必要性

欧州(3): 調査報告(サーチレポート)に対する応答と自発補正

欧州サーチレポートに対する応答に対する応答義務

2010年4月1日に施行された欧州特許条約(EPC)の施行規則改定により、欧州サーチレポートに対する応答(正式にはサーチレポートに添付されている調査見解書に対する応答)が義務化されました。 但し、応答の義務があるのは、欧州サーチレポートが否定的な内容である場合(特許性の瑕疵の指摘や補正の必要性の指摘などを含んでいる場合)にのみ応答が必要となります。期限内に応答しない場合には、出願取り下げとなってしまいます。肯定的な内容である場合は、応答の必要はありません。

応答の対象となるレポートや応答の期限は、出願の方式により異なります。日本国内の出願人による欧州出願の場合、応答の対象となるレポートや応答の期限は以下のようになります。

国際調査機関/ 国際予備審査機関 応答すべきサーチレポート*1 応答期限

Case 1:

非PCT経由の欧州出願

--- EESR (ESR+調査見解書 EESRの公開から6ヶ月以内*2

Case 2:

日本語でPCT出願

→ 欧州移行

JPO EESR (SESR+調査見解書)  EESR公開の約1ヶ月後に発行される応答要求の通知(規則70(2)、70a(2))から6ヶ月以内

Case 3:

英語でPCT出願

→ 欧州移行

(国際調査機関及び国際予備審査機関として、JPO又はEPOのいずれかを選択できる

JPOの場合(Case 3-1)

 

EESR (SESR+調査見解書)  EESR公開の約1ヶ月後に発行される応答要求の通知(規則70(2)、70a(2))から6ヶ月以内
EPOの場合(Case 3-2) ISR/IPER ISRの公開又は欧州移行の遅い方から約2ヶ月後にEPOより発行される応答要求の通知(規則161(1))から6ヶ月以内

*注:
1) ESR: European Search Report, 欧州調査報告
   SESR: Supplementary European Search Report, 補充欧州調査報告
   EESR: Extended European Search Report, 拡張欧州調査報告 (ESR又はSESR+調査見解書)
   ISR: International Search Report, 国際調査報告
   IPER: International Preliminary Examination Report, 国際予備審査報告

2) 実際には、EESRの発行前に審査請求がされていた場合には、EESR発行後に出される審査請求の確認要求通知に対する回答期限ということになるが、この回答期限は実務上はESSR発行後6ヶ月であるため、結局は、審査請求の有無によらずEERS発行後6ヶ月の期限ということになる。

自発補正

2010年4月1日の規則改正により自発補正が可能な時期が制限されましたが、自発補正の期限は上記のサーチレポートに対する応答期限と同様になります。

上記Case 2とCase 3-1(JPOが国際調査機関及び国際予備審査機関であるPCT出願)の場合には、SESR(補充欧州調査報告)よりも前に発行される規則161(2)の通知から1ヶ月以内にも自発補正を行うことが出来ます。

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各種出願料金(概算)

国内外において知的財産関連の出願をすると、登録までに様々な費用が発生します。詳細な料金表をみてもなかなか総合的にどのくらいの費用が必要なのかイメージし難いと思いますので、以下に各出願に関する平均的な費用をあげておきます。(PCT出願を含む外国特許出願に関するより詳細な料金表は、ページ左のメニューからご覧下さい。)

もし、より詳細な料金やお見積もり(無料)をご希望の際には、こちらのお問い合わせフォームまたはお電話(03-3582-2971)にてご連絡下さい。

I. 特許

I-1. 日本国内特許出願

・出願費用 : 約25~35万円(政府費用含む)(難易度、請求項の数、明細書の長さ等により変動)
・審査請求 : 20万円前後(政府費用含む)(請求項の数により変動)
・中間処理 : 約10~20万円
 (審査通知1回、5~15ページの回答書として)  (審査通知の回数、難易度等により変動)
・登録 : 約12万円(政府費用含む)(請求項の数により変動)

登録までの概算の総額 : 約65~90万円

I-2. 特許協力条約(PCT)に基く国際特許出願

約55~65万円(政府費用含む)(難易度、明細書の長さ等により変動) (PCT経由の外国出願に関するより詳細な料金表はこちらです。)

I-3. 外国特許出願(国別直接又はPCT経由)

外国出願の場合、翻訳すべき明細書の長さ、及び出願国や外国代理人などによって大きく異なるので、非常に大雑把になってしまいますが概算の費用は以下の通りです。

・明細書翻訳 : 約45~85万円(英文明細書35~70ページとして)
・外国出願から登録までの弊所費用 : 約40~55万円/1ヶ国  (審査通知1回、10~20ページの回答書として)
・外国出願から登録までの外国代理人費用 : 約50~150万円/1ヶ国  (出願国、現地代理人、現地語への翻訳の必要性、審査通知の回数などによって大きく変動します)

II. 実用新案

II-1. 日本国内実用新案出願

・出願費用 : 約20~30万円(政府費用含む)(難易度、請求項の数、明細書の長さ等により変動) ・審査請求 : なし(無審査で約半年~1年以内に登録されます)
・登録 : 約4万円(政府費用含む)(請求項の数により変動)

