従来技術

新規性の拒絶への対応

出願人の方が「引用された先行技術には、自分の発明には不要な成分が含まれている」ということが新規性の根拠となり得ると考えていることが屡々あります。これは間違いであり、発明が新規である為には、従来技術が有していなかった特徴を有している必要が有ります。

例えば、ある発明Xが「成分(A)、成分(B)および成分(C)からなる組成物」であった場合、すでに出願公開されている特許文献(先行技術文献Y)に、「成分(A)および成分(B)からなる組成物」が記載されていたとします。この場合、発明Xは先行技術文献Yに記載されていない「成分(C)」を有しているために、新規性を有するということになります。
一方で、「成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)からなる組成物」を開示する先行技術文献Zが存在した場合、発明Xの成分を全て含んだ組成物が開示されている訳ですので、先行技術文献Zの組成物が更なる成分(D)を含んでいたとしても、発明Xは先行技術文献Yに対して新規性が無いことになってしまいます。

上記の先行技術文献Zのような文献を審査官に引かれてしまったならば、新規性を認めてもらうためには、請求の範囲を補正して、先行技術Zに記載されていない特徴を発明Xに加えることが必要になります。

例えば、先行技術文献Zに記載されていない成分(E)を新たに発明Xの必須成分とすることや、成分(A)、(B)又は(C)の量について、先行技術文献Zに記載されていないような量に制限するなどの補正を行うことで新規性を確保することが出来ます。

ここでどのようなものが「先行技術」となるのかについては、国により異なるのですが、その点については別項で説明します。ページ左端のメニューからご覧下さい。

また発明が、単一の先行技術に含まれていなかったことが明白な要素を含んでいれば、その発明の新規性は認められる筈ですが、この点が明らかでない場合が有ります。典型的には、所謂「選択発明」(公知技術から特定の狭い範囲を抜き出した発明)や「(特殊)パラメータ発明」(従来知られていなかったパラメータで定義された発明)が、これに当たります。そのような場合、国によって判断基準が異なることが有ります。

例えば、欧州特許庁(EPO)は、ある先行技術に対する新規性を判断する際に、その先行技術の開示内容をその文献の記載から直接的に読み取れるものに限定して解釈します。要するに、その先行技術文献において暗に示唆されているが直接的には読み取れないような事項は、原則的にその先行技術文献に開示されている事項とは見なされません。一方、日本や米国においては、そのような暗に示唆されている事項についても、その先行技術文献に開示されていると見なされることが有ります。

従って、「選択発明」や「パラメータ発明」に関しては、日本や米国と比較して、欧州の方が新規性は認められやすい傾向があると言えます。(但し、勿論、新規性のみ認められても進歩性も認められなければ特許は認められません。)また、ドイツの様に、原則的に選択発明を認めていない国も有ります(この点については、EPOの基準に合わせる動きが有るようですが、最終的にどうなるか未だ定かではありません)。

「選択発明」や「パラメータ発明」についても、別項で詳細に説明しております。ページ左端のメニューからご覧下さい。

進歩性の拒絶への対応(Part 3)

(D)その他の反論

異なる技術分野に属する先行技術文献の組み合わせ

進歩性欠如の拒絶は、殆どの場合、複数の先行技術文献の組み合わせにより自明というものです。

以前から実務において、先行技術文献が開示している技術が属する分野が異なるため組み合わせることが出来ないと指摘することが有効な手段の1つとして知られています。

しかし、特に近年は、殆どの国において単に属する技術分野が異なるという理由だけで、進歩性が認められることは少なくなっています。日本、米国、欧州など殆どの国において、技術分野が異なっていても、当業者の常識の範囲内で、組み合わせることが合理的であれば自明というスタンスが採用されています。例えば、米国においてこのスタンスを明確にしたのが2007年のKSR判決です。

従って、単に技術分野が異なるということだけでは不十分で、結局は、意外な効果や分野が異なることによる「阻害要因」が存在するということを示すことが必要になることが多いと思います。

「後知恵」(hind-sight)

「後知恵」に基づく拒絶とは、本来、進歩性(非自明性)の判断は、最近似の先行技術から出発して、審査対象の発明の出願時(即ち、この発明が知られていなかった時点)において、当該発明に到達することが容易であったかを検討することにより行わなければなりませんが、審査対象の発明の内容を念頭において、容易性を判断してしまうことを「後知恵」に基づいた判断と言います。

要するに、当該発明を知らない出願当時の当業者にとって容易であったかを判断しなければならないところ、当該発明を既に知っている審査官自身にとって容易と判断してしまうようなケースを指します。

審査官の判断が不適切な「後知恵」(hind-sight)によるものであるとの主張も有効な対応であると言われておりますが、よほど審査官の側に明らかな誤解があった場合を除いて、審査官に自らの判断を「後知恵」に基づくものであったと認めさせるのは難しいと思います。

「後知恵」に基づく拒絶を出してしまうということは、審査官にとってあるまじき判断ミス、最大のタブーの一つであり、自らの判断を出願人に「後知恵」と言われれば、憤りを感じる審査官も少なくないと思います。

