移行期限

中国(1)

Q. 米国、韓国、中国では先行するほかの多数項従属クレームに更に多項従属させることが禁止されているが、中国の場合は、米国及び韓国とはルールが違うように思うが?

A. 中国の場合は、米国及び韓国とはルールが違います。

例えば、「【請求項4】請求項1~3に記載の化合物と・・・とを含む混合物」のようなクレームは米国、韓国などでは従属項とみなされますが、中国では独立項と見なされます。

従って、例えば、請求項3が請求項1と2に多項従属していた場合、上記の請求項4は、米国及び韓国では、二重に多項従属する従属項として許されませんが、中国においては、請求項4は独立項(請求項1~3に従属していない)と見なされますので、問題無いことになります。

Q. 中国と日本との間の特許審査ハイウェイ(PPH)が開始されたと聞いたが、これを利用する条件は米国の場合とほぼ同じと考えて良いか?

A. 日米PPHと比較するとかなり適用条件が制限されています。特にPPH申請可能な時期が非常に制限されています。具体的には、PPHに基づく審査を申請する中国出願は、以下の時期的条件を満たしている必要があります。

 - 当該中国出願が公開されていること。

 - 当該中国出願が実体審査段階に移行していること。(中国特許庁から実体審査移行の通知を受領していることが必要。ただし、例外として、審査請求と同時であればPPHの申請が可能。)

 - 当該中国出願に関し中国特許庁において、PPH申請時に審査の着手がされていないこと。

Q. PCT国際出願を中国国内段階に移行する際に、明細書の中国語翻訳文の提出を延期して、30ヶ月の移行期限の後に提出することはできないのか?

A. 中国では、翻訳文の提出の延期という形でなく、30ヶ月の移行期限について2ヶ月の猶予期間(グレースピリオド)が認められています。

即ち、特に延期の申請などの手続きを取らずとも、32ヶ月であれば中国国内移行手続きが可能です。但し、その場合には、出願時に1,000元の追加料金を支払うことが必要です。

Q. 中国特許庁からの審査通知に対する回答期限には猶予期間(グレースピリオド(Grace Period))があると聞いたが本当か?

A. 15日間の猶予期間が有ります。ここでは中国特許庁の通知の配送に15日間かかったものとみなし、通知の日付から15日後を応答期限の起算日と見なします。

即ち、応答期間の満了日+15日ではないことに注意が必要です。

例えば、応答期限が4ヶ月の審査通知で、5月30日が発行日である場合、4ヶ月の期限の満了日は9月30日ですが、15日間の猶予期間を加味した満了日は、この9月30日+15日の10月15日ではなく、6月14日(審査通知発行日+15日)+4ヶ月の10月14日です。

Q. 中国特許出願について、拒絶理由通知を受けたが、製品化の目処が立たないため出願放棄することにした。しかし、回答期限を過ぎて、急遽、製品化・販売の目処が立ったため、放棄した出願を復活させたいが可能か?

A. 回答期間内に回答書を提出しなかった場合、出願は取下げられたものと見なされます。しかし、特許庁から取り下げの通知が届いて2ヶ月以内であれば、審査通知に対する回答書と共に権利回復申請書を提出することによって、出願を復活させることが出来ます。

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PCT(1): 国際出願の概要

ある発明について外国出願する場合に、最初からその国の特許庁に特許出願することも可能ですが、多くの国では、その国の言語の明細書を準備する必要があるため、どうしても出願が遅れてしまいます(但し、米国における「仮出願」のように、差し当ってその国の言語以外の言語の明細書で出願できる制度を有する国もあります)。当然、出願国が多い場合には、更に大変です。

パリ条約に基づく優先権(日本の出願日から1年以内に外国出願)

そこで、通常は、日本国内の特許出願を基礎出願として、その出願日から12ヶ月(1年)以内にパリ条約に基づく優先権を主張して外国出願をします。これによって、外国出願も、日本の基礎出願の出願日(優先日)に出願したのと同等の効力が得られます。

この際、この優先日から12ヶ月以内に、所望の国の特許庁に直接出願することも出来ますが、PCT国際出願をすることにより、更に明細書翻訳文の提出など実際に外国出願手続きする期限を、優先日から30ヶ月(国によっては31ヶ月)にまで延期することができます。 