登録までの概算の総額 : 約25~35万円
*日本においては、実用新案の権利行使をする場合には、 特許庁より技術評価書(考案の新規性・進歩性等を評価したもの) を入手する必要があります。その場合、上記の費用に加えて約8~9万円程度必要です。

II-2. 外国実用新案出願

外国出願の場合、翻訳すべき明細書の長さ、及び出願国や外国代理人などによって大きく異なるので、非常に大雑把になってしまいますが概算の費用は以下の通りです。

・明細書翻訳 : 約25~40万円(英文明細書20~30ページとして)
・外国出願から登録までの弊所費用 : 約25~35万円/1ヶ国
・外国出願から登録までの外国代理人費用 : 約25~35万円/1ヶ国  (出願国、現地代理人、現地語への翻訳の必要性などによって大きく変動します。)

III.商標

III-1. 日本国内商標出願

・出願費用(1区分として) : 約8万円(政府費用含む)(2区分目以降は+¥5,000/区分)
・審査請求(不要)
・中間処理 : 約8万円(審査通知1回、5ページの回答書として)
・登録 : 約9.5万円(印紙代(1区分につき¥37,600)含む)

登録までの概算の総額 : 約25.5万円(1区分の場合)

III-2. 外国商標出願

外国出願の場合、国や外国代理人などによって大きく異なるので、非常に大雑把になってしまいますが概算の費用は以下の通りです。

・外国出願から登録までの弊所費用 : 約23万円/1ヶ国  (1区分、審査通知1回、約5ページの回答書として)
・外国出願から登録までの外国代理人費用 : 約10~40万円/1ヶ国  (出願国、現地代理人、審査通知の回数などによって大きく変動します)

III-3. マドリッドプロトコルに基く国際商標出願(区分数2で、米国、ドイツ、中国の3カ国として)

・出願費用 : 約38万円(政府費用含む)  (区分数や指定国*及びその数により大きく変動)
・国際商標出願完了から指定国における登録までの弊所費用 : 約23万円/1ヶ国  (1区分、審査通知1回、約5ページの回答書として)
・国際登録完了から指定国における登録までの現地代理人費用  (政府費用も含めて) : 約10~30万円/1ヶ国(出願国、現地代理人、審査通知の回数などによって大きく変動します)

*出願時に特許庁に支払う「指定国料金」は国によって大きく異なります。さらに区分数が増えると指定国料金が増える国(例えば米国や中国)とそうでない国(例えばドイツ)があります。今回の例で言えば、米国¥82,000、ドイツ¥6,500、中国¥46,000で合計¥134,500です。

IV. 意匠

IV-1. 日本国内意匠出願

・出願費用 : 約10万円(政府費用含む)(難易度により変動)
・審査請求(不要)
・中間処理 : 約9万円(審査通知1回、5ページの回答書として)(審査通知の回数、難易度等により変動)
・登録 : 約9万円(政府費用含む)

登録までの概算の総額 : 約28万円

IV-2. 外国意匠出願

外国出願の場合、国や外国代理人などによって大きく異なるので、非常に大雑把になってしまいますが概算の費用は以下の通りです。

・外国出願から登録までの弊所費用 : 約28万円/1ヶ国  (審査通知1回、約5ページの回答書として)
・外国出願から登録までの外国代理人費用 : 約20~60万円/1ヶ国  (出願国、現地代理人、審査通知の回数などによって大きく変動します)

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パラメータ発明、パラメータ特許について(Part 4 新規性・進歩性)

[III] 「パラメータ発明」の新規性・進歩性(非自明性):

(III-1)各国における新規性・進歩性の判断

日本、韓国
日本においては、審査官は、合理的に判断して先行技術と同一である蓋然性が高いと判断した場合には、新規性を否定する拒絶を出すことが出来ます。(特許審査基準 第II部、第3章、3.4)

即ち、本発明で規定した特殊パラメータに関して先行技術に記載が無くとも、そのパラメータ以外の構造的特徴や特性の類似性、又は製造方法の類似性に基づいて、先行技術において特殊パラメータ要件が満たされている蓋然性が高いと合理的に判断出来れば、審査官は新規性の拒絶を出すことが出来ます。

このような蓋然性は、日本の審査基準においては「一応の合理的な疑い」と称されております。韓国においても、日本と同様に「一応の合理的な疑い」に基づいて新規性欠如の拒絶を出すことが出来ます。

米国
米国の審査基準においては"Doctrine of inherency"(固有性の原則)に基づいて判断されます(MPEP2112)。米国においては、新規性欠如(anticipation)のprima facie case [(反証がないかぎり申し立てどおりになる)一応の証明がある件]は、inherencyに基づいて良いとされております[ In re King, 801 F.2d 1324, 1327 (Fed. Cir. 1986)]。

要するに、日本も米国も、先行技術においてクレームされた特殊パラメータは明示的(explicitly)には開示されていないが、合理的に判断して、内在的(implicitly)に達成されている可能性が高いという理由で新規性が否定されることが有ります。

