妥当

ご挨拶・併設特許事務所・推薦状

ご挨拶

事務所設立の経緯

当事務所は、井上堯夫が、民間企業にて化学関係の技術及び装置の研究などを約7年間経験した後、国際特許事務所にて国際特許業務を約8年間経験し、更に約5年間同事務所外国部長として勤務の後、1976年(昭和51年)に独立して設立したものであり、主として化学分野のみならず電気・電子関係、機械関係を含む諸分野の外国特許取得のための特許出願及びそれに付帯する翻訳・係争事件を処理する事務所を主宰し現在に至っています。

実際の作業は、顧客の発明に関する説明書類などについて検討・相談し、英語にて原案を作成し、各国の代理人と協力して必要な手続を行っています。これまでに、弊所を介して、特許、意匠、商標などの知的財産権関連出願を提出した国は約170ヶ国にのぼります。

業務実績

これ迄は、製薬会社、化学会社、光ファイバーなどの通信技術を含む電線会社、自動車部品会社などの他、大学教授(電気化学・フッ素化学など、コロイド化学・有機合成化学など、化学・ワクチン・遺伝子工学など、ナノ炭素繊維など)等の大学関係からの依頼を受けての外国特許出願の他、外国会社との係争事件(異議、審判、訴訟を含む)又は交渉を代理する業務を行なって参りました。

当事務所では、上記のように通常の外国特許出願に加えて、重要な外国特許係争事件、例えば、米国での大手企業との抵触審査(Interference)事件、欧州での特許被異議及び異議申立事件を経験し、これらにおいては、単に緊急性への対応にとどまらず顧客からの指示原稿に内容の詳細検討、関係者との討議、技術的・法的に妥当な文書作成を果たし、出願人と現地代理人との間の単なる「中継」や依頼原稿の単なる「英訳」の域をはるかに超える貢献を果たしたものと自負いたしております。

また、このような外国特許係争事件の幾つかにおいては、顧客からの依頼により、私並びに所員が現地に出張して顧客のサポートを勤めました。

信条

従来の外国出願案件処理方法に関して:  

私は、前々より、日本国内出願人による外国特許出願案件に関して、多くの場合、国内特許事務所の貢献が中継係的なものでしかないことに疑問を抱いておりました。特に審査の厳しい米国や欧州での出願につきましては、外国代理人に依存するのではなく、彼等より遙かに出願人に近い立場の国内代理人による最大限の献身的貢献が無ければ効果的且つ経済的な対応は難しいはずです。

当事務所での対応: 

私は、独立して事務所を開設する以前より、日本国内代理人は、例え外国案件であっても、単なる連絡係的な役割を果たすのでなく、自らの力でそれを成功に導くよう努めることが本道であるとの信念に基づいて職務に携わっておりました。そして一個の集団として、その信念を全うすべく当事務所を設立するに至ったものです。

当事務所の所員にも私が長年の実務経験により獲得したのと同等の能力を身につけてもらうべく相当に厳しく教育し、その結果、所員も欧米の代理人からも一目置かれる実力を身に付けるに至りました。

当事務所は、特に外国特許出願に関しましては、少数精鋭により、常に国内で最高レベルのサービスをご提供できるものと確信しております。

国内の案件につきましても、併設するIJS国際特許事務所と綿密に連携をとることによって、同様に質の高いサービスをご提供致します。

平成18年1月

 

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併設特許事務所:IJS国際特許事務所

平成28年4月1日より、渡辺特許事務所は、IJS国際特許事務所に事務所名を変更いたしました。

本部:
渡邉 潤三(Junzo Watanabe): 弁理士登録番号 第11683号(2000年)
〒106-0032 東京都港区六本木5-13-6 麻布CMSホームズ302
TEL 03(3582)2991    FAX 03(3582)3209

荻窪オフィス:
瀬川 浩一(Koichi Segawa): 弁理士登録番号 第10862号(1996年)

 

推薦状

当事務所のホームページを開設するにあたり、京都大学名誉教授 渡辺信淳先生、並びに東京大学名誉教授 平井英史先生のご厚意により推薦状を頂きましたので、以下に掲載させていただきます。

