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中国(4): 模倣や個人輸入の問題

時々、お客様より「中国は、模倣や個人輸入の問題があるから出願しても意味が無いのでは?」という様なご質問を受けることがあります。

中国の知的財産軽視の根底には、「他人が考えたのと同じ物を作ったり、作り方を真似しても、『物』自体を盗んだのではない。何が悪いのか?」という考えがあるそうです(http://ja.wikipedia.org/wiki/中国の知的財産権問題)。

中国での模倣や中国からの個人輸入は仕方ないとあきらめてしまえばそれまでですが、中国の市場規模の大きさ及び生産能力の高さからして「仕方ない」で済むレベルでは無いと思います。中国特許を持っていても模倣や個人輸入を完全に抑制できないにしても、特許が無ければいざという時に戦う武器が全く無いことになってしまいます。

模倣に関しては、問題は明らかであると思いますので、個人輸入の問題に関して考えてみたいと思います。

個人輸入について

日本や米国、欧州の多くの国においては、これらの国で特許された製品であっても、国外で取得した当該製品を個人輸入するという行為には、特許権者の許可は必要有りません(特許権の効力は特許製品の業としての輸入等にのみ及ぶので、事業行為でない個人的な輸入を禁ずることができないため)。例えば、ある製品に関して日本で特許を有していたとしても、中国において製造された該製品を、個人で中国から輸入するという行為は日本においては特許権の侵害とはなりません。また、同様に、米国や欧州(フランス、イタリアなどの例外有り)で特許を取得した場合も、これらの国において中国から個人輸入する行為は特許侵害とはなりません。

ご存じの通り、特に中国などの外国からの個人輸入が実際に問題となっております。しかし、上記の通り、個人で輸入する限りはこれを規制する法律はなく、また個人を偽って実際には事業目的で特許製品を輸入したような場合には違法行為となりますが、これを水際で取り締まることは非常に困難です。従って、インターネット販売などにより一旦日本に輸入されてしまえば、それを規制する有効な手段は無いというのが現状です。

個人輸入に対する対応策

上で述べたような問題点を鑑みますと、個人輸入対策としては、中国で特許を取得して、中国国内での製造・販売、中国国外への輸出を抑止するということしか無いと思います。

即ち、中国において特許権を有する場合、中国国内で特許製品を製造・販売する行為や中国国外に輸出する行為は侵害行為となりますので、特許製品が日本に輸出される以前に中国国内での製造及び輸出業者への販売の差し止めなどを請求することが可能になります。[参考までに、中国では知的財産権侵害の場合、裁判以外に行政摘発による処分も可能ですが、相手の侵害事実を立証するために現地の調査会社に依頼して詳細な事実関係を明らかにする必要があります。この調査には通常30~50万円程度の費用がかかりますが、中小企業の場合、JETROの助成制度によって3分の2が補助されます。(http://www.jetro.go.jp/services/ip_service/)]

逆に、中国における権利が無い場合には、中国国内における特許製品の製造・販売・輸出、中国からの個人輸入などの行為が全て合法ということになってしまいますので、中国で大量に生産され、日本にも大量に(合法的に)個人輸入されてくるという状況が生じ得ます。

尤もご存じの通り、中国における特許権の行使には様々な問題が有ります。例えば、国民性として知的財産権を尊重するという意識が低いこと、政府の取り締まりが甘いこと、特許訴訟において中国企業側に有利な判決が出やすいこと、特許侵害に対する損害賠償額が低いため[損害賠償額の上限は100万元(1元=13円として1,300万円)であり(2011年現在)、一般的には20~30万元(260~390万円)]特許による侵害抑止効果が低いことなどの問題が有ります。

しかし、中国において権利を有していないと、実際に中国に関連して問題が発生したときに何ら対抗手段がないということになってしまいます。

更には、近年、中国では国家戦略として知的財産に力を入れており、現在も急速に特許出願件数が増加しております。中国国内の企業等が所有する知的財産権が増加すれば、必然的に権利の保護強化の方向に向かうことが予想されます。従いまして、近い将来に、中国でも日本や欧米と近いレベルの保護が実現する可能性もあると思います。

以上のことから、中国からの個人輸入をご懸念であれば、尚更、中国に出願しておくことが賢明であると考えます。

結論

現在の世界的不況下で、どの国に出願するのが将来的にも最も効果的なのか判断するのは非常に困難ですが、中国は現在、経済的に最も有望且つ安定した国ですので、未だ知的財産保護が充分でないにしても、中国に出願することはやはり大きな意義があると思います。

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《判決文》

(和英)

原文:

そして前記アで説示したとおり、相互に非相溶の樹脂同士を溶融混練すれば、体積割合の多い 方の樹脂が構成する海(連続相)の中で、少ない方の樹脂相が島構造となる可能性が高いこと は、当業者であれば容易に予想することができること、もともと海相中に含まれる導電性物質 等の第3成分が島相に移行するためには、海相中を移動する島相が当該第3成分と接して、なお かつ海相-島相間の海面を拡散して島相中へ入り込む必要があり、拡散が通常は正逆方向に移 行可能な反応であること(移行の程度は異なっても、一旦島相に入り込んだ第3成分が再び海相 へ戻る可能性もある。)をも考え合わせると、当初は海相中にのみ含まれていた導電性物質等の 第3成分が、押出機等による比較的短い時間での溶融混練中に海相から島相へ一方的に大量に移 行し、過半を超えるような事態は当業者においておよそ想定しがたいものと認められるから、 「導電性物質の局在化が保たれる」との本件審決の認定に誤りはない。

 英訳文:

Further, as explained in item A above, those skilled in the art can readily anticipate that, when two types of resins which are incompatible with each other are melt-kneaded, a resin having a smaller volume ratio is very likely to form an island structure in the sea portion (continuous phase) formed by another resin having a larger volume ratio.   In addition, the migration of a third component (such as an electroconductive substance) which has originally been contained in a resin forming a sea phase into an island phase requires not only the contact between the island phase (moving through the sea phase) with the third component but also the diffusion of the third component at the sea phase-island phase interface into the island phase (further, it is possible that the third component which has once migrated into the island phase returns to the sea phase although the extent of the migration may vary).  In view of the above, it is recognized that those skilled in the art would hardly expect a migration of a large amount of a third component (such as an electroconductive substance) which has originally been contained only in a resin forming a sea phase into an island phase during the melt-kneading performed by an extruder or the like only for a relatively short time, which results in the presence of more than half amount of the third component in the island phase. Therefore, the Board of Appeal has not erred in recognizing that “localized dispersion of the electroconductive substance is maintained”.

中国(6): 実用新案(実用新型専利)の有効活用

中国の実用新案は、国際的な視点からは少々トリッキーな存在となっており、中国における特許中心の知財戦略を検討するのであれば、実用新案制度も是非とも熟知しておくべき非常に重要な制度です。日本においては、実用新案はそれほど有用な権利とは認識されておらず、出願件数も特許と比較すると非常に少ないのに対し、中国においては、実用新案出願件数は特許出願件数よりも多く、且つその殆どが中国国内の出願人によるものです。このような極端な傾向は、実用新案制度を有する他の国では見られません。

実用新案出願件数が多いことの原因として考えられるのは、日本と同様に中国でも実用新案は低コストで容易に権利を取得できるということに加えて、日本と比較して、中国の実用新案権は権利行使し易く且つ無効になり難いということが挙げられます。また、中国企業の方針として、時間とコストをかけて先駆的な技術を開発するよりも、既存技術のマイナーバリエーションを実用新案で幅広く抑えておくということが有るのかも知れません。

更には、日本と異なり、同一の発明について特許と実用新案の両方を出願することが出来るという点も、中国における実用新案が広く活用されている要因の一つであると考えられます。

そして、実用新案制度が存在せず馴染みの無い国(米国など)や実用新案制度があっても権利行使が難しく有用性が低い国(日本、ドイツなど)が多いことから、中国国外の出願人にはあまり利用されていないというのが現状のようです。

概要

権利の種類

中国特許法(専利法)によれば、日本における特許、実用新案及び意匠は、何れも「専利」の一種ということになり、以下の様に称されます。

発明専利 → 日本の「特許」、米国のUtility Patent

実用新型専利 → 日本の「実用新案」(米国は実用新案制度無し)

外観設計専利 → 日本の「意匠」、米国のDesign Patent

保護対象と権利期間(日本とほぼ同様)

中国における実用新案の保護対象は「製品の形状、構造又はその組合せについてなされた実用に適した新しい技術方案」です(専利法実施細則第2条第2項)。これは、日本と実質的に同様であり、方法や用途、組成物などに関する発明(考案)は実用新案を利用できません。更に、日本と同様、出願には必ず図面を含めることが要求されます。

