心臓

医薬の用途発明(第2医薬用途など)について

日本を含む主要な国では、医薬の有効成分が公知物質であっても、特許が認められる場合があります。但し、国によって許容されるクレームの形式などは異なります。公知物質について最初に医薬用途を見出した発明を「第一医薬用途発明」と称します。更に、多くの国では、そのような「第一医薬用途」が知られている公知物質について別の治療効果や別の用量・用法を見出したことによる発明も特許の対象となります。 このような発明は、以下の2種類に大別出来ます。

(I)公知物質の第2医薬用途に基づく医薬発明:

第2医薬用途に基づく医薬発明とは、既に医薬品として使用されている化合物・細胞などを有効成分として用いるが、適用する患者群が従来と明確に異なる医薬や、適用部位が従来と異なる医薬です。<具体例: 心臓病(狭心症)の治療薬として開発され、後にED治療薬となったシルデナフィル(商品名:バイアグラ)>

公知物質の第2医薬用途に基づく発明は、日本のみならず、米国、欧州、韓国及び中国を含む諸外国でも特許の対象となります。

(II)用法・用量に特徴のある医薬発明:

用法・用量に特徴のある医薬発明とは、有効成分となる化合物等が従来の医薬と同じであり、更に適用する疾病も同じであるが、特定の「用法・用量」で特定の疾病に適用することによって、専門家の予測を超える効果が得られるものです。<具体例: 投与量を0.1mg/日から5μg/日に低下することによって、下痢型過敏性腸症候群に対して治療効果が発揮されたラモセトロン塩酸塩(商品名:イリボー)>

用法・用量に特徴のある医薬発明は、従来は特許対象外でしたが、近年、日本、米国、欧州では特許性が認められています。中国の審査基準などには、このような医薬発明の特許性を認めると言う明示的な記載はないものの、過去にこういった出願が拒絶された理由は新規性の欠如ではなく、明細書の記載不備であったことから、権利化できる可能性はあります。韓国では特許対象外です。

-- 公知物質の新規用途に基づく医薬発明のクレームの書き方 --

公知物質の新規用途に基づく医薬発明に関する特許出願を行う場合には、国によって特許の対象として認められる発明の種類(クレームの形式)が異なります。

日本: 物の発明も、用途発明(スイス形式)も特許対象になりますが、治療方法は特許対象外です。

米国: 公知物質に基づく「物」の発明は特許対象外のため、治療方法の形式にします。(但し、治療方法の特許は、医師や医療機関に対しては権利行使することが出来ません。)

欧州: 従来、スイス形式("Use of a substance X for the manufacture of a medicament for the treatment of disease Y"(疾患Yの治療薬の製造のための物質Xの使用))の用途発明が特許対象でしたが、2011年1月28日以降の出願については認められません。代わりに、"Substance X for use in the treatment of disease Y"(疾患Yの治療に用いるための物質X)のような形式の「物」の発明が特許対象になります。治療方法は特許対象外です。

中国: スイス形式の用途発明のみが特許対象です。治療方法は特許対象外です。

韓国: 原則として「物」の発明の形式にします。治療方法は特許対象外です。

  第2医薬用途に基づく医薬発明 用法・用量に特徴のある医薬発明 発明の種類(クレームの形式)
日本 物の発明、用途発明
米国 治療方法
欧州 物の発明
(スイス形式は認められなくなった)
中国 スイス形式の用途発明
韓国 × 物の発明

出願国によって認められる発明の種類(クレームの形式)が異なるため、PCT出願を行う場合には、様々な形式のクレームを含む国際出願を行い、各国に移行する際または移行した後に、認められない形式のクレームを補正によって削除することをお勧めします。