欧州
EPOの審査基準9.6(Implicit disclosure and parameters)においては、特殊パラメータで規定された発明の新規性を否定できるのは、先行技術において特殊パラメータ要件が開示されていなくても満たされていることについて疑いがないような場合(where there can be no reasonable doubt)に限られると記載されています。そのような場合の例として、先行技術文献に、本発明と同じ原料と製造方法が記載されている場合が挙げられています。

要するに、一般的に、特殊パラメータ発明の新規性については、日本や米国よりも欧州の方が認とめられやすいという傾向があると言えます。

例えば、米国において要求される証拠能力を表す"preponderance(優位性)"と"clear and convincing"(明確かつ説得力のある)という表現を使用すると、ある先行技術文献が、内在的に本発明の特殊パラメータ要件を満たす証拠(先行技術)として認められるかどうかについて、日本や米国では、"preponderance(優位性)"(どちらかと言えば先行技術において満たされている可能性が高い)があれば、審査官は新規性を否定する拒絶を出すことができ、一方、欧州においては"clear and convincing"(明確かつ説得力のある) である(先行技術において満たされていることがほぼ確実と言える)ような場合にのみ新規性の拒絶を出すことができると言えると思います。

中国
基本的には、日本や米国と同様と考えて良いと思います。中国の審査基準においては、日本や米国のように、「一応の合理的な疑い」や"prima facie case of anticipation"により新規性を拒絶することが可能と明示的には述べられておりませんが、それと同等の記載が中国専利審査指南、第二部分、第二章、3.2.5項に見いだせます。例えば、以下のような記載が有ります:

「逆に、属する技術分野の技術者は当該性能、パラメータに基づいても、保護を請求する製品を対比文献と区別できないならば、保護を請求する製品が対比文献と同一であることを推定できるため、出願された請求項に新規性を具備しないことになるが、出願人は出願書類又は現有技術に基づき、請求項の中の性能、パラメータ特徴を含めた製品が、対比文献の製品と構造及び/又は組成において違うことを証明できる場合を除く。」

そして1つの具体例として、以下を挙げています:

「例えば、専利出願の請求項がX回折データなど複数種のパラメータにより特徴づけた結晶形態の化合物Aであり、対比文献で開示されたのも結晶形態の化合物Aである場合、もし、対比文献の開示内容に基づいても、両者の結晶形態を区別できなければ、保護を請求する製品が対比文献の製品と同一であることを推定でき、当該出願された請求項は、対比文献に比べて、新規性を具備しないことになるが、出願人は出願書類又は現有技術に基づき、出願された請求項により限定された製品が対比文献に開示された製品とは結晶形態において確かに異なることを証明できる場合を除く。」

要するに、本発明と先行技術が共に結晶形態の化合物Aであり、本発明ではX線回折データなどのパラメータ規定が有るとところ、先行技術においてこれが満たされているのか不明な場合、新規性を否定する拒絶を出すことができる、とされています。

共に結晶形態の化合物Aであって、パラメータが不明であれば新規性無しで拒絶出来るということであれば、日本における「一応の合理的な疑い」よりも更にハードルが低い(簡単に、新規性欠如の審査通知を出せる)ことになるように思います。

以上のことから、特殊パラメータで規定した発明の場合、日本、米国、中国、韓国では、合理的な判断に基づいて新規性欠如の可能性が高いと判断すれば新規性欠如の拒絶を出すことができ、欧州は新規性欠如であることに疑いが無いような場合にしか新規性欠如の拒絶を出すことが出来ないということになっております。しかし、勿論、新規性が認められたとしても、進歩性も認められなければ特許は認められません。

いずれにしても新規性のみならず進歩性を確立しなければ、特許は認められませんので、通常は、拒絶理由が新規性欠如であるか進歩性欠如であるかはそれ程重要ではありませんが、例外として、審査官に引用された先行技術文献が、出願時に未公開であった先願(所謂"secret prior art")の場合には大きな問題となる可能性が有ります。

即ち、出願時未公開の先願の場合には、米国以外の多くの国においては、これに対して新規性さえあれば進歩性が無くても特許が認められることになっておりますので、新規性が認められれば特許性を認められることになります。ですから、例えば、特殊パラメータで規定された発明の場合に、そのパラメータが知られていなかったというだけで新規性が認められるならば、出願時に未公開であった先願に対しては自動的に特許性が認められるということになります。このことについては、こちらで詳細に説明しております。

進歩性については、特殊パラメータで規定された発明は、殆どの場合、パラメータ範囲で特定の効果が得られることに基づいていると考えられますので、先行技術においてその特殊パラメータを満たすものが得られていなかったことを明確に出来れば(要するに新規性を明確にできれば)、進歩性は比較的容易に認められるケースが多いと思われます。

(III-2)典型的な拒絶理由

パラメータ発明に関する特許出願が、新規性・進歩性(非自明性)の欠如で拒絶される場合の典型的な理由としては、以下のようなものがあげられます。

(1) 先行技術文献に記載された他のパラメータからの換算、推定により、本発明のパラメータ要件が満たされている蓋然性が高い。

(2) 上記パラメータ以外の特徴が共通しており、さらに先行技術が本発明と同様の効果を謳っているため、本発明のパラメータ要件が満たされている蓋然性が高い。

(3) パラメータ発明の出願明細書に記載されるのと同じ又は類似の出発物質と製造方法が先行技術文献に開示されている。従って、本発明と同様のものが得られている蓋然性が高い。

