国外

米国(1): 先発明主義から先願主義への移行とグレースピリオド(発明公開後の出願猶予期間)

米国の特許制度の最大の特徴は、先発明主義とグレースピリオド(発明公開後の出願猶予期間)でしたが、2011年9月16日にオバマ米大統領が「リーヒ・スミス米国発明法案」(Leahy-Smith America Invents Act))に署名したことにより、先発明(first-to-invent)主義から先願(first-to-file)主義へ移行することが決定しました。一方、1年間のグレースピリオド(one year grace period)制度は維持されます。グレースピリオド(猶予期間)の制度自体は、日本など米国以外の国にも存在しますが、米国におけるグレースピリオドは、元来、先発明主義に直結した制度であり、他の国とは適用の条件などが異なります。米国の先願主義は「1年間のグレースピリオド付き先願主義」(又は"first-inventor-to-file system"や"first-to-disclose system")のように称されることもあり、先願主義に移行後、このグレースピリオドの制度がどのように活用されるのか注目が集まっています。

先発明主義から先願主義への移行

米国は、最初に発明をした発明者に特許権を与える先発明主義を採用しておりましたが、2011年の法改正により、原則的に最初に出願をした発明者に特許権を与える先願主義へ移行します。但し、この移行は直ちに行われるわけではなく、2013年3月16日以降の出願が先願主義に基づいて処理されることになります。

先発明主義への移行の主要な目的は、国際的な調和(harmonization)を図ること及び抵触審査(Interference)手続きなどの先発明主義に由来する複雑な手続きを省くことで特許庁における手続きを効率化し、70万件にも及ぶ未処理案件(backlog)を減ずることにあります。

Prior art(先行技術)の定義拡張

日本を含む米国以外のほぼ全ての国は先願主義を採用していますので、今回の米国の先願主義への移行は、米国外における特許実務に与える影響は少ないと思われます。

しかし、先願主義への移行に伴いPrior art(先行技術)の定義が拡張されることに注意する必要が有ります。要するに先願主義への移行前であれば先行技術とならなかったものが、先願主義移行後は先行技術として引用される可能性があります。拡張されるのは以下の2点です。

1. 「世界公知」への移行

旧法下では新規性喪失の事由となり得る公知・公用は、米国内におけるものに限定されていたが、今回の法改正により米国外での公知・公用にも及ぶようになる(所謂「世界公知」への移行)。

即ち、旧法の102条(a)においては、例えば米国特許出願人による発明の前に日本で既に公然実施されていた技術によって米国出願の発明の新規性が否定されることはなかったが、新法の102条(a)(1)では、そのような米国外における公然実施によっても米国出願の発明の新規性が否定されることとなった(但し、米国外で公然実施した技術の発明者や共同発明者(又は発明者若しくは共同発明者により開示された技術を獲得した他人)などが公然実施を開始した日から1年以内に該発明者本人が米国出願した場合を除く)。

2. ヒルマードクトリン(Hilmer Doctrine)の廃止

米国以外の第一国出願の出願日も後願排除目的に有効な出願日(effective filing date)として認められることになった。

旧法の102条(e)では、所謂「ヒルマードクトリン(Hilmer Doctrine)」により、パリ条約ルートで出願された米国出願の第一国における出願日(パリ条約に基づく優先日)は、その米国出願の先行技術(Prior Art)としての有効日としては認められなかった。

例えば、2011年4月1日出願の日本出願に基づく優先権を主張して、2012年3月31日に(PCT出願をせずに直接)米国出願(出願A)した場合、この出願Aが後願排除の効力を発揮する日は、旧法下では、米国出願日である2012年3月31日であった。従って、この出願Aと同一の発明を開示する出願Bが、出願Aの優先日よりも後であり、米国出願日よりも前である2011年6月1日に出願された場合、出願Aは出願Bに対するPrior Art(先行技術)とは認められなかった(但し、出願Aの発明日を発明Bの発明日よりも前に遡及(swear-back)させることが出来る場合を除く)。しかし、改正法下では、この出願Aが後願排除の効力を発揮する日は優先日である2011年4月1日となり、上記出願B(出願日:2011年6月1日)は、出願Aに対して新規性を喪失することとなる。