渡辺 信淳(京都大学名誉教授、工学博士、日本化学会賞受賞(1980年)、紫綬褒章受章(1987年)

語学力・技術力の双方に秀でた教え子の井上所長と彼に厳しく鍛えられたスタッフが誠意をもって提供するサービスのレベルが如何なるものであるかは、彼らの作成した書類を一見すれば一目瞭然です。
更に、永年にわたり数多くの国々における特許取得に携わって来た豊富な経験と相俟って、適切な判断により早期且つ確実な権利取得に必ずや貢献してくれるものと確信し推薦します。
(平成17年11月寄稿)

平井 英史(東京大学名誉教授、工学博士、日本化学会賞受賞(1984年)

井上所長をはじめとするスタッフは、諸外国の特許法及び特許実務に精通しており、
更に技術的理解の正確さと優れた語学力に基づくサービスはその質の高さにおいて業界内でも群を抜くものであります。
私の経験からも、出願から最終的な権利取得までの手続を安心して委ねられるものと考えます。
(平成17年11月寄稿)

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米国(3): 現在の米国における特許政策(並びに自明性審査とその対策)

プロパテント政策の変化

米国においては、プロパテント政策(発明技術の独占的実施権を可能にする特許による権利保護を重視する政策)が、1980年代後半にレーガン大統領により導入され今世紀初頭まで維持されてきましたが、世界的な不況が深刻化するにつれ、大きな変化が見られます。

不況に加えて、プロパテント政策による弊害とも言える所謂「パテント・トロール(patent troll)」による特許権の濫用も大きな問題となっています。「パテント・トロール」とは、大学や研究機関以外のnonpracticing entity(特許発明を実施しない者)であって、第三者の特許権を譲り受け、その特許権を主張して大企業に巨額の損害賠償を要求するような組織のことです。このパテント・トロールの暗躍は、質の低い特許を乱発したことによる弊害であると言われております。

一般的には、近年の不況に伴い、プロパテントからアンチパテント(特許権より独占禁止法の遵守に重きを置く政策)へシフトしたと言われることが多いようですが、一概に、完全にアンチパテントへ傾いたと断言することは難しいようです。 近年の出来事を見ると、審査基準の厳格化や権利行使の範囲を制限する変化が目立ちますが、一方で、特許の活用を促進する方向の変化も見られます。要は、この不況を乗り切るために重要なツールの一つとして特許を有効に活用出来るように制度を整えているということであると思います。

近年の判例や2011年9月の法改正(Leahy-Smith America Invents Act)から読み取れる米国の知的財産権に関する姿勢は以下の通りです:

進歩性基準を厳格化し特許の質を向上

 - KSR Int'l Co. v. Teleflex, Inc., 550 U.S. 398 (2007) (これにより非自明性の審査が厳しくなった。)

付与後特許に対する異議申立ての機会を拡張

 - 付与後異議申立制度(Post-grant review)の導入(2011年のAmerica Invents Act)

過剰な権利行使を抑制

 - Abbott Labs v. Sandoz, 566 F.3d 1282 (Fed. Cir. 2009) (所謂"product-by-process"形式のクレームの権利範囲を、クレームで規定したprocessで得られる物に制限した。)

 - 複数の被告に対する訴訟の併合(joinder of parties)についての制限(2011年のAmerica Invents Act)(以前は、1つの特許訴訟において複数の被告を訴えることが可能であり、パテントトロールが複数の企業に対して同時に特許権侵害訴訟を提起し損害賠償金請求することが問題視されていた。この対策として、「同一の特許を侵害している」ことのみをもって複数の被告を1つの訴訟事件で訴えたり、1つの訴訟事件に併合したりすることができないこととされた(§299)。)

 - In re Seagate Technology, LLC, 497 F. 3d 1360 (Fed. Cir. 2007) (特許侵害訴訟において、3倍賠償の対象となる故意侵害の有無の立証責任を、侵害者から特許権者側に移した)

