証人

米国(5.2): 特許の取消し・無効を請求する手続き[付与後異議(Post-grant review)等]

付与後異議申立(Post-Grant Review)と当事者系レビュー(Inter Partes Review)の比較

 

付与後異議申立(Post-Grant Review) 当事者系レビュー(Inter Partes Review)
申請時期 許可後9ヶ月以内 次の時期の内、いずれか遅い方:許可から9ヶ月経過後、若しくは付与後異議申立が終結した日
無効理由 ベストモード以外の35 U.S.C. § 282に記載された無効理由全て 特許又は刊行物に基づく新規性・自明性(35 U.S.C. § 102 及び 103)の欠如
申請を受け付ける基準 無効である可能性が有効である可能性よりも高いことを示していると認められる(無効の見込み確率が50%を超える);又は

重要な新規又は未解決の法的問題を提起する
無効であることが合理的に見込める(無効の見込み確率が50%を含む)
申請人の特定 必要(匿名不可) 必要(匿名不可)
後の訴訟手続きなどにおけるエストッペル(禁反言) 本手続きで実際に提示した根拠や提示できたはずと合理的に考えられる根拠は、後の手続きで採用不可 本手続きで実際に提示した根拠や提示できたはずと合理的に考えられる根拠は、後の手続きで採用不可
USPTOにおける担当部署 審判部(Patent Trial and Appeal Board 審判部(Patent Trial and Appeal Board
ディスカバリー(開示手続き) 当事者が提示した事実主張に直接関連するもの 宣誓供述書又は宣言書を提出する証人の証言録取書並びに、その他、公正な判断のために必要なもの
決定までに要する期間 12~18ヶ月 12~18ヶ月
決定に対する控訴 両当事者のいずれもが、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)に控訴可能 両当事者のいずれもが、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)に控訴可能
政府料金(USPTOに支払う手数料)

$30,000

(クレーム数15以下で、申請が認められた場合)

$23,000

(クレーム数15以下で、申請が認められた場合)

 

特許付与後異議関連手続きの料金

AIAにより導入される付与後異議申立て(Post-grant review)、当事者系レビュー(Inter Partes Review)については、2013年1月18日に最終的な料金(USPTOに支払う手数料)が公表されました。上の表においては、クレーム数15で、手続きの申請が認められた場合を仮定した料金を示しましたが、具体的な料金体系は以下の通りとなっています。


手続きの種類

 

料金

付与後異議申立(Post-Grant Review)又は一部のビジネス方法特許レビュー(Covered Business Method Patent Review)  申請時に支払う手数料

クレーム数20まで (20を超えたクレーム毎の追加手数料$250)

$12,000

申請が認められた後に支払う手数料

クレーム数15まで(15を超えたクレーム毎の追加手数料$550)

$18,000

当事者系レビュー(Inter Partes Review) 申請時に支払う手数料

クレーム数20まで (20を超えたクレーム毎の追加手数料$200)

$9,000

申請が認められた後に支払う手数料

クレーム数15まで(15を超えたクレーム毎の追加手数料$400)

$14,000

 

他者の特許を無効化する為に査定系(Ex Parte)再審査を選択することのメリット

査定系(Ex Parte)再審査は、他の当事者系の手続きと比較して、特許権者以外の申請人の関与が大幅に制限されるため、他者の特許を無効に出来る確率の観点からは、当事者系の手続きの方が効果的と言えます。しかし、査定系(Ex Parte)再審査には、当事者系の手続きと比較して、色々な面で申請する側の負担が少ないというメリットがあります。具体的には、以下のようなメリットが挙げられます。

① 特許後、何時でも申請できる。

② 匿名で申請できる。

③ 当事者系手続きと比較して費用が安い(USPTOに支払う手数料は、$12,000)。

そして、②の匿名で申請できるということに関連するメリットとして、匿名で申請した場合には、その後の手続きににおいてエストッペル(禁反言)の心配をする必要がないということも挙げられます。即ち、当事者系手続き[付与後異議申立て(Post-grant Review)、並びに当事者系(Inter Partes)再審査や当事者系(Inter Partes)レビュー]では、手続き中に提示した又は提示することが出来た根拠に基づく無効の主張については、その後の特許庁、裁判所又は米国際貿易委員会(ITC)における手続きにおいて、同様の主張をすることは、エストッペルとなり、禁じられます。これに対して、査定系(Ex Parte)再審査を匿名で行った場合、申請人の身分は不明であり、当然、エストッペルも生じません。

以上のように、どの手続きが最も適切かは、様々な事情や状況に応じて判断されることになります。

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米国(4)