また、PCT出願からの米国移行出願の場合、旧法下ではPCT公開公報が英語であれば、その国際出願日が、後願排除の有効日として認められる一方、英語以外の場合には、認められないということになっていたが、法改正により、PCT出願の言語に関わらず、そのPCTが優先権主張していれば優先日、優先権主張していなければ国際出願日が、後願排除の有効日と見なされることになる。

先願主義の適用条件

優先権主張日などの最先の出願日が、2013年3月16日以前であれば、原則的に旧法(先発明主義)による扱いになりますが、一つでも2013年3月16日以後のクレームがあると、新法(先願主義)での扱いになってしまいます。

また、優先権主張日が、2013年3月16日よりも前の出願であっても、補正により、優先権出願にサポートされていないクレームが一つでも含まれることになると、新法(先願主義)での扱いになります。そして、この場合、再度の補正によって、補正前のクレームに戻しても、旧法が適用されることとはなりません。

グレースピリオド(猶予期間)

米国においては、発明が公になっても1年以内であれば特許出願できます。これをしばしば“one year grace period”と称します。このグレースピリオドの制度は2011年の法改正においても維持されます。先願主義への移行後のグレースピリオド適用条件(新規性喪失の例外条件)は、改正法の102条(b)(1)に規定されております。

日本、中国などにも発明の公開後6ヶ月の出願猶予期間があり、韓国には米国と同じく1年(12ヶ月)の猶予期間があります(中国における出願猶予期間についてはこちらに、韓国に関してはこちらに、日米の場合と比較しながら説明してあります)。欧州には、猶予期間の規定自体はあるのですが、この利用はほぼ不可能に近いものとなっています(この点についてはこちらをご覧下さい)。また、日本、米国、欧州、中国、韓国におけるグレースピリオド制度の比較をこちらの表に示してあります。

猶予期間は米国の1年に対し日本などでは6ヶ月ですが、米国と日本とではこの期間の違い以外にも実務上の大きな違いがあります。

日本では、特許法第30条に基づいて新規性喪失の例外の適用を受けることができますが、公知になった日から6ヶ月以内に出願と同時に例外規定の適用を受けたい旨の書面を提出し、更に出願から3ヶ月以内に証明書類を提出しなければなりません。

尚、平成23年6月8日に公布され、平成24年4月1日から施行されている改正特許法においては、例外規定の条件(特許法第30条)が緩和されました。旧法においては、新規性喪失の例外の適用を受けるためには公知にした手段に様々な制約(学会発表で公知にした場合、特許庁長官指定の学術団体による学会における発表である必要があるなど)がありましたが、改正後は、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して公となった発明については、広く新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるようになりました。それでも所定の期間内に所定の手続きを取った場合に受けられる例外的な措置であることには変りありません。

一方で、米国においては、本人であれば公開した手段は問われず、猶予期間の適用申請手続きも必要ありません。これは、米国における猶予期間は、元々は先発明主義を採用していることに関連して、発明さえしていればその後いつ特許出願しても良いということになってしまうと公益を損なうことになるので、発明を公にしてから1年以内に出願しなければならないという時期的制限を設けることが主要な目的でありました。しかし、上記したように、発明を公知にした発明者本人に限り、先願主義に移行後もこの1年間の猶予期間の制度は維持されます。

従って、先願主義への移行によって発明日への遡及(swear-back)が不可能になった後、この1年間のグレースピリオドというカードをどのように利用するかということに注目が集まっています。

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中国(4): 模倣や個人輸入の問題

時々、お客様より「中国は、模倣や個人輸入の問題があるから出願しても意味が無いのでは?」という様なご質問を受けることがあります。

中国の知的財産軽視の根底には、「他人が考えたのと同じ物を作ったり、作り方を真似しても、『物』自体を盗んだのではない。何が悪いのか?」という考えがあるそうです(http://ja.wikipedia.org/wiki/中国の知的財産権問題)。

中国での模倣や中国からの個人輸入は仕方ないとあきらめてしまえばそれまでですが、中国の市場規模の大きさ及び生産能力の高さからして「仕方ない」で済むレベルでは無いと思います。中国特許を持っていても模倣や個人輸入を完全に抑制できないにしても、特許が無ければいざという時に戦う武器が全く無いことになってしまいます。