(III-3)対応策

上記からも明らかな通り、特殊パラメータ発明の場合には、従来知られていなかったパラメータで発明を定義するという性質上、先行技術の開示のみからは、クレームされた発明との相違が分からないため、新規性の拒絶理由は「先行技術において内在的にパラメータ要件が満たされている可能性が高い」ということになります。

典型的には、以下の2通りの方法のいずれかによって対処します:

(1)先行技術の実施例を再現して本発明のパラメータが達成されていないことを証明する。

(2)本発明のパラメータ要件を達成するための方法について以下を証明する:  2-1)本発明で採用されている「特定の製造方法」でなければ、クレームされたパラメータ要件を満足することができない。

2-2) 先行技術においては、上記の「特定の製造方法」は採用されていない。

上記(1)の如く「先行技術の実施例を再現」して、本発明のパラメータ要件が達成されていないことを立証する場合、先行技術の実施例の1つや2つを再現すれば良いのであれば、それ程手間もかからないでしょうが、先行技術の特定の限られた実施例についてのみ再現実験を行って、新規性が認められるということは多くないと思います。

一方、先行技術文献の実施例を全て再現すること若しくは先行技術文献の代表的な実施例(先行技術の開示範囲をカバー出来るような実施例)を選択することは通常難しく、更に、このような対応を取ったとしても、先行技術の開示を実施例に限定して考えるべきではない(先行技術文献の記載全体を考慮した上で、本発明が教示も示唆もされていないことを示す必要がある)という趣旨の指摘を審査官から受けてしまうことも充分あり得ます。

このような理由から、実際には、上記(2)の「本発明のプロダクトを得るための製造方法」に基づいて、新規性を示すことによって対応することが多いと思います。

この場合、本発明において採用されている製造方法が、先行技術で採用されているものと明らかに異なる場合には、上記2-2)(先行技術の製造方法が異なる)は容易に示すことができるということで、後は上記2-1)(特定の製造方法の必要性)を証明すれば良いことになります。

これに対して、本発明と先行技術の製造方法が類似しているが、先行技術に本発明のパラメータ要件を達成する為の具体的な製造条件の開示が無い場合や、本発明で採用している製造条件が、先行技術文献のブロードな開示に含まれているような場合には、以下のように少々複雑な対応が必要になることが多いと考えられます。

先行技術に具体的な製造条件の開示が無い場合

本発明で採用されている製造条件が、本発明のパラメータを達成する為に必須であることを証明すれば、新規性が認められる可能性が有ります。

本発明で採用している製造条件が、先行技術文献の開示に含まれている場合

本発明で採用されている製造条件が、本発明のパラメータを達成する為に必須であることに加えて、本発明で採用されている条件を採用することに関する阻害要因や効果の意外性を示すことが出来ないと新規性・進歩性を認めさせるのは難しいかも知れません。

出願後に、データの補完や減縮補正を行うことにより拒絶を克服出来ることも有りますが、最も注意すべきことは、出願時の明細書に、パラメータ要件を達成する為の手段を明確に記載しておくことです。先行技術文献に同じ製造方法が記載されているという理由で拒絶を受けた際に、パラメータ発明の製造方法が、先行技術に記載された方法と区別できないようなものであると、新規性が欠如しているか、実施可能要件が満たされていないかのいずれかの筈と見なされてしまいますので、この点はパラメータ発明に関する明細書において極めて重要です。

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国や技術分野による実施例の必要性及び記載要件比較

明細書の実施例は、明細書の記載要件および実施可能要件を満たすために重要ですが、発明の種類や出願国によって必要な実施例の数や種類は異なります。日本出願および主要な出願国である米国、ヨーロッパ(EPO)、中国および韓国について、実施例の要件について説明します。

(1) 機械・電気分野の発明

一般的に、機械や装置などの構造体の発明の場合、従来技術に対する改良点や発明の構造的特徴の説明などから、発明の働きやその効果を類推することができます。従って、当業者が装置の使用方法や発明の効果を類推するのに十分な記載が明細書中にある限り、実際に発明である機械や装置を運転した実施例は日本、米国、EPO、中国および韓国のいずれに特許出願する場合でも、基本的に必要ありません。しかし、EPO出願の場合は、欧州特許条約規則の第III部、第II章、第42規則の(e)に「クレームに記載されている発明を実施する少なくとも1の方法を詳細に記載する。その記載は、適当なときは実施例を用いて、図面があるときはその図面を引用して行う。」とあることから、機械・電気分野の発明であっても、少なくとも1つの実施例を記載することが望ましいです。

また、一般的にこのような分野では、1種類の態様に関する開示でその他の態様もカバーされると考えられるため、それぞれの態様に対応する実施例がなくても包括的なクレームを権利化することが可能です。

(2) 化学分野の発明

一般的に化学分野の物の発明の場合、化合物の構造式などから発明の効果を類推することは不可能です。そのため、発明の構成とその効果を立証するために、日本、米国、EPO、中国および韓国の全ての国で実施例が必要です。