Q. 再発行(reissue)で認められる訂正はどのようなものか?また、特許権者が指摘した再発行申請理由以外の理由で特許性を否定されることがあるのか

A. 再発行制度は、出願人の過誤(error)を訂正するためのものであり、その過誤が、それにより特許の全部または一部が実施不能(inoperative)または無効(invalid)となるようものである場合に、訂正が認められます。クレームが狭すぎるという理由でクレームの拡大が許されることも有りますが、その場合、原特許発行から2年以内に申請する必要があります。また、クレームを拡張する場合、その他にも幾つか注意事項が有りますが、それについては、次のQ&Aに譲りますので、そちらをご覧下さい。

訂正の対象としては、クレームのみならず、明細書本文や図面を訂正することも可能です。また、優先権の主張の欠落や誤りを修正することも出来ます。

再発行を申請する際には、既に発行されている特許が、その特許に含まれてしまった詐欺的意図のない特定の過誤により、全体的あるいは部分的に「効力/効果が無い(inoperative)」あるいは「無効である(invalid)」ことを述べる宣誓書を提出しなければなりません。

審査過程においては、上記の過誤だけがチェックされるのではなく、全クレームが全ての特許要件について改めて審査されます。従って、上記の過誤以外の欠陥を審査官に指摘されて拒絶され、有効な回答ができず、結局、再発行特許を受けることができないこともあり得ます。

Q. 本来、発明に不要な要件を米国特許のクレームに記載してしまったため、その必須でない要件を外して発明を実施している第三者に対して侵害差し止めを請求出来ない。米国で、特許後に上記の不要な要件を外す補正をすることは出来ないか?

A. 不要な要件を外すということは、クレームを「拡大」することになりますが、そのような場合、再発行制度(Broadening Reissue)(35 U.S.C. 251)を利用してクレームの拡大することが可能です。(再審査(Reexamination)では、クレームを拡大する補正は不可。)クレームを拡大する再発行については、以下の点に注意することが必要です。

(1)通常の再発行は、特許存続期間中であれば、いつでも可能だが、クレームを拡大する再発行は、原特許発行から2年以内に申請する必要がある(35 U.S.C. 251, MPEP 1412.03)。

(2)審査段階において、特許を取得するために放棄された発明の主題(surrendered subject matter)を再取得(recapture)することは許されない(MPEP 1412.02)。即ち、再発行によりクレームから削除しようとしている主題が、審査段階において拒絶を克服するために、補正によりクレームに導入されたもの、若しくは発明の重要な特徴として主張されたものである場合、これを再発行によって削除することは許されない

(3)特許クレームに変更(ここでいう「変更」とは、減縮、拡張等のクレームの権利範囲を実質的に変更するものをいう。クレームの権利範囲に影響を及ぼさないものは含まない。)を加えた場合、変更前の元の特許クレームは初めから存在しなかったものとみなされる(一方、再発行において変更されずに残ったクレームについては、原特許に基づく権利が有効に維持される)。また、再発行の後の変更されたクレームについては、特許権者は、再発行の後になされた第三者の行為に対してのみ、損害賠償や差止めを請求することができる。しかも、この場合の特許権の行使は、第三者のintervening rightによって制約を受ける("intervening right"は「中用権」と訳されることが多いが、日本の特許法における「中用権」、即ち、日本の特許法第80条に規定される通常実施権とは、意味が異なる)。詳しくは、「米国における特許訂正の効力について」の項を参照されたい。

Q. 米国でパテントトロールとおぼしき会社に特許侵害訴訟を提起された。訴訟が提起されたのは、パテントトロールに好んで利用されることで有名なテキサス州東地区裁判所である。この管轄について、他の管轄への移転を請求することはできるのか?

A. テキサス州東地区裁判所は、パテントトロールの聖地のような裁判所であり、特許権者に対して有利な判決を出す傾向が極めて顕著であることで有名な裁判所です。この裁判所では、特許侵害訴訟における原告(特許権者)の勝訴率が、80%にも及ぶと言われています。

この管轄について、他の管轄への移転を申立てることができ、一定の要件を満たせば、この申立てが認められることがあります。移転の申立てを認めるか否かは、以下の様な「私益」及び「公益」の要因の観点から検証を行う多因子テストによって判断されます。

「私益」の要因: (1) 証明情報源へのアクセスの容易さ、(2) 証人出廷を実現するための強制的な手続が可能か否か、(3) 証人が自発的に出廷するための費用、(4)事実審の容易化、迅速化、費用低減、その他のあらゆる実際的な事項。

「公益」の要因: (1) 裁判所における訴訟の集中による管理上の問題、(2) その地で決定される地方特有の争点に存在する利益、(3) 法廷地と事件に適用される法の親和性、(4) 抵触法または外国法の適用に関する不必要な問題の回避。

但し、上記の申立てが認められるのは、当事者双方がテキサス州東地区において一切事業活動していないなど、他の管轄に移さないことが職権の濫用であることが明らかであるような場合でないと難しいようです。

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