価値

「後知恵」(hind-sight)による拒絶に対処しやすい明細書作成について

審査基準における「後知恵」

現在の日本の審査基準には「後知恵」の防止に関する規定は存在していません。しかし、1993年に審査基準に導入されて以来、2000年の改訂前までの審査基準には「その他の留意事項」として「後知恵」の防止規定が存在しました。2000年の改訂で削除されたその規定は以下の通りです:

「本願の明細書から得た知識を前提として事後的に分析すると、当業者が容易に想到できたように見える傾向があるので注意を要する。例えば、原因の解明に基づく発明であって、いったん原因が解明されれば解決が容易な発明の進歩性を分析するときは、原因の解明も含めて技術水準に基づいて検討する。解決手段を考えることが当業者にとって容易であるという理由だけでは進歩性を否定することができない。」)

一方、米国の審査基準(MPEP)(MANUAL OF PATENT EXAMINING PROCEDURE)では、「2142: Legal Concept of Prima Facie Obviousness [R-6]」に「However, impermissible hindsight must be avoided and the legal conclusion must be reached on the basis of the facts gleaned from the prior art.」(...許容できない後知恵は防止しなければならず、法律的結論は先行技術から収集した事実に基づいて下さなければならない)と記載され、「後知恵」の防止に関する規定が存在します。

なお、米国の審査基準では、「後知恵」を防止する観点から、prima facie obviousness(一応の自明性)が成立する要件には以下の2項目が含まれています:
(1)TSMテスト(teaching, suggestion, or motivation test)(「2143.01: Suggestion or Motivation To Modify the References [R-6]」などを参照)と
(2)reasonable expectation of success(成功するという合理的な期待)(「2143.02: Reasonable Expectation of Success Is Required [R-6]」などを参照)。

また、EPOの審査基準(Guidelines for Examination in the EPO)では、「C_IV_11.9.2: "ex post facto" analysis; surprising technical advantage」と「C_IV_11.7.3: Could-would approach」に「事後分析("ex post facto" analysis)」(後知恵)の防止に関する規定が存在します。〕

「後知恵」に関する考察

上記のような一種の「戒め」の存在からも分かる通り、国を問わず、特許庁の審査官にとって最大のタブーの一つが、いわゆる「後知恵」(hindsight)に基づく拒絶を出してしまうことです。

「後知恵」は、進歩性(非自明性)の判断において問題になることが多く、「後知恵」による進歩性欠如の拒絶の説明で、しばしば引き合いに出されるのが有名な「コロンブスの卵」です。要するに、以前には誰にも成されていなかった発明に対して、最初に発明したことの価値を無視して、後から結果が容易に見えることのみに基づいて評価してしまうのが、「後知恵」による拒絶です。

しかし、考えてみれば、審査官が審査に先立って先行技術文献をサーチする際には、当然に本発明の内容を頭に入れてそれを基準にしてサーチするわけですのですので、そこには必然的に「後知恵」のバイアスがかかります。そして、そのようにしてサーチしてきた先行技術文献に対する発明の特許性を評価する段に至っては、その「後知恵」に基づく色眼鏡を外して、サーチを行った審査官自身にとってではなく、発明がなされた当時の「当業者」にとって発明が容易であったということを、充分な根拠をもって「理論付け」することが出来るか否かを検討します。

一般人には、この「色眼鏡」を外すことが難しいのですが、特許庁の審査官は必ず「色眼鏡」を外して発明と先行技術の関係を評価することが要求されます。

そして、その「理論付け」の根拠が一応、一見して充分なものであれば、「後知恵」はないことになり、もしもその「理論付け」の根拠が全く無い若しくは明らかに不充分であれば「後知恵」による拒絶ということになります(ただし、欧米・日本・韓国などの先進国では後者の状況は通常はごく稀にしか生じません)。

しかし、実際は、「理論付け」が充分かどうか自体についての純粋に客観的な判断基準はないわけですので、多くの場合の、ある意味では、拒絶理由にはほとんど必然的に「後知恵」的な要素が存在し得るとも言えます。この点に関連して、米国Albany Law Schoolの教授が、陪審を想定して一般市民400人を対象に、hingsightの影響についての調査を行ったところ、事前に本発明の知識を有していた人が、その発明を自明と判断する確率は、本発明の予備知識がなかった人の場合と比較して約2倍であり、TSMテストやGrahamテストに従って、判断させても結果はそれほど変わらなかったそうです。

また、発明の技術は出願時からの時間経過ともに陳腐化しますので、一般に、「後知恵」による判断が生じるリスクは出願時から経時的に増加してゆく傾向があると考えられています。つまり、出願時には「とても意外な知見」に基づくとの印象を与える発明であっても、審査の時点、さらには裁判の時点というように、時間の経過にともない、「意外な知見」との印象はどんどん減少していき、したがって、「後知恵」による判断の生じるリスクが高まると考えられています。