更に包括的なクレームを権利化するためには、クレームによってカバーされる全ての態様が実施可能であると審査官が判断するのに十分な種類の実施例が必要です。この点が特に厳しいのが中国であり、包括的なクレームを権利化するためには、全ての態様に関する実施例が求められています。また、クレームを実施例に合わせて減縮するように求められることもあります。(最近は、そのような要求を受けることは少なくなっていると感じますが。)

EPO出願については、一般的に方法のクレームに関する実施例は必要なく、プロダクト-バイ-プロセス様式で記載されたクレームについても、実施例は必須ではありません。

(3) 医療関連分野の発明

上記(2)化学分野の発明と同様に、医療関連分野の発明についても実施例は必須です。特に医療分野の場合、実験データによる効果の実証が求められ、化学分野よりも更に記載要件に関する審査が厳しくなります。

日本出願については、臨床試験結果に基づく実施例は必要ないものの、発明の効果を示す薬理試験(in vitro、動物実験データまたはヒトデータなど)の結果は必要です。

米国出願については、in vitroの実験のみを実施例として記載することができますが、in vitroの実験結果とin vivoにおける効果との相関性に関する説明が必須です(即ち、in vivoの効果と相関性のないin vitroの実験は、実施例にはなりません)。

EPO出願の場合、発明の効果を示す実験データが必須ですが、in vitroの実験で十分です。

中国出願についても、米国出願と同様に、in vitroの実験のみを実施例として記載することができます。中国出願の場合、当業者がin vivoにおける効果と相関すると考えるin vitroの実験結果であれば、実施例になります。

韓国出願の場合、実施例なしでは明細書が不完全とみなされます。日本出願と同様に、薬理データの記載が求められています。特に医薬組成物の発明の場合、当業者が発明を実施可能なように、医薬組成物の有効量、投与方法およびその他の処方に関する情報を明細書中に記載することが必要です。また、医薬組成物の使用を特定の疾患または薬理効果に関連付けて記載し、クレームされている薬理効果については、in vitroの実験、動物実験または臨床試験の結果が記載されていなければなりません。

(4) 予測に基づく実施例

米国出願と中国出願については、実際に実施した実験に基づく実施例のみならず、予測に基づいて記載した「予言的 (prophetic)」な実施例も認められます。通常、このような実施例は現在形で記載します。

一方、日本、EPOおよび韓国の出願については、予測に基づいて記載した実施例は、実施例として認められません。特に韓国では、現在形で記載した実施例であっても、実際に行ったものとみなされ、具体的なデータの提出を求められたケースもあります。

(5) 実施例の追加

審査通知などで明細書の記載不備や引用例に基づく進歩性の欠如などを理由に特許出願が拒絶を受けた場合には、明細書中に記載のない新たな実験データの提出によって拒絶を克服することが考えられます。

日本出願については、実施可能要件および進歩性に関する拒絶を克服するために、実験データなどを実験成績証明書の形式で提出することが可能です。しかし、記載要件に関する審査は厳しく、出願後に提出したデータによって拒絶が克服されることはあまりありません。

米国出願については、37CFR§1.132の宣誓供述書の形で実験データを提出することができます。このような宣誓供述書によって、(a)出願時の当業者の技術水準、(b)発明の用途、および/または(c)発明の予想外の効果を示す実験データを提出することができますが、明細書の記載不備を補完することはできません。

37 C.F.R. § 1.132の宣誓供述書の詳細については、以下をご参考下さい:
MPEP §716.01(a)MPEP§716.01(c)

また、宣誓供述書については、こちら にもより具体的な説明と、弊所で作成した宣誓供述書のサンプルを幾つか掲載しておりますので、参考までにご覧下さい。

一方、EPO出願および韓国出願については、進歩性の主張および明細書が記載要件を満たしていることの証拠して、出願後にデータを提出することが認められています。EPO出願については、出願明細書に開示されていない新規効果に係わるデータでも考慮されます。同様に、新規組成物に係わる実験データも、明細書中に記載されている組成物を含むより広い範囲のサポートとして考慮されることがあります。

中国出願については、米国と同様に、実施可能要件の不備を補うための実験データの追加は認められませんが、引例と本発明との比較データの提出は認められています。

(6) まとめ

上記(1)~(5)を簡単に表にまとめたものを以下に示します。

  日本 米国 EPO 中国 韓国
(1) 機械・電気分野の発明 実施例の必要性 × × △*1 × ×
(2) 化学分野の発明 実施例の必要性 O O O*2 O*3 O
(3) 医薬分野の発明 実施例の必要性 O O O O*3 O
薬理試験の必要性 O × × × O*4
(4) 予測に基づく実施例の可否 × O × O ×*5
(5) 出願後の実験データの提出 進歩性の主張 O O O O O
記載不備の補完 × × O × O

*1 欧州特許条約規則に実施例に関する記載はあるものの、明細書の記載が十分であれば、実施例は必須ではない。

*2 方法のクレームやプロダクト-バイ-プロセスクレームのように、製造方法でしか発明を特定できない場合、実施例は必須ではない。

*3 ベストモードの記載が必要。

*4 医薬組成物の有効量、投与方法およびその他の処方に関する情報に関する記載も必要。

*5 現在形で記載した実施例であっても、実際に行ったものとみなされ、具体的なデータの提出を求められる場合もある。

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プロメテウス事件に基づく特許適格性分析指針とクレームのドラフティング