 - 故意侵害及び侵害教唆対策としての鑑定書の入手・提出の不要化(2011年のAmerica Invents Act)(上記Seagate事件における判示の一部を成文法化。鑑定書を入手しなかったことや裁判所に提示しなかったことを、故意侵害(willful infringement)の認定や、侵害教唆(inducement of infringement)の意思の認定に使用できないと規定された(§298)。2012年9月16日以降に発行された特許に対して適用。)

特許出願人又は特許権者の過失に対する罰則適用条件を緩和

 - ベストモード要件違反を特許無効の理由から除外(2011年のAmerica Invents Act)

 - Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co. (Fed. Cir. 2011) (en banc))(不公正行為(Inequitable Conduct)の立証を困難にした)

 - 補助的審査(Supplemental Examination)制度の導入(2011年のAmerica Invents Act)(情報開示義務(IDS)違反の救済措置)

特許出願に関する門戸は狭めない

 - Bilski最高裁判決[Bilski v. Kappos, 130 S. Ct. 3218, 561 US, 177 L. Ed. 2d 792 (2010)] (CAFCの大法廷(en banc)が「machine-or-transformation testが、ビジネス方法に関する発明が特許保護の対象になるか否かについての唯一の判定手段」と判示したのを最高裁が覆した。)

KRS判決による非自明性判定基準の変化:

以前は審査が厳しいと言われている化学分野の特許出願で、かなり厳しい審査結果を予想していたにも関わらず、あっさりと特許になって拍子抜けしたようなケースも多々ありました。しかし、最近は我々も実感として、KSR判決を境に自明性(複数の先行技術文献の組み合わせに対する容易性)の審査が非常に厳しくなったと思います。正直な所、KSR判決以前は、「減縮補正を行わないと103条(自明性)で拒絶されるだろうな」と思う様な件が、拒絶を受けずにそのまま特許にということも結構ありました(しかも、審査結果が出るのが早かった)。現在は、特許庁における審査は、より時間をかけてかなり厳密に行われているという印象です。KSR判決において最高裁は以前よりも厳格な非自明性の基準が提示しましたが、判断基準が厳格になった以上に、米国特許庁審査官の自明性審査に対する姿勢が厳しくなったと感じます。

実際に、統計的にみても、米国ではKSR判決以後では拒絶査定を受け審判請求を行う件数が増え(KSR判決前の2006年では3349件→KSR判決後の2008年では6385件)且つ審判請求を行って拒絶が撤回される確率が率低下しています(KSR判決前の2006年では41%→KSR判決後の2008年では28%)。

尚、参考までに、KSR判決後約2年間において、CAFC(連邦巡回区控訴裁判所)が、化学・生化学系の発明を非自明(進歩性有り)と判断したケースが約62%であったのに対して、非化学・生化学系の発明を非自明と判断したケースは約33%であったとの統計データもあるそうです(http://www.jurisdiction.com/dsmith.pdf)。このことは、KSR判決によって、化学・生化学の分野のように効果を予見することが難しい分野では非自明と判断されやすく、一方、機械などの構造物などの効果を予見しやすい分野の発明は自明と判断されやすくなったということを示していると解釈することできます。

最近、米国特許成立の確率が回復(向上)傾向にあるという情報も散見されますが、実際、数字上はそうであっても、これが淘汰(即ち、元々特許性が明らかでない出願は繰り返し拒絶を受けたために放棄されてしまった)や出願人が出願する発明を精査していることによるという可能性もあると思います。弊所の印象としては、現在でも、KSR判決直後と比較すると非自明性の判断も大分緩和されたようにも思いますが、KRS判決以前と比較すると未だ厳しいように思います。実際に弊所で扱っている案件でも、非自明性の拒絶に対してほぼ完璧な対応ができたような場合(先行技術の組み合わせに対する阻害要因の存在を明らかにし、更に実験証明で予想外の優れた効果を明らかにしたような場合)であっても、その後、審査官の理解不足による拒絶を受け、更に何度かインタビューを行って説明したり、細かい補正をすることによって漸く許可になったということもありました。要するに審査官の側に、非自明性の審査は厳格に行うべきという意識があると思います。

自明性の拒絶に対する対応

自明性の拒絶を受けた場合の典型的な対応は以下の通りです:

(a) 審査対象出願の発明や先行技術の開示内容に関する審査官の誤認を明らかにする。
(b) 先行技術の組み合わせに対する阻害要因(teach away)の存在を明らかにする。
(c) 予想外の優れた効果を明らかにする。
(d) 先行技術に教示・示唆されていない特徴をクレームに追加して、更にその特徴による予想外の優れた効果を明らかにする。

その他にも商業的な成功(所謂“secondary consideration”(二次的考慮事項)の例)などが考慮されることもありますが、これらはあくまで二次的に考慮される事項であって、一般的には上記の(a)~(d)で十分な対応が難しい場合に補足的に主張すべき事項です。やはり先ず上記(a)~(d)の観点からの反論を検討すべきでしょう。上記のKSR判決以前は、自明性の拒絶に対して「引用された2つの先行技術文献が異なる技術分野に属するものであるから組み合わせは不当」という反論で拒絶が撤回されることが屡々ありました。しかし、KRS判決以降は、異なる技術分野に属する先行技術文献であっても組み合わせることが当業者の常識の範囲内で容易であれば自明であるということになりました。従いまして、原則的には上記のような対応を考えるべきです。

上記(a)の審査官の誤解についてですが、特に米国の審査官は、技術内容の誤解に基づいて拒絶してくることが多いという印象があります。審査官の指摘を鵜呑みにせずに、自らの出願のクレームの記載や先行技術文献の開示内容を詳細に検討することが重要です。

また、その様な場合においても、ただ審査官の誤解を責めることを考えるのではなく、何故そのような誤解が生じたのかを謙虚に検討してみることが望ましい結果につながることが多いです。具体的には、審査官の誤解の理由を検討し、許容範囲内で、誤解の原因を排除し、発明をより明確に定義できる補正が可能であるならば、そのような補正を行うことが望ましいです。仮に審査官の誤解が明らかであっても、何らかの補正を行った方が、権利化がスムーズになります。

上記(b)の「阻害要因」については、一瞥してそのような阻害要因が見あたらないような場合でも、注意深く、執念深く、引用された先行技術文献を徹底検討すると、「阻害要因」として若しくは「阻害要因」とまではいえずとも先行技術の組み合わせを断ち切るために利用できる記載が見つかることも良くあります。一見自明性の拒絶が妥当に思えても、直ぐにあきらめないことが大切です。米国に限らず外国出願の多くは、現地代理人への依存度が高いと思います。しかし、現地代理人は、自分で明細書を作成したのではないということもあり、明細書や引用された先行技術文献を必要以上に詳細に検討することは通常有りません。現地代理人が半ばギブアップの状態でも、弊所で明細書や先行技術文献を徹底的に検討して有効な反論材料を見出したようなことも少なくありません。

上記(c)の「予想外の優れた効果」に関しては、米国の特許プラクティスの1つの大きな特徴として、出願明細書に記載されていない効果について、出願後に主張することが可能です。(日本や欧州においては、出願時の明細書に教示も示唆もされていなかったような効果に基づいて進歩性を主張することは原則的に許されません。)

また、米国において「予想外の優れた効果」の立証に有効なツールとして、37 C.F.R. 1.132に基づく宣誓書(affidavit)又は宣言書(declaration)(以下、纏めて「宣誓供述書」)があります。この宣誓供述書形式で提出された証言やデータについては、審査官は、公知文献や専門家の見解書と同等の証拠として真摯に検討することが義務付けられています。この宣誓供述書は、最後に文字通り「署名者は、故意の虚偽陳述及びそれに類するものは、18 U.S.C.. 1001 に基づき罰金若しくは拘禁、又はその併科により処罰されること・・・について警告を受けており、本人自身の知識によって行う全ての陳述が真実であること・・・を宣言する」と宣誓して署名するものです。

37 C.F.R. § 1.132の宣誓供述書の詳細については、以下をご参考下さい:
MPEP §716.01(a)MPEP§716.01(c)

また、宣誓供述書については、こちら にもより具体的な説明と、弊所で作成した宣誓供述書のサンプルを幾つか掲載しておりますので、参考までにご覧下さい。

他の国では一般的に審査段階では宣誓供述書の形式での提出は要求されません。しかし欧州の場合、審査の段階では実験証明書を宣誓供述書の形式にする必要はありませんが、異議申立手続きや審判手続きにおいては宣誓供述書の形式にすることが要求されます。