少なくとも先進国の特許庁の審査官であれば、明らかな「後知恵」に基づく拒絶を出してくる可能性は極めて低く、「後知恵」であるという解釈も可能だが明らかでないような場合には、出願人が「後知恵」を主張し、それに対して審査官が「常識の範囲内」と反論し、結局のところ水掛け論で終わってしまう可能性が非常に高いです。その場合、審査官にネガティブな心証を与えるだけで余りメリットが有りません。

もっとも「後知恵」であることを示す明確な証拠があれば別ですが、そのような証拠は多くの場合「阻害要因」の存在を示唆するものであるでしょうから、そもそも審査官が認めることに強い抵抗を示すであろう「後知恵」の議論などせずに、「阻害要因」の存在を主張すれば良いことになります。

以上のことから、阻害要因に関する主張や意外な効果に関する主張の補助としては有効であるかも知れませんが、「後知恵」に関する主張のみで審査官を翻意させることは多くの場合、難しいと考えます。審査官の心証の観点から、他の理由に基づく議論が可能であるならば、むしろ「後知恵」の議論はしない方が良いかも知れません。但し、担当の審査官が変った場合や、審判・訴訟手続きにおいて、審査官の判断や相手の主張に対して行うのであれば、この限りではありません。

「商業的成功」(Commercial Success)

更に、商業的成功を主張できる場合は、補助的にこの主張を加えます。

但し、日米欧の特許庁のいずれも商業的成功については、その成功がクレームされた発明の技術的特徴に由来するものであることが認められた場合にのみ、進歩性判断の際に考慮することになっています。

実務においては、商業的成功に基づく主張は、進歩性の主張が少々弱い場合に補助的に利用します。その例として以下の様なシチュエーションがあげられます:

(a) 効果はあるがその度合いが顕著でない場合(例えば、触媒の発明において、収率が従来の触媒の数%向上しただけだが、既に成熟した技術分野であり、その僅か数%の向上が商業的に大きな意味を持ち、それによって大きな利益を得ているというような場合)、及び

(b) 効果は顕著だが、余りに関連性の高い先行技術文献の組み合わせによって進歩性欠如の拒絶を受けた場合(例えば、装置の発明に関する出願の審査において、属する技術分野、目的などが共通し、構造的にも非常に近いものを開示する2件の従来技術文献の組み合わせによって拒絶を受けたような場合)。

これに対して、従来品に対する優位性を示すことが出来ないのに、商業的成功のみをもって進歩性を主張しても、商業的成功は発明の特徴以外に起因するものという推測が成り立ち、全く考慮されないということになってしまいます。即ち、例えば、従来品と性能は同じ程度しかないが、非常によく売れているから当該発明品は従来よりも優れている筈であり進歩性を有するという様な主張をしても、商売上の成功が純粋に発明の特徴によるものか、それともマーケティングの成功によるものか定かでなく、進歩性判断の材料としては考慮されません。

弊所で、商業的成功に基づく進歩性の主張を行った案件は、いずれも上記(a)又は(b)に該当するようなシチュエーションであり、既に特許成立しておりますが、そこで商業的成功が審査官の判断に影響を与えたのかは、審査官の公式な見解には反映されておりませんでしたので定かではありません。しかし、進歩性判断に関する心証形成の上では何らかの効果はあったはずと考えております。

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進歩性の拒絶への対応(Part 1)

特許庁による拒絶理由で最も頻繁に採用され、また対応に苦労するのが進歩性欠如(自明性)の拒絶です。進歩性(米国では非自明性)の判断に関しては、国により評価の基準や手法が異なりますが、実務上、その違いを意識することは多くありません。

日本や欧州では「進歩性」(inventive step)、米国では「非自明性」(non-obviousness)という用語が慣用的に使用されます。これらの用語からは、日本や欧州では従来の技術に対する「進歩」が要求され、他方、米国では進歩していなくても自明でなければよいという印象を受けます。しかし、実際には日本や欧州においても必ずしも「進歩」が要求されるわけではなく、実務上「進歩性」と「非自明性」の違いを明らかにすること困難であり、また違いを見出すことに意議があるとも思えません。

中国においては、進歩性(創造性)について、先行技術に対して「顕著な進歩を有する」ことが要求されています(中国専利法第22条)。しかし、この「顕著な進歩」が認められる例として、審査基準には「発明で現有技術に存在する欠陥や不足を克服し、若しくはある技術的問題の解決に構想の異なる技術方案を提供し、或いは…」(専利審査指南、第二部分、第四章、2.3項)と有り、これは日本、米国、欧州の進歩性(非自明性)判断の基準と大きく乖離するものではなく、日米欧で進歩性(非自明性)が認められれば中国でも進歩性(創造性)が認められる筈と考えて良いと思います。また、我々の知る限りでは、日本や欧米で特許性が認められた件が、中国で「顕著な進歩」の欠如により進歩性を否定されたという件は無いと思います。