2012年7月3日、米国特許商標庁(USPTO)は、 "2012 Interim Procedure for Subject Matter Eligibility Analysis of Process Claims Involving Laws of Nature"(2012 自然法則を含む方法クレームの特許適格性分析のための暫定的手法)と題された指針メモを公表しました。これは、プロメテウス事件の最高裁判決[Supreme Court decision in Mayo Collaborative Services v. Prometheus Laboratories, Inc., 566 U.S. ___, 132 S.Ct. 1289, 101 USPQ2d 1961 (2012)]を受けて、USPTOの審査官のためのガイドラインとして発行されたものです。

米国特許法第101条に規定される特許可能な対象(patentable subject matter)に関する近年の重大判例として挙げられることが多いプロメテウス事件の最高裁判決ですが、実際には、この判例は、特許適格性の定義に新たな光を当てるものと言うよりは、方法クレームのドラフティングを疎かにすることなかれと訓辞するものであると考えます。

背景説明

日本では、特許法2条1項に、特許の保護対象となる「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と規定されています。

一方、米国特許法第101条は、特許による保護対象として、プロセス(process)、機械(machine)、生産物(manufacture)、組成物(composition of matter)、これらの改良、の何れかに属することを要求していますが、これ以上の制約は明記されていません。1980年のDiamond v. Chakrabarty事件における最高裁判決においては、「太陽の下で人間によってなされたいかなるものも(anything under the sun that is made by man)」が、101条に規定された特許保護対象に含まれるとまで述べられています。しかし、実際には、判例に基づき、抽象的概念(abstract idea)、自然法則(laws of nature)、自然現象(natural phenomena)は、特許の保護対象に含まれないものとされています(MPEP § 2106)。

近年、米国特許法第101条に基づく特許保護対象適格性については、Bilski事件が最高裁で争われ[Bilski v. Kappos, 130 S. Ct. 3218, 561 US, 177 L. Ed. 2d 792 (2010)]、特にビジネス方法について特許適格性の基準を明らかにするものと期待されていましたが、最高裁は、CAFCの大法廷(en banc)が「machine-or-transformation testが、ビジネス方法に関する発明が特許保護の対象になるか否かについての唯一の判定手段」と判示したのを覆し、”machine-or-transformation test”は、有効な判断手段の一つに過ぎないとし、新たな明確な基準を示すことはありませんでした。

また、上記のBilski事件に引き続き、特許保護対象適格性に関して、Prometheus事件も最高裁で争われ、大いに注目を集めていました。

Prometheus事件において有効性が争われた特許は、治療効果を最適化する方法に関するものでしたが、米最高裁判所は、Prometheus特許が請求しているのは自然法則そのものであり、特許保護対象とはならないと判示しました。

日本特許法において、「発明」が「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されていることからも分かる通り、殆ど全ての発明が何らかの自然法則を応用しているはずであり、Prometheus特許における最高裁の「自然法則そのもの」であるという判示が、医療関係分野に限らず方法のクレーム全般の特許保護対象範囲に与える影響について懸念する声が多く聞かれ、また、Prometheus事件の最高裁判決は、近年のアンチパテントの流れに沿ったものとの見方がされることも有るようです。

しかし、このPrometheus事件に関する限り、多くの特許実務者は、特許保護対象の問題というより、むしろクレームのドラフティングの問題と考えていると思います。自分だったら違ったクレームの書き方をしたと考えた実務者が多いのではないでしょうか?

この事件から本当に導き出される教訓は、何が特許適格性を有する主題なのかというよりも、むしろ単なる自然現象をクレームしていると見なされないように、適切にクレームをドラフティングしなければならないという非常に初歩的な問題であると思います。そして、今回、USPTOが発行したガイドラインも、特許実務者は当然認識していて然るべき基本的な注意事項を扱っているに過ぎません。

Prometheus特許のクレーム

問題になったPrometheus特許の代表的なクレームは、以下の通りです。

原文

A method of optimizing therapeutic efficacy for treatment of an immune-mediated gastrointestinal disorder, comprising:

(a) administering a drug providing 6-tmoguanine to a subject having said immunemediated gastrointestinal disorder; and

(b) determining the level of 6-tmoguanine in said subject having said immune-mediated gastrointestinal disorder,

wherein the level of 6-thioguanine less than about 230 pmol per 8×108 red blood cells indicates a need to increase the amount of said drug subsequently administered to said subject and

wherein the level of 6-thioguanine greater than about 400 pmol per 8x 108 red blood cells indicates a need to decrease the amount of said drug subsequently administered to said subject.