医療・バイオ関連発明の方法クレームについて

医療・バイオ関連発明の方法クレームの書き方(1): 日本出願の場合

米国とオーストラリア以外の諸外国では、人体を対象とした「手術方法」、「治療方法」や「診断方法」は特許の対象にはなりません。治療に用いることを直接的に意図した発明でなくとも、人体に作用する工程を含むような発明も、治療方法や手術方法とみなされて拒絶されるケースは少なくありません。そのため、医療・バイオ関連発明の出願において方法のクレームを作製する場合には、以下の点に注意する必要があります。

(1)ヒトを対象とした方法は特許の対象にならないが、動物を対象とした方法は特許の対象になる。しかし、「ヒト」も「動物」の1種なので、「ヒト以外の動物」と明示する必要がある。

(2)生体内で行う方法は特許の対象にならないが、in vitro(試験管内)で行う方法は特許の対象になる。可能であれば、in vitroの方法であることを明示する。

(3)医師の行う作業、例えば、人体からの試料の採取や、人体への薬品の投与、病気の判断については記載しない。

(4)医師などによる装置の操作は記載せず、装置そのものの動作として記載する。

特にクレームの書き方に注意の必要な発明としては、次のものが挙げられます。

 ・生体由来の細胞や組織などの処理方法に特徴のある発明

 ・医療機器の作動方法

 ・アシスト機器技術関連発明

・ 生体由来の細胞や組織などの処理方法に特徴のある発明

生体由来の細胞や組織などの処理方法に特徴のある発明の典型的な例としては、血液透析の方法(人体から血液を取り出し、有害物質を除去し、同一人に戻す方法)が挙げられますが、このように、人体から採取したものを同一人に治療のために戻すことを前提とした方法は、例え、人体から試料を採取する工程に関する記載がなくとも、原則として特許の対象にはなりません。

しかし、このような技術の例外として、自家採取物を用いた医薬品または医療材料の製造方法は、製造した医薬品を、原料を採取した者と同一人に治療のために投与することが前提になっていても、特許の対象となります。例えば、「Xタンパク質をコードするベクターをヒトに投与する遺伝子治療方法」はヒトにベクターを投与するという行為が「手術・治療方法」に該当するため特許の対象外ですが、「人体から採取した細胞に、Xタンパク質をコードするベクターを導入する、遺伝子治療用細胞製剤の製造方法」は特許の対象になります。同様に、ヒトから採取した細胞を用いた ①分化誘導技術、②分離・純化技術、③安全性の検査技術等の再生医療に必要な技術も特許の対象です。

・ 医療機器の作動方法

医療機器そのものは物の発明として特許の対象になりますが、その作動方法も特許の対象になります。例えば、「内視鏡による体腔内の観察方法」は、体腔内の観察という行為が「手術・治療方法」に該当するため特許の対象外ですが、「内視鏡の作動方法」は特許の対象です。このような場合、医師の行う操作に関する記載(例:「操作者が回転指示器を操作する」)は認められませんが、装置の動作に関する記載(例:「回転指示信号に応じて回転指示器が作動する」)は認められます。

・ アシスト機器技術関連発明

介護ロボットや歩行補助装置のようなアシスト機器技術関連発明について方法のクレームを作成する場合には、発明の性質上、人体の状態の判定(例:「歩行の状態を判定する」)や、人体への作用工程(例:「作業者の作業負担を軽減する」)に関する表現が必要になります。この分野の発明については、医療(例えば、リハビリ)を目的とした発明は特許の態様にはなりませんが、医療目的ではない発明(例えば、重労働を行う作業者の支援用)の場合には、機器による判定や作用が人間を手術、治療または診断する方法に該当しないことは明らかなため、上述のような表現を用いたとしても、特許対象外とみなされることはありません。

医療・バイオ関連発明の方法クレームの書き方(2): 欧州出願の場合

欧州特許法第53(c)では、手術や治療によってヒトや動物を処置する方法は特許の対象にはならないと規定されています。具体的には、医療従事者の行う作業は全て「手術や治療のための方法」に該当すると考えられており、例えば、単純な注射を行う工程が1つでも発明の方法に含まれていたら、特許の対象になりません。こういった欧州における「手術や治療のための方法」の定義は厳しすぎるという声もあり、2010年2月16日付の欧州特許庁(EPO)の拡大審判部による審決(G1/07)によって、新たな基準が設けられました。