尚、自明性(進歩性欠如)の拒絶に対する対応の仕方については、こちら でも解説しておりますので、ご覧下さい。

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欧州(1)

Q. EP出願で指定した国に、別途直接ナショナル出願をすることは許されるのか?

A. 許されます。例えば、EP出願でドイツを指定して、さらに別途ドイツ特許庁に直接出願をすることが出来ます。最終的にはどちらかを選択する必要がありますが、重要な案件の場合に、保険の意味でEP出願とナショナル出願を両方提出しておくということが可能です。

Q. 審査通知などに対する回答期限には猶予期間(グレースピリオド(Grace Period))があると聞いたが本当か?

A. 10日間の猶予期間が有ります(Rule 126(2) EPC)。基本的に、EPOからの通知により応答期限が生じる場合全てに当てはまります。ここではEPOの通知の配送に10日間かかったものとみなし、EPO通知の日付から10日後を応答期限の起算日と見なします。

即ち、応答期間の満了日+10日ではないことに注意が必要です。

例えば、応答期間が4ヶ月のEPO通知で、5月30日が発行日である場合、4ヶ月の期限の満了日は9月30日ですが、10日間の猶予期間を加味した満了日は、この9月30日 +10日の10月10日ではなく、6月9日(EPO通知発行日 +10日) + 4ヶ月の10月9日です。

尚、口頭審理(Oral Proceedings)の召喚状に記載されているRule 116 EPCの期限(口頭審理前の書類提出期限)に関しては猶予期間は有りませんのでこの点にも注意が必要です。

Q. 欧州特許にも、新規性喪失の例外の規定(グレースピリオド(Grace Period))はあるのか?

A. 欧州特許にも、新規性喪失の例外の規定自体はあるのですが、適用の条件が非常に厳しく、発明が公知になってしまっても特許出願できるのは以下のような場合に限られます。

①出願人またはその法律上の前権利者(legal predecessor, 即ち出願人に権利を譲渡した人)に対する明らかな不正行為によって公知になった場合。(例えば、貴社が、顧客に対して貴社と守秘義務を負わせた上で、貴社の発明を開示したにも関わらず、貴社の発明を公開してしまったような場合。)

②公のまたは公に認められた国際博覧会における出願人またはその法律上の前権利者によって発明が開示された場合。
(http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/epo/pc/chap3.htm)

上記②についてですが、ここでの「公に認められた国際博覧会」とは所謂「万博」であり、何年かに一度しか開催されないようなものです(例えば、2010年は上海万博のみ)(EPO Official Journal April 2010のp.280:
http://archive.epo.org/epo/pubs/oj010/04_10/04_2620.pdf)。

従いまして、欧州において新規性喪失の例外の適用を受けられるのは極めて限られた場合のみになりますので、欧州での出願が重要であれば、事前の発表は控えるのが賢明です。

Q. EPOに対する異議申立てを、異議申立人が自発的に取下げた場合、その時点で異議終結となるのか?

A. 異議申立を取り下げてもEPOが自らの判断で審理を継続する場合もあります。つまり、EPOは職権により主体的に審査を行なうということで、このことはArticle 114 EPC(http://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/epc/2010/e/ar114.html)により規定され、Rule 84(2) EPC(http://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/epc/2010/e/r84.html)において確認されています。因みに、日本における特許無効審判の場合、無効確定前であれば、無効審判は終結します。

EPOにおける異議申立の場合、ケース毎に以下のような扱いになります。

(a) 唯一の異議申立人が異議を取下げた場合:

異議終結とするかは異議部の判断による。
原則的には、既に提出された証拠が特許性に影響を与えることが明らかな場合にのみ手続きを継続する。
異議終結させる場合にはEPOは通知を出す。