このように、ある意味で、拒絶理由にはほとんど必然的に「後知恵」的な要素が存在し得ると考えられ、更に、「後知恵」による判断が生じるリスクは出願時から経時的に増大してゆく傾向があると考えられます。

そして、一旦、拒絶理由を受けてしまえば、如何にその理由が「後知恵」に基づくように見えたとしても、単に「後知恵」のみを主張して拒絶が撤回されることは殆ど無いと言って良く、結局は、出願人が発明の新規性・進歩性(非自明性)を明確にすることが必要になります。

要するに、如何に「後知恵」に基づくと思われる拒絶であっても、拒絶を受けてから「後知恵だ」と主張しても「後の祭り」であり、予め「後知恵」に基づく拒絶を受けないよう、明細書作成の段階で準備をしておくことが肝心であると考えます。

「後知恵」に基づく拒絶を未然に防止するための明細書

一般的な考え方

「後知恵」に基づく拒絶を未然に防止するための明細書とは、一言で言ってしまえば、先行技術に対する新規性・進歩性(非自明性)が明確に示されている明細書ということになります。

要するに、格別な手段が有るわけではないのですが、特に一見して先行技術との構成上の違いが小さい発明は、「後知恵」による進歩性欠如(自明性)の拒絶を受け易いので、発明の構成の困難性(先行技術同士若しくは先行技術と周知技術を組み合わせることに関する困難性)や予想外の効果などについて強調しておくとよいでしょう。

実際には、この点の対応が充分でない明細書を目にすることが良くあります。特に発明者の方は、発明が属する特定の技術分野の専門家ですから、自分では構成上の小さな改変にも困難性を伴うことを良く認識しており、それを当然のことと考えてしまい、専門外の第三者にとっては容易に見えるかもしれないという認識が無い場合が少なくありません。この様なことが原因となって、進歩性(非自明性)が明確に読み取れない明細書となってしまうのだと思います。

したがって、これは、弁理士や特許技術者の仕事の範疇とも言えますが、明細書を書く際に、発明が属する特定分野の専門知識が無い第三者にとって、発明がどのように解釈されるかを客観的にイメージすることが非常に重要です。客観的な視点からの配慮を欠いた明細書での出願は、後知恵に基づく拒絶を受けやすいと言えます。

具体的には、出願明細書において、本発明に最も近い先行技術から本発明に到達することについての困難性や予想外の効果が得られることが直感的に理解できるようなポイントを、発明の課題と解決手段の項目などで、要領よく説明しておけば、「後知恵」による拒絶を未然に防止できることがあります。また、ポイントさえ巧みに述べてあれば、拒絶を受けても、それをベースにして、意見書で大幅に詳しい説明にすることが容易になります。

特に効果の話となると、米国を除く多くの国において、出願時の明細書に教示も示唆もされていないような効果について、出願後の審査の段階で主張しても考慮されませんので、出願時に何らかの記載を含めることが重要です。

具体例と注意事項

たとえば、公知技術として、ある種のポリマーAの重合反応の特徴に着目して設計されたポリマーA製造用の重合反応装置があり、本発明は、その公知の重合反応装置を他のポリマーBの製造に適用した製造方法に関する発明である、という場合を例に取ります。

一般的には、化学分野など結果の予測が難しい分野においては、反応の原料が異なれば、適する反応方式や条件も異なるという一般的常識がありますが、審査官が、上記の重合反応装置をポリマーBの製造に適用することの容易性について何ら具体的な根拠を示さずに、「本発明で成功している」という結果を念頭において、公知の重合反応装置を他のポリマーに適用することなど当たり前などという理由で拒絶をしたならば、この拒絶は「後知恵」に基づくものと言えるかも知れません。

しかし、具体的な証拠の提示は無くとも、恐らく審査官は「異なる重合反応であっても、殆どの場合に、同じ反応装置が利用できることは周知」などを指摘してくるでしょう。それに対して、単に審査官の主張は、「後知恵」に基づく不当なものだと主張しても、通常、それだけでは審査官の判断が覆ることはなく、結局は、組み合わせの困難性や予想外の効果を明らかにすることが必要になると思います。

従って、「後知恵」の拒絶を防止し、またそのような拒絶を受けても効率的に拒絶を撤回させるためには、やはり出願明細書において、発明の構成の困難性や効果の意外性などを分かり易く説明しておくということが最も有効です。

上記の例では、一見して、先行技術におけるポリマーAを、単にポリマーBに置換しただけという第一印象を受けると思います。そこで、進歩性を明らかにする為に特に有効な手段としては、例えば、以下のような点を明細書で強調しておくことが考えられます:

(1) 当業者が、ポリマーA製造用の重合反応装置をポリマーBの製造に適用することを阻害する要因(いわゆる「阻害要因」または「阻害事由」)(英語では"teach away")の存在があったことを明らかにする。