日本語訳

免疫介在性胃腸疾患の治療効果を最適化する方法であって、

(a)該免疫介在性胃腸疾患を有する対象に、6-チオグアニンの薬物を投与する工程、および

(b)該免疫介在性胃腸疾患を有する対象における6-チオグアニンのレベルを決定する工程

を含む方法であり、

該6-チオグアニンのレベルが、赤血球8×108個当たり約230 pmol未満であれば、該対象に対するその後の薬物投与量を増やす必要性があることを示し、そして、

該6-チオグアニンのレベルが、赤血球8×108個当たり約400 pmolを越えるならば、該対象に対するその後の薬物投与量を減ずる必要性があることを示す。

クレームの分析と考察

クレームの分析

上記のクレームの概略を簡潔に纏めてしまうと以下のようになります。

『治療効果を最適化する方法であって、

(1) 特定薬物を投与する工程、及び

(2) 薬物の有効成分の血中濃度を決定する工程、

を含み、そこで(wherein):

 上記血中濃度が特定値未満であれば、投与量の増加が必要、

 上記血中濃度が特定値を超えたら、投与量の減少が必要。』

先ず、注意すべきなのは、Prometheus特許は、「診断方法」や「投薬方法」に関するものと認識されていることが多いようですが、正確には、上記の通り「治療効果を最適化する方法」に関するものです。

考察

上記のことから分かる通り、Prometheus特許のクレームには、「治療効果を最適化する」という目的を達成する手段として何が開示されているかと言うと、薬が少なすぎたら投与量を増やすことが必要になり、逆に少なすぎたら投与量を減らすことが必要になるという1つの判断基準が説明されているに過ぎません。

実際に上記の判断基準に従って決定した量で投薬するという工程までは明記されておらず、単に、適切な投与量の増減の必要性を判断する基準を説明したところで終わってしまっています。

血中濃度が閾地より低くて投与量の増加が「必要」になる、又は血中濃度が閾地より高くて投与量の減少が「必要」になるというようなこと自体は、単なる自然法則と解されても致し方ないでしょう。

当業者であれば、上記Prometheus特許のクレーム文言から、上記の判断基準に基づいて制御された量で薬物を投与するところまで読み込むことが合理的という考え方も出来るでしょう。しかし、クレーム文言通りに解釈して、血中濃度が閾地より低くて投与量の増加が「必要」になる、若しくは血中濃度が閾地より高くて投与量の減少が「必要」になったら、Prometheus特許の権利範囲ということになったならば、実際にそれに基づいて投与量を制御しなくとも、Prometheus特許を侵害してしまうことになり、公平性を欠きます。

また、上記のように『適切な投与量の増減の必要性を判断する』ということは、頭の中だけで出来ることであり、これは101条関連で、Bilsky事件後に、CAFCで争われたCybersource事件(CyberSource Corporation v. Retail Decisions, Inc., No. 2009-1358 (Fed. Cir. August 16, 2011))において特許適格性がないことが確認された「精神的プロセス」(mental process)に当たると言えます。

Prometheus特許のクレームにおける実際の表現は「必要性を示す」(indicates a need to …)であり、実際に「判断する」という表現が使用されている訳ではないので、この事件において、Prometheus特許のクレームが「精神的プロセス」だと認定されたわけではありませんが、特定の薬物血中濃度が投与量の増減の必要性を示すということは、観察者の判断によって決定されることなので、実質的に「精神的プロセス」であると言ってもいいのではないでしょうか。

101条問題の回避

上記のような問題は、基本的なクレームのドラフティングにより、容易に回避できた可能性があります。

例えば、上記の判断基準に基づいて制御された量で薬物を投与するところまでクレームに明記されていたらどうだったでしょうか?その場合、112条(記載要件)や102条(新規性)及び103条(非自明性)を満たすかどうかは別として、101条の問題は回避できた可能性が高いと思います。

また、単に101条を満たすことのみを目的とすれば、「治療効果を最適化する方法」ではなく、「免疫介在性胃腸疾患の治療方法」にしておけば、特許保護適格性が認められた可能性は十分にあると思います。「治療効果を最適化する方法」としたために、最高裁は、特定の薬物血中濃度が投与量の増減の必要性を示すという部分のみを、発明の実質的な特徴と見なしましたが、「免疫介在性胃腸疾患の治療方法」であれば、薬物を投与する工程が発明の実質的な特徴と見なされるはずです。いずれにしても上記の判断基準に基づいて制御された量で薬物を投与するところまで明記しないと、発明の本質的な特徴が明らかにならないとは思いますが、この『薬物を投与する』行為は、明らかに自然法則そのものではないため、101条の問題は回避できると考えます。

CAFCは、Prometheus特許の特許保護適格性を認めたことからも、本件は101条に関しては当落線上にあり、クレームの書き方次第で101条違反を免れることも十分に可能であったことが伺えます。

Prometheus事件に基づきUSPTOが作成した指針

プロメテウス事件の最高裁判決を受けてUSPTOが公表したガイドラインによると、自然法則を含む方法クレームの特許適格性の判断において、以下の3つの点を検討することとしています。

1.  Is the claimed invention directed to a process, defined as an act, or a series of acts or steps? [請求された発明が、行為又は一連の行為若しくは工程によって定義された方法に関するものか?]

2.  Does the claim focus on use of a law of nature, a natural phenomenon, or naturally occurring relation or correlation (collectively referred to as a natural principle herein)? (Is the natural principle a limiting feature of the claim?)

[クレームが、自然法則、自然現象又は自然発生する関係若しくは相互関係(以下、これらは纏めて「自然原理」と称す)の応用に焦点を当てたものか?(即ち、自然原理が、クレームを限定する特徴となっているか?)]