(b) 異議却下(特許維持)の異議決定を受けて、唯一の異議申立人が審判請求並びに理由補充書を提出し、これに対する特許権者の回答書を受けた後に異議を取下げた場合:

控訴が取下げられたものとして、異議決定が確定して異議終了。

(c) 特許取り消しの異議決定を受けて、特許権者が審判請求並びに審判理由補充書を提出した後に、異議申立人が異議取下げた場合:

請求人は特許権者であるから異議取り下げは、審判手続きに影響を与えない。審判部は、審理を継続し、異議決定の妥当性を検証する義務がある。

尚、上記(a)及び(c)において、審理が継続された場合、異議を取下げた異議申立人の当事者としての地位が維持されることがあるが、そのような場合おいて、異議申立人は積極的に参加することを要求されない。

Q. 欧州においても米国のように実験証明書などを宣誓供述書の形式で提出することは有効か?

A. 欧州では、審査の段階では、追加の実験データ等を宣誓供述書の形で提出する必要はないと言われております。しかし、極めて重要なデータなどは宣誓供述書の形で提出すれば、審査官の心証に影響する可能性は有ると考えられます。 一方で、異議申立て手続きや審判手続きにおいては、実験データなどは宣誓供述書の形で提出する必要があります。

Q. EPOで進歩性判断のテストとして採用されているProblem-Solution Approachとはどのようなものか?

A. Problem-Solution Approach(課題-解決手段アプローチ)は、欧州特許庁(EPO)が採用している進歩性判断のテストであり、EPOの審査ガイドラインにおいて解説されています。 具体的には、以下のようの手順で進歩性を評価します。

(i)  determining the "closest prior art",

(ii)  establishing the "objective technical problem" to be solved, and

(iii)  considering whether or not the claimed invention, starting from the closest prior art and the objective technical problem, would have been obvious to the skilled person.

これに補足を加えて訳すと以下のようになります。

(i)クレームされた発明と最も近い技術を開示する"最近似先行技術"を特定する。

(ii)最近似先行技術を念頭に置き、クレームされた発明が解決する技術的課題を決定する。
[補足: ここで実質的に要求されているのは、クレームされた発明と先行技術の技術的相違点(先行技術には記載されていない当該発明の特徴)を特定し、その技術的相違点に起因する先行技術に対する該発明のアドバンテージを特定することです。このアドバンテージを上記の「技術的課題」と考えれば良いと思います。]

(iii)クレームされた発明が提供する当該技術的課題の解決手段について、当業者が、最近似先行技術から出発して、該解決手段に到達することが自明であったかどうかを判断する。

[補足: 最近似先行技術を検討し、当該技術的課題に直面した当業者が、他の公知技術などを考慮した上で、クレームされた発明が提供する解決手段に到達する見込みについて判断し、この見込みが"could"(「したかもしれない」や「した可能性がある」)では「自明であった」とは言えず、"would"(「したであろう」)であった場合に「自明であった」と判断されます。この"would"は、米国MPEPにおける"with reasonable expectation of success"(「合理的成功の見込みをもって」)とほぼ同意と考えて良いと思います。]

国毎に独自の進歩性判断のテストがありますが、根本的な部分は共通していると考えて良いと思います。 我々も明細書を書くときには、上記の様なアプローチに従って、進歩性を確保できるようなクレームや明細書本文、実施例の構成を考えます。

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パラメータ発明、パラメータ特許について(Part 3 日本における注意事項)

(II-4)パラメータ発明に関する日本出願の注意事項:

前回"Part 2"で説明しました通り、日本(と韓国)以外の国においては、パラメータ発明であっても他の数値限定発明の場合と要求事項は大差有りませんが、日本(と韓国)においては厳しい要件が有ります。

特に日本では、米国や欧州と比較して、サポート要件と明確性要件が厳しくなっております。

日本では、パラメータ発明の出願などの所謂「複雑出願」(膨大な選択肢を有したり、もたらされる結果で発明を記述したり、特殊なパラメータで発明を記述しようとする特許出願)といわれる出願の増加にともない、サポート要件の審査基準が厳しくなってきています。つまり、従来はクレームと明細書との単なる形式的な記載レベルの整合性が審査されることが主でしたが、近年では、技術の内容に立ち入って実質的な対応関係が審査されるようになりました。具体的には、以下のようなことが要求されます。

