理屈

パラメータ発明、パラメータ特許について(Part 3 日本における注意事項)

(II-4)パラメータ発明に関する日本出願の注意事項:

前回"Part 2"で説明しました通り、日本(と韓国)以外の国においては、パラメータ発明であっても他の数値限定発明の場合と要求事項は大差有りませんが、日本(と韓国)においては厳しい要件が有ります。

特に日本では、米国や欧州と比較して、サポート要件と明確性要件が厳しくなっております。

日本では、パラメータ発明の出願などの所謂「複雑出願」(膨大な選択肢を有したり、もたらされる結果で発明を記述したり、特殊なパラメータで発明を記述しようとする特許出願)といわれる出願の増加にともない、サポート要件の審査基準が厳しくなってきています。つまり、従来はクレームと明細書との単なる形式的な記載レベルの整合性が審査されることが主でしたが、近年では、技術の内容に立ち入って実質的な対応関係が審査されるようになりました。具体的には、以下のようなことが要求されます。

データ(実施例)

クレームされた当該パラメータの全範囲にまで発明を一般化できると主張できる充分なデータを明細書に記載すること、つまり、当該パラメータの全範囲をカバーする充分な数の実施例を記載することが重要です。

どの程度で「充分」と言えるのかは、ケース・バイ・ケースですが、例えば、中国の審査基準には以下のような要件が記載されています:

「通常は両端の数値付近(最適は両端値)の実施例を記載し、数値範囲が広い場合には、少なくとも一つの中間数値の実施例を記載しなければならない。」(専利審査指南、第二部分、第二章、2.2.6項)

特に、1つのパラメータで発明が定義されている場合は、国を問わず、上記は有効な指標となるでしょう。

一方、複数のパラメータの論理積(複数パラメータの規定範囲の重複部分)として発明が定義されているような場合は、要求されるデータは必然的に多くなります。その境界における臨界性(範囲内外での効果の違い)を明確にする為に多くのデータが要求されることがあります(理屈としては、ベン図における論理積(重複部分)の境界線を明らかに出来る程度の数のデータが必要になります)。上で述べた偏光フィルム事件は、複数のパラメータで発明が規定された例にあたり、実施例2つと比較例2つでは不十分であると認定されました。

もしも、どうしても出願時点で充分なデータを揃えられないという場合は、次善の策として、少なくとも、明細書に記載されるデータからその式を導き出すこと、及び、クレームされた数値範囲を定めること、が妥当であることを示す一応筋の通った理論や理由を述べておくことが絶対に必要です。

パラメータを規定する式

式などでパラメータを記載する場合は、明細書に記載されるデータからその式を導き出した根拠とクレームされた数値範囲を定めた根拠についての説明を述べることが要求されます。

パラメータで規定する範囲

パラメータの数値範囲が一見して非常に広範囲である印象を与える場合は、一般には具体的にどのくらいの数値範囲となるのかを示すことが望ましいとされています。

パラメータの数値範囲に下限または上限のいずれか片方しかない場合(所謂「オープンエンド(open ended)」のパラメータの場合)は、下限または上限の無い全範囲にわたってサポートされてはいないとみなされる可能性があります(または、不明確であるとみなされる可能性があります)。したがって、下限または上限を記載することが不可能でない限りは、それを、少なくとも明細書には記載しておくことが非常に望ましいと考えます。その際、下限または上限を記載することが真に不可能である場合は、その理由を合理的に記載しておくことが望ましいと考えます。

パラメータの明確性

測定方法が不明確であるために権利範囲が不明確となるという場合の典型例は、以下の通りです。まず、明細書に測定方法が記載されているが不明確である場合があります。また、明細書に複数の測定方法が記載されており、どの方法を用いるかで測定値に違いが生じるので不明確となる場合もあります。また、明細書に測定方法が記載されておらず、一般に複数の測定方法が知られており、どの方法を用いるかで測定値に違いが生じるので不明確となる場合もあります。したがって、当業者が疑問を生じることなく正しく実施できる1つの測定方法を明確に記載する必要があります。

また、当該パラメータが直感的に理解し難い複雑な式などで記載されている場合は、「当該パラメータの技術的意味が不明確である」という指摘や、「当該パラメータを特定の範囲とすることが発明の作用・効果とどのように関連するのかが不明確である」という指摘を審査官から受ける可能性があります。