G1/07において拡大審判部は、「心臓への造影剤の注入」という工程を含むMRIによる撮像方法について、「心臓への造影剤の注入」という工程は「生体に対する処置方法」に該当するため、この撮像方法は特許による保護の対象にならないと判断しました。しかしながら、この判断について、「手術や治療の実施が健康被害のリスクを伴うため、医療従事者の介入が必要な方法」のみを特許による保護の対象外とすべきであると結論付けています。

つまり、単に医療現場で実施される方法であるという理由だけでは、特許の対象外にはならないと判断しています。そこで問題になるのは、発明の生体に対する安全性や侵襲性ですが、これらの点については特に判断基準は設けられていません。現状では、特許の対象となる方法の発明をあまり拡大解釈することはできませんが、以下の方法は特許による保護の対象になると考えられます。

・生体を対象とした行為であっても、安全で日常的な技術であれば、そのような行為を含む方法も特許の対象となる。

・非治療的な薬品の投与を含む方法(但し、投与方法に伴う健康リスクがあるものは特許の対象としない)

・装置の運転方法のみに係わる発明であって、装置が人体に与える効果とは無関係の発明

・生体を対象としているが、健康被害が問題とならない行為(例えば、動物の屠殺)を含む方法

医療・バイオ関連発明の方法クレームの書き方(3): 米国出願の場合

米国では、人体を対象とした「手術方法」、「治療方法」や「診断方法」は特許の対象になります。また、米国の特許法には日本や欧州には存在する倫理規定のようなものも存在しないため、人体に作用する工程を含む発明が特許の対象にならないと判断されることはありません。(しかし、当然のことですが、特許として認められるかどうかは又別の問題です。)

米国出願において注意しなければならない点は、公知物質に基づく「物」の発明(例えば、公知物質の第2医薬用途に基づく製剤や、用法・用量に特徴のある製剤など)は特許対象外であるため、方法の発明として出願しなければならないという点です。

タグ:

特許  米国  出願  クレーム  発明  日本  欧州  記載  必要  以下  効果  拒絶  or  判断  可能  例外  欧州特許  作成  日本出願  対象  方法  an  特許庁  外国  規定  同様  理由  具体的  存在  問題  特徴  米国出願  同一  公知  at  技術  基準  特許法  注意  実施  EP  導入  欧州特許庁  欧州出願  定義  製造  拡大  行為  表現  関連  目的  分野  工程  判断基準  以外  ケース  EPO  under  当然  意図  審判部  人体  処理  医薬  特許対象  製造方法  保護  審判  態様  医薬品  ex  医療  治療方法  状態  原料  特許法第  医薬用途  治療  ヒト  オーストラリア  診断方法  直接  リスク  公知物質  投与  装置  前提  関係  診断  該当  動物  医師  対象外  vitro  指示  典型的  日付  手術  ベクター  解釈  直接的  特許対象外  用量  用法  人間  操作  明示  本出願  原則  軽減  結論  細胞  作用  用途  諸外国  同一人  作業  医療機器  判定  負担  採取  現状  バイ  バイオ  投与方法  関連発明  作動方法  作製  単純  拡大審判部  ratio  組織  生体  物質  由来  手術方法  生体由来  コード  薬品  アシスト  審決  機器技術関連発明  安全  性質上  処理方法  撮像方法  安全性  造影剤  性質  除去  心臓  医療目的  動作  医療従事者  機器  欧州特許法  内視鏡  注入  体腔内  作業者  無関係  健康被害  タンパク  製剤  試料  回転指示器  G1 


お問い合わせ

Share | rss
ホームページ制作