと同様

マレーシア

×

×

10-1)

10-2)

ヒトについてと同様

インド

×

×

11-1)

11-2)

ヒトについてと同様

インドネシア

×

×

×

×

×

注1)(米国) 医師・医療機関の特許侵害に対して部分的な免責規定がある。即ち、米国特許法第287条の第(c)項(いわゆる「免責規定」)により、(1)医師が侵害に該当する医療行為を実施した場合は、差止請求権・損害賠償請求権などの規定は該医師又は該医療行為に関与する関連医療機関には適用されない。(2)ただし、該「医療行為」とは、身体に対する医療的又は外科的処置を施すことをいうが、次に挙げる行為は含まないものとする。(i) 特許された装置、製造物または組成物の侵害的使用、(ii) 組成物の使用に関する特許の侵害的実施、及び (iii) バイオテクノロジー特許を侵害するプロセスの実施。

注2)(オーストラリア) 医師・医療機関の特許侵害に対して免責規定は無い。

注3)(日本) 手術工程・治療工程を含まず、また医療目的で判断する工程を含まない、人体に対する測定方法は、特許対象である。また、検体の分析・測定方法は特許対象である。(審査基準 第Ⅱ部 第1章 産業上利用することができる発明、2.1.1参照)

注4-1)(EP) 検体を用いた診断方法は特許対象である(EPO Guidelines for Examination, G-II, 4.2.1参照)。

注4-2)(EP) 手術工程を含まない、診断プロセスに至らない人体に対する測定方法は特許対象である(EPO Guidelines for Examination, G-II, 4.2.1参照)。

注5)(カナダ) 手術又は治療の工程を含まない人体に対する診断方法は特許対象である(カナダ国知財庁の特許審査ガイドラインによる)。

注6)(ニュージーランド) 手術工程を含まない人体に対する診断方法は特許対象である(ニュージーランド国知財庁の特許審査ガイドラインによる)。

注7)(韓国) 人体に直接的でかつ一時的でない影響を与える工程を含まない限り、人体に対する測定方法(臨床的判断を含まない)は特許対象である(韓国知財庁の特許審査ガイドラインによる)。

注8)(中国) 手術工程を含まない、診断プロセスに至らない人体に対する測定方法は特許対象である。また、診断プロセスに至らない検体の分析・測定方法は特許対象である。(中国知財庁の特許審査ガイドラインによる)

注9-1)(台湾) 検体を用いた診断方法は特許対象である(台湾国知財庁の特許審査ガイドラインによる)。

注9-2)(台湾) 手術工程を含まない、診断プロセスに至らない人体に対する測定方法は特許対象である(台湾知財庁の特許審査ガイドラインによる)。

注10-1)(マレーシア) 検体を用いた診断方法は特許対象である(マレーシア国知財庁の特許審査ガイドラインによる)。

注10-2)(マレーシア) 手術工程を含まない、診断プロセスに至らない人体に対する測定方法は特許対象である(マレーシア国知財庁の特許審査ガイドラインによる)。

注11-1)(インド) 検体を用いた診断方法は特許対象である(インド国知財庁の特許審査ガイドラインによる)。

注11-2)(インド) 手術工程を含まない、診断プロセスに至らない人体に対する測定方法は特許対象である(インド国知財庁の特許審査ガイドラインによる)。

医薬品の特許期間とジェネリック医薬品:

現在、日本において特許の存続期間は出願から20年であり、医薬品の場合、最大で5年間の延長が認められます。特許が有効に存在している間は、第三者は特許権者の許可なく発明を実施することは出来ません。即ち、第三者は、許可無く、特許された医薬品を製造・販売することは出来ません。

しかし特許期間が満了すると、第三者が、特許権者の許可無く発明を実施できるようになります。医薬品の場合、先発医薬品が認可を受けていれば、簡単な審査で特許製品と同様の医薬品の認可が下ります。研究開発費などはかかっていないわけですので通常、先発医薬品よりも安価に提供され、そのような医薬品を通常「ジェネリック医薬品」と称します。

更に、TRIPS(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)においては、ジェネリック医薬品製薬会社が既存の医薬品の臨床データを、薬剤認可を受ける際に利用することを許容しています。臨床データの取得は、時間と費用がかかるため、臨床データが不要であることはジェネリック医薬品の価格低下に大きく寄与しています。

また、近年、2010~2012年頃にかけて、大型医薬品(ブロックバスター)の特許が一斉に切れるという所謂「2010年問題」が話題になっています。ジェネリック大国である中国・インドなどが、この機を大きなビジネスチャンスと考えています。

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PCT国際出願に対する情報提供と、日本における刊行物等提出書による情報提供

PCT国際出願に対する第三者による情報提供制度が、2012年7月から開始されました。この制度によって、国際段階にあるPCT出願の新規性および進歩性に係わる先行技術について、WIPO国際事務局に情報提供を行うことが可能になりました。しかしながら、情報提供可能な期間や提供可能な情報の種類などにかなり制限があるため、情報提供を行う際には注意が必要です。次の表に、PCT国際出願に対する情報提供の特徴を、日本出願に対する情報提供制度である刊行物等提出書の特徴と共にまとめました。

 


 