模倣に関しては、問題は明らかであると思いますので、個人輸入の問題に関して考えてみたいと思います。

個人輸入について

日本や米国、欧州の多くの国においては、これらの国で特許された製品であっても、国外で取得した当該製品を個人輸入するという行為には、特許権者の許可は必要有りません(特許権の効力は特許製品の業としての輸入等にのみ及ぶので、事業行為でない個人的な輸入を禁ずることができないため)。例えば、ある製品に関して日本で特許を有していたとしても、中国において製造された該製品を、個人で中国から輸入するという行為は日本においては特許権の侵害とはなりません。また、同様に、米国や欧州(フランス、イタリアなどの例外有り)で特許を取得した場合も、これらの国において中国から個人輸入する行為は特許侵害とはなりません。

ご存じの通り、特に中国などの外国からの個人輸入が実際に問題となっております。しかし、上記の通り、個人で輸入する限りはこれを規制する法律はなく、また個人を偽って実際には事業目的で特許製品を輸入したような場合には違法行為となりますが、これを水際で取り締まることは非常に困難です。従って、インターネット販売などにより一旦日本に輸入されてしまえば、それを規制する有効な手段は無いというのが現状です。

個人輸入に対する対応策

上で述べたような問題点を鑑みますと、個人輸入対策としては、中国で特許を取得して、中国国内での製造・販売、中国国外への輸出を抑止するということしか無いと思います。

即ち、中国において特許権を有する場合、中国国内で特許製品を製造・販売する行為や中国国外に輸出する行為は侵害行為となりますので、特許製品が日本に輸出される以前に中国国内での製造及び輸出業者への販売の差し止めなどを請求することが可能になります。[参考までに、中国では知的財産権侵害の場合、裁判以外に行政摘発による処分も可能ですが、相手の侵害事実を立証するために現地の調査会社に依頼して詳細な事実関係を明らかにする必要があります。この調査には通常30~50万円程度の費用がかかりますが、中小企業の場合、JETROの助成制度によって3分の2が補助されます。(http://www.jetro.go.jp/services/ip_service/)]

逆に、中国における権利が無い場合には、中国国内における特許製品の製造・販売・輸出、中国からの個人輸入などの行為が全て合法ということになってしまいますので、中国で大量に生産され、日本にも大量に(合法的に)個人輸入されてくるという状況が生じ得ます。

尤もご存じの通り、中国における特許権の行使には様々な問題が有ります。例えば、国民性として知的財産権を尊重するという意識が低いこと、政府の取り締まりが甘いこと、特許訴訟において中国企業側に有利な判決が出やすいこと、特許侵害に対する損害賠償額が低いため[損害賠償額の上限は100万元(1元=13円として1,300万円)であり(2011年現在)、一般的には20~30万元(260~390万円)]特許による侵害抑止効果が低いことなどの問題が有ります。

しかし、中国において権利を有していないと、実際に中国に関連して問題が発生したときに何ら対抗手段がないということになってしまいます。

更には、近年、中国では国家戦略として知的財産に力を入れており、現在も急速に特許出願件数が増加しております。中国国内の企業等が所有する知的財産権が増加すれば、必然的に権利の保護強化の方向に向かうことが予想されます。従いまして、近い将来に、中国でも日本や欧米と近いレベルの保護が実現する可能性もあると思います。

以上のことから、中国からの個人輸入をご懸念であれば、尚更、中国に出願しておくことが賢明であると考えます。

結論

現在の世界的不況下で、どの国に出願するのが将来的にも最も効果的なのか判断するのは非常に困難ですが、中国は現在、経済的に最も有望且つ安定した国ですので、未だ知的財産保護が充分でないにしても、中国に出願することはやはり大きな意義があると思います。

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米国(1)

Q. 米国における"utility patent"とはどのようなものか?

A. 米国特許には、実用特許(utility patent)、意匠特許(design patent)、植物特許(plant patent)の3種類があり、実用特許(utility patent)は、日本などにおける通常の特許に対応します。米国における"utility patent"を、日本における「実用新案」に対応するものと誤解されることが多いようですが、実用新案を表す英語は"utility model"です。

Q. 米国における「仮出願」とはどのようなものか?

A. 文字通り、優先権を確保するという目的のためだけの「仮の出願」(provisional application)です。通常の出願と異なり、要求事項が非常に少ないのが特徴です。主な特徴は以下の通りです。

- 出願言語は問われず日本語など英語以外の言語でも出願可。

- 通常の出願に要求されるような明細書の体裁は不要(クレームも不要、手書き図面もOK)1)