(2) 上記(1)を明らかにした上で、先行技術と同じ又は類似の効果(例えば、選択率や転化率の向上など)を証明する。

(3)先行技術には教示も示唆もされていなかったような効果を証明する。(例えば、先行技術において達成された効果が選択率と転化率の向上のみである時に、本発明ではポリマーBの重合で問題視されていた有毒な副生物の生成抑制が達成されることを証明するなど。)

上記(1)の阻害要因については、例えば、上記のポリマーAの重合に関する先行技術文献において、ポリマーAの重合反応の平衡定数の低さに着目して、上記の特定の重合装置を設計し、一定範囲以上の平衡定数を示す重合反応に、この重合装置を利用すると不都合が起きるという趣旨のことが記載されていたとしましょう。そこで、ポリマーBの重合反応の平衡定数が、上記先行技術に記載されている範囲より高ければ、阻害要因があったと言うことが出来ると思います。

上記(2)については、ポリマーAに関する上記先行技術において、上記の重合装置の使用により、選択率や転化率が向上し、本発明における効果も同様であり、且つ阻害要因も無かったということであれば、本発明の効果が意外なものとは認められない可能性が有ります。勿論、例外も有るでしょうが、阻害要因もなく且つ先行技術と同じ方向性の目的の発明ということであれば、一般的には、進歩性を認めさせるのが難しい場合が多いと思います。

一方、上記(3)のように、先行技術には教示も示唆されていなかったような効果であれば、意外な効果と認められる可能性が高いと思います。ただ、やはり、上記の例のように、一見して先行技術との構成上の差が小さい時には、阻害要因の存在を明らかにできることが理想的です。

実際に「後知恵」に基づくと思われる拒絶を受けた場合の対応

拒絶理由通への回答において「後知恵」を明示的に主張することは、審査官の判断能力を否定することに等しいため、心証の観点から、よほどの証拠(たとえば、審査官の拒絶理由の論理における明示的・致命的な欠陥の存在や、明らかな「阻害要因」の存在など)でもないかぎり、あまり露骨に「後知恵」を主張しないほうがよいのではないかと考えます。

多くの場合に望ましいアプローチとしては、「後知恵」には直接言及せずに、阻害要因などの議論をする中で、審査官自身が「後知恵」的な要素の存在を自然に自覚して改めてくれるように話しをもっていくというやり方が望ましいと考えます。

但し、担当の審査官が変った場合や、審判・訴訟手続きにおいて、審査官の判断や相手の主張に対して行うのであれば、この限りではありません。むしろ、「後知恵」を強力に主張することが得策の場合もあると考えます。また、近年の知財高裁判決の進歩性判断において「後知恵」が積極的に言及されることが増えていますので、裁判での「後知恵」の議論の有効性は増す傾向にあると考えられます
(たとえば、平成18年(行ケ)第10422号 審決取消請求事件
(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070330151919.pdf)
平成20年(行ケ)第10130号 審決取消請求事件
(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081225160745.pdf)
平成20年(行ケ)第10096号 審決取消請求事件
(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090129104737.pdf)を参照。)

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《会社案内》

(和英)

原文:

現在は、長年蓄積した経験と高度な技術によって広く全国のお客さまからパートナーに選ばれ、「信頼できる分析サービス会社」という声価をかち得ています。・・・・・価値ある有用な情報を創造し、ご提供する我が社は、進化するお客様のニーズにお答えするためさらにパートナーとして信頼される努力を続けてまいります。

英訳文:

Due to our long and extensive experience and high-level expertise, we have been chosen as a partner by customers throughout Japan, and won a reputation as a “reliable analytical services company”.・・・・・We are committed to create and provide valuable and useful information,and will continue every effort to satisfy the changing customers’ needs and remain to be trusted as a their partner.

原文:

つねに最新鋭の機器と優れた人材・技術をいかし「迅速に・正確に・確実に」業務を実行すると共に、機密の保持に万全の注意を払っていることは申すまでもありません。

 英訳文:

We, as a matter of course, always take advantage of the state-of-the-art instruments and the excellent human resources and techniques in carrying out given tasks “quickly, precisely and surely” and that with extreme care to secure confidentiality of information.

《論文》

(和英)

原文:

特に現在の主流であるモノコック構造で車体本体には影響が無いフロントフェンダーの樹脂化 を中心に検討と採用が行われている。 但しコストについては、車両の製造から出荷そしてリサ イクルに至るまでトータルに考える必要がある。例えば製品設計の段階で部品の統合化、組み 立てラインのレイアウト、部品の輸送コスト、設計の複雑さ(設計のデザインによっては鉄の方 がコスト高になり、樹脂を使用すれば設計上の自由度が高い)、車両購入者に対して付加価値と なると思われる損傷性の向上、修理コスト及び車両保険コストの削減などが考えられる。

英訳文:

Especially, the application of a resin as a substitute raw material is considered or has been put into practice mainly in the production of front fenders which have no influence on the strength of automobile bodies having a currently predominant monocoque structure.  However, as far as the production cost is concerned, the entire process form the production and shipment of automobiles through the recycling should be comprehensively taken into consideration.  For example, considerations should be given to: the unification of parts at the design stage; the layout of assembly lines; the transportaion costs for parts; the complexity in design (the use of steel may result in a higher cost depending on the design, while the use of a resin increases freedom of design); and the damage resistance of an automobile, and the reduction in repair cost and physical damage cover, which would be perceived as added values by consumers.