PCT国際出願に対する情報提供 刊行物等提出書による、
日本出願に対する情報提供
提供先 WIPO国際事務局
(ePCTの電子システムのみ)
日本国特許庁
(書面またはオンライン)
情報提供
の言語
アラビア語、英語、スペイン語、中国語、ドイツ語、日本語、韓国語、ポルトガル語、フランス語、ロシア語(文献の言語は限定なし)

<WIPOは訳文を作製しないため、情報を最も考慮して欲しい機関や特許庁の言語を使用することが望ましい>
日本語

<刊行物などの言語に限定はないが、日本語以外は和訳の添付が望ましい>
提出期間
と回数
国際公開以降、優先日から28ヶ月までに1回のみ 出願後から特許付与後のいつでも、何回でも可能
提供可能な
情報
・新規性欠如、進歩性欠如に関する情報のみ

・先行技術に関する文献(国際出願日以前に発行されたもの、または優先日が国際出願日以前の特許文献)に限定

・提出可能な文献の数は最大10件、各文献に対する情報は最大500文字
・新規性欠如、進歩性欠如の他に、新規事項の追加、産業上利用可能性の欠如、拡大先願、記載要件違反、先行技術文献情報開示要件違反などに関する情報

・「書面」であれば、文献に限らず、実験報告書などの証明書類も提出可

・提出する書面の数、刊行物等提出書の文字数に制限なし
匿名に
よる提供
可能 可能
出願人に よる
反論
優先日から30ヶ月までにWIPO国際事務局にコメントを提出可能 日本国特許庁に上申書を提出可能。提出期限なし。
情報提供/ 出願人コメントの公開 WIPOホームページのPATENTSCOPEより閲覧可能、但し、文献の公開なし 包袋閲覧の申請によって閲覧可能 (IPDLでは書類の提出日のみ確認可能)
メリット ・国際調査報告や国際予備審査報告で考慮される

・WIPO国際事務局に情報提供を行うだけで、全指定国に情報が送付される
・新規性、進歩性以外の問題についても指摘することが可能

・文献以外に実験証明書なども提出可能

・情報提供可能な期間や回数に制限なし
デメリット ・提供可能な情報に制限あり

・情報提供可能な期間と回数に制限あり
・日本国特許庁にしか情報提供することができない(他の出願国には、個別に情報提供を行う必要がある)

・情報提供に対する出願人のコメントを考慮した追加の情報提供も可能

 

PCT国際出願に対する情報提供のメリット: 

上記の表から明らかなように、PCT国際出願に対する情報提供は、提出可能な情報が新規性と進歩性に関する情報に限られ、また、文献の数は最大10件、各文献に対する情報は最大500文字という制限があります。しかしながらこの制度には、以下のメリットがあります。

(1)国際調査報告や国際予備審査報告に影響を与えることができる

国際調査報告や国際予備審査報告が作製される前に情報提供を行えば、提供した情報は、上記報告の作製時に考慮されます。国際調査報告と国際予備審査報告は多くの国の特許庁が審査の際に参考にするため、国際出願の特許性に否定的な国際調査報告や国際予備審査報告は、各指定国における権利化の防止または権利範囲の制限に有効に働くと考えられます。 

(2)WIPO国際事務局から全指定国に提供した情報が送付される

WIPO国際事務局に情報提供を行えば、優先日から30ヶ月の移行期限経過後には、全指定国に提供した情報が送付されます。従って、複数の出願国に個別に情報提供を行う場合よりも、労力やコストの面で有利です。(但し、WIPOは提供された情報をそのまま、訳文を作製せずに、指定国に送付します。従って、指定国(または情報提供に使用する言語)によっては、情報がどの程度考慮されるのかは不明です。)

各国で個別に情報提供を行うことのメリット: 

国によって特許の審査基準は異なるため、各指定国の特許庁に個別に情報提供を行うことによって、その国の審査基準に沿った情報提供が可能になります。また、情報提供制度も国によって異なりますが、一般的に審査官には提供された情報を検討することが義務付けられていることから、提供した情報が審査に使用される確率も高まると考えます。

例えば、日本における刊行物等提出書による情報提供は、PCT国際出願に対する情報提供と比べて、提供可能な情報の種類や量が遥かに多く、他社出願に特許性がないことをより詳細に説明することが可能です。

更に日本における刊行物等提出書は、出願後であればいつでも提出できます。従って、公開前であっても何らかの方法で出願に関する情報(出願番号と発明の内容など)を知り得た場合、その出願の公開前に刊行物等提出書による情報提供が可能です。そのように公開前に刊行物等提出書することができれば、例え国際出願が出願直後に日本への移行手続を進め、更に早期審査の請求をしていても、審査に間に合うように情報提供を行うことが可能です。(上記のように日本で早期審査を請求した場合、国際出願の優先日から30ヶ月が経過する前に特許査定となることがあります。この場合、PCT国際出願に対して提供した情報は特許査定後に日本国特許庁に送られてくるため、審査の際に考慮されることはありません。)

また、特許後に 刊行物等提出書による情報提供をする場合には、特許権者に無効理由が存在する可能性や無効審判を請求される可能性を認識させることによる、特許権行使に対する牽制効果が見込まれます。

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