指令

米国(2): RCE (Request for Continued Examination)

もう一つ米国特許制度の大きな特徴と言えるのが、RCE(Request for Continued Examination)の存在です。

RCEは、最後の審査通知(final office action)が出た後に、拒絶を克服できない場合に、継続審査を要求できる制度です。[*但し、意匠特許(design patent)や再審査中の特許に関しては、利用できません。]そしてこのRCEは出願が生きている間は何度でも請求することができます。(数年前に、米国特許庁がこのRCEの回数を制限するためのルール改正を行うことを発表したが、訴訟になり、結局は特許庁が敗訴してルール改正は無くなった。)

要するに、米国出願は、出願が生きている限り何度最後の拒絶を受けても許可になるまで何度でもチャレンジできるということになります。このような制度は、米国にしかありません。例えば、日本でしたら、特許性を否定され続けた場合には以下の経緯を辿ることになります。

日本の場合
最後の審査通知 → 拒絶査定 (特許庁審査部)

拒絶査定不服審判 (特許庁審判部)

知的財産高等裁判所への提訴

最高裁判所への上告

日本においても、裏技的な手段として、拒絶査定を受けたら分割出願を行うということもありますが、この場合、勿論、分割出願の請求項を親出願と同じにならないよう補正する必要があります。即ち、分割出願はあくまで新たな出願として審査されるのであって、米国のように審査が継続されるわけではありません。(日本では、もし仮に分割出願の請求項に親出願の審査において拒絶された発明が含まれていると、最初の審査通知であっても、最後の拒絶理由通知への応答の場合と同様に補正の制限が課される。要するに削除、減縮、誤記訂正、明瞭化の目的の補正のみが可能で、新たな特徴を付加するような補正は許可されない。)

欧州では、拒絶査定になってしまったら、欧州特許庁の審判部(Board of Appeal)における拒絶査定不服審判で争いますが、原則その先はありません。即ち、拒絶査定不服審判で特許性を認められないと特許は不成立ということになります。以前は、日本と同様に分割出願を行って延命するという方法があったのですが、2010年の法改正により、分割出願の時期と機会が制限され、拒絶査定を受けた際の延命措置としての分割出願は実質的に不可能になりました。

RCEが可能な時期

審査終結状態にある(prosecution is closed)が、出願が生きている段階であれば請求することができます。具体的には、例えば、以下のような状況で、RCEが可能です。

・ 最後の審査通知(Final Action)発行後で且つ出願放棄確定前

・ 許可通知(Notice of Allowance)発行後で且つ登録料納付前

・ USPTO審判部における審判係属中

審判請求書(Notice of Appeal)提出後に、RCEした場合には、審判請求は取り下げられたとみなされ、審査が再開されます。

審査中で最新の審査通知がfinalで無い場合には、RCEは認められません。

RCE申請手続き

RCEの申請は、料金(large entityで$930、small entitiyで$465)の支払いと共に、RCE申請フォームと以下の書類を提出することが必要です。

出願の状態 RCE請求時に提出する必要がある書類
最後の審査通知(Final Action)後 最後の審査通知に対する応答(既に提出済みの場合は、原則的に必要無し)
査定系クウェイル通知*(Ex Parte Quayle action)後  (*方式的不備を訂正すれば特許査定となる旨を通知するもの) Ex Parte Quayle actionに対する回答
許可通知(Notice of Allowance)後 IDS、補正、新たな議論、新たな証拠など
審判請求後 最後の審査通知に対する応答(例えば、提出済みの審判理由書や審判部の見解に対する答弁書における議論を援用する旨の上申書)


RCEを提出する状況で一番多いのは、Final Actionを受けて補正書、意見書、証拠などを提出したが、それが新たな争点(New Issue)を提起するものであって考慮出来ないとの指摘をUSPTOから受けて、その対応としてRCEを提出するという状況だと思います。そのような場合に、単に提出済み書類を考慮させたいのであれば、RCE申請フォームと料金を支払うだけで済みます。そしてRCEにより審査が再開され、審査官はFinal Action後に提出したクレームの補正や証拠を考慮した上で、non-finalの審査通知若しくは許可通知(Notice of Allowance)を発行します。