いずれにしろ、国毎の基準、評価手法の違いによる影響よりも、審査官の個人差による影響の方が大きいと感じます。要するに、根本的な部分では、国によって進歩性拒絶への対応のアプローチを大きく変更することは必要無いはずです。

想定内の拒絶を受けた場合

先行技術により新規性及び/又は進歩性がないとして本発明が拒絶されている場合、審査官の発明に関する理解が十分でないことがしばしばあります。

多くの場合、審査官は、出願明細書の本文まで詳細に検討することはありません。クレームベースで先行技術と比較検討して拒絶を出してきます。出願明細書に先行技術として説明されているもの又はそれと同等の技術を開示する文献を引用して拒絶してくることも少なくありません。

そのような場合、本発明の特徴及び効果について、出願明細書に記載した発明の開発の経緯に言及しつつ説明した上で、先行技術による拒絶に対して具体的に反論するという手順をとることがよくあります。

より具体的には、本格的な反論の前に、明細書中の記載を引用して、発明が解決しようとする課題(Problem)と、それに対する解決手段(Solution)を明らかにします。これは所謂「Problem-Solution Approach」(課題・解決アプローチ)に沿ったものであり、このアプローチは欧州における進歩性判断テストですが、この手順で進歩性を明らかに出来れば、米国や日本、中国などでも進歩性(非自明性)は認められる筈です。

上記のような場合、通常は、出願明細書作成時に先行技術に対するアドバンテージを明らかにするデータを実施例に含めますので、実際に弊所で扱った案件でも、実施例のデータに参照しつつ上記のような課題・解決アプローチに沿った議論を行うことで比較的あっさりと拒絶が撤回されることが少なくありません。

出願明細書作成の段階で十分に検討し、明細書中において発明の背景と特徴を明確に説明し、実施例に十分なデータがあれば、ほぼ明細書からの引用のみで構成された意見書で拒絶を克服することが出来ることがあります。

要するに、出願明細書の【背景技術】と【発明の概要】(【発明が解決しようとする課題】、【課題を解決するための手段】、【発明の効果】を含む)の項目において、課題・解決アプローチに沿って進歩性を明らかに出来るような明細書の構成にしておくと、出願後の審査の効率化が期待できます。

但し、【発明の概要】(Summary of the Invention)の項目において発明の効果について過剰に記載しすぎると、米国においては、明細書に記載された効果に基づいて権利範囲を限定解釈される場合が有りますので注意が必要です。即ち、クレームされた範囲内の技術で有っても、それが明細書中に謳われた効果を奏さない場合には、権利範囲外と看做される恐れがあります。

従って、【発明の概要】(Summary of the Invention)の項目には、従来技術の課題と、それに対する解決手段が明らかになる最低限の記載とすることが望ましいと言えます。

因みに、米国では出願明細書に【発明の概要】(Summary of the Invention)の項目は記載しなくても良いことになっています。

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二次的考慮事項(Secondary Consideration)の主張:商業的成功(Commercial Success)

商業的成功(Commercial Success)

進歩性(非自明性)欠如の拒絶に対する対応のアプローチの一つとして、商業的成功(Commercial Success)の主張についてこちらで説明いたしましたが、今回は、その具体例を1つ挙げたいと思います。

化学反応用の触媒の発明においては、「得られる化合物の収率において、本発明の触媒と従来技術の触媒との間に僅か1%前後ほどの差しかないが、この一見して「僅かな差」でも商業的には非常に重要であり、実は「高収率」と評価すべきものであり、したがって本発明には進歩性がある」という状況があり得ます。そして、この場合、審査官から、収率において一見して「僅かな差」しかないことを指摘されて進歩性を否定される場合があります。そのような拒絶理由を受けた場合には、収率の「僅かな」向上でも商業的には重要であることを審査官に分かりやすく説明する必要があります。

参考までに、上記のような拒絶理由に対して、実際に弊所で作成・提出した意見書において述べた議論の例を以下にご紹介します。これは韓国特許庁による拒絶に対して行った主張ですが、この主張が認められて特許成立致しました。また、対応の米国特許出願も同様の理由で拒絶を受けましたが、以下の主張内容を、37 C.F.R. § 1.132に基づく宣誓供述書の形式で提出した結果、特許性を認められました。(なお、以下の例では、発明の効果として「高収率」と「工業的使用に適した高い耐摩耗強度」を主張したものですが、以下では、詳細説明としては、「高収率」に関するものだけを示します。)

「上記のように、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの製造においては、目的生成物の収率が高く、また工業的使用に適した高い耐摩耗強度を有する触媒の開発が従来望まれており、本発明はそれを達成したものであるが、ここでいう「高収率」や「工業的使用に適した高い耐摩耗強度」の具体的な意味について以下に説明する。