- 仮出願に対して審査が行われることは無く、出願日から12カ月以内に仮出願に基づく優先権主張をして通常の特許出願(non-provisional application)をしないと、その仮出願は自動的に放棄される。

- 通常の特許出願に移行した場合に限り、仮出願の出願日が、米国特許法第102条(a)項(2)号(旧法の102条(e)に対応)における「先願」としての基準日、即ち、後願排除の有効日となる2)

- 日本や欧州など殆どの国において、米国の仮出願に基づくパリ条約優先権主張が認められる3)

- 出願料は250ドル(約2万円)。

2011年の法改正(Leahy-Smith America Invents Act,AIA)によって米国は先発明主義から先願主義に移行しますが、それに伴って仮出願制度の重要性が増すであろうと言われております。

注:

1) 但し、仮出願の明細書に、発明が理解でき且つ実施可能な程度に記載されていなければなりません。即ち、記載要件と実施可能要件(明細書の記載に関する特許法112条第一パラグラフ)を満たす書類を提出する必要があります。といっても、上記のように、仮出願には通常の出願に要求されるような明細書の体裁は不要ですので、何らかの形で発明が十分に開示されていれば、仮出願に基づく優先権は通常認められます。例えば、仮出願において、説明を書き加えた図面を提出し、それを優先権の根拠とすることもできます。

また、英語以外の言語で仮出願した場合には、仮出願もしくは本出願において、仮出願の翻訳文を提出しなければ、仮出願の出願日への遡及を享受することができません。

2) 要するに、適正に本出願に移行した場合、仮出願は、その出願日以降に出願された第三者の出願に対して、102条の新規性及び/又は103条の自明性に関する先行技術となり得ます(Giacomini判決を参照;また、上記判決で言及されるAlexander Milburn Co. v Davis-Bournonville Co.を参照)。

なお、米国特許法第102条(a)項(2)号における「先願」としての基準日、即ち、後願排除の有効日については、こちらで詳しく述べましたように、2011年の改正法(AIA)により、旧法の102条(e)における所謂「ヒルマードクトリン(Hilmer Doctrine)」が廃止されました。これにより、米国以外の第一国出願の出願日も後願排除目的に有効な出願日(effective filing date)として認められることになりましたので、パリ条約に基づく優先日が後願排除の有効日とみなされることになり、また、PCT出願は(その出願言語に関わらず)、優先権主張していれば優先日、優先権主張していなければ国際出願日が、後願排除の有効日とみなされることになります。

3) 米国の仮出願に基づくパリ優先権を主張して、米国外に出願することも可能です。しかし、その様な場合、米国外の出願が、米国の仮出願にサポートされているか否か(優先権主張の有効性が認められるか否か)の判断は、その国の法律・規則に基づいて判断されます。この点、特に欧州は、欧州出願の発明が、基礎出願明細書から直接的且つ一義的に導き出せるものである場合にのみ優先権主張の有効性が認められますので、米国では優先権の有効性が認められるようなケースでも、欧州では認められないということが起こりえます。例えば、米国においては、上記の通り、図面に基づくサポートにも寛容であり、多くの場合認められますが、欧州においては、図面のみをサポートとして主張しても、認められない傾向があります。

Q. 出願明細書には必ず実施例を記載する必要があるのか

A. 当業者が過度の実験なしに発明を実施できるように記載されていれば、明細書に実施例を記載する必要は有りません[In re Borkowski, 422 F.2d 904, 908, 164 USPQ 642, 645 (CCPA 1970)]。

Q. 日本における特許出願の場合は、請求項が発明の詳細な説明によりサポートされていなければならないと規定されている(特許法第36条6項1号)が、米国の場合も同様の規定があるか

A. 米国の審査基準(MPEP)にも、日本特許法第36条6項1号の規定に相当する規定が有ります。即ち、MPEP § 608.01(g)及び608.01(o)には以下の規定が有ります。

608.01(g)   Detailed Description of Invention

A detailed description of the invention and drawings follows the general statement of invention and brief description of the drawings. ・・・・・ Every feature specified in the claims must be illustrated, but there should be no superfluous illustrations. 