PCT国際出願

国際出願とは特許協力条約(Patent Cooperation Treaty, PCT)に基づいて行なわれる出願で、所定の形式の出願願書、明細書、請求の範囲、要約(及び図面)をPCT加盟国である自国の特許庁に所定の言語(日本国特許庁の場合は、日本語若しくは英語)で作成して、提出すれば、すべてのPCT加盟国に対して「国内出願」を出願したことと同じ扱いとなります。

国内段階移行(各国への実際の出願)

「国内出願」を出願したことと同じ扱いになるといっても、権利化を希望する国で実際に特許を取得するためには、国際出願後にその国の特許庁に対して、PCT願書及び明細書の翻訳文提出等の国内段階への移行手続きを30ヶ月(2年6ヶ月)乃至31ヶ月以内に行う必要があります

要するに、PCT国際出願をするということは、後にPCT加盟国に外国出願(国内段階移行)する権利を獲得するということを意味します。

また、別項で説明する通り、PCT国際出願については、国際調査機関による先行技術調査が行われ、特許性に関する見解が出されますが、それは実際に移行した国において拘束力をもつものではなく、最終的に発明が特許要件を満たしているか否かはあくまで各国の国内法に従って判断されます。

実際にPCT出願に基づいて、PCT加盟国に出願する期限は、パリ条約に基づく優先権を主張している場合は、その優先日から30ヶ月(欧州、韓国、インド、オーストラリア、ユーラシア、インドネシア、ベトナムなどは31ヶ月)であり、優先権主張していない場合は、PCT出願の日(国際出願日)から30ヶ月乃至31ヶ月が移行期限ということになります。

翻訳文の提出

通常、PCT出願願書と明細書について、各国で定められた言語の翻訳文を提出することが要求されます。

日本、米国、欧州、中国、ユーラシア、インドネシアのように、30ヶ月乃至31ヶ月の移行期限の延期若しくは移行手続き後の翻訳文提出が許される国もあります(要するに、そのような国では、移行手続きが30ヶ月乃至31ヶ月の移行期限ギリギリになってしまった場合でも、移行期限後に翻訳文を提出できます)。

一方、タイ、ベトナムのように、移行期限の延期が不可で且つ移行期限内に英語以外の現地語の翻訳文を提出することが必要な国もあり、そのような国に移行する場合には、通常まず英訳文を作成し、それを現地語に翻訳させるため、十分な時間的余裕をもって手続きを進めることが重要です。韓国も31ヶ月の移行期限内に韓国語訳文の提出が必要ですが、韓国には日本語が堪能な弁理士や特許技術者が比較的多いため、日本語のPCT明細書から直接、韓国語翻訳文を作成させることが可能な場合もあります。参考までに、韓国では、日本語が第2外国語として広く普及し、約3人に1人が日本語の学習経験を有しています。商標の分野においても、日本語の平仮名は、中国を含む殆どの外国において図形とみなされます(識別できないため)が、韓国においては、平仮名は韓国需要者にとって容易に称呼できるため識別可能とされています(特許法院2012.1.18.言い渡し2011ダ5878判決)。

また、PCT加盟国ではありませんが、台湾も日本語堪能な弁理士が比較的多いようです。

韓国以外の非英語圏の国についても、日本語から直接、その国の言語に翻訳することは不可能では有りませんが、通常、国際言語である英語の翻訳と比較して、英語以外の言語の翻訳については優秀な人材の安定した確保が極めて難しいためお勧めできません。

また、仮に出願明細書翻訳の時点では優秀な人材を確保できたとしても、その後の手続きにおいて、現地の代理人と明細書に参照して種々の相談をする際などに問題が生じ得ます。例えば、ユーラシアへの出願の際に、優秀な日本語-ロシア語の翻訳者が見つかったため、日本語の明細書から直接ロシア語に翻訳させて作成した翻訳文を提出したとします。その後、ユーラシア特許庁から拒絶理由通知を受けて、現地代理人に補正や明細書に参照した反論の指示をしたいという時に、日本国内の出願人又は代理人と現地の代理人が共通して参照できる明細書が無く、出願人からの指示をも一々翻訳しなければならないという事態になってしまう恐れがあります。

明細書の英訳文を現地語に翻訳させれば、出願後の手続きにおいても英訳文に参照して現地代理人との相談ができます。このような理由もあり、非英語圏であっても、英文明細書を現地語に翻訳させるのが一般的です。

PCTを利用した出願手続きの流れ

PCT国際出願の手続きの流れをごく簡単に図に示すと以下のようになります。

 

タグ:

特許  米国  PCT  中国  出願  発明  日本  欧州  補正  提出  必要  明細書  韓国  以下  翻訳  拒絶  先行技術  判断  商標  可能  英語  手続  出願人  移行  特許出願  比較  国際出願  利用  主張  作成  要求  範囲  説明  期限  Patent  請求  要件  制度  優先権  出来  特許庁  外国  外国出願  通常  理由  日本語  問題  実際  拒絶理由  翻訳文  国際調査機関  月以内  各国  at  技術  加盟国  最初  容易  特許性  パリ  拒絶理由通知  意味  特許法  出願日  重要  調査  十分  権利化  優先権主張  一般的  優先日  出願明細書  権利  判決  30  通知  仮出願  図面  形式  言語  www  英訳文  英訳  参照  代理人  出願後  分野  参考  年以内  英文  取得  インド  最終的  国際調査  以外  基礎出願  当然  翻訳者  移行期限  見解  時間  right  反論  効力  国内  台湾  段階  タイ  経験  インドネシア  条約  英文明細書  12  弁理士  加盟  31  時点  現地代理人  先行技術調査  re  出願国  国際出願日  国内出願  不可能  簡単  オーストラリア  ベトナム  直接  一般  日本国特許庁  ロシア  現地  基礎  確保  優先  希望  英語以外  指示  直接出願  願書  日本国内  同等  所望  共通  国内段階  移行手続  inoue  現地語  相談  不可  ユーラシア  所定  set  準備  調査機関  延期  安定  per  翻訳文提出  自国  優秀  出願手続  最終  訳文  月乃至  代理  以内  平仮名  事態  人材  別項  ratio  mg  特許技術者  特許要件  移行期限内  乃至  称呼  非英語圏  韓国語  要約  言語以外  比較的多  大変  外国出願手続  期限内  国際  国内段階移行  識別  拘束力  人又  機関  獲得  先行  出願願書  特許協力条約  国際言語  明細書翻訳文  堪能  明細  国内法  図形  国語  外国語  日本国  operation  ed  assets  sets 

PCT(9): 移行期限を逸した場合の救済措置

正当な理由があって、移行期限内に移行手続きが取れなかった場合、PCT規則49.6の規定に従い、移行を認める救済措置が受けられることがあります。

原則的に、この救済措置が利用できるのは、国内移行期限を徒過した理由が、 (1)出願人の故意でない事由により徒過した場合、及び/又は(2)出願人が相当な注意を払ったにもかかわらず徒過した場合です。管理ミスのような単純な過失による権利失効の救済を認めるものではありません。

また、この救済措置は、PCT規則49.6の規定に従うものですが、移行先の国により、利用できなかったり、適用条件や申請手続きに違いが有ります。日本、米国、欧州、中国、韓国などの主要な国では、この救済措置が認められています。

日本への国内移行に関してこの救済措置を受けるための手続きとしては、国内移行期限を徒過した日から12ヶ月以内又は、徒過の事由が解消した日から2ヶ月以内のいずれか早く満了する日(指定官庁の適用する国内法令が認める場合にはより遅い時)までに、出願人は国内移行手続を行うとともに、徒過の理由を説明した権利回復の請求を行う必要があります。

PCT国際出願に対する情報提供と、日本における刊行物等提出書による情報提供

PCT国際出願に対する第三者による情報提供制度が、2012年7月から開始されました。この制度によって、国際段階にあるPCT出願の新規性および進歩性に係わる先行技術について、WIPO国際事務局に情報提供を行うことが可能になりました。しかしながら、情報提供可能な期間や提供可能な情報の種類などにかなり制限があるため、情報提供を行う際には注意が必要です。次の表に、PCT国際出願に対する情報提供の特徴を、日本出願に対する情報提供制度である刊行物等提出書の特徴と共にまとめました。

 


 

PCT国際出願に対する情報提供 刊行物等提出書による、
日本出願に対する情報提供
提供先 WIPO国際事務局
(ePCTの電子システムのみ)
日本国特許庁
(書面またはオンライン)
情報提供
の言語
アラビア語、英語、スペイン語、中国語、ドイツ語、日本語、韓国語、ポルトガル語、フランス語、ロシア語(文献の言語は限定なし)

<WIPOは訳文を作製しないため、情報を最も考慮して欲しい機関や特許庁の言語を使用することが望ましい>
日本語

<刊行物などの言語に限定はないが、日本語以外は和訳の添付が望ましい>
提出期間
と回数
国際公開以降、優先日から28ヶ月までに1回のみ 出願後から特許付与後のいつでも、何回でも可能
提供可能な
情報
・新規性欠如、進歩性欠如に関する情報のみ