まず、収率は、少しでも向上することが望まれる。その理由について以下に説明する。

石油化学工業においては、取扱量(即ち原料物質の量および目的生成物の量)が莫大である。従って反応工程の合理化や生産コストの低減などを目的として、少しでも高い収率を有する触媒が求められる。特に本願発明の触媒を用いる、アクリロニトリルやメタクリロニトリルの製造用の大規模(商業的規模)プラントにおけるプロセスでは、収率が例えば僅か0.1%増加した場合でも、1つのプラントで得られる生成物の生産量は年間数百トン規模で増加する。従って、収率などの触媒性能はたとえ僅かな向上であっても、石化資源の有効活用や製造の合理化に大きく寄与できる。以下、この点について具体的に説明する。

一般に、日本国内における通常のアクリロニトリル製造プラントの年間生産量は1プラント当たり約10万~30万トンである。例えば年間生産規模が約10万トンのプラントの場合、本願明細書の比較例3のようにアクリロニトリルの収率が84.0%であるとすると、原料として必要なプロピレンの量は下記式によって求めることができる。

(プロピレン量):100,000(トン/年)/53/0.84 42 = 94,300(トン/年) (1) (上記式(1)中、「53」はアクリロニトリルの分子量であり、「42」はプロピレンの分子量である。)

これに対し、本願明細書の実施例2のようにアクリロニトリルの収率を84.2%とする(即ち比較例3におけるよりも0.2%向上する)と、原料として必要なプロピレンの量は下記式によって求めることができる。

(プロピレン量):100,000(トン/年)/53/0.842 42 = 94,100(トン/年) (2) (上記式(2)中、「53」及び「42」は上記式(1)におけるのと同じ)

従って、年間生産量10万トンのアクリロニトリル製造プラントにおいては、収率が僅か0.2%向上することにより、原料プロピレンの量を、94,300(トン/年)-94,100(トン/年)= 約200(トン/年)も削減することが可能になる。これは大変な量であり、これをコストに換算すると、その削減効果は、プロピレン取引価格(極東アジア市況2006年10月実績)が(約14万円/トン;ドル換算で$1,185/トン)なので(14万円/トン) 200(トン/年)=2,800万円/年(ドル換算で$237,000/年)にもなる。(注:上記の「約14万円」は、「$1,185」から、円ドル為替レート「118.5円/$」で円換算した値(1,185×118.5=140,422.5円)から端数422.5を切り捨てた値である。後述のアクリロニトリル取引価格についても同様である。)(なお、原料には他にアンモニアもあり、それも節約できるが、簡便のためここでは考慮に入れない。)

さらに、これが例えば本願明細書の比較例5のようにアクリロニトリル収率が82.5%である場合と、本願明細書の実施例4のようにアクリロニトリル収率が84.5%である場合とに当てはめて比較すると、その収率の差は2.0%なので、200(トン/年) 10 =2,000(トン/年)の原料プロピレン量削減となり、従って、実施例4の触媒を使用する場合は、比較例5の触媒を使用する場合と比較して、2,800万円/年(ドル換算で$237,000/年) 10 = 28,000万円(=2.8億円)/年(ドル換算で$2,370,000/年)ものコスト削減になる。

別な見方をすれば、触媒を用いた場合の目的生成物の収率を少しでも高めることにより、使用する原料の量を変えずに、アクリロニトリルを増産できることになる。例えば、94,300(トン/年)の原料プロピレンからは、上記式(1)のように収率が84.0%のとき、10万トン/年のアクリロニトリルが製造される。一方、収率が84.2%に向上(0.2%向上)した場合、同じ94,300(トン/年)の原料プロピレンからは、100,200(トン/年)のアクリロニトリルが製造できる。この値は、下記式(3)によって求められる。

(アクリロニトリル量):94,300(トン/年)/42 0.842 53 = 100,200(トン/年)(3) (上記式(3)中、「42」はプロピレンの分子量であり、「53」はアクリロニトリルの分子量である。)

即ち、0.2%の収率向上に伴う生産増分は100,200(トン/年)-100,000(トン/年)= 200(トン/年)である。これを売上高ベースでみた場合、現在のアクリロニトリル取引価格(極東アジア市況20XX年X月実績)を約19.3万円/トン(ドル換算で$1,630/トン)とすると、19.3万円/トン($1,630/トン) 200(トン/年)=3,860万円/年($326,000/年)の売上高増となる。そして、収率が2.0%向上した場合は、上記売上高増分の10倍、即ち3.86億円/年($3,260,000/年)の売上高増となる。

さらに、原料プロピレンの量を削減することは、反応に伴う温室ガス(CO2)の排出量削減にもつながり、環境保護の面でも貢献できる。約200(トン/年)の原料プロピレンを削減することにより、約 630(トン/年)の温室ガス(全てCO2になると仮定した場合)の排出を抑制できる。上記の排出削減量(約 630(トン/年))は、下記式(4)によって求められる。

(温室ガス量): (200(トン/年)/42) 44 3 = 630(トン/年) (4) (上記式(4)中、「42」はプロピレンの分子量であり、「44」はCO2の分子量、そして「3」はプロピレン1分子から生成するCO2の分子数である。)