608.01(o)   Basis for Claim Terminology in Description

The meaning of every term used in any of the claims should be apparent from the descriptive portion of the specification with clear disclosure as to its import; and in mechanical cases, it should be identified in the descriptive portion of the specification by reference to the drawing, designating the part or parts therein to which the term applies. ・・・・・The specification should be objected to if it does not provide proper antecedent basis for the claims by using form paragraph7.44.

上記608.01(g)においては、クレームに記載された全ての特徴について、明細書本文に説明がなければならないと規定されています。但し、当業者には自明の周知事項まで明細書に説明する必要はありません。

上記608.01(o)には、クレームについて明細書本文にも適切な開示が無い場合には、拒絶される旨規定されています。

従って、米国においても日本と同様に、クレームが明細書本文の記載にサポートされていることが要求されると考えます。

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各国における先行技術の定義と新規性喪失の例外(Part 2)

[II] 主要国(日本、米国、欧州、中国、韓国)における先行技術の定義と新規性喪失の例外規定適用条件の比較

 

(II-1)先行技術の定義: 国内公知 or 世界公知

国内における公知、公然の実施や文献の公開が先行技術となることを一般的に「国内公知」と称し、外国における公知、公然の実施や文献の公開も先行技術に含めることを一般的に「世界公知」と称します。

日本、欧州、中国、韓国:
出願の時を基準にした、世界公知の公知公用技術および世界公知の文献公知技術を採用する。[中国は、以前は、国内公知を採用していたが、2009年10月1日に施行された新中国専利法により、現在は、日本などと同様に世界公知を採用している(中国専利法第22条)。]

米国:
米国は、上記した通り、現行の先発明主義下では、国内公知の公知公用技術および世界公知の文献公知技術を採用しているが、先願主義移行(2013年3月16日)の後は、公知公用技術は世界公知に変更される予定。

また先行技術となる特許文献については、世界公知の文献公知技術であるが、先願主義移行(2013年3月16日)の後は、後願排除効の有効出願日(先願としての効力を発揮する出願日)が変更される予定。即ち、上記した通り、米国外の出願に基づく優先権を主張した出願の場合の後願排除効の有効出願日は、現在の先発明主義下では米国における出願日であるが、先願主義移行後は最先の第一国出願日まで遡及することとなる。

準公知(拡大先願):
日本、米国、欧州、中国及び韓国のいずれの国においても、準公知(出願時に未公開の先願)によっても新規性は否定される。 (詳細については、「出願時に公開されていなかった先願に対する新規性(拡大先願、準公知)と進歩性(非自明性)」 の項目をご覧下さい。)

(II-2)新規性喪失の例外規定:

現時点(2012年4月現在)での各国における新規性喪失の例外規定の適用条件などを以下の表に示します。尚、米国は以前より、他国にも猶予期間(グレースピリオド)を米国と同様の1年にするよう要求しており、これに応じる形で変更する国が出てくる可能性があります。実際に、韓国において、米韓自由貿易協定(FTA)批准同意と同時に特許法が改正され、従来6ヶ月であった猶予期間が、2012年3月15日の米韓FTA発効と同時に、12ヶ月(1年)に変更されました。猶予期間が、12ヶ月である国としては、他にインドやブラジルがあります。

新規性喪失例外規定の有無 例外規定の対象となる公開手段(発明者自らの行為によるもの) 猶予期間
(グレースピリオド)
猶予期間内に行うべき出願 申請手続き
日本 有り1) 制限なし(2012年4月1日施行新法により制限が事実上撤廃された2) 6ヶ月 日本出願又は日本を指定したPCT出願 出願時に申請書類、出願後30日以内に証拠書類
米国 有り1) 制限なし 12ヶ月
(1年)
現時点では、米国出願又は米国を指定したPCT出願のみだが、優先権出願でも良くなる予定5) 不要
欧州 有り1) 万博での展示など極めて限られた例に制限されている3) 6ヶ月 EP出願又はEPを指定したPCT出願 出願時に申請書類、出願後4ヶ月以内に証拠書類
中国 有り1) 中国政府が主催する又は認める国際展示会における展示などに制限されている4) 6ヶ月 中国出願、中国を指定したPCT出願又は優先権出願6) 出願時に申請書類、出願後2ヶ月以内に証拠書類
韓国 有り1) 制限なし 12ヶ月
(1年)
韓国出願又は韓国を指定したPCT出願 出願時に申請書類、出願後30日以内に証拠書類