PCT(6): 国際出願のメリットとデメリット

PCT国際出願には、例えば以下のようなメリットとデメリットがあります。

PCT国際出願のメリット

出願手続きの簡便さ

パリ条約に基づく優先件を主張して外国に直接出願する場合には、その国の言語の明細書を準備し、その他、その国で要求される書類(国によっては公証・認証が必要な場合もある)と共に提出するといった手続きを、優先日から1年以内に完了させる必要があります。

一方で、PCT国際出願の場合には、一定の形式にさえ従っていれば、日本語で日本の特許庁に出願できます。従って、翻訳文作成の時間がない場合などにも便利です。また、各国に直接出願した場合には、それぞれの国に優先権証明書を提出する必要がありますが、国際出願で行えば、各国ごとに優先権証明書を提出する必要はありません。

実際に外国へ出願する時期を先延ばしすることができる

30月乃至31ヶ月まで各国への移行手続きを繰り延べることができるので、その間の市場や技術の動向、企業方針等の変化に応じて柔軟な対応ができます。

また、翻訳文作成の時間が十分にあるので質の高い翻訳文の作成が可能になります。

以前は、国際出願時に権利取得をしたい国を指定し、指定手数料を支払う必要がありましたが、現在は、出願時に全ての加盟国を自動的に指定したことになり(みなし全指定)ますので、国際調査や国際予備審査の結果や、30月(乃至31ヶ月)の期限内に発明の価値変化などに応じて実際に国内へ移行する国を決めるということができます。

明細書の修正・補強が出来る

この点については、別項で詳細に説明しますが、基本的に日本国内の最初の出願は、通常、早期に提出することを最重要視しますので、PCT国際出願の際に、時間をかけて明細書を再検討して、修正・補強できるということは非常に大きなメリットです。

殆どの国において誤訳補正ができる

パリ優先権を主張して直接外国に出願した場合は、優先権出願の明細書の記載を根拠にして誤記補正をすることはできません。パリ優先権主張して提出された外国出願に関して、優先権出願の明細書は、外国出願明細書に記載された発明が優先権出願時になされたものであることを証明するための証拠とはなりますが、外国出願の明細書は、優先権出願明細書の翻訳文という扱いにはなりません。

日本や米国のように、基礎出願から1年以内に差し当ってその国の言語以外の言語の明細書で出願して、後から明細書の翻訳文を訂正することができ、またその翻訳文における誤訳を訂正できる国も有ります(日本で言うとことの「外国語書面出願」)。しかし、中国、韓国のように、その国の言語以外での出願が許されない国も多数存在します。そのような国では、作業上は、優先権出願明細書を中国語や韓国語に翻訳したものを提出するかも知れませんが、中国語や韓国語の出願明細書は翻訳文とはみなされず、当然、誤訳の訂正もできません。

一方、PCT国際出願の場合には、外国特許庁に提出されるのは、PCT出願明細書の「翻訳文」という扱いになります。国内段階で誤記・誤訳・訳抜けなどが有った場合には、PCT出願明細書には正しく記載されていたことを明確にできれば、補正が許されます。

特に、一番深刻なのは、主に英語以外の言語の翻訳が必要な国で問題になることがある「訳抜け」ですが、PCT経由の出願であれば、PCT出願明細書に基づいて補正可能です。これに対して、パリ優先の外国出願では、たとえ優先権出願に記載が有っても、外国出願明細書に抜けている記載を補正で補うことはできません。

PCT国際出願のデメリット 

出願費用

特に出願国の数が少ない場合(例えば3ヶ国以下)は、PCT出願費用がかかる分、出願費用が高くなってしまいます。

しかし、例えば、優先日から1年以内に重要な国が絞りきれずに、安全策をとって数カ国余計に出願してしまったというようなことがあれば、それによるロスがPCT出願コストを上回るかも知れません。また、逆に優先日から1年以内に出願しなかった国に関して、その後、その国での権利化が重要であることが判明したというようなことがあれば、潜在的な損失は計り知れないものとなってしまいます。