データ(実施例)

クレームされた当該パラメータの全範囲にまで発明を一般化できると主張できる充分なデータを明細書に記載すること、つまり、当該パラメータの全範囲をカバーする充分な数の実施例を記載することが重要です。

どの程度で「充分」と言えるのかは、ケース・バイ・ケースですが、例えば、中国の審査基準には以下のような要件が記載されています:

「通常は両端の数値付近(最適は両端値)の実施例を記載し、数値範囲が広い場合には、少なくとも一つの中間数値の実施例を記載しなければならない。」(専利審査指南、第二部分、第二章、2.2.6項)

特に、1つのパラメータで発明が定義されている場合は、国を問わず、上記は有効な指標となるでしょう。

一方、複数のパラメータの論理積(複数パラメータの規定範囲の重複部分)として発明が定義されているような場合は、要求されるデータは必然的に多くなります。その境界における臨界性(範囲内外での効果の違い)を明確にする為に多くのデータが要求されることがあります(理屈としては、ベン図における論理積(重複部分)の境界線を明らかに出来る程度の数のデータが必要になります)。上で述べた偏光フィルム事件は、複数のパラメータで発明が規定された例にあたり、実施例2つと比較例2つでは不十分であると認定されました。

もしも、どうしても出願時点で充分なデータを揃えられないという場合は、次善の策として、少なくとも、明細書に記載されるデータからその式を導き出すこと、及び、クレームされた数値範囲を定めること、が妥当であることを示す一応筋の通った理論や理由を述べておくことが絶対に必要です。

パラメータを規定する式

式などでパラメータを記載する場合は、明細書に記載されるデータからその式を導き出した根拠とクレームされた数値範囲を定めた根拠についての説明を述べることが要求されます。

パラメータで規定する範囲

パラメータの数値範囲が一見して非常に広範囲である印象を与える場合は、一般には具体的にどのくらいの数値範囲となるのかを示すことが望ましいとされています。

パラメータの数値範囲に下限または上限のいずれか片方しかない場合(所謂「オープンエンド(open ended)」のパラメータの場合)は、下限または上限の無い全範囲にわたってサポートされてはいないとみなされる可能性があります(または、不明確であるとみなされる可能性があります)。したがって、下限または上限を記載することが不可能でない限りは、それを、少なくとも明細書には記載しておくことが非常に望ましいと考えます。その際、下限または上限を記載することが真に不可能である場合は、その理由を合理的に記載しておくことが望ましいと考えます。

パラメータの明確性

測定方法が不明確であるために権利範囲が不明確となるという場合の典型例は、以下の通りです。まず、明細書に測定方法が記載されているが不明確である場合があります。また、明細書に複数の測定方法が記載されており、どの方法を用いるかで測定値に違いが生じるので不明確となる場合もあります。また、明細書に測定方法が記載されておらず、一般に複数の測定方法が知られており、どの方法を用いるかで測定値に違いが生じるので不明確となる場合もあります。したがって、当業者が疑問を生じることなく正しく実施できる1つの測定方法を明確に記載する必要があります。

また、当該パラメータが直感的に理解し難い複雑な式などで記載されている場合は、「当該パラメータの技術的意味が不明確である」という指摘や、「当該パラメータを特定の範囲とすることが発明の作用・効果とどのように関連するのかが不明確である」という指摘を審査官から受ける可能性があります。

尚、「技術的意味」について、審査基準では、「発明を特定するための事項の技術的意味とは、発明を特定するための事項が、請求項に係る発明において果たす働きや役割のことを意味し、これを理解するにあたっては、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮する」と述べられています。したがって、直感的に理解し難い複雑な式などでパラメータを記載する場合は、その「技術的意味」、すなわち、「発明において果たす働きや役割」(言い換えると、発明の作用・効果とどのように関連するのか)についての分かりやすい説明を明細書に記載することが必要です。