上記から明らかなように、取扱規模の莫大なアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの製造においては、僅か0.1%や0.2%の収率の向上が、数百トン規模以上の原料プロピレン使用量の削減または目的生成物生産量の増加、あるいは数千万円(または数十万ドル)規模以上の原料コスト削減または売上高の増加に貢献する。このように、僅かでも収率が向上することは工業的生産においは極めて大きな商業的成功(commercial success)につながるものであり、殊に最近のような原油市場の置かれている厳しい現状に鑑みれば、この効果は一層重要なものとなる。(また、環境保護にも大いに貢献する。)

このようなわけで、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの製造においては、目的生成物の収率はたとえ0.1%でも向上することが切望されている。」

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選択発明(selection invention)について

1.「選択発明」の定義と特許性判断

「選択発明」には、主に「化合物の選択」と「数値範囲の選択」に関する発明があります。

「化合物の選択」は、例えば先行技術において広く定義されていた化合物の中から特定の種を選択してクレームするような場合のことであり、具体例としては、先行技術文献においてある薬品の成分として単にアルコールを使用すると記載されていたところ、特定の炭素数のアルコールを用いると顕著な効果を奏することを見出して、その特定の炭素数のアルコールに限定してクレームするような場合です。

「数値範囲の選択」は、例えば組成物を構成する成分の量に関して先行技術に開示されていた広い数値範囲の中から限定された数値範囲を選択してクレームするような場合のことであり、具体例としては、ある成分の量に関して、先行技術文献において"1~100重量%"としか記載されていなかったところ、30~33重量%というような狭い範囲内にすることで顕著は効果を奏することを見出して、その狭い成分量に限定してクレームするような場合です。

日本の審査基準においては選択発明について次のように記載されています。

「物の構造に基づく効果の予測が困難な技術分野に属する発明で、刊行物において上位概念で表現された発明又は事実上若しくは形式上の選択肢で表現された発明から、その上位概念に包含される下位概念で表現された発明又は当該選択肢の一部を発明を特定するための事項と仮定したときの発明を選択したものであって、前者の発明により新規性が否定されない発明をいう。」(審査基準第Ⅱ部第2章 2.5(3)III)

また、欧州においては、以前から、選択発明の新規性判断の基準として以下の要件を満たすことが要求されていました:
(1)選択された範囲が狭いこと、
(2)従来の範囲から十分に離れていること、
(3)選択された範囲に発明としての効果が有ること(審決T279/89)。

しかし、この効果に関する要件(3)は、新規性ではなく進歩性に関する要求であるという批判が以前からあり、2010年の審決 T230/07においては、効果に関する要件(3)は新規性判断からは除き、進歩性の要件とすると判示されました。

勿論、通常は、いずれにしても新規性のみならず進歩性も有さないと特許は認められませんが、効果に関する要件(3)が新規性判断の基準から除かれると、出願時未公開の先願(先に出願されたが、後願の出願時に公開になっていなかったもの)が引用された場合に大きな影響が有ります。即ち、日本を含む多くの国において、出願時未公開の先願の場合には、これに対して新規性さえあれば進歩性が無くても特許が認められることになっていますが、選択発明の場合に上記(3)も新規性判断の基準に含まれていると、出願時未公開の先願に対しても進歩性が求められることになってしまいます。効果に関する要件(3)が新規性判断基準から除かれれば、他の発明の場合と同様に、出願時未公開の先願に対しては、新規性さえ有していれば、先願に対して効果が無くとも(進歩性が無くとも)特許性を認められることになります。

これは一見尤もであるように見えますが、少々矛盾を含んでいるようにも思います。実際には、選択発明という物は、本来は従来技術に含まれているという観点からは新規性は無いとも解釈でき、選択した範囲が狭く且つ顕著な効果が有る場合に限り認められるものですから、選択発明に関しては、常に新規性と進歩性を分けて考えるべきではないという考え方も成り立ちます。実際にEPOがこれまで採用していた上記の(1)~(3)からなる基準もそのような考え方に基づくものであると思います。

この問題については、EPOの拡大審判部で取り上げられる可能性が有ります。

米国においては、選択発明に関して格別審査基準は設けられておりませんが、弊所の経験から判断しますと、EPOにおいて採用されていた上記(1)~(3)からなる判断基準を満たせば特許性は認められると思います。

2.選択発明の新規性・進歩性に関する注意事項

選択した狭い範囲に含まれる実施例が先行技術に無いこと、そして選択した狭い範囲の優位性について先行技術に教示も示唆もされていないことが重要です。

例えば、ある成分の量に関して、先行技術文献において範囲は"1~100重量%"としか記載されていなかったが、実施例において30重量%が記載されていたような場合、30~32重量%というような狭い範囲を選択しても、新規性が認められません。例え、その先行技術に効果が示唆されていなかったとしても、単なる公知物質に関する「効果の追認」であると見なされて新規性は認められません。

また、上記の例の場合(先行技術文献に"1~100重量%"と記載が有り、"30~32重量%"を選択した場合)、選択した狭い範囲"30~32重量%"と重複する狭い範囲(例えば、"25~33重量%"や"25~31重量%"など)が先行技術において好ましいと記載されていると、仮に新規性は認められても、この先行技術文献単独から自明(進歩性無し)と判断される可能性が高いです。