特許取得に時間がかかることがある

多くの場合、優先日から30月乃至31ヶ月という期間を利用して、移行国を決定しますので、権利取得までの期間が長くなりやすいという傾向があります。

総評

上記から分かる通り、やはりPCTによるメリットは大きく、そのため冒頭でも述べたように、日本出願の件数が頭打ち若しくは減少傾向であるにもかかわらず、日本特許庁に提出されるPCT出願の件数は増加し続けています。

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PCT(7): 国際出願用の明細書作成

優先権出願の明細書とPCT出願明細書

日本特許庁に提出されるPCT国際出願については、日本出願に基づく優先権を主張して提出されることが殆どです。

PCT国際出願に記載された発明が、優先権を主張した日本出願明細書の開示に含まれていれば、優先権を享受できます。しかし、PCT出願明細書の開示内容を日本出願明細書と同じにする必要はありません。

PCT出願明細書作成の際に、表現を改善したり、優先権が効かなくて良ければ新規事項を追加することもできます。一方、各国国内段階に移行する際に各国特許庁に提出するのは、あくまでPCT出願明細書の翻訳文ですので、この段階では、新規事項の追加はできませんし、その他の修正も補正という形でしか行うことができません。勿論、補正もPCT出願明細書の開示にサポートされている必要があります。

最先の日本出願とPCT国際出願の性質の違いを考えるならば、日本出願については、多少、明細書の質を犠牲にしても速やかに提出されるのが一般的であり、一方、PCT国際出願は、高額な出願費用をかけて、多くの場合数カ国での権利化を目指す重要な発明に関するものですから、外国において可能な限り確実に権利化できる内容の明細書とする為、明細書の質の向上に努めることが望ましいと考えます。

PCT出願用の明細書作成時に注意する点

日本出願明細書に基づいてPCT出願用明細書を作成する際に心掛けるべきことは、所望の権利範囲を確保しつつ特許化の確実性を上げること、そしてもう一つは各国で通用する内容の明細書とすることです。

1.外国で確実に権利化するための改善と補強

まず、記載要件や先行技術に対する新規性・進歩性の観点から再検討することが必要です。

日本出願時には、先行技術調査の結果、新規性そして進歩性の観点から権利化できる見込みが充分に高いと判断されれば、出願の形式を整え、速やかに提出するというのが一般的なプラクティスであると思います。

これに対して、PCT出願はあくまで外国出願です。実際に外国の国内段階に移行する際に各国の特許庁に提出するのはPCT出願明細書の「翻訳文」です。従って、PCT出願明細書は、たとえ日本語で提出しても、外国出願用の明細書です。

PCT出願経由で外国出願するということは、重要性が高い発明に関するものでしょうし、またPCT出願及び各国移行には相当の費用が必要になります。

従って、当然のことながら、PCT出願時には、外国でなるべく確実に権利化できるよう、発明は充分に明確に定義されているか、実施可能要件など記載は充分か、先行技術に対する新規性・進歩性を明らかにできるよう態様が記載されているか、また発明の効果を主張する際に有効なデータが充分かなど、様々な観点から慎重に再検討することが必要です。

一般には、クレームや明細書がシンプルであれば、特許成立した際に広い権利範囲を押さえることができるため、望ましいと言われます。しかし、特許は成立したとしても、権利範囲が広ければ利害関係を有する第三者も増え、そしてそのような第三者から攻撃を受けた時(特許無効を訴えられた時)に、シンプルな明細書は、戦う武器が少ないということになってしまうこともあります。従って、明細書は一概にシンプル・イズ・ベストというわけにはいかず、様々な要因を考慮した上で、何を記載する必要があり、何を省けるのか慎重に検討する必要があります。

勿論、基礎となる日本出願明細書の質も出願人により様々であり、日本出願の時点でかなり質の高い明細書を作成する企業も有ります。しかし、そのような場合でも、PCT国際出願に際して弊所で再検討した際には、必ず何らかの改善ポイントがありました。しかも些細な表現上の問題などではなく、弊所の経験上、重大な事態に発展する可能性がある問題が必ず存在しました。

余談になりますが、近年のようにPCT制度が盛んに利用されるようになる以前は、パリ条約優先権を主張して、最初の日本出願から1年以内に外国に直接出願していたわけですが、その際には、単に日本出願の翻訳ではなく、日本出願明細書はあくまで原案と考えて、修正や補強を行い外国出願用の英文明細書を作成するということが一般的でした。PCTの利用が一般に浸透し、日本語で出願できるようになってから、内容の再検討などは行わずに、日本出願の明細書をそのままPCTの形式に変更しただけで提出することが行われるようになってしまったようです。 

優先権の有効性

場合によっては、PCT出願の際に追加で記載した特徴については、優先権を認められないかもしれません。しかし、外国出願に優先権が効かない事項が1つでも含まれていたら、出願全体に関して全く優先権が無効になるということではありません。優先権出願に開示されていなかった部分についての優先権が認められないということです。また、優先権出願からPCT出願の間に、それと同一の発明が公開なされなかったならば、優先権が効かなくても問題有りません。