注:1) いずれの国においても、本人の意に反して他人が発表した場合には、発表の手段によらず新規性喪失の例外規定の適用が可能です。

2) 旧日本特許法30条では、新規性喪失の例外規定が適用される公開手段は、①試験、②刊行物に発表、③電気通信回線を通じた発表、④長官指定の学術団体が開催する研究集会で文書をもって発表、⑤所定の博覧会への出品に制限されていた。平成23年6月8日に公布された改正特許法(平成24年4月1日施行)においては、「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して」発明が公知となったのであれば、特に公知にした手段は問われないこととなる。よって、現行法によれば、集会/セミナー等の、特許庁長官が指定ではない学会で公開された発明、テレビ/ラジオ等で公開された発明、販売によって公開された発明も、新規性喪失の例外規定の対象となる。

3) Article 55(1)(b) EPCによれば、新規性喪失の例外規定の適用を受けられる公開手段は、公のまたは公に認められた国際博覧会における出願人またはその法律上の前権利者によって発明が開示された場合。ここでの「公に認められた国際博覧会」とは所謂「万博」であり、例えば、2010年は上海万博のみ。

4) 中国専利法第24条によれば、新規性喪失の例外規定の適用を受けられる公開手段は、①中国政府が主催、または承認した国際展示会での展示、②定められた学術会議あるいは技術会議での発表。

5) 現行の先発明主義下では、公知なったのが米国での出願日前1年以内であることが要求されているが、先願主義移行(2013年3月16日)後は最先の出願日(外国出願日でも良い)から遡って1年以内ということに変更される予定。

6) 専利審査指南、第一部分、第一章、6.3項に、公知になったのが中国での出願日のみならず優先日から遡って6ヶ月以内であれば新規性喪失の例外規定の適用を受けることが可能であることが規定されている。

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中国(6): 実用新案(実用新型専利)の有効活用

中国の実用新案は、国際的な視点からは少々トリッキーな存在となっており、中国における特許中心の知財戦略を検討するのであれば、実用新案制度も是非とも熟知しておくべき非常に重要な制度です。日本においては、実用新案はそれほど有用な権利とは認識されておらず、出願件数も特許と比較すると非常に少ないのに対し、中国においては、実用新案出願件数は特許出願件数よりも多く、且つその殆どが中国国内の出願人によるものです。このような極端な傾向は、実用新案制度を有する他の国では見られません。

実用新案出願件数が多いことの原因として考えられるのは、日本と同様に中国でも実用新案は低コストで容易に権利を取得できるということに加えて、日本と比較して、中国の実用新案権は権利行使し易く且つ無効になり難いということが挙げられます。また、中国企業の方針として、時間とコストをかけて先駆的な技術を開発するよりも、既存技術のマイナーバリエーションを実用新案で幅広く抑えておくということが有るのかも知れません。

更には、日本と異なり、同一の発明について特許と実用新案の両方を出願することが出来るという点も、中国における実用新案が広く活用されている要因の一つであると考えられます。

そして、実用新案制度が存在せず馴染みの無い国(米国など)や実用新案制度があっても権利行使が難しく有用性が低い国(日本、ドイツなど)が多いことから、中国国外の出願人にはあまり利用されていないというのが現状のようです。

概要

権利の種類

中国特許法(専利法)によれば、日本における特許、実用新案及び意匠は、何れも「専利」の一種ということになり、以下の様に称されます。

発明専利 → 日本の「特許」、米国のUtility Patent

実用新型専利 → 日本の「実用新案」(米国は実用新案制度無し)

外観設計専利 → 日本の「意匠」、米国のDesign Patent

保護対象と権利期間(日本とほぼ同様)

中国における実用新案の保護対象は「製品の形状、構造又はその組合せについてなされた実用に適した新しい技術方案」です(専利法実施細則第2条第2項)。これは、日本と実質的に同様であり、方法や用途、組成物などに関する発明(考案)は実用新案を利用できません。更に、日本と同様、出願には必ず図面を含めることが要求されます。

権利期間が、出願から最大10年である点も日本などと同様です。

権利化までの期間(日本とほぼ同様)