3.  Does the claim include additional elements/steps or a combination of elements/steps that integrate the natural principle into the claimed invention such that the natural principle is practically applied, and are sufficient to ensure that the claim amounts to significantly more than the natural principle itself?

  (Is it more than a law of nature + the general instruction to simply “apply it”?)

 [クレームが、以下のような付加的な要素/工程又は要素と工程の組み合わせを含んでいるか?: 自然原理を、これが実用的に応用されるような形でクレームされた発明に組み込み、且つクレームが明らかに自然原理以上のものに相当するものとなることを確実にするのに十分な要素/工程又は要素と工程の組み合わせ。

 (即ち、クレームが、自然法則と、それを単に応用しろという一般的な指示との単なる組み合わせとなっていないか?)]

上記項目1及び2は自明であると思います。今回の問題点は、項目3に集約されています。

項目3の最後の括弧書きには、Is it more than a law of nature + the general instruction to simply “apply it”?(クレームが、自然法則と、それを単に応用しろという一般的な指示との単なる組み合わせとなっていないか?)とあります。

上記のPrometheus特許の方法クレームでは、血中濃度が閾地より低くて投与量の増加が「必要」になる、又は血中濃度が閾地より高くて投与量の減少が「必要」になるというようなこと自体は、単なる「law of nature」に過ぎず、また実施に際して投薬量の調整が「必要」であるということが理解されても、それは「general instruction to simply “apply it”」の域を出ないということになります。

典型的には、方法のクレームの場合、意図した結果を得るために自然法則を応用して行われる操作を具体的に記載することにより、単に、自然法則そのものを請求していると見なされることを回避することが出来ます。Prometheus特許の場合、例えば、上記したように、上記の判断基準に基づいて制御された量で薬物を投与するところまでクレームに明記されていたら、101条の問題は回避されていた可能性が高いと考えられます。

いずれにしても、冒頭でも述べたように、Prometheus事件最高裁判決及び今回のガイドラインは、米国における特許適格性を有する主題の定義に関して問題提起するものと言うより、方法クレームのドラフティングを疎かにすると特許適格性が否定されてしまうこともあり得るという教訓ととらえるべきでしょう。

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欧州:分割出願等に関する規則改正

2013年10月16日、欧州特許機構(European Patent Organization)の管理理事会(Administrative Council)は、分割出願及び調査段階で発明の単一性違反が認められた場合の手続きに関連した規則を改定することを決定いたしました。

分割出願について

2010年4月1日に施行された欧州特許条約(EPC)の施行規則改定により、分割出願が可能な時期について、出願が係属中であるということに加えて、最初の審査通知から24ヶ月などの制約が加えられました。

しかし、この度、上記の制約が撤廃され、上記施行規則改正以前と同じく、出願が係属中であれば分割出願可能ということにすべく再度、規則が改正されます。

 分割出願に関する改正後の規則は、2014年4月1日に発効となります。この時点で係属中の欧州出願については、新たな規則が適用されます。従いまして、現行の規則で分割出願の期限を徒過してしまった案件でも、2014年4月1日まで係属していれば、分割出願できるということになります。

2010年に導入された分割出願に関する時期的制約は、本来、分割出願制度の濫用を抑制することを目的としていましたが、厳しい時期的制約が設けられたことにより、必要性の判断をすることなく保険的な目的で分割出願されるケースが増加するという結果を招いてしまいました。

そこで、2010年の改正以前のルールに戻すこととなったわけですが、一方で、分割出願の繰り返しを抑制するために、EPOは、子出願、孫出願と繰り返すに従って出願料金が増加するような新たな料金体系を検討しています。(具体的な料金は未だ公表されていません。)

EPO補充調査等において単一性要件違反が認められた場合の対応について

EPOが国際調査機関でないPCT出願が欧州段階に入った場合、全ての出願について、EPOは補充調査報告(supplementary European search)を発行します。現行の規則によれば、この補充調査において、出願が発明の単一性の要件を満たさないと判断された場合、最初に調査の対象となった発明に係るクレーム以外のクレームについては調査の対象外となります。ここで、出願人は、他の発明に係るクレームを調査の対象として選択したり、追加料金を支払って他の発明に係るクレームについて調査をさせるということはできませんでした。これに対して、直接の欧州出願については、調査段階でEPOが単一性の欠如を発見した際には、出願人は追加料金の支払いによる単一性の要件を満たさないと認められた複数の発明についての調査を受ける機会が与えられており、不公平であるという意見がありました。

 そこで、今回の規則改訂においては、上記のようなPCT由来の欧州出願(2013年11月1日の時点で補充調査報告が発行されていないもの)についても、補充調査において単一性要件違反が認められた場合には、追加料金の支払いにより、複数の発明の調査を受ける機会が与えられることとなりました。

更には、EPOが国際調査機関であったPCT出願に由来する欧州出願については、補充調査は行われませんが、国際調査報告において単一性要件違反を指摘されたにも関わらず追加料金を支払わなかったために調査されたかったクレームについても、欧州段階の審査に際して、追加料金を支払うことにより調査を受けることが可能になりました。これは、2014年11月1日の時点で、最初の実体審査通知が発行されていない出願が対象となります。


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