優先権出願に無かった記載をPCT出願明細書に加えることで、特許が成立する可能性が高くなるならば、追加を検討する価値はあるはずです。

2.翻訳し易さ

PCT出願の国内段階移行時には、多くの場合、PCT出願明細書の翻訳文の作成が必要になります。近年、最初から英語でPCT出願する日本の出願人も増えてはいるようですが、まだまだ少数派です。

弊所では、日本語でPCT出願した場合、日本語のPCT出願明細書を作成した本人が中心になって、各国移行時の英文明細書を作成しますので、翻訳時に困難に直面するようなことはあまりありません。それでもやはり、なるべく翻訳に負担がかからないような日本語の明細書を作成するよう心掛けています。一般的に、普段から使い慣れている日本語であるが故に、客観性に欠ける文章になっていても気付かないということが起こりえます。第三者が読んだ時に、誤解されることなく、容易に意図が正しく伝わるかどうか丁寧に検証しなければなりません。この観点から、どのような日本語明細書にすれば理解し易いかが身をもって分かるため、明細書の翻訳も出来る人間がPCT国際出願用の日本語明細書に関与することが理想であると考えます。

3.国によるプラクティスの違い

上記項目1.で述べたような一般的な注意事項に加えて、国によるプラクティスの違いも考慮する必要があります。

特許制度については、国際的な調和(ハーモナイゼーション)を目指す動きが見られますが、依然として国によるプラクティスの相違から明細書に要求される事項に違いが有ります。表現的上の問題(例えば、医薬の用途発明に関して、許容されるクレームの形式の相違など)であれば、各国の国内段階に移行してからでも対応が可能ですが、PCT出願の段階で記載しておかないと後から対処できないものも存在します。以下に、そのような記載の例を挙げます。

1) 欧州における補正の厳しさ

明細書中に極めて明確な根拠がないと補正が認められない傾向がある。従って、将来、補正の可能性があるのであれば、補正後の態様について明細書に明記しておく必要がある。

2) 日本における特殊パラメータ発明に関する記載要件の厳しさ

日本や韓国においては、パラメータの意義の説明やパラメータによって達成される効果を明らかにする為に充分な実施例が必要。

記載要件や実施例の量については、米国や欧州では充分と看做されるようなものであっても、日本や韓国では不十分と判断されることがある。

3) 発明の効果に関する記載

特に米国出願に関しては、明細書に効果を記載すると、それにより権利範囲が制限されてしまうため、なるべく記載しない方が良いという考えがある。

米国では、出願時に明細書に記載されていなかった効果について、後から主張することができるので、米国にしか出願しないのであれば、効果については詳細に記載しなくても問題ないかも知れない。

また、米国以外の国においても、明細書における効果の記載により、権利範囲が制限される可能性はある。

しかし、日本、欧州、中国を初めとする多くの国においては、出願時の明細書から読み取れないような効果について、後から主張しても認められない。従って、米国以外にも出願する見込みがあるのであれば、進歩性(非自明性)につながるような効果は記載しておく必要がある。

4) 米国におけるBest Modeの開示

但し、2011年のAIAにより、Best Mode要件違反は無効理由とはならなくなった。

纏め

以上の様に、PCT国際出願用の明細書は、日本語であっても、実際には外国出願用の明細書であり、PCT出願する発明が重要な発明であって、そしてそれを確実に経済的に権利化することを望むのであれば、単に日本出願明細書をそのままPCTの形式に変換するのでなく、この機を活用して明細書を再検討することが望ましいと考えます。

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中国(6): 実用新案(実用新型専利)の有効活用

中国の実用新案は、国際的な視点からは少々トリッキーな存在となっており、中国における特許中心の知財戦略を検討するのであれば、実用新案制度も是非とも熟知しておくべき非常に重要な制度です。日本においては、実用新案はそれほど有用な権利とは認識されておらず、出願件数も特許と比較すると非常に少ないのに対し、中国においては、実用新案出願件数は特許出願件数よりも多く、且つその殆どが中国国内の出願人によるものです。このような極端な傾向は、実用新案制度を有する他の国では見られません。

実用新案出願件数が多いことの原因として考えられるのは、日本と同様に中国でも実用新案は低コストで容易に権利を取得できるということに加えて、日本と比較して、中国の実用新案権は権利行使し易く且つ無効になり難いということが挙げられます。また、中国企業の方針として、時間とコストをかけて先駆的な技術を開発するよりも、既存技術のマイナーバリエーションを実用新案で幅広く抑えておくということが有るのかも知れません。

更には、日本と異なり、同一の発明について特許と実用新案の両方を出願することが出来るという点も、中国における実用新案が広く活用されている要因の一つであると考えられます。