方式審査のみで登録となるため、特許(発明専利)が権利化まで2年半~3年半程度要するのに対して、実用新案は約6ヶ月程度で権利化できます。

出願件数 - 中国における膨大な実用新案出願件数 -

日本ではあまり活用されていない実用新案制度ですが、中国では以前から出願件数が非常に多く、特に2010年以降は、特許の出願件数を上回っています。

日本においては、実用新案の出願件数は特許と比較すると非常に少なく、2011年は特許出願の約1/40の出願件数(特許出願約34.3万件に対し、実用新案出願は約8千件)であるのに対し、中国においては、実用新案出願件数は特許出願件数よりも多く(2011年は特許出願約52.6万件に対し、実用新案出願は約58.5万件)、且つその99%以上が中国国内の出願人によるものです。

権利行使 - 中国における権利行使の容易さ -

日本では、特許権と比較した場合の権利の不安定さやリスクの大きさから、実用新案権に基づく権利行使はあまり現実的なオプションとは考えられていませんが、中国においては、特許の場合とほぼ同様の感覚で実用新案権の権利行使が可能です。

技術評価書(調査報告書)(中国では要求されない限りは不要)

日本では、実用新案権に基づく権利行使をする場合には、特許庁が作成した実用新案技術評価書を入手する必要があります(日本国実用新案法第29条の2)。技術評価書においては、特許の審査と同様に、新規性、進歩性などが評価されます(但し、法律の文言上は、実用新案に要求される進歩性は、特許の場合よりも低い)。

一方、中国においては、権利行使の際に技術評価書を提示する必要はなく、裁判所に要求されたら提出すればよいことになっています。

実用新案に要求される進歩性

日本と同様に、中国でも実用新案権について無効審判を請求することができます。当然、そこで新規性・進歩性が認められなければ、実用新案権は無効となってしまうわけですが、実用新案は特許ほど顕著な進歩性は要求されません。

この点、日本においても、法律の文言上は、特許と実用新案に要求される進歩性に差が設けられているのですが、実務上その違いは必ずしも明確では有りません。一方、中国においては、「実用新案に要求される進歩性(創造性)の基準が低い」ということが、審査基準に明確に規定されています(審査基準第四部分第六章第4 節)。そして、具体的に以下の2点で特許の進歩性基準との差を明確にしています。

(1)特許に関しては、発明が属する技術分野のみならず、それに近い分野や関連分野、及び当業者が参考にするであろう他の技術分野についても考慮されるが、実用新案に関しては、一般的には、当該実用新案の属する技術分野を考慮することが重視される。

(2)特許は3以上の文献を組み合わせて進歩性を否定できるが、実用新案は原則的に2つまで。

従って、中国の実用新案は、日本と比べて無効にすることが難しいと言えます。

参考までに、中国において、ここ約10年で、付与後の特許が無効になった割合は約26%程度、実用新案が無効になった割合は約33%程度で、極端に大きな開きは有りません。むしろ、実用新案が無審査で登録になっているにも関わらず、1/3程度しか無効にならないということは特筆に値します。

侵害訴訟における過失の推定について(実用新案が無効になった場合の損害賠償)

日本では、特許権については、他人の特許権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定されます(日本国特許法第103 条)。要するに、特許権の権利侵害に関しては、「過失の推定」が働き、特許権者は、権利侵害に対する損害賠償請求をするに際して、侵害者の故意・過失を立証する必要がありません。

一方、実用新案権については、そのような「過失の推定」は有りません。従って、日本で実用新案権に基づいて他人に警告や権利行使をした後に、その実用新案権が無効になった場合、原則的に実用新案権者は損害賠償の責任を負います(日本国実用新案法29条の3第1項)。このことが、日本において実用新案があまり活用されていないことの大きな要因の1つとなっています。

これに対し、中国の実務では、特許のみならず、実用新案権に基づく権利行使においても侵害者の過失が推定されるため、実用新案権利者は被疑侵害者に過失があることを証明する必要がありません。要するに、日本と異なり、中国では実用新案権が無効になってしまった際の損害賠償を心配せずに権利行使することができます。

実用新案権の侵害が認められた場合の損害賠償

中国の実用新案侵害で高額な賠償金支払い命令が出たことで有名な事件として、シュナイダーvs正泰集団案((2007)浙民三終字第276号)があります。

この事件では、2007年9月に、中国浙江省の温州市中級法院が、フランスのシュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)社の子会社に対して、同社が中国の正泰集団の実用新案権を侵害したとして、3.3億元(12円/元として約40億円)の損害賠償を命じ、その後、(2009年4月に、シュナイダー側が正泰集団に 1.575億元(12円/元として約19億円)支払うことで和解が成立しました。