従って、日本(若しくは韓国)での権利化が重要であれば、審査基準に鑑み以下の様な点に注意して出願明細書を作成することが望ましいと考えます。

① 明細書に、クレームされたパラメータの範囲の技術的意味(すなわち、「発明において果たす働きや役割」)を明確に記載する。

② 式などでパラメータを記載する場合は、明細書に記載されるデータからその式を導き出した根拠とクレームされた数値範囲を定めた根拠についての説明を記載する。

③ パラメータ発明と従来技術のものとの関係を明細書において明確にしておく。すなわち、たとえば、「従来技術のものがクレームに記載するパラメータの範囲に入らず、発明の効果を発揮しないこと」を示すことができる比較実験データを実施例や比較例として記載する。

④ クレームされた当該パラメータの全範囲にまで発明を一般化できると主張できる充分なデータを含む実施例と、出来れば先行技術に相当する比較例やパラメータの臨界性を示す比較例(クレームしたパラメータ要件を満たさない場合、意図した効果が達成できないことを示す実験データ)とを明細書に記載する。  パラメータの数値範囲に下限と上限のいずれか片方しか設けない(open end)ということは、なるべく避けて、下限または上限を記載することが不可能でない限りは、少なくとも明細書には記載しておく。

⑤ パラメータ発明のものを製造する方法(製造条件)を明確に記載する(製造条件に関する種々の具体的な数値を記載する)。特に、当該パラメータを制御してクレーム範囲内の任意の値を容易に達成できるような手段を記載する。

⑥ 当該パラメータの数値を決定するための1つの測定方法を明確に記載する。

⑦ 出願後に実験データなどを提出することによって記載要件(サポート要件や実施可能要件)の不備を解消することは認められていないので、特にこの点で充分なデータや説明を記載しておくように留意する。

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宣誓供述書の書き方について(4):専門家の供述書(鑑定書)

審査段階においては、発明者を宣誓者とした宣誓供述書を採用することが多いですが、係争などの当事者系の手続においては専門家の宣誓供述書が必要になることが屡々あります。

勿論、専門家に案件を最初から検討してもらった上で鑑定書を作成してもらうことが望ましいのですが、時間や費用的な制約により、それが難しいこともあると思います。そのような場合、例えば、発明者の方による実験の妥当性についての考察を専門家に行ってもらい、実験結果に関する信頼性を高めるという方法をとることがあります。以下に、その書式の1例を示します。(欧州特許に関する係争手続きにおいて弊所が実際に提出したものに基づいていますが、固有名詞などは適宜変更してあります。)

Declaration of Professor Shigeo MARUKAWA

(Opinion on the experiments performed by Mr. Ichiro SUZUKI)

I, Shigeo MARUKAWA, a Japanese citizen, residing at xxxx, Chiyoda-ku, Tokyo Japan, do hereby declare and state as follows:

I am a professor of Graduate School of Engineering, VWXYZ University (xxx, xxx, Kanagawa-ken 333-4444
Japan; Phone: +81-xx-xxx-xxxx / FAX: +81-xx-xxx-xxxx).

My personal history is as follows:

1987 Graduated from the doctor course (of applied chemistry and synthetic chemistry), Graduate School of Engineering, VWXYZ University

1987 Assistant at the Department of Engineering, VWXYZ University

1993 Lecturer at the Department of Engineering, VWXYZ University

1995 Lecturer at the Graduate School of Engineering, VWXYZ University

1997 Overseas Research Student (at OPQRS University, the U.S.A.), nominated by the Japanese Ministry of Education, Science and Culture

1999 Assistant Professor of the Graduate School of Engineering, VWXYZ University

2005 Professor of the Graduate School of Engineering, VWXYZ University

Memberships in academic societies:
    The Chemical Society of Japan,
    Catalysis Society of Japan, and
    The Society of Chemical Engineering of Japan.

Award:

1995 The Chemical Society of Japan Award for Encouragement of Research and Development

I hereby provide my opinions on the experiments performed by Mr. Ichiro SUZUKI.

上記の例からも分かるとおり、専門家に鑑定してもらう場合には、専門家が関連分野における権威であることを明らかにする為に、冒頭の経歴部分を比較的詳細に記載します。


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