3.効果の証明

効果の立証においては、当然、選択した範囲において、その範囲外であった場合と比較して顕著な効果が有ることを示すことになります。

場合にもよりますが、通常は、幾つか代表的な態様を選択して実験データを提出すれば十分と考えられています。例えば、数値範囲の選択発明の場合、以下のような比較データを持って効果を証明することが考えられます。

実施例: 選択した範囲内の代表例のデータ(好ましくは選択した範囲の上限と下限付近のデータを含む)

比較例: 選択した範囲外で、上限及び下限付近のデータ及び/又は先行技術文献の実施例の中で該選択した範囲に一番近い態様のデータ

また、主張する効果が、発明の属する技術分野においてよく知られた特性に関するものであるか否かも重要になってきます。

例えば、その技術分野で公知の特性に関する効果であれば、選択した範囲において、突出した効果が要求されることが多い筈です。

逆に特定技術分野で公知でない特性に関する効果であれば、選択した範囲外の場合と比較して、それ程大きな効果の違いがなくても、進歩性が認められる場合が有ります。

4.選択発明を認めていない国

日本、米国、欧州、中国、韓国など殆どの主要な国において、以前から選択発明は認められていますが、ドイツでは原則的に選択発明が認められておりませんでした。

一方で、欧州特許庁(EPO)は、上記の通り、選択発明を認めております。従って、選択発明に関してEPOから特許査定を受けて、ドイツで登録したような場合に、ドイツでは無効訴訟を提起されて無効になってしまうことが実際に発生し、以前から問題視されていました。

これに関連して、2008年12月のオランザピン(Olanzapine)事件の最高裁判決において、ドイツ最高裁が、EPOの判例との整合性を指摘しながら、選択発明の特許性を認めたことが話題になりました。

しかし、こちらのAIPPIの資料にありますように、元々ドイツには「選択発明」という概念がなく、それに関する明確な審査基準も存在しません。そして、オランザピン(Olanzapine)判決は、所謂「選択発明」全般に関して欧州の審査基準と適合させるという意図を明らかにしたものではありません。むしろ、このオランザピン判決のみからは、欧州などで言うとことの「選択発明」に相当する特定の件に関して、それと類似した状況の特定のEPOの判例と同様の判断をしたということしか言えないと思います。

特に注意すべきであるのは、オランザピン事件は、「化合物の選択発明」に関するものであるということです。

今後、ドイツが、欧州と同様の審査基準を採用する可能性は在りますが、ドイツにおける選択発明の特許性判断に関して、現時点で言えることは:
(i) 新規性: 化合物の選択発明の新規性判断は、EPOによる判断と同様になる可能性が高いが、数値範囲の選択発明の新規性については、従来通り新規性が認められないのか、こちらもEPOの判断に合わせるのかが不明、
(ii) 進歩性: 新規性が認められれば、進歩性審査の基準は欧州と実質的に同じ、
ということであると思います。

上記(i)のドイツにおける「選択発明」の新規性が認められるための要件について、代表的な判例などに参照しながら以下に検証したいと思います。

ドイツにおける「選択発明」の新規性判断と特許明細書の開示内容の解釈:

ドイツでは選択発明が認められないと一般的に考えられてきたのは、少なくとも数値範囲に関しては、原則的に明細書に上位概念が開示されていれば、下位概念も(これが明示的に記載されていなくても)開示されていると見なすという考え方が根底にあったからです。これは、先行技術の開示内容の判断のみならず、補正の要件やクレームのサポート要件にも適用されております。

ドイツにおける数値範囲の選択発明の扱い: 

例えば、ドイツでの選択発明の特許性の審査においては、もしも先行文献に「分子量500~2,000,000」の化合物が記載されている場合は、その先行文献は「分子量500~2,000,000」の範囲内の数値をすべて個別に開示していると見なされ、この炭素数の範囲をさらに限定しただけの選択発明(たとえば、「分子量15,000~290,000」)は新規性が認められませんでした。これは、「数値範囲」に関する選択発明に関する代表的な判例として知られているFederal Supreme Court, 07.12.1999, GRUR 2000, 591, 593-594 - Inkrustierungsinhibitorenにおける判示です。

そして、自らの出願を補正する際に、出願明細書やクレームに、例えば「分子量500~2,000,000」とだけ記載してある場合(つまりさらに狭い範囲が記載されていない場合)でも、「分子量500~2,000,000」の範囲内の数値をすべて個別に開示していると見なされ、この範囲内のどのような数値範囲にでもクレームを限定することが許されます。

ドイツにおける化合物の選択発明の扱い:

代表的な判例として、”Fluoran” 判決(GRUR 1988, 447)及び“Elektrische Steckverbindung”判決(GRUR 1995, 330)がありますが、いずれのケースにおいても、先行技術に開示された一般式に含まれるが明示的(explicitly)に記載されていなかった化合物に関する選択発明の新規性が否定されました。