RCEに関する注意事項

場合によっては、折角RCEしたのに、RCE後の最初の審査通知がFinal(しかもRCE前のFinal Actionと同じ拒絶理由)となってしまうことも有りますので注意が必要です。

具体的には、以下の2つの要件が同時に満たされると、RCE後の最初の審査通知がFinal Actionとなってしまいます。

(1) RCE前のクレームとRCE後のクレームとが同一である。

(2) RCE後の審査における拒絶の理由がRCE前の審査における拒絶の理由と同一である。

このような状況になるのは、例えば、Final Actionに対して補正を行わず単に反論のみを提出した場合、Final Actionに対に対する回答が間に合わず、延命措置としてRCEを提出した場合などが挙げられます。

上記のような状況になる可能性がある場合には、RCEと同時若しくはRCE後、速やかに何らかの補正を提出するなどの手段を講じることが望ましいです。その際の補正は純粋に形式的なものでよく、例えば、得に重要でない特徴に関する従属クレームの追加などでも構いません。また、そのクレームが不要であれば、後で削除することもできます。

もしも補正や新たな証拠を提出する予定があるが、準備に暫く時間がかかるような場合には、RCEと同時又はその直後に審査の一時中断を申請する(Request for a 3-month Suspension of Action by the USPTO under 37 CFR 1.103 (c))ということも考えられます。

RCE制度の現状と今後

上記したようにRCEの回数を制限しようとするルール改正は断念されましたが、近年、別の手法でRCE制度の利用を抑制する方向の動きが見られます。

USPTOにおける処理スケジュール

1つは、2009年11月15日から導入されている新たな管理体制です。

以前は、原則として、審査官はRCE後2ヶ月以内にアクションを出すことが求められており、RCEにより、審査が大きく遅れるようなことはありませんでした。しかし、2009年11月15日以降は、RCEが請求された件は、“special new” docket に入れられることになり、そこでは「2ヶ月以内」という制約はなく、審査官は、自らの仕事の負荷に応じて比較的自由なスケジュールで処理することが許されています。

これに伴い、最近は、RCE後の処理の遅れが目立つようになってきています。米国特許庁のウェブサイトで提供されているPAIR(Patent Application Information Retrieval)システムで、出願の経過を確認することができますが、最近は、RCEを請求すると、その後 “Docketed New Case—Ready for Examination” という状態になったまま長らく動きが止まってしまいます。RCE後、半年以上経過してもアクションが出ないケースもあります。

RCE請求の手数料の値上げ

RCEを利用するために、米国特許庁へ支払う料金は、それが何回目の請求であるかに関わらず1回のRCEにつきlarge entityで$930、small entityで$465であったものが、2013年3月19日以降は、一回目のRCEの料金がlarge entity$1,200、small entity$600に、二回目以降のRCEの料金がlarge entity$1,700、small entity$850に値上げされます(2013年1月18日に公表された新料金)。

RCEを不要にする制度の試行

RCE等を利用せずに、審査の効率化を図る目的で以下のような試行プログラムが実施されています。

・ After Final Compact Prosecution (AFCP) 試行プログラム (試行期間:2013年5月18日まで(当初、2012年6月16日までの予定だったが延長された))

現行の規則に従えば、最終庁指令通知(Final Office Action)後に提出された補正や証拠を審査官に考慮させるためには、RCE等の手続きが必要になることが多いが、AFCP試行プログラムでは、Final後に提出された補正や新たな証拠について、限定的な(特許で約3時間、意匠で約1時間以内で済むような)検討や調査によって、該補正や証拠により特許査定できるとの判断が可能な場合、RCE等を行わずに補正や証拠を審査官に考慮させることが可能。

・ Quick Path Information Disclosure Statement (QPIDS)試行プログラム(試行期間:2013年9月30日まで(当初、2012年6月16日までの予定だったが延長された))

米国の現行のシステムにおいては、登録料支払い後にIDSを提出して考慮させる為には、RCEや継続出願が必要だが、QPIDS)試行プログラムでは、登録料支払い後にIDSをUSPTOに考慮させることが可能。


特にAFCPは、試行期間が延長されましたが、出願人や実務者にとって非常に有益な試みであり、常設的なプラクティスとなることが望まれます。これまでは、審査の経緯や審査官の主張の趣旨から考えて、本格的な検討や調査を行わずとも、出願を特許可能な状態にできることが明らかな補正や証拠であっても、Final後は、新たな争点(New Issue)を提起するものであって考慮できないとの指摘を受け、結局、RCEや審判請求が必要になってしまい、非合理的なプラクティスだと感じていた出願人や実務者も多いはずです。そのような指摘も受けての試行プログラムでしょうから、本格実施へ移行する可能性も十分にあると考えられます。

2000年に導入されて以来、盛んに利用されてきたRCE制度ですが、上記のことから分かりますとおり、近い将来、その運用が大きく変わる可能性があります。

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PCT出願料金及び外国出願用英文明細書作成料金

(前提: 和文明細書50ページ(英文65ページ)、優先権主張1件)

費用項目 井上手数料(円) 単価 備考
PCT 出願 基本手数料
250,000
優先権主張手数料
13,000
2件目以降  3,000/件
優先権証明書入手提出
15,000
2件目以降  3,000/件
和文明細書検討料
30,000
優先権の基礎となる日本出願の
明細書があるという前提
タイプ代【和文】
(50ページ)
75,000
1,500/枚
小計
383,000
中間 指令決定報告
(国際調査報告)
15,000
指令決定報告
(予備審査報告)
15,000
答弁書及び
非公式コメントなど
50,000
5,000/枚
頁数10枚として計算
小計
80,000
合計
463,000
指定国移行用
(外国出願用)
英文明細書作成
出願 明細書英訳料(円)
(英文65ページ)
650,000~
812,500
10,000~
12,500/枚
40~50/w 
(難易度や緊急度
などによる)
タイプ代【英文】(円)
(65+50=115ページ)
230,000
2,000/枚

外国特許出願(直接又はPCT経由)と登録に関する料金

英文明細書作成費用については、上記を参照。)
※ EP(DE,GB,FR,ITの4ヵ国を指定した場合)

費用項目 井上手数料(円) 単価 備考
EP 出願 基本手数料
150,000
その他雑費
30,000
小計
180,000
登録 指令決定報告
【Rule 71(3)】
15,000
指定国移行手続
1カ国毎 30,000
その他雑費
30,000
EPから各指定国への移行 登録DE 登録手続完了報告
15,000
雑費
30,000
小計
45,000
登録 GB 登録手続完了報告
15,000
雑費
30,000
小計
45,000
登録 FR 登録手続完了報告
15,000
雑費
30,000
小計
45,000
登録 IT 登録手続完了報告
15,000
雑費
30,000
小計
45,000
合計
180,000

※この他に、現地での政府料金に加えて現地外国代理人の手数料が必要です。
※出願に関する政府料金は、基本料金に加え、主にクレームの数に依存した追加料金が必要になります。又、 その ような追加料金が明細書の長さに依存する国もあります。

※EP以外の出願国の例

費用項目 井上手数料(円) 単価 備考
RU 出願 基本手数料
150,000
その他雑費
30,000
小計
180,000
登録 手数料
15,000
その他雑費
30,000
   
小計
45,000
   
合計
225,000
   
US
出願 基本手数料
150,000
情報開示
30,000
引用文献数により変動する
その他雑費
30,000
小計
210,000
登録 手数料
15,000
その他雑費
30,000
   
小計
45,000
   
 
合計
255,000
   
CA
出願 基本手数料
150,000
その他雑費
30,000
小計
180,000
登録 手数料
15,000
その他雑費
30,000
   
小計
45,000
   
 
合計
225,000
   
AU
出願 基本手数料
150,000
その他雑費
30,000
小計
180,000
 
登録 手数料
15,000
その他雑費
30,000
   
小計
45,000
   
 
合計
225,000
   

※この他に、現地での政府料金に加えて現地外国代理人の手数料が必要です。
※出願に関する外国代理人手数料については、英語以外の国語の国では、上で述べたような 料金に加え更に翻訳料がかかります。

欧州(6.2): 補正の制限 EPC137条(5)

前項で触れたEPC規則123条は補正のサポートについてでしたが、本項では、EPC規則137条(5)[旧137条(4)]に規定されているクレーム補正の制限に関して解説します。これは日本におけるシフト補正の禁止(日本特許法17条2第4項)に対応する規則と考えることが出来ます。

EPC規則137条(5)[旧137条(4)]

EPC規則137条(5)には、以下のように定められています。

 「補正されたクレームは、元々クレームされていた発明若しくは単一の包括的発明概念を形成する一群の発明と関連していない未調査の主題を対象とすることができない。また、規則62a又は規則63に従って調査されていない主題を対象とすることもできない。

[注:下線部分は、旧137条(4)にはなく、137条(5)で新たに追加された。137条(5)が適用されるのは、2010年4月1日以降に欧州サーチレポート又は補助欧州サーチレポートが作成された出願に適用される。]

要するに、調査報告(欧州サーチレポート又は補助欧州サーチレポート)を受けたクレームは、主題を大きく変更することや、出願人が調査の対象として選択しなかったクレームの主題(EPC規則62a又は規則63)に変更することが禁じられています。

尚、上記EPC規則62aは、1つのカテゴリーに複数の独立クレームを含む場合に関するものであり、この規則に従い、原則的にサーチの対象とする独立クレームを1つ選択することが要求されます。

上記EPC規則63は、クレームが不明瞭であるなどの理由により有意義なサーチが出来ない場合に関するものであり、サーチすべき対象を特定することが要求されます。 

EPC規則137条(5)[旧137条(4)]の精神と禁止される補正

EPC規則137条(5)[旧137条(4)]の精神は、出願人が調査費用を支払った対象である発明から、それとは異なる発明に変更する補正は許可しないということです。

条文からは、クレームは元々記載されていなかった事項を明細書本文から抜き出してクレームに導入する補正は許されないような印象を受けますが、必ずしもそうではありせん。調査後にクレームを補正する典型的な状況は、引用された先行技術に対する特許性を明確にするために発明の構成要素をより具体的なものに減縮補正するというような場合であると思いますが、そのような減縮補正を明細書の開示の範囲内で行うのであれば、EPC規則137条(5)[旧137条(4)]に違反しません。

まず、欧州特許庁による調査の対象に関して、欧州審査基準B-III 3.5には以下のように定められています。

「クレーム補正の予測

サーチは、原則的には、可能且つ合理的な範囲内で、クレームが関連している主題並びに補正により関連することが合理的に予測できる主題の全てに対して行われるべきである(但し、単一性欠如の場合は、B-VII, 1.3参照)。


電子回路に関する出願が、機能や操作方式のみに関する1つ以上のクレームを含んでおり、明細書の記載や図面が、具体的な自明でないトランジスター回路を含んでいる場合、そのような回路も調査の対象に含めなければならない。」

関連の審判部判例も多数存在します。例えば、旧137条(4)適用の件では、T 0274/03において審判部は以下の様に述べています:

「従って、調査後に主題の「切り替え」(”switching”)をするということは、主題の性質に重大な変更を加えることを意味することは明確であり、それは通常、元のメインクレームに既に存在していた要素を更に定義するために明細書本文の記載から特徴を加えることと同等に扱うべきことではない。

審判部の判例 (T 377/01、項目3.1項及びT 708/00、項目17:これらは共に欧州特許庁公報には掲載されていない)に従った審判部の見解は、原明細書の記載から補完的な特徴を追加することにより、元のメインクレームを制限することは、未補正クレームの特許性に対する拒絶に際しての出願人の反応として許容し得るものであり、EPC規則86(4)の導入により禁じようとする類のシステム濫用とはならない。従って、たとえ追加の調査が必要になったとしても、この種の補正は通常、本規則の違反とは見なされない。」

また現行の137条(5)EPC適用の比較的最近の判例として、T 2334/11においても、上記T 0274/03と類似の状況で、審判部は上記と類似した趣旨のことを述べています。

これらの判例から分かることは、基本的に、明細書の開示の範囲内で、発明を下位概念に減縮するような補正であれば許容されるはずということです。(但し、下記Bで述べる選択されなかった主題へ変更する補正は除く。)

一方、禁止される補正は、調査されたクレームに記載されていた構成要素や物性などの特徴を、他の構成要素や特徴で「置換」することや「削除」することにより請求する範囲を変更してしまう補正、並びに調査や審査の対象として選択されなかった主題に変更する補正です。

A. クレームの範囲を変更する補正

A-1 削除

構成要素や特徴を削除する場合は、発明を制限する要素が減るわけですから、当然、請求範囲も広くなり、明らかに137条(5)EPCに違反することになってしまいます。

A-2 置換

一方、置換の場合、様々な状況がありえるでしょうが、例えばクレームに記載されている成分やパラメータを、それとの関連性の定かでない異なる成分やパラメータで置換する補正などは、137条(5)EPCを違反することになるでしょう。例えば調査対象クレームが分子量により特定されたポリマーに関するものであったところ、補正により、分子量の限定を構造式で置換してしまった場合などにおいては、補正前と補正後のクレームで重複する部分はあるかも知れませんが、請求されている「範囲」が異なることは合理的に理解できますので、137条(5)違反と看做されると考えられます。

B. 選択されなかった主題へ変更する補正

以下のような主題への変更が禁止されます。

B-1 発明の単一性欠如(EPC82条)の拒絶を受けて、審査の対象から外れたクレームがある場合、そのような審査の対象外となったクレームの主題

B-2 規則62a(同一のカテゴリに複数の独立クレームが有る場合、調査対象として1つ選択することを要求)に従って、調査対象となる独立クレームを選択した場合に選択しなかった独立クレームの主題

B-3 規則63(クレームが不明瞭であるなどの理由により有意義な調査が出来ない場合に、調査対象を特定することを要求)に従って、調査対象の主題を特定した場合に、そこに含まれなかった主題

EPC規則137条(5)[旧137条(4)]違反の拒絶を受けた場合の対応

このEPC規則137条(5)[旧137条(4)]の要件を満たさない補正をしたい場合には、分割出願するしかありません。(勿論、補正は明細書の開示の範囲内であることが必要です。)

しかし、旧137条(4)からEPC規則137条(5)への改正は2010年の"Raising the bar"をスローガンとした規則改定に含まれていたものですが、この規則改定以後、137条(5)による拒絶が濫発される傾向に有り、実際には拒絶の根拠が不適切であるということも十分にあり得ます。そのような場合、反論によって審査官が納得すれば、137条(5)違反の拒絶は撤回されます。

これに関連して、EPC規則137条(5)[旧137条(4)]違反の拒絶に対して直ちに分割出願せずに反論する場合には、欧州では分割出願可能な時期が大きく制限されていることに注意が必要です。分割出願を行わずに反論し、その結果、分割出願の期限を過ぎてから、規則違反が確定してしまうことがあり得ます(例えば、審査部が137条(5)[旧137条(4)]違反の拒絶を維持したまま拒絶査定となり、それに対して審判を請求したが、分割出願の期限を過ぎた時点で、審判部が違反を認めたような場合)。

そのような場合、その時点でクレームを出願時のもの若しくはそれに近い形に戻すことを余儀なくされ、その結果、先行技術に対する新規性・進歩性を明らかに出来なくなるという可能性が有ります。

一方で、一旦特許になってしまえば、137条(5)[旧137条(4)]違反は異議申立の根拠とはなりませんので、第三者から137条(5)[旧137条(4)]違反を根拠に異議を申立てられて、特許取消しになるというようなことは起こりません。従って、分割出願の期限までに、審査官に規則違反が無いということを納得させることができれば問題無いということになります。

欧州出願時に注意すべきこと

上記した通り、単一性欠如(82条)の拒絶や規則62a、63の調査対象特定指令を受けてしまうと、将来クレームの補正が制限されてしまう恐れがあります。

従って、137条(5)[旧137条(4)]による補正の制約を回避するための対策としては、不要なクレームは含めず、更にクレームの範囲も必要以上に広くしないということが考えられます。

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米国(2)

Q. 継続審査請求(RCE、Request for Continued Examination)は何回まで可能か?

A. 特許出願が生きている限りは何回でも可能です。

Q. 継続審査請求(RCE、Request for Continued Examination)を行った場合に、RCE後の最初の審査通知が最後の拒絶理由通知(Final Action)になることはあるか?

A. RCE後の最初の審査通知がFinal Actionとなることは、規則上は有り得ますが、実務上は殆どありません。
RCE後の最初の審査通知がFinal Actionになるのは、2つの要件:

(1)RCE前のクレームとRCE後のクレームとが同一である、

(2)RCE後の審査における拒絶の理由がRCE前の審査における拒絶の理由と同一である、

共に満たされる場合に限ります。

しかし、RCEを行うのは、殆どの場合、Final Action後に提出したクレームの補正や証拠が新たな争点(New Issue)を提起するものであって考慮出来ないと認められた場合です。このような場合に、上記の要件(1)及び(2)に該当することはあまりないはずです。

但し、Final Actionの法定期限内に許可通知(Notice of Allowance)を得ることができずに、延命措置としてRCEをしたというような場合には、RCE後の最初の審査通知が出される前に、なるべく早期に補正(Preliminary Amendment)や新たな証拠を提出しないと、最初の審査通知がFinal Actionになってしまう可能性が有ります。このような状況において、補正や新たな証拠を提出する予定があるが、準備に暫く時間がかかるような場合には、RCEと同時又はその直後に審査の一時中断を申請するRequest for a 3-month Suspension of Action by the USPTO under 37 CFR 1.103 (c)ということも考えられます。

なお、RCEを提出する際に、クレームに何らかの補正を行なうと、次の最初の審査通知がfinal actionとなるのを防ぐことができますので、状況によってはそのような手段を講じることもあります。その際の補正は純粋に形式的なものでよく、例えば、得に重要でない特徴に関する従属クレームの追加などでも構いません。また、そのクレームが不要であれば、後で削除することもできます。

Q. RCEの提出後、一年以上経過したが、全く動きが無い。審査を促進するための手段は無いのか?

A. 近年、USPTOは、RCEの利用を減ずるための方策を採用しており、その1つがUSPTOにおけるRCE後の処理の優先度を下げることです。

その結果、RCE後に次のアクションが出るまで非常に時間がかかるようになってしまいました。弊所の取扱い案件においても、RCE後のアクションが出るまで1年近くかかった例が幾つか有ります。1年以上アクションが無いということもあると聞きます。

考えられる対策としては、米国代理人に直接、審査官に問い合せてもらうか、若しくは面談の申請をすることが挙げられます。尤も、前者については、審査官はRCE案件を速やかに処理することは要求されないため、効果が得られるか定かで無く、また後者については、もし面談後にRCEを請求したというのであれば、効果とコストの観点から現実的なオプションでは無いかも知れません。

尚、多くの出願人や実務者がRCE後の審査の遅延を問題視しており、現在USPTOがパブリックオピニオンを求めている模様です(2013年2月4日まで)。従って、近い将来改善される可能性は有りますが、現在の所、RCEを請求すれば、常に審査が大幅に遅れる可能性があるということを念頭に置かなければならないようです。

Q. 米国において最後の拒絶理由通知(Final Office Action)後に補正を行わずに、37 C.F.R. § 1.132に基づく宣誓供述書を提出した場合、これは考慮されるのか?

A. 状況により考慮されることも有りますが、弊所の経験からは、新たな検討を要するという理由で、継続審査請求(RCE)や審判請求(Appeal)を行わないと検討してもらえないことが多いようです。

Q. 最後の拒絶理由通知(Final Office Action)後に回答書を提出して、法定期限内(Final Actionの日から6ヶ月)に次の審査通知が出ないことがあるのか?その場合どうなるのか?

A. あります。最後の拒絶理由通知の日から6ヶ月の法定期間内に許可通知(Notice of Allowance)(拒絶理由通知ではありません)が出されず、且つ、出願人が該6ヶ月の期間内にRCEや審判請求を行うなど出願を継続させるための手続きを取ることを怠った場合、出願放棄と見なされます。

注意すべきは、上記6ヶ月の期間内に審査官の応答があっても、それが許可通知ではなく拒絶理由通知("Advisory Action"と言います)である場合には、出願人はそのAdvisory Actionに回答する義務があり、上記6ヶ月の期間内に許可通知がもらえそうにないときには、出願人は上記6ヶ月の期間内にRCEや審判請求を行うなど出願を継続させるための手続きを取っておかなければならない、ということです。

Q. 米国における分割出願と継続出願との違いがよく分からないのだが?

A. 米国では、Restriction指令により審査対象外となったクレームに関して出願し直す場合のみ"divisional application"(分割出願)と称し、自発的に行う「分割出願」は"continuation application"(継続出願)と称します。

Q. ターミナルディスクレーマー(Terminal Disclaimer)とはどのようなものか?

A. ある特許出願のクレームが、その出願と同一の発明者または譲受人による他の特許又は特許出願のクレームと同じでないにしても特許的に区別できない(not patentably distinct)と判断された時に、自明型(obviousness type)二重特許(ダブルパテント)の拒絶理由が出されます。Terminal Disclaimerは、この自明型二重特許の拒絶理由を解消するための手段です。

具体的には、Terminal Disclaimerを提出して、先願の特許権存続期間の満了日と一致させるように後願の特許権存続期間の一部を放棄することにより、自明型二重特許の拒絶を解消することができます(MPEP § 804.02 II.)。

尚、Terminal Disclaimerは、先願特許と後願特許の発明者または譲受人が同一である限りにおいて有効な手続だということに注意が必要です。Terminal Disclaimerによって拒絶を克服して特許を受けた後に、先願特許と後願特許のどちらか一方だけが他人に譲渡された場合には、後願特許は権利行使不能(unenforceable)になってします。

一旦受理されたTerminal Disclaimerを取り下げることについては特許発行前若しくは再審査(Reexaminationにおける再審査証明書(Reexamination Certificate)の発行前であれば可能ですが、それ以後は、ほぼ不可能になってしまいます。再発行(Reissue)や訂正証明書(certificate of correction)などでTerminal Disclaimerを無効化することはできません。(1490 Disclaimers [R-7] - 1400 Correction of Patents)従って、Terminal Disclaimerを提出する際には、譲渡の可能性などについて慎重に検討することが必要です。

因みに、ある特許出願のクレームが、その出願と同一の発明者または出願人による他の特許又は特許出願のクレームと同一と判断された場合には、同一発明型(same invention type)二重特許の拒絶を受けます。この場合、Terminal Disclaimerによって拒絶を解消することはできず、クレームの削除や補正によりクレームを明確に差別化することが必要になります。

Q. 米国において特許無効立証の証拠として、審査の段階で審査官に考慮された先行技術文献と、考慮されなかった先行技術文献では重要度に違いがないのか?

A. 成立済みの特許の有効・無効の判断においては、特許が有効であることが推定され(patent is presumed valid)、特許無効の立証の為の証拠基準は「明白且つ説得力のある証拠」(Clear and Convincing Evidence)であることが要求されます。このことは、無効の証拠として使用される先行技術文献が、審査の段階で審査官に考慮されたものであるか否かには影響されません。

この点については、Microsoft Corp. v. i4i Limited Partnership事件の最高裁判決(2011年6月9日)において、Microsoft社が、審査段階で考慮されなかった先行技術文献に関しては、これに対して特許が有効であるという推定が成り立たず、そのような文献については、特許無効の立証の為の証拠基準は「明白且つ説得力のある証拠」(Clear and Convincing Evidence)ではなく、「証拠の優越性」(Preponderance of Evidence)(即ち、その証拠に基づいて、どちらかと言えば無効である可能性が高いと判断されれば特許無効)とすべき、と主張しましたが、米最高裁は、これを退け、審査段階で考慮されたか否かに関わらず、従来からの基準である「明白且つ説得力のある証拠」(Clear and Convincing Evidence)を適用すべきことを明確にしました。

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