そして、実用新案制度が存在せず馴染みの無い国(米国など)や実用新案制度があっても権利行使が難しく有用性が低い国(日本、ドイツなど)が多いことから、中国国外の出願人にはあまり利用されていないというのが現状のようです。

概要

権利の種類

中国特許法(専利法)によれば、日本における特許、実用新案及び意匠は、何れも「専利」の一種ということになり、以下の様に称されます。

発明専利 → 日本の「特許」、米国のUtility Patent

実用新型専利 → 日本の「実用新案」(米国は実用新案制度無し)

外観設計専利 → 日本の「意匠」、米国のDesign Patent

保護対象と権利期間(日本とほぼ同様)

中国における実用新案の保護対象は「製品の形状、構造又はその組合せについてなされた実用に適した新しい技術方案」です(専利法実施細則第2条第2項)。これは、日本と実質的に同様であり、方法や用途、組成物などに関する発明(考案)は実用新案を利用できません。更に、日本と同様、出願には必ず図面を含めることが要求されます。

権利期間が、出願から最大10年である点も日本などと同様です。

権利化までの期間(日本とほぼ同様)

方式審査のみで登録となるため、特許(発明専利)が権利化まで2年半~3年半程度要するのに対して、実用新案は約6ヶ月程度で権利化できます。

出願件数 - 中国における膨大な実用新案出願件数 -

日本ではあまり活用されていない実用新案制度ですが、中国では以前から出願件数が非常に多く、特に2010年以降は、特許の出願件数を上回っています。

日本においては、実用新案の出願件数は特許と比較すると非常に少なく、2011年は特許出願の約1/40の出願件数(特許出願約34.3万件に対し、実用新案出願は約8千件)であるのに対し、中国においては、実用新案出願件数は特許出願件数よりも多く(2011年は特許出願約52.6万件に対し、実用新案出願は約58.5万件)、且つその99%以上が中国国内の出願人によるものです。

権利行使 - 中国における権利行使の容易さ -

日本では、特許権と比較した場合の権利の不安定さやリスクの大きさから、実用新案権に基づく権利行使はあまり現実的なオプションとは考えられていませんが、中国においては、特許の場合とほぼ同様の感覚で実用新案権の権利行使が可能です。

技術評価書(調査報告書)(中国では要求されない限りは不要)

日本では、実用新案権に基づく権利行使をする場合には、特許庁が作成した実用新案技術評価書を入手する必要があります(日本国実用新案法第29条の2)。技術評価書においては、特許の審査と同様に、新規性、進歩性などが評価されます(但し、法律の文言上は、実用新案に要求される進歩性は、特許の場合よりも低い)。

一方、中国においては、権利行使の際に技術評価書を提示する必要はなく、裁判所に要求されたら提出すればよいことになっています。

実用新案に要求される進歩性

日本と同様に、中国でも実用新案権について無効審判を請求することができます。当然、そこで新規性・進歩性が認められなければ、実用新案権は無効となってしまうわけですが、実用新案は特許ほど顕著な進歩性は要求されません。

この点、日本においても、法律の文言上は、特許と実用新案に要求される進歩性に差が設けられているのですが、実務上その違いは必ずしも明確では有りません。一方、中国においては、「実用新案に要求される進歩性(創造性)の基準が低い」ということが、審査基準に明確に規定されています(審査基準第四部分第六章第4 節)。そして、具体的に以下の2点で特許の進歩性基準との差を明確にしています。

(1)特許に関しては、発明が属する技術分野のみならず、それに近い分野や関連分野、及び当業者が参考にするであろう他の技術分野についても考慮されるが、実用新案に関しては、一般的には、当該実用新案の属する技術分野を考慮することが重視される。

(2)特許は3以上の文献を組み合わせて進歩性を否定できるが、実用新案は原則的に2つまで。

従って、中国の実用新案は、日本と比べて無効にすることが難しいと言えます。

参考までに、中国において、ここ約10年で、付与後の特許が無効になった割合は約26%程度、実用新案が無効になった割合は約33%程度で、極端に大きな開きは有りません。むしろ、実用新案が無審査で登録になっているにも関わらず、1/3程度しか無効にならないということは特筆に値します。

侵害訴訟における過失の推定について(実用新案が無効になった場合の損害賠償)

日本では、特許権については、他人の特許権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定されます(日本国特許法第103 条)。要するに、特許権の権利侵害に関しては、「過失の推定」が働き、特許権者は、権利侵害に対する損害賠償請求をするに際して、侵害者の故意・過失を立証する必要がありません。

一方、実用新案権については、そのような「過失の推定」は有りません。従って、日本で実用新案権に基づいて他人に警告や権利行使をした後に、その実用新案権が無効になった場合、原則的に実用新案権者は損害賠償の責任を負います(日本国実用新案法29条の3第1項)。このことが、日本において実用新案があまり活用されていないことの大きな要因の1つとなっています。