しかし、”Fluoran” 判決(GRUR 1988, 447)においては、上記の数値範囲の選択発明の場合と異なり、先行技術に一般式が開示されていることのみをもって、その一般式に含まれる全ての化合物がこの先行技術文献に開示されているとはみなさないとされています。要するに、化合物の場合には、上位概念が開示されていれば、直ちに下位概念も開示されているとはみなさないと判示されていました。

更に、これらの判例においては、以下の場合に、化合物の選択発明の新規性が認められる可能性を示唆しております。

選択された化合物に関して:

(a) 先行技術の開示のみからでは製造が困難: 先行技術文献に開示された情報に基づいて、選択発明に関する出願当時に、選択された化合物を当業者が困難無く製造できない場合[”Fluoran” 判決(GRUR 1988, 447)]、

(b) 先行技術に潜在的な(implicit)開示もない: 当業者が、先行技術文献の開示内容から、選択された化合物を読み取ることが出来ない[“Elektrische Steckverbindung”判決(GRUR 1995, 330)]。

しかし、2008年12月のオランザピン判決においては、上記(a)「先行技術の開示のみからでは製造が困難」を新規性判断の基準とすることを否定しました。これにより、化合物の選択発明の新規性の判断基準は、EPOの判断基準と実質的に同様になったと考えられます。

要するに、少なくとも化合物の選択発明の新規性判断に関しては、 - オランザピン最高裁判決以前からドイツとEPOは基本的に同じ方向を向いていたが、ドイツの基準の方が相当に厳しかったところ、オランザピン最高裁判決において、これを緩和し、EPOの基準に合わせた - と解釈できると思います。

一方、上記の通り、数値範囲の選択発明に関しては、ドイツとEPOの考え方は全く逆です。ドイツにおいて「上位概念が開示されていれば、下位概念も(これが明示的に記載されていなくても)開示されていると見なす」とう考え方を破棄してEPOに合わせるのか、現在のところ定かではありません。

上記オランザピン事件においては、(b)「先行技術に潜在的な(implicit)開示もない」であれば新規性が認められるということになったわけですが、一般式で表される化合物の場合、そこに含まれる化合物であっても、置換基が異なれば、合成方法や特性等の点で全く別の物質になると考える(従って、一般式の記載のみから、そこに含まれる特定の化合物までも潜在的に開示されているとは考えない)ことが合理的であるケースは多いと思います。

一方で、先行技術が開示する連続的な数値範囲から、特定の狭い範囲が潜在的にも開示されていないと言えるのかということになると話は別であるように思われます。

例えば、ある混合物の組成に関して、先行技術にある成分の量が1~95wt%とのみ記載されていて、この範囲から45~50wt%を選択したような場合、EPOの審査基準では、とりあえず範囲が十分に狭ければ新規性は認めるという立場であります。一方、ドイツにはこのような基準は無く、オランザピン判決に従うと、潜在的にも開示されていなければ新規性を認めるということになると思いますが、上記のような1~95wt%という連続した数値範囲から45~50wt%という狭い範囲を選択した場合に、潜在的にも開示されていなかったとみなされるのかという疑問があります。

「上位概念が開示されていれば、下位概念も(これが明示的に記載されていなくても)開示されていると見なす」という考え自体が完全にキャンセルされるのおあれば、補正に関するプラクティスも大きく変わるはずです。

いずれにしても、この問題に関するドイツ連邦特許裁判所や連邦最高裁判所の更なる判断を待つしかないようです。

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パラメータ発明、パラメータ特許について(Part 3 日本における注意事項)

(II-4)パラメータ発明に関する日本出願の注意事項:

前回"Part 2"で説明しました通り、日本(と韓国)以外の国においては、パラメータ発明であっても他の数値限定発明の場合と要求事項は大差有りませんが、日本(と韓国)においては厳しい要件が有ります。

特に日本では、米国や欧州と比較して、サポート要件と明確性要件が厳しくなっております。

日本では、パラメータ発明の出願などの所謂「複雑出願」(膨大な選択肢を有したり、もたらされる結果で発明を記述したり、特殊なパラメータで発明を記述しようとする特許出願)といわれる出願の増加にともない、サポート要件の審査基準が厳しくなってきています。つまり、従来はクレームと明細書との単なる形式的な記載レベルの整合性が審査されることが主でしたが、近年では、技術の内容に立ち入って実質的な対応関係が審査されるようになりました。具体的には、以下のようなことが要求されます。

データ(実施例)

クレームされた当該パラメータの全範囲にまで発明を一般化できると主張できる充分なデータを明細書に記載すること、つまり、当該パラメータの全範囲をカバーする充分な数の実施例を記載することが重要です。

どの程度で「充分」と言えるのかは、ケース・バイ・ケースですが、例えば、中国の審査基準には以下のような要件が記載されています:

「通常は両端の数値付近(最適は両端値)の実施例を記載し、数値範囲が広い場合には、少なくとも一つの中間数値の実施例を記載しなければならない。」(専利審査指南、第二部分、第二章、2.2.6項)