権利期間が、出願から最大10年である点も日本などと同様です。

権利化までの期間(日本とほぼ同様)

方式審査のみで登録となるため、特許(発明専利)が権利化まで2年半~3年半程度要するのに対して、実用新案は約6ヶ月程度で権利化できます。

出願件数 - 中国における膨大な実用新案出願件数 -

日本ではあまり活用されていない実用新案制度ですが、中国では以前から出願件数が非常に多く、特に2010年以降は、特許の出願件数を上回っています。

日本においては、実用新案の出願件数は特許と比較すると非常に少なく、2011年は特許出願の約1/40の出願件数(特許出願約34.3万件に対し、実用新案出願は約8千件)であるのに対し、中国においては、実用新案出願件数は特許出願件数よりも多く(2011年は特許出願約52.6万件に対し、実用新案出願は約58.5万件)、且つその99%以上が中国国内の出願人によるものです。

権利行使 - 中国における権利行使の容易さ -

日本では、特許権と比較した場合の権利の不安定さやリスクの大きさから、実用新案権に基づく権利行使はあまり現実的なオプションとは考えられていませんが、中国においては、特許の場合とほぼ同様の感覚で実用新案権の権利行使が可能です。

技術評価書(調査報告書)(中国では要求されない限りは不要)

日本では、実用新案権に基づく権利行使をする場合には、特許庁が作成した実用新案技術評価書を入手する必要があります(日本国実用新案法第29条の2)。技術評価書においては、特許の審査と同様に、新規性、進歩性などが評価されます(但し、法律の文言上は、実用新案に要求される進歩性は、特許の場合よりも低い)。

一方、中国においては、権利行使の際に技術評価書を提示する必要はなく、裁判所に要求されたら提出すればよいことになっています。

実用新案に要求される進歩性

日本と同様に、中国でも実用新案権について無効審判を請求することができます。当然、そこで新規性・進歩性が認められなければ、実用新案権は無効となってしまうわけですが、実用新案は特許ほど顕著な進歩性は要求されません。

この点、日本においても、法律の文言上は、特許と実用新案に要求される進歩性に差が設けられているのですが、実務上その違いは必ずしも明確では有りません。一方、中国においては、「実用新案に要求される進歩性(創造性)の基準が低い」ということが、審査基準に明確に規定されています(審査基準第四部分第六章第4 節)。そして、具体的に以下の2点で特許の進歩性基準との差を明確にしています。

(1)特許に関しては、発明が属する技術分野のみならず、それに近い分野や関連分野、及び当業者が参考にするであろう他の技術分野についても考慮されるが、実用新案に関しては、一般的には、当該実用新案の属する技術分野を考慮することが重視される。

(2)特許は3以上の文献を組み合わせて進歩性を否定できるが、実用新案は原則的に2つまで。

従って、中国の実用新案は、日本と比べて無効にすることが難しいと言えます。

参考までに、中国において、ここ約10年で、付与後の特許が無効になった割合は約26%程度、実用新案が無効になった割合は約33%程度で、極端に大きな開きは有りません。むしろ、実用新案が無審査で登録になっているにも関わらず、1/3程度しか無効にならないということは特筆に値します。

侵害訴訟における過失の推定について(実用新案が無効になった場合の損害賠償)

日本では、特許権については、他人の特許権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定されます(日本国特許法第103 条)。要するに、特許権の権利侵害に関しては、「過失の推定」が働き、特許権者は、権利侵害に対する損害賠償請求をするに際して、侵害者の故意・過失を立証する必要がありません。

一方、実用新案権については、そのような「過失の推定」は有りません。従って、日本で実用新案権に基づいて他人に警告や権利行使をした後に、その実用新案権が無効になった場合、原則的に実用新案権者は損害賠償の責任を負います(日本国実用新案法29条の3第1項)。このことが、日本において実用新案があまり活用されていないことの大きな要因の1つとなっています。

これに対し、中国の実務では、特許のみならず、実用新案権に基づく権利行使においても侵害者の過失が推定されるため、実用新案権利者は被疑侵害者に過失があることを証明する必要がありません。要するに、日本と異なり、中国では実用新案権が無効になってしまった際の損害賠償を心配せずに権利行使することができます。

実用新案権の侵害が認められた場合の損害賠償

中国の実用新案侵害で高額な賠償金支払い命令が出たことで有名な事件として、シュナイダーvs正泰集団案((2007)浙民三終字第276号)があります。

この事件では、2007年9月に、中国浙江省の温州市中級法院が、フランスのシュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)社の子会社に対して、同社が中国の正泰集団の実用新案権を侵害したとして、3.3億元(12円/元として約40億円)の損害賠償を命じ、その後、(2009年4月に、シュナイダー側が正泰集団に 1.575億元(12円/元として約19億円)支払うことで和解が成立しました。

シュナイダー事件以前は、特許や実用新案の侵害に対する賠償金は、権利者が被った損害及び侵害者が得た利益の算定が証明できていないとして、法定賠償範囲額(5千元から上限50 万元程度)の範囲内で算定されることが殆どでしたが、シュナイダー事件を境に高額な賠償金支払い命令が出るようになりました。

例えば、特許侵害訴訟になりますが、武漢晶源vs.日本富士化水(2009年12月21日最高人民法院(2008)民三終字第8号)においては、最高人民法院(最高裁判所)が、被告である富士化水と華陽公司が武漢晶源の特許権侵害行為を共同して実施したと認める最終審判決を下し、5061.24万元(12円/元として約約6億円)の支払いを命じました。

シュナイダー事件では種々の特殊な事情が重なって特別高額な賠償金となった例外的な案件という見方もできますが、実用新案権侵害で高額の賠償金支払い命令が出る可能性が有ることを示す例であることには変りありません。

従って、中国で権利を取得するという立場からは、実用新案は低コストで強い権利が取得できるという利点があるわけですが、中国で実際に事業を行う際には、無審査で登録になった大量の実用新案の存在は脅威となり得ます。

中国特有の出願制度 - 特許と実用新案の並行出願 -

中国では、日本と異なり、同一の発明に関して、特許出願と実用新案出願を同時に提出することが正式に認められています。そして、特許出願が許可になり登録されたら、実用新案権を放棄するということが許されます。従って、最終的には特許権獲得を目指す場合でも、先ず実用新案で早期に権利を取得しておくということが可能です。

日本でも、実用新案を特許出願に変更することはできますが、その時点で、実用新案権は放棄しなければなりません。従って、特許出願が許可にならなかったら、全く権利がなくなってしまいます。

中国において特許出願と実用新案出願を同時に提出し、権利化を図る際には、以下の要件を満たす必要があります(中国専利法9条、及び専利法実施細則41条):

(1) 同じ出願人が同日に特許出願と実用新案出願を行う。

(2) 特許と実用新案の両方の出願において重複して出願している旨を明記する。

(3) 特許が登録となった際に、実用新案権を放棄する。

但し、国際出願(PCT出願)の場合、中国へ移行する際に実用新案を選択することは可能ですが、特許と実用新案を両方出願することはできません。従って、特許と実用新案を同時出願するのであれば、中国を第一国として出願するか、最初の日本出願から1年以内にパリ優先権を主張して出願する必要があります。

特許・実用新案間の出願変更

上記のように中国では、特許と実用新案の同時出願が可能な一方で、実用新案出願を途中で特許出願に切り替えたり、またその逆は出来ません。日本では、そのような出願後の特許から実用新案、実用新案から特許への出願変更が認められています。

しかし、上記の通り、中国では実用新案に要求される進歩性がそれほど高くありませんので、出願済みの特許発明に若干の変更を加えて実用新案出願するということも考えられます。

纏め

以上の通り、中国における実用新案は、日本におけるそれとは大きく意味合いが異なるものとなっており、権利期間が特許の半分(特許は20年、実用新案は10年)であることを除けば、特許と同等に強力な武器となり得ます。

また、実用新案権は低コストで且つ容易に取得できるという点も考えると、特にライフサイクルの短い製品などの保護には実用新案制度の利用は極めて有力なオプションとなるはずです。実用新案は、イニシャルコストが特許出願と比較して安いのみならず、実用新案出願には実体審査がないため、審査請求費用が不要且つ中間手続きの費用が殆どかりません。特許の場合、中国特許庁(SIPO)が、一度も拒絶理由通知を出さずに特許査定することはあまりありません。

これまで中国においては専ら特許制度のみしか利用していなかったならば、実用新案制度の価値を再検討してみることを強くお勧め致します。例えば、PCT国際出願について国際調査報告の内容が望ましくないものであった場合に移行を断念するというようなこともあるかと思いますが、そのような状況でも中国には実用新案として移行しておくというような利用法もあると思います。

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