尚、「技術的意味」について、審査基準では、「発明を特定するための事項の技術的意味とは、発明を特定するための事項が、請求項に係る発明において果たす働きや役割のことを意味し、これを理解するにあたっては、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮する」と述べられています。したがって、直感的に理解し難い複雑な式などでパラメータを記載する場合は、その「技術的意味」、すなわち、「発明において果たす働きや役割」(言い換えると、発明の作用・効果とどのように関連するのか)についての分かりやすい説明を明細書に記載することが必要です。

従って、日本(若しくは韓国)での権利化が重要であれば、審査基準に鑑み以下の様な点に注意して出願明細書を作成することが望ましいと考えます。

① 明細書に、クレームされたパラメータの範囲の技術的意味(すなわち、「発明において果たす働きや役割」)を明確に記載する。

② 式などでパラメータを記載する場合は、明細書に記載されるデータからその式を導き出した根拠とクレームされた数値範囲を定めた根拠についての説明を記載する。

③ パラメータ発明と従来技術のものとの関係を明細書において明確にしておく。すなわち、たとえば、「従来技術のものがクレームに記載するパラメータの範囲に入らず、発明の効果を発揮しないこと」を示すことができる比較実験データを実施例や比較例として記載する。

④ クレームされた当該パラメータの全範囲にまで発明を一般化できると主張できる充分なデータを含む実施例と、出来れば先行技術に相当する比較例やパラメータの臨界性を示す比較例(クレームしたパラメータ要件を満たさない場合、意図した効果が達成できないことを示す実験データ)とを明細書に記載する。  パラメータの数値範囲に下限と上限のいずれか片方しか設けない(open end)ということは、なるべく避けて、下限または上限を記載することが不可能でない限りは、少なくとも明細書には記載しておく。

⑤ パラメータ発明のものを製造する方法(製造条件)を明確に記載する(製造条件に関する種々の具体的な数値を記載する)。特に、当該パラメータを制御してクレーム範囲内の任意の値を容易に達成できるような手段を記載する。

⑥ 当該パラメータの数値を決定するための1つの測定方法を明確に記載する。

⑦ 出願後に実験データなどを提出することによって記載要件(サポート要件や実施可能要件)の不備を解消することは認められていないので、特にこの点で充分なデータや説明を記載しておくように留意する。

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欧州(2)

Q. 口頭審理(Oral Proceedings)には誰が出席できて、誰が発言することができるのか?

A. 前もってEPOに知らせておけば基本的には誰でも出席することは出来ますが、発言を許される人は制限されます。例えば、出願人企業の知的財産部の方なども出席できますが、確実に発言権を確保するためには事前に技術の専門家(Technical Expert)であることをEPOに通知しておくことが望ましいです。

実際には、それほど厳密に管理はされていないようで、弊所の所員が発言権を確保せずに出席した際にも、その場で発明者の通訳や簡単なコメントを致しましたが、特に咎められるようなことはありませんでした。しかし、確実に発言権を確保するためには事前に申請しておくことをお勧めいたします。

 

Q. 口頭審理において、パソコンなどを利用したプレゼンテーションは可能か?

A. 審査官や審判官の指示に従って、ノートパソコンやその他の電子器機、若しくはコンピュータを利用したスライドショーなどを使用することが許されます(審査ガイドラインE-II,8.2.1,8.5.1

 

Q. 欧州特許に対する異議申立てに関して、異議決定(特許維持)に対する不服審判請求を行う際に、異議段階で提出可能であったにもかかわらず提出しなかった特許性に重要な影響を与える新たな証拠を、審判請求時に初めて提出した場合、審判部はそのような証拠を考慮してくれるのか?

A. 証拠の重要度にもよりますが、異議段階で相手に考慮させなかったのがアンフェアとみなされると、一審(異議段階)に差し戻される可能性が有ります(T 611/00)。しかし、指定された提出期間内に提出された証拠であれば、審判部が全くこれを考慮せずに(また一審に差し戻すこともせずに)決定を出すようなことは無いと予想されます。

Q. 自社の欧州特許に対して異議申立てを受け、相手に先使用(public prior use)の証拠を提出された。先使用技術に対しては、新規性のみを有していれば良いのか?それとも進歩性も有する必要があるのか?

A. 先使用が証明された場合、先使用技術に対して新規性のみならず、進歩性も立証する必要があります[T 1464/05(先使用物がclosest prior artと見なされた)]。

Q. 欧州において、公知物質の純度を向上させただけで特許性が認められることはあるか?

A. 多くの場合、公知物質の純度を向上させただけでは新規性が認められません。
例えば、判例T990/96には、低分子量の化合物の発明に関して、以下のように述べられております。

- 化学反応によって得られる化合物は何らかの不純物を含んでいることは常識であり、化合物を精製することも通常行われていることに過ぎない。

- 低分子量反応生成物の精製に従来使用されている方法を採用することは、当業者の常識の範囲内である。

- 従って、一般的に、低分子化合物自体とその製造方法が公知であったならば、あらゆる純度のものが公知であったと見なす。

但し、例外もあります。例えば、従来の精製方法では、特定の純度が達成出来なかった場合などには新規性が認められる可能性があります。

また、勿論、特定の濃度が先行技術に明示的に記載されていないことが前提になりますが、特定の濃度に技術的意義を見出したような場合にも新規性が認められることがあります。

例えば、判例T142/06においては、ポリマーの塩素濃度を特定のものに限定したことにより、新規性が認められております。この判例は、T990/96に基づきながらも、以下の理由で新規性を認めております。

- クレームされた特定の塩素濃度については、単に純度を上げたということではなく、"oxygen barrier properties"及び "boil blushing properties"などの物性に優れるフィルムを得るという目的のために選択された値である。

- 更に、従来、関連技術分野において、クレームされた特定の純度が望ましいと考えられていたということを示す先行技術文献が存在しない。

以上のように、T142/06は、新規性の判断に関するものでありながら、課題の新規性や意外性などの進歩性の要件ともいえるものを要求しておりますが、ここで参照されている判例T990/96が、元々、公知化合物の純度については「従来知られていなくても新規性なし」という一種の矛盾を含んでいるもので、このような理屈を採用しているものと考えます。換言すれば、これらの判例はいずれも選択発明の審査基準に沿って判断されたものと思料いたします。EPOにおける選択発明の新規性判断基準において、以前は「選択された範囲に発明としての効果が有ること」も要求されておりました。現在は、この要件は進歩性判断の基準へ移されてしまいましたが、判例T142/06の当時は、この要件も新規性判断に含まれていたはずです。

また、判例T 786/00では、特定純度の有機化合物である出発物質(starting materials)の使用が必須要件になっている、優れた耐熱水性を有する重合体の製造方法の発明について、「判例T 990/96における純度についての一般原則は出発物質には当てはまらない」旨の判断を述べています。その理由は、該方法の発明では、優れた耐熱水性を有する重合体を得るという目的を達成するために、特定純度の出発物質の使用が必要なのであり、純度そのものが発明の最終的な目的や発明の対象となる物の特徴ではないからです。参考までに、判例T 786/00の要所の原文を下記に引用します。

"In contrast to T 990/96, the present case relates to a process for the manufacture of polymers having specific properties (i.e. resistance to boiling water) characterised by the use of organic compounds having a required purity as starting components, i.e. the purity level of the starting components is therefore an essential technical feature of the process, which can only be carried out in the required range of purity but not in all available grades of purity of the starting materials." "Consequently, the general statements in T 990/96 concerning the purity of final products cannot be applied directly to starting materials or, hence, to the present case."

Q. 欧州におけるAuxiliary Requestとは?

A. 欧州特許出願に関する審査、許可後の異議申立て、審判などの手続きにおいて、出願人や特許権者は、複数セットのクレームを提出し、それをEPO(審査部、異議部又は審判部)に検討させることができます。

より具体的には、第一希望のクレームセットを“Main Request”(主請求)として提出し、第二希望以降のクレームセットを“Auxiliary Request”(副請求)として提出することができます。

Main Requestとしては、1セットのクレームしか提出することができませんが、Auxiliary Requestは複数提出することができます。Auxiliary Requestを複数提出する場合には、Auxiliary Request 1, Auxiliary Request 2.....の様に番号付けし、EPOは番号の若い方から優先的に検討します。

Auxiliary Requestを提出するデメリットとしては、Main Requestよりも請求範囲の狭いAuxiliary Requestを提出する場合、Auxiliary Requestの方が、特許性が明確であることが多いでしょうから、EPOによるMain Requestの検討が疎かになる可能性を否定できないということが挙げられます。

ですので、広い権利範囲を追求するよりも早期に権利化したい場合や、口頭審理の直前のように後が無いような状況で、Auxiliary Requestを提出することが多いです。

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