特に、1つのパラメータで発明が定義されている場合は、国を問わず、上記は有効な指標となるでしょう。

一方、複数のパラメータの論理積(複数パラメータの規定範囲の重複部分)として発明が定義されているような場合は、要求されるデータは必然的に多くなります。その境界における臨界性(範囲内外での効果の違い)を明確にする為に多くのデータが要求されることがあります(理屈としては、ベン図における論理積(重複部分)の境界線を明らかに出来る程度の数のデータが必要になります)。上で述べた偏光フィルム事件は、複数のパラメータで発明が規定された例にあたり、実施例2つと比較例2つでは不十分であると認定されました。

もしも、どうしても出願時点で充分なデータを揃えられないという場合は、次善の策として、少なくとも、明細書に記載されるデータからその式を導き出すこと、及び、クレームされた数値範囲を定めること、が妥当であることを示す一応筋の通った理論や理由を述べておくことが絶対に必要です。

パラメータを規定する式

式などでパラメータを記載する場合は、明細書に記載されるデータからその式を導き出した根拠とクレームされた数値範囲を定めた根拠についての説明を述べることが要求されます。

パラメータで規定する範囲

パラメータの数値範囲が一見して非常に広範囲である印象を与える場合は、一般には具体的にどのくらいの数値範囲となるのかを示すことが望ましいとされています。

パラメータの数値範囲に下限または上限のいずれか片方しかない場合(所謂「オープンエンド(open ended)」のパラメータの場合)は、下限または上限の無い全範囲にわたってサポートされてはいないとみなされる可能性があります(または、不明確であるとみなされる可能性があります)。したがって、下限または上限を記載することが不可能でない限りは、それを、少なくとも明細書には記載しておくことが非常に望ましいと考えます。その際、下限または上限を記載することが真に不可能である場合は、その理由を合理的に記載しておくことが望ましいと考えます。

パラメータの明確性

測定方法が不明確であるために権利範囲が不明確となるという場合の典型例は、以下の通りです。まず、明細書に測定方法が記載されているが不明確である場合があります。また、明細書に複数の測定方法が記載されており、どの方法を用いるかで測定値に違いが生じるので不明確となる場合もあります。また、明細書に測定方法が記載されておらず、一般に複数の測定方法が知られており、どの方法を用いるかで測定値に違いが生じるので不明確となる場合もあります。したがって、当業者が疑問を生じることなく正しく実施できる1つの測定方法を明確に記載する必要があります。

また、当該パラメータが直感的に理解し難い複雑な式などで記載されている場合は、「当該パラメータの技術的意味が不明確である」という指摘や、「当該パラメータを特定の範囲とすることが発明の作用・効果とどのように関連するのかが不明確である」という指摘を審査官から受ける可能性があります。

尚、「技術的意味」について、審査基準では、「発明を特定するための事項の技術的意味とは、発明を特定するための事項が、請求項に係る発明において果たす働きや役割のことを意味し、これを理解するにあたっては、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮する」と述べられています。したがって、直感的に理解し難い複雑な式などでパラメータを記載する場合は、その「技術的意味」、すなわち、「発明において果たす働きや役割」(言い換えると、発明の作用・効果とどのように関連するのか)についての分かりやすい説明を明細書に記載することが必要です。

従って、日本(若しくは韓国)での権利化が重要であれば、審査基準に鑑み以下の様な点に注意して出願明細書を作成することが望ましいと考えます。

① 明細書に、クレームされたパラメータの範囲の技術的意味(すなわち、「発明において果たす働きや役割」)を明確に記載する。

② 式などでパラメータを記載する場合は、明細書に記載されるデータからその式を導き出した根拠とクレームされた数値範囲を定めた根拠についての説明を記載する。

③ パラメータ発明と従来技術のものとの関係を明細書において明確にしておく。すなわち、たとえば、「従来技術のものがクレームに記載するパラメータの範囲に入らず、発明の効果を発揮しないこと」を示すことができる比較実験データを実施例や比較例として記載する。

④ クレームされた当該パラメータの全範囲にまで発明を一般化できると主張できる充分なデータを含む実施例と、出来れば先行技術に相当する比較例やパラメータの臨界性を示す比較例(クレームしたパラメータ要件を満たさない場合、意図した効果が達成できないことを示す実験データ)とを明細書に記載する。  パラメータの数値範囲に下限と上限のいずれか片方しか設けない(open end)ということは、なるべく避けて、下限または上限を記載することが不可能でない限りは、少なくとも明細書には記載しておく。

⑤ パラメータ発明のものを製造する方法(製造条件)を明確に記載する(製造条件に関する種々の具体的な数値を記載する)。特に、当該パラメータを制御してクレーム範囲内の任意の値を容易に達成できるような手段を記載する。

⑥ 当該パラメータの数値を決定するための1つの測定方法を明確に記載する。

⑦ 出願後に実験データなどを提出することによって記載要件(サポート要件や実施可能要件)の不備を解消することは認められていないので、特にこの点で充分なデータや説明を記載しておくように留意する。

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