これに対し、中国の実務では、特許のみならず、実用新案権に基づく権利行使においても侵害者の過失が推定されるため、実用新案権利者は被疑侵害者に過失があることを証明する必要がありません。要するに、日本と異なり、中国では実用新案権が無効になってしまった際の損害賠償を心配せずに権利行使することができます。

実用新案権の侵害が認められた場合の損害賠償

中国の実用新案侵害で高額な賠償金支払い命令が出たことで有名な事件として、シュナイダーvs正泰集団案((2007)浙民三終字第276号)があります。

この事件では、2007年9月に、中国浙江省の温州市中級法院が、フランスのシュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)社の子会社に対して、同社が中国の正泰集団の実用新案権を侵害したとして、3.3億元(12円/元として約40億円)の損害賠償を命じ、その後、(2009年4月に、シュナイダー側が正泰集団に 1.575億元(12円/元として約19億円)支払うことで和解が成立しました。

シュナイダー事件以前は、特許や実用新案の侵害に対する賠償金は、権利者が被った損害及び侵害者が得た利益の算定が証明できていないとして、法定賠償範囲額(5千元から上限50 万元程度)の範囲内で算定されることが殆どでしたが、シュナイダー事件を境に高額な賠償金支払い命令が出るようになりました。

例えば、特許侵害訴訟になりますが、武漢晶源vs.日本富士化水(2009年12月21日最高人民法院(2008)民三終字第8号)においては、最高人民法院(最高裁判所)が、被告である富士化水と華陽公司が武漢晶源の特許権侵害行為を共同して実施したと認める最終審判決を下し、5061.24万元(12円/元として約約6億円)の支払いを命じました。

シュナイダー事件では種々の特殊な事情が重なって特別高額な賠償金となった例外的な案件という見方もできますが、実用新案権侵害で高額の賠償金支払い命令が出る可能性が有ることを示す例であることには変りありません。

従って、中国で権利を取得するという立場からは、実用新案は低コストで強い権利が取得できるという利点があるわけですが、中国で実際に事業を行う際には、無審査で登録になった大量の実用新案の存在は脅威となり得ます。

中国特有の出願制度 - 特許と実用新案の並行出願 -

中国では、日本と異なり、同一の発明に関して、特許出願と実用新案出願を同時に提出することが正式に認められています。そして、特許出願が許可になり登録されたら、実用新案権を放棄するということが許されます。従って、最終的には特許権獲得を目指す場合でも、先ず実用新案で早期に権利を取得しておくということが可能です。

日本でも、実用新案を特許出願に変更することはできますが、その時点で、実用新案権は放棄しなければなりません。従って、特許出願が許可にならなかったら、全く権利がなくなってしまいます。

中国において特許出願と実用新案出願を同時に提出し、権利化を図る際には、以下の要件を満たす必要があります(中国専利法9条、及び専利法実施細則41条):

(1) 同じ出願人が同日に特許出願と実用新案出願を行う。

(2) 特許と実用新案の両方の出願において重複して出願している旨を明記する。

(3) 特許が登録となった際に、実用新案権を放棄する。

但し、国際出願(PCT出願)の場合、中国へ移行する際に実用新案を選択することは可能ですが、特許と実用新案を両方出願することはできません。従って、特許と実用新案を同時出願するのであれば、中国を第一国として出願するか、最初の日本出願から1年以内にパリ優先権を主張して出願する必要があります。

特許・実用新案間の出願変更

上記のように中国では、特許と実用新案の同時出願が可能な一方で、実用新案出願を途中で特許出願に切り替えたり、またその逆は出来ません。日本では、そのような出願後の特許から実用新案、実用新案から特許への出願変更が認められています。

しかし、上記の通り、中国では実用新案に要求される進歩性がそれほど高くありませんので、出願済みの特許発明に若干の変更を加えて実用新案出願するということも考えられます。

纏め

以上の通り、中国における実用新案は、日本におけるそれとは大きく意味合いが異なるものとなっており、権利期間が特許の半分(特許は20年、実用新案は10年)であることを除けば、特許と同等に強力な武器となり得ます。

また、実用新案権は低コストで且つ容易に取得できるという点も考えると、特にライフサイクルの短い製品などの保護には実用新案制度の利用は極めて有力なオプションとなるはずです。実用新案は、イニシャルコストが特許出願と比較して安いのみならず、実用新案出願には実体審査がないため、審査請求費用が不要且つ中間手続きの費用が殆どかりません。特許の場合、中国特許庁(SIPO)が、一度も拒絶理由通知を出さずに特許査定することはあまりありません。

これまで中国においては専ら特許制度のみしか利用していなかったならば、実用新案制度の価値を再検討してみることを強くお勧め致します。例えば、PCT国際出願について国際調査報告の内容が望ましくないものであった場合に移行を断念するというようなこともあるかと思いますが、そのような状況でも中国には実用新案として移行しておくというような利用法もあると思います。

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