・先行技術に関する文献(国際出願日以前に発行されたもの、または優先日が国際出願日以前の特許文献)に限定

・提出可能な文献の数は最大10件、各文献に対する情報は最大500文字
・新規性欠如、進歩性欠如の他に、新規事項の追加、産業上利用可能性の欠如、拡大先願、記載要件違反、先行技術文献情報開示要件違反などに関する情報

・「書面」であれば、文献に限らず、実験報告書などの証明書類も提出可

・提出する書面の数、刊行物等提出書の文字数に制限なし
匿名に
よる提供
可能 可能
出願人に よる
反論
優先日から30ヶ月までにWIPO国際事務局にコメントを提出可能 日本国特許庁に上申書を提出可能。提出期限なし。
情報提供/ 出願人コメントの公開 WIPOホームページのPATENTSCOPEより閲覧可能、但し、文献の公開なし 包袋閲覧の申請によって閲覧可能 (IPDLでは書類の提出日のみ確認可能)
メリット ・国際調査報告や国際予備審査報告で考慮される

・WIPO国際事務局に情報提供を行うだけで、全指定国に情報が送付される
・新規性、進歩性以外の問題についても指摘することが可能

・文献以外に実験証明書なども提出可能

・情報提供可能な期間や回数に制限なし
デメリット ・提供可能な情報に制限あり

・情報提供可能な期間と回数に制限あり
・日本国特許庁にしか情報提供することができない(他の出願国には、個別に情報提供を行う必要がある)

・情報提供に対する出願人のコメントを考慮した追加の情報提供も可能

 

PCT国際出願に対する情報提供のメリット: 

上記の表から明らかなように、PCT国際出願に対する情報提供は、提出可能な情報が新規性と進歩性に関する情報に限られ、また、文献の数は最大10件、各文献に対する情報は最大500文字という制限があります。しかしながらこの制度には、以下のメリットがあります。

(1)国際調査報告や国際予備審査報告に影響を与えることができる

国際調査報告や国際予備審査報告が作製される前に情報提供を行えば、提供した情報は、上記報告の作製時に考慮されます。国際調査報告と国際予備審査報告は多くの国の特許庁が審査の際に参考にするため、国際出願の特許性に否定的な国際調査報告や国際予備審査報告は、各指定国における権利化の防止または権利範囲の制限に有効に働くと考えられます。 

(2)WIPO国際事務局から全指定国に提供した情報が送付される

WIPO国際事務局に情報提供を行えば、優先日から30ヶ月の移行期限経過後には、全指定国に提供した情報が送付されます。従って、複数の出願国に個別に情報提供を行う場合よりも、労力やコストの面で有利です。(但し、WIPOは提供された情報をそのまま、訳文を作製せずに、指定国に送付します。従って、指定国(または情報提供に使用する言語)によっては、情報がどの程度考慮されるのかは不明です。)

各国で個別に情報提供を行うことのメリット: 

国によって特許の審査基準は異なるため、各指定国の特許庁に個別に情報提供を行うことによって、その国の審査基準に沿った情報提供が可能になります。また、情報提供制度も国によって異なりますが、一般的に審査官には提供された情報を検討することが義務付けられていることから、提供した情報が審査に使用される確率も高まると考えます。

例えば、日本における刊行物等提出書による情報提供は、PCT国際出願に対する情報提供と比べて、提供可能な情報の種類や量が遥かに多く、他社出願に特許性がないことをより詳細に説明することが可能です。

更に日本における刊行物等提出書は、出願後であればいつでも提出できます。従って、公開前であっても何らかの方法で出願に関する情報(出願番号と発明の内容など)を知り得た場合、その出願の公開前に刊行物等提出書による情報提供が可能です。そのように公開前に刊行物等提出書することができれば、例え国際出願が出願直後に日本への移行手続を進め、更に早期審査の請求をしていても、審査に間に合うように情報提供を行うことが可能です。(上記のように日本で早期審査を請求した場合、国際出願の優先日から30ヶ月が経過する前に特許査定となることがあります。この場合、PCT国際出願に対して提供した情報は特許査定後に日本国特許庁に送られてくるため、審査の際に考慮されることはありません。)

また、特許後に 刊行物等提出書による情報提供をする場合には、特許権者に無効理由が存在する可能性や無効審判を請求される可能性を認識させることによる、特許権行使に対する牽制効果が見込まれます。

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