地域

欧州(5): 審査

比較的厳しくオーソドックスな審査が行われます。審査官や個々の案件により状況は大きく異なりますので、一概にどの国や地域が審査が厳しいと明言することは難しいのですが、一般的に日本や米国よりも厳しいと言われております。我々が扱った案件でも、最初の実体審査通知が許可通知(厳密には、Rule 71(3)の許可予告通知)ということも結構有るのですが、一旦、拒絶されると厳しく追及してくる審査官が比較的多いという印象です。

KSR判決以前は、一般的に欧州の方が米国より審査が厳しいと考えられていましたが、最近は差が小さくなっているように感じます。米国のKSR判決により、米国における非自明性の基準と欧州における進歩性の基準がほぼ等しくなったと述べている欧米のアトーニーもおります。

新規性

欧州においては、日本や米国と比較して、新規性の拒絶は受け難いと言えます。

具体的には、EPOにおいて新規性を否定するためには、審査対象の発明が公知技術文献に直接的且つ明確(directly and unambiguously)に記載されていることが要求され、そのような厳密な意味での新規性を要求する判断基準は、"Photographic Novelty"と称されることがあります。要するに、欧州では、公知文献に内在的に開示されていると判断され得るような事項であっても、それが直接的且つ明確に読み取れ無い場合、そのような事項は公知文献に開示されているとは見なされません。例えば、本発明と公知文献に開示されている発明の違いが、周知技術の付加や周知の均等物による置換などであっても、明示的な違いが有れば、それは新規性ではなく、進歩性の問題とされます。

一方、日本の新規性判断基準は、本発明と公知文献に違いが有っても、その相違が実質的なものでないと判断されると新規性は否定されます。例えば、例えば、本発明と公知文献の違いが、周知技術の付加や周知の均等物による置換に過ぎないと判断されれば、本発明の新規性が否定されます。この様な新規性判断基準は、欧州の"Photographic Novelty"に対比して、"Enlarged Novelty"と称されることもあります。

しかし、仮に新規性を認められても進歩性も認められなければ、結局は特許許可を受けることは出来ませんので、特許性審査において、この新規性判断の厳しさが大きな問題になることは余りありません。例外は、出願時に未公開であった先願(Secret Prior Art)が引用された場合です。この様な出願時に未公開であった先願に対しては、新規性を有することは要求されますが、進歩性まで有することは要求されません。従って、その様な先願が引用された場合、新規性が認められれば、進歩性が無くても特許が認められることとなります。

また、このEPOの新規性判断の考え方は、補正の適格性や優先権主張の有効性の判断にも適用されます。

要するに、補正については、上記のような新規性判断基準(Photographic Novelty)に照らして、補正後の請求項が出願時の明細書の開示に対して新規性が無いと言える程度に、直接的且つ明示的に記載されているものにしか補正することができません。この点については、別途、補正に関してより具体的に説明します。

また、優先権主張の有効性についても、EP出願が、優先権出願に対して新規性を有しないということが要求され、ここでの新規性は、上記したような厳格な意味での新規性になります。要するに、優先権出願から黙示的に読み取れると言えるような発明であっても、優先権出願に直接的且つ明示的に示されていると言えなければ、優先権の有効性が認められません。

進歩性

通常、Problem-Solution Approach(課題-解決手段アプローチ)に沿って判断されます。具体的には、以下のようの手順で進歩性を評価します。

(i)  determining the "closest prior art",

クレームされた発明と最も近い技術を開示する"最近似先行技術"を特定し、

(ii)  establishing the "objective technical problem" to be solved, and

最近似先行技術を念頭に置き、クレームされた発明が解決する技術的課題を決定し、そして

[補足: ここで実質的に要求されているのは、クレームされた発明と先行技術の技術的相違点(先行技術には記載されていない当該発明の特徴)を特定し、その技術的相違点に起因する先行技術に対する該発明のアドバンテージを特定することです。このアドバンテージを上記の「技術的課題」と考えれば良いと思います。]

(iii)  considering whether or not the claimed invention, starting from the closest prior art and the objective technical problem, would have been obvious to the skilled person.

クレームされた発明が提供する当該技術的課題の解決手段について、当業者が、最近似先行技術から出発して、該解決手段に到達することが自明であったかどうかを判断する。

[補足: 最近似先行技術を検討し、当該技術的課題に直面した当業者が、他の公知技術などを考慮した上で、クレームされた発明が提供する解決手段に到達する見込みについて判断し、この見込みが"could"(「したかもしれない」や「した可能性がある」)では「自明であった」とは言えず、"would"(「したであろう」)であった場合に「自明であった」と判断されます。この"would"は、米国MPEPにおける"with reasonable expectation of success"(「合理的成功の見込みをもって」)とほぼ同意と考えて良いと思います。]

審査に要する期間

欧州は審査に非常に時間がかかることも特徴です。通常、審査請求から特許取得まで、3~4年、場合によってはそれ以上かかります。審査官の質は高いのですが、取り扱う案件の数に見合うだけの数の審査官がいないということが最大の原因です。

加盟国におけるプラクティスの違い

EPOより許可された後に、所望の指定国への登録を行いますが、無効訴訟などは国毎に行われ、またその際はその国の法律に基づいて、特許の有効性が判断されます。

特に、ドイツはEPC加盟国でありながら、ドイツで選択発明が認められるか定かで無い点に注意が必要です。このことは、選択発明を認めているEPOにより許可された特許をドイツに登録しても、ドイツでは無効にされる可能性が有ることを意味します。

また、EPC加盟国でも、ベルギー、ギリシャ、オランダ、スイスは方式審査のみですので、これらの国において早期且つ安価に権利を取得することを希望するのであれば、EPO経由でなく直接出願した方が、目標を達成しやすいと言えます。

フランスにおいては、審査段階では新規性についてのみ検討されます。従って、やはりEPO経由よりも直接出願の方が比較的容易に権利化できる可能性があります。但し、無効訴訟においては、進歩性も問題となります(審査中、登録後、訴訟前に補正が可能)。

成分Aの量に関して『好ましい量』

タグ:

特許  米国  出願  クレーム  発明  日本  欧州  補正  新規性  記載  必要  EPO  進歩性  明細書  上記  以下  審査  拒絶  or  be  先行技術  先願  判断  可能  請求項  EPC  例外  比較  審査官  主張  開示  適用  要求  対象  an  説明  可能性  成分  請求  優先権  出来  検討  not  選択  指定国  本発明  with  選択発明  公開  通常  考慮  具体的  出願時  問題  特徴  claim  明確  審査通知  無効  ドイツ  特定  期間  公知  EP  文献  at  技術  加盟国  最初  登録  容易  特許性  引用  art  当業者  非常  意味  基準  invention  注意  指定  権利化  提供  以前  優先権主張  一般的  prior  非自明性  有効  権利  判決  審査請求  MPEP  通知  状況  許可  実質的  否定  been  課題  決定  以上  自明性  取得  判断基準  訴訟  自明  案件  手段  経由  優先権出願  合理的  達成  事項  アプローチ  時間  解決  相違  problem  評価  見込  段階  明示的  Art  程度  Prior  Rule  KSR  許可通知  原因  would  Novelty  so  審査段階  結局  実体審査  早期  印象  ex  有効性  加盟  フランス  technical  reasonable  特許許可  re  新規性判断  large  プラクティス  登録後  直接  置換  一般  法律  公知技術  未公開  到達  Secret  公知文献  成功  claimed  skill  優先  希望  周知  解決手段  objective  最大  skilled  直接出願  ii  新規性判断基準  欧米  無効訴訟  当該  person  相違点  所望  直接的  国毎  念頭  最近  手順  プロ  特許取得  補足  補正後  最近似先行技術  Problem  Photographic  side  周知技術  明示  reason  技術的課題  starting  起因  Solution  directly  closest  スイス  同意  determining  considering  アドバンテージ  付加  地域  均等物  直接的且  特許取  her  進歩  per  厳格  am  whether  term  厳密  非自明  expectation  iii  アトーニー  success  could  unambiguously  内在的  一概  安価  判決以前  方式審査  直面  比較的容易  obvious  当該技術的課題  Approach  start  技術的相違点  技術的  目標  Enlarged  オランダ  able  審査中  比較的多  対比  over  新規  当該発明  実体審査通知  先行  出発  別途  オーソドックス  明細  ギリシャ  該発明  該解決手段  一旦  結構  合理的成功  ベルギー  oa  low  fr  establish  establishing  ed  invent  solved 

PCT(2): 加盟国と指定方法

加盟国

日本、米国、EP、EU諸国、中国、韓国などを含む144カ国(2012年4月現在)が、PCTに加盟しています。マレーシアやタイなども近年PCTに加盟しており、主要な国でPCTに加盟していないのは、台湾くらいであると言っても過言ではありません。(北朝鮮もPCTに加盟していますが、外交上の問題により日本からは特許出願できません。)