シュナイダー事件以前は、特許や実用新案の侵害に対する賠償金は、権利者が被った損害及び侵害者が得た利益の算定が証明できていないとして、法定賠償範囲額(5千元から上限50 万元程度)の範囲内で算定されることが殆どでしたが、シュナイダー事件を境に高額な賠償金支払い命令が出るようになりました。

例えば、特許侵害訴訟になりますが、武漢晶源vs.日本富士化水(2009年12月21日最高人民法院(2008)民三終字第8号)においては、最高人民法院(最高裁判所)が、被告である富士化水と華陽公司が武漢晶源の特許権侵害行為を共同して実施したと認める最終審判決を下し、5061.24万元(12円/元として約約6億円)の支払いを命じました。

シュナイダー事件では種々の特殊な事情が重なって特別高額な賠償金となった例外的な案件という見方もできますが、実用新案権侵害で高額の賠償金支払い命令が出る可能性が有ることを示す例であることには変りありません。

従って、中国で権利を取得するという立場からは、実用新案は低コストで強い権利が取得できるという利点があるわけですが、中国で実際に事業を行う際には、無審査で登録になった大量の実用新案の存在は脅威となり得ます。

中国特有の出願制度 - 特許と実用新案の並行出願 -

中国では、日本と異なり、同一の発明に関して、特許出願と実用新案出願を同時に提出することが正式に認められています。そして、特許出願が許可になり登録されたら、実用新案権を放棄するということが許されます。従って、最終的には特許権獲得を目指す場合でも、先ず実用新案で早期に権利を取得しておくということが可能です。

日本でも、実用新案を特許出願に変更することはできますが、その時点で、実用新案権は放棄しなければなりません。従って、特許出願が許可にならなかったら、全く権利がなくなってしまいます。

中国において特許出願と実用新案出願を同時に提出し、権利化を図る際には、以下の要件を満たす必要があります(中国専利法9条、及び専利法実施細則41条):

(1) 同じ出願人が同日に特許出願と実用新案出願を行う。

(2) 特許と実用新案の両方の出願において重複して出願している旨を明記する。

(3) 特許が登録となった際に、実用新案権を放棄する。

但し、国際出願(PCT出願)の場合、中国へ移行する際に実用新案を選択することは可能ですが、特許と実用新案を両方出願することはできません。従って、特許と実用新案を同時出願するのであれば、中国を第一国として出願するか、最初の日本出願から1年以内にパリ優先権を主張して出願する必要があります。

特許・実用新案間の出願変更

上記のように中国では、特許と実用新案の同時出願が可能な一方で、実用新案出願を途中で特許出願に切り替えたり、またその逆は出来ません。日本では、そのような出願後の特許から実用新案、実用新案から特許への出願変更が認められています。

しかし、上記の通り、中国では実用新案に要求される進歩性がそれほど高くありませんので、出願済みの特許発明に若干の変更を加えて実用新案出願するということも考えられます。

纏め

以上の通り、中国における実用新案は、日本におけるそれとは大きく意味合いが異なるものとなっており、権利期間が特許の半分(特許は20年、実用新案は10年)であることを除けば、特許と同等に強力な武器となり得ます。

また、実用新案権は低コストで且つ容易に取得できるという点も考えると、特にライフサイクルの短い製品などの保護には実用新案制度の利用は極めて有力なオプションとなるはずです。実用新案は、イニシャルコストが特許出願と比較して安いのみならず、実用新案出願には実体審査がないため、審査請求費用が不要且つ中間手続きの費用が殆どかりません。特許の場合、中国特許庁(SIPO)が、一度も拒絶理由通知を出さずに特許査定することはあまりありません。

これまで中国においては専ら特許制度のみしか利用していなかったならば、実用新案制度の価値を再検討してみることを強くお勧め致します。例えば、PCT国際出願について国際調査報告の内容が望ましくないものであった場合に移行を断念するというようなこともあるかと思いますが、そのような状況でも中国には実用新案として移行しておくというような利用法もあると思います。

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