また、上記の加盟国には、EP以外の広域特許機関(二以上の国において効力を有する特許(広域特許)を付与する権限を有する機関)も含まれています。EP以外のPCT加盟広域特許機関は、アフリカ広域知的所有権機関(ARIPO)、ユーラシア特許機構及びアフリカ知的所有権機関(OAPI)などです。尚、中東・アラビア湾岸地域における広域特許機関である湾岸協力会議(GCC)は、2012年4月現在、PCTに加盟しておりません。しかし、GCCにおいては、日本における「準公知」や「拡大された先願の地位(拡大先願)」(特許法29条の2)に相当する規定が無く、出願時に公知でなければ新規性を喪失しません。従って、PCT出願が公開される前であれば、当該PCT出願に対する新規性を喪失せずに、GCC出願することが可能です。

PCT加盟国は、こちらで確認できます。

http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/kokusai2.htm

出願国指定

PCT出願時には、全加盟国が自動的に指定されます。しかし、勿論、30ヶ月(乃至31ヶ月)以内に、所定の移行手続きをとらなかった国については、その国で特許を取得することはできません。

尚、PCT加盟国は増え続けていますが、移行出来るのは、あくまでPCT出願時にPCTに加盟していた国だけです。PCT出願時には非加盟で、その後PCTに加盟したような国には移行することはできません。

PCT出願した際の日本での特許取得

日本出願に基づく優先権を主張してPCT出願した場合には、日本での特許取得については、当該日本出願を権利化する、若しくはPCT出願を日本に移行し、こちらを権利化することもできます。

但し、PCT出願時に日本を指定国から除外するか、若しくは優先日から15ヶ月以内に所定の手続きを取らないと、当該日本出願は、みなし取り下げとなってしまいます。日本については、PCT出願を日本国内に移行して権利化を目指す場合には、みなし取下げで問題有りません。一方、優先権主張の基礎とした日本出願の方の権利化を望むのであれば、以下のいずれかの方法により、優先権主張した日本出願のみなし取下げを回避する必要があります。

(1) 国際出願の願書において日本国の指定を除外する。

(2) 優先日から15 ヵ月を経過する以前に、PCT 規則90 の2.2 に従い、「指定国の指定取下書」を提出して、日本の指定を取り下げる。

(3) 優先日から15 ヵ月を経過する以前に、「上申書」(日本における出願人全員の授権がある委任状を添付)を提出して、国際段階で国内優先権主張を取り下げる。

“PPH MOTTAINAI”試行プログラム

日本を含む8か国(日本、米国、英国、カナダ、オーストラリア、フィンランド、ロシア、スペイン)において、特許審査ハイウェイ(PPH)申請の要件を緩和し、対象案件を拡大した“PPH MOTTAINAI”試行プログラムが、2012年7月15日から1年間の期間実施されます。尚、この期間は延長される可能性もあります。

特許審査ハイウェイ(PPH)とは、ある国で特許権を取得することが可能と判断された出願について、その情報を利用して他の国で簡易な手続で早期審査を受けられるようにする制度です。

“PPH MOTTAINAI”試行プログラムにより、既に日本とPPHを実施または試行している米国、英国、カナダ、フィンランド、ロシア、スペインとの間では、どの国に先に特許出願をしたかに関わらず、参加国による特許可能との審査結果があれば、PPHの利用が可能となります。

申請に関する詳細については、下記をご覧下さい。

http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/patent_highway.htm

欧州:単一効特許制度

欧州における「統一特許」(Unitary Patent)の制度については、30年以上議論されておりましたが、2012年12月11日、ついに欧州連合(EU)は、「統一特許」(Unitary Patent)に関する一括法案の採択を決定しました。イタリアとスペインは、自国の言語での申請が認められないことを理由に反対しており、結局、当面はこの2国を除いた25カ国で発足することとなります。この25カ国には、EU加盟国以外、スイス、ノルウェー、トルコなどの非EU加盟国も含まれています*。 

現在の欧州特許条約(EPC)に基づく欧州出願においては、欧州特許庁(EPO)が出願審査を行い、EPOによる許可(特許査定)を得た後に、登録を希望するEPC加盟国への登録手続きを行うことにより、各国へ「枝分かれ」し、所謂「特許の束」(bundle of national patents)として存在することとなります。

統一特許制度発行後も、従来通り、審査は欧州特許庁が行いますが、特許許可後の手続きが統一化されます。統一化される手続きは、以下の通りです:

・ 各国への登録手続き: 現在は、登録を希望する国毎の手続きが必要で、請求項の翻訳文の提出が必要な国も有るが、この手続きを一本化する。欧州特許庁による許可の公告日から1ヶ月以内に単一特許を選択することができる。 

・ 維持年金の支払い: 現在は、各国で登録後は、国毎にまちまちの維持年金を支払う必要があるが、これを一本化する。具体的な金額は未定。

・ 係争の取扱い: 現在は、侵害訴訟や無効訴訟などは、各国の裁判所で取り扱われていたが、これらは一括して欧州統一特許裁判所の管轄となる。

差し当って、既存の欧州特許や係属中の欧州特許出願には影響ありません。統一特許制度に関する法案の採択は決定されましたが、具体的な発効時期は未だ不明です。加盟国の批准や必要な規則改正等が済んでいれば、2014年1月1日に発効となりますが、現実的には難しく、発効は2015年以降になることが見込まれています。


* 25カ国は以下の通り:オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコ、キプロス、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、及びイギリス。

タグ:

特許  出願  欧州  提出  必要  EPO  明細書  上記  以下  翻訳  審査  or  be  patent  判断  可能  請求項  英語  EPC  手続  移行  特許出願  欧州特許  適用  申請  an  Patent  請求  制度  特許庁  選択  考慮  理由  具体的  存在  翻訳文  月以内  無効  ドイツ  支払  期間  EP  各国  at  加盟国  最初  登録  パリ  特許査定  Appeal  権利  30  現在  欧州特許庁  欧州出願  特許権者  許可  複数  言語  only  決定  影響  以上  侵害  訴訟  特許権  以外  同時  維持  特許制度  議論  従来  構成  all  相当  効力  予定  提起  国内  information  用語  保護  欧州特許出願  patents  タイ  条約  一部  ex  欧州特許条約  加盟  正確  フランス  特許許可  shall  re  特許明細書  登録後  現行  申請可能  legal  national  リスク  form  関係  経過  システム  除外  機械  希望  英語以外  発効  無効訴訟  合計  裁判所  国毎  係属中  プロ  年金  スペイン  特許付与後  不可  EU  係争  イギリス  目指  登録手続  Reg  スイス  作業  月現在  管轄  地域  Court  開発  許可後  イタリア  トルコ  自国  救済  参加  侵害訴訟  満了  年以上  訳文  以内  公用  センター  フィンランド  単一  取扱  ratio  控訴  既存  枝分  裁判  First  公用語  統一特許  維持年金  一括  ポルトガル  付与後  付与  箇所  FR  EU  クロアチア  オランダ  査定  月前  purpose  従来通  適用除外  金額  採択  二重  移行期間  欧州統一特許裁判所  参加国  法案  特許許可後  係属  明細  ギリシャ  国以上  デンマーク  セルビア  一審  統一化  一本化  ノルウェー  ベルギー  マケドニア  Re  mm  Unit  Unitary  effect  ed  inform  try 

日本:グローバルPPHの開始

特許庁は2013年11月1日、特許審査ハイウェイ(PPH)の手続の利便性をさらに向上させた「グローバル特許審査ハイウェイ」を、日米韓を含む13か国間で2014年1月から開始することを発表しました。

元々、日本の提唱で開始された「特許審査ハイウェイ(PPH)」は、先に出願した国で特許要件を満たすと判断された出願について、他国がその審査結果を参照して早期審査を行うは制度ですが、2006年に日米間で開始されて以降、順次対象国・地域を拡大し、2013年11月現在では世界30か国・地域が対象となっています。

また、国際特許出願(PCT)も対象とする「PCT-PPH」や、出願国の順序を問わない「PPH-MOTTAINAI」も開始されるなど、出願人の利便性の向上も進められています。

しかし、国によって利用できるPPH の種類が異なっていたため、各国においてどのPPH を利用することができるのか出願人にとってわかりにくく、制度の複雑性が増していました(例えば、米国にはPCT-PPH の申請が可能な一方、英国では利用できない等)。

このため、特許庁は、12の国・地域(米国、韓国、英国、デンマーク、フィンランド、ロシア、カナダ、スペイン、北欧特許庁(Nordic Patent Institute, NPI)、ノルウェー、ポルトガル、オーストラリア)との間で、利用できるPPHの種類を共通化した、多数国間の枠組み「グローバル特許審査ハイウェイ」の開始で合意したもので、特許庁では、今後もPPHの対象国拡大を図るとともに、申請手続の共通化・簡素化に努めることで、我が国出願人の海外での迅速な権利取得を支援していくとしています。

なお、非参加の国・地域(中国、欧州特許庁等)に関しては、引き続き、各国・地域における要件の下でPPHを申請することができます。


お問い合わせ

Share | rss